インタビュー

PS3/Xbox 360「LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII」プレイ&インタビュー

現在の開発進行度は約70%

現在の開発進行度は約70%。これから十分な時間をかけてユーザーテストと調整を重ねていく

システムやデザインが一新され“これまでにない不思議なゲーム”になったと語る北瀬氏。制作スケジュールには余裕があり、調整をたっぷり行なっていくとのこと

――現在の開発状況はいかがでしょうか?

北瀬氏:70%というところですかね。今は一通り最後まで遊べる状態になっていて、鳥山も含めチーム全体でテストプレイをしています。ただ、バランス等々がまだまだ試行錯誤の段階なので、テストプレイをして磨いていくというフェーズです。

――1番大事な時期ですね。作品のプレイ感の良し悪しを決定づけるというか。

北瀬氏:「FFXIII」の頃は新ハードに対応するだけで多くの時間を取られてしまった面もあります。今回も楽ではないですけど、スケジュール的には順調に進んでいます。ユーザーテストをしてそれをフィードバックする。それを何回かやれそうな期間がありますね。

(筆者補足:ユーザーテストというのは、一般ユーザーを社内に集め、業務としてテストプレイをして意見を出してもらうというもの。ゲーム開発ではおおむねどのタイトルでも近いことが行なわれている。体験版を配信するといった話とは異なるのでご注意頂きたい)

――バトルシステムが独特で、レベルデザインも成長システムも独特です。難易度調整の難しそうなゲームだなと思います。

鳥山氏:難しいですね。今はすごく難易度を高くしています。あえて1度難しいゲームにしてみて、ここからどういう風に難易度を下げていくかというところですね。

――難しめに振ってテストプレーヤーの反応や意見を見ているという状態ですね。

鳥山氏:ブラッシュアップというか、開発現場ではポリッシング(磨き上げるという意)と言うのですが、スケジュール的にもユーザーテストを行なう機会が何度か作れそうなんです。なので、1回ちょっと極端にバランスを振ってみて、そこから直しながら調整して、もう1回遊んでもらってまた様子を見て……という感じで進めていきたいです。今回は、そういうやり方で完成度を高められるので、すごく理想的なスケジュールになっています。

――調整していくポイントとしては、やはりバトルの比重が大きいでしょうか。

鳥山氏:もちろんバトルですね。

北瀬氏:実際、1カ月くらい前に最後まで通してプレイできるバージョンができて、私も含め何人かがプレイしてみました。その時は、バトルだけじゃなくクエストの進め方も見ていたのですが、1つの大陸ごとに「これが片付いたら次の大陸に行こう」というように順番にプレイしている人が多かったんです。

――几帳面というか丁寧なプレイに?

北瀬氏:単調な進め方になってしまい、時間経過を待つ暇な時間が発生することがあって、全体の感想としては思ったようなリアクションを得られませんでした。そこからまた1カ月かけて、“色んな大陸を並行してクエストをこなしていくような”誘導のバランスを調整したり、交通機関は他の大陸に移動しやすいように調整をしました。今のバージョンは、そこは大きく改善しました。感触としては飽きのこないプレイ感になっていると思います。

――そういったお話を伺うと、実際に遊ぶ時には、几帳面なプレイでもいいけど、もっと自由にいろんなところに好き勝手に行って遊んでいく方が楽しめるゲームになっているように思います。オープンワールドのゲーム性に近いというか。

鳥山氏:いわゆるオープンワールドよりも限られた時間の中での、世界の生活を作り込んでいます。なので、独特なゲーム進行になっています。

――うーん、ステージやエリア制でもないですし、クエスト制ではありますけど……難しいですね。

鳥山氏:そうなんですよ。そういう意味では新しい感じのゲームになっていますね。

北瀬氏:不思議な感じです(笑)。

「もうやるしかない!」“限られた13日間”の中によりリアルな生きた世界を作った1年

“やるしかない”と覚悟を決め、13日間という限られた時間の中に、密度のある物語を作るというデザインで新たな世界を作り上げた

――「FFXIII」シリーズ全体に関してですが、これだけ大規模かつ独特な世界観で3作品を出して、しかも毎回ガラッとシステムを変えている。ほぼ同じシステムと素材を使って別の作品を……というものならいくつかありますけど、「FFXIII」シリーズはシステムも世界も大きな展開をして変化させていますよね。

北瀬氏:私も、「LRFFXIII」を(「FFXIII-2」から)こんなに変えるとは思わなかったんです。いろいろ新しくして欲しいとは思っていたけど、それをやれる時間があるとは思ってもいませんでした。

