「Angry Birds」開発のRovio Entertainment日本代表Antti Sonninen氏インタビュー
日本の春をモチーフとした「CHERRY BLOSSOM」等、今後の展開は


3月1日収録





 Rovio Entertainmentはフィンランドにあるゲームメーカーで、「Angry Birds」の世界的大ヒットで、一躍有名になったメーカーである。今回、東京・大崎のアドビ システムズ本社で、「Angry Birds」の今後の展開や、「Angry Birds Facebook」におけるアドビ殿協力体制などのインタビューを行なった。

 話を聞いたのは先日行なわれた「ADC MEETUP ROUND4」にも登壇した、Rovio EntertainmentのBusiness Development日本代表のAntti Sonninen氏。Sonninen氏は幼い頃米国で暮らしたのがきっかけで語学に興味を持ち、ヨーロッパの各言語を学んだ後、“もっと遠くに行こう”と日本に留学し、日本語を学んだという。

 Rovio Entertainmentは「Angry Birds Seasons」で、日本の春をモチーフとした「CHERRY BLOSSOM」というエピソードの追加を予定しており、さらに「Angry Birds SPACE」という新作タイトルのリリースも予定している。インタビューでは「CHERRY BLOSSOM」の内容も聞くことができた。



■ 「Angry Birds」のヒットで社員が一気に10倍以上に。最新作「Angry Birds SPACE」も近日公開

Rovio EntertainmentのBusiness Development日本代表のAntti Sonninen氏
「ADC MEETUP ROUND4」でのスライド。「Angry Birds」はイベントが行なわれたり、宇宙にグッズを持って行ったりと、様々なアピールをしている
ジョークたっぷりの「Angry Birds SPACE」のプロモーションムービー。月面にパチンコが!?

――最初に「Angry Birds」が生まれた経緯を教えてください。

Sonninen氏: 「Angry Birds」が生まれる前、Rovioは15~20人のモバイル向けにゲームを作る小さな会社でした。私はまだその時入社していませんでしたが、2003年に「Relude」という名前で設立し、2005年に社名を「Rovio」と変え、それまで51本のゲームを出していましたが、経営状態は苦しかったと言うことです。

 「Angry Birds」は企画会議でJaakko Iisaloというデザイナーが持ってきたトリのイラストから生まれました。そのデザインは、チームから「イイネ!」と評価され、最初はトリをぶつけて何かを壊すゲームとして作られ、次に敵であるブタをやっつけるゲームとなりました。「ADC MEETUP ROUND4」でも話しましたが、何故敵がブタなのかと言えば、当時「豚インフルエンザ」が猛威を振るっていたからなんです。

 現在の「Angry Birds」とプロトタイプで大きく違う点は、トリをタッチパネルで“はじいて”ものにぶつけるという点でした。最初はパチンコがなかったんです。このため、ゲームのルールを知らない人が、画面を見ても、ブタとトリが配置されているだけで、何をするゲームなのか伝わりにくかった。パチンコを配置することで、トリをパチンコで飛ばしものにぶつけるゲームであることが、明確に伝えられるようになりました。

――「Angry Birds」は物理エンジンにこだわったゲームだという印象を受けました。それ以前にもRovioは物理エンジンを得意とするゲームメーカーだったのでしょうか。

Sonninen氏: 様々なゲームを出していました。物理エンジンを使ったゲームも開発していて、「Angry Birds」の前に、「Bounce Evolution」といったゲームを出していました。Nokia N900というスマートフォン向けのゲームでしたが、傾きセンサーに対応し、スマートフォンを傾けることでボールを転がしていくゲームでした。スマートフォンを跳ね上げるとボールがジャンプするという仕掛けもありました。

 ちなみに、「Bounce Evolution」は3Dのリアルなタッチのゲームでした。Jaakko Iisaloもかわいらしいデザインだけではなく、様々なタッチでデザインを行なっていました。様々なコンセプトのゲームを出しているメーカーでした。

――「Angry Birds」が発売されてからは、どうでしょうか。その後の作品に影響を与えましたか。

Sonninen氏: 「Angry Birds」の後は、Rovio Entertainmentは「Angry Birds」シリーズを出すメーカーとなりました。「Angry Birds Seasons」、「Angry Birds Rio」といった作品を作り、多くのハードに展開しています。

 3月22日には新作である「Angry Birds SPACE」が発売されます。これは、物理エンジンにもこれまでのシリーズにはない工夫を持たせた、意欲作です。キャラクターはこれまでのものに加え、新キャラクターが登場します。詳しくはまだ話せませんが、宇宙を舞台にまったく新しい「Angry Birds」の世界が広がっていきます。

 トリ達が何故宇宙にいるのか、こういったストーリーは近日公開予定のショートムービーで明らかになります。“重力”の仕掛けなど、多彩なギミックも搭載しています。重力にも「新しい意味」を持たせています。今後の情報をお待ちください。

――「Angry Birds」のヒットによって、Rovio Entertainmentは大きく変わったのでしょうか。

Sonninen