鳥山氏:都市というか世界も全部新規のグラフィックリソースなので、そういう意味ではシステムだけじゃなく、グラフィックスも含めて、1年間で可能な範囲ではほぼ限界まで変えています。

北瀬氏:「FFXIII-2」の後に、「次はどうしようか?」という話が出たとき、「もっとオープンワールド的な世界にしたい」という意見はあったんですが、一旦は「(スケジュール的に)無理だよね」となったんです。でも、結局開発チームはそれを作りきってしまった。何がきっかけでOKになったんだっけ?(笑)

鳥山氏:いやぁ、もうやるしかない! ですよ(笑)。

北瀬氏:(笑)。約1年という制作期間は最初にほぼ決まっていたんです。次世代機が出る前に必ず完結させておこうと思っていました。

――なるほど、節目としてですね。でもその期間ではHD機でオープンに近い世界は作れないというか、もっと膨大な期間が必要な大仕事ですよね、普通なら。

鳥山氏:確かにそうです。ただ、“限られた13日間を描く”というコンセプトを決めた時にそれならできる、“13日間の生きた世界を作る”のなら約1年でも可能だと思いました。

――13日の中にいろいろな出来事を詰め込むというのなら作れるし、デザインとしても新しいものにできると。プレーヤーはそれを何周もして隅々まで遊び込んでいくようなデザインなのでしょうか?

鳥山氏:今作はいつでも、「強くてニューゲーム」で始められます。

――2周目は「今度はこの地域に最初に行ってみよう」とか、選択肢を変えてみたり、途中で止めてみたり。プレーヤーがやったことに対してどういう反応や結果になるんだろうと探ったり。

鳥山氏:プレーヤーに関係なく動いてる環境の中で、どういうリアクションが返ってくるかが楽しめると思います。

“今世代で僕達がやれることの完成の域を出し切る”ついに完結を迎える「FFXIII」

――「FFXIII」シリーズは、1人のライトニングという人間が女神に導かれ、500年先の世界が終わっていくというところまで、世界の遠く先までを描いています。この独特な世界観は、どういうところから発想を得たのでしょう?

鳥山氏:「FFXIII」シリーズのバックボーンにあるクリスタル神話「ファブラ ノヴァ クリスタリス」が全ての元です。常にそれを背景に世界を作っています。「FFXIII」の時にはクリスタル神話の中からどこを切り出すか、「FFXIII-2」の時にはどこを切り出すのか。「LRFFXIII」では、まだ触れていなかったクリスタル神話のここを切り出そうという感じです。

――神話の中からだんだんと切り出すテーマ性も、大きなというか、コアなところに近づいているのかなと思います。

鳥山氏:僕らが「FFXIII」プロジェクトの中で描きたかったクリスタル神話の一連の要素に関しては、「LRFFXIII」ですべてが完結します。

――発売日も決定して、楽しみにしている人がたくさんいると思います。最後にそうしたゲームファンのみなさんに向けて、一言づつ頂ければと思います。

北瀬氏:今世代のハードで3作品。「FFXIII」から始まって、「FFXIII-2」、「LRFFXIII」と走り抜けて、次世代が来る前の総決算というか、完結編になっています。短いスパンで制作し続けることでユーザーさんの意見をダイレクトにフィードバックしているので、ユーザーさんとともに作品がしっかりと成長しています。

 「LRFFXIII」で、今世代で私達がやれることの完成形を出し切ったと思っています。クオリティが非常に高く、遊べるゲームになっていますので、期待してください。

――今世代での完成の域であり、完結編であると。ユーザーさんもこれまでの2作品を追いかけてきてる人達は、「FFXIII-2」のあのラストの段階では苦しんでいるかなと思うので、ある意味ライトニングという解放者にユーザーさんの想いも解放してもらうというところがあるかもしれませんね(笑)。

北瀬氏:確かに(笑)。ライトニングの物語を見守ってくれたみなさんに、これで絶対に満足してもらおうと思います。もうこの先はありません。本当に完結編。DLCなどでストーリーが続いていくこともありません。この事はきちんと言い切ろうと思います。

――わかりました。鳥山さんお願い致します

鳥山氏:ライトニングのファンの皆さんへ。「FFXIII」からずっとライトニングを好きでいてくれた人達に、もう1度ライトニングを、凄くかっこいいライトニングを、切ないライトニングを、色々なライトニングを見せたいという想いで作っています。まだまだ、たくさんお見せしたいライトニングの姿がありますので、これからの情報にもご期待ください。

――ありがとうございました

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(山村智美)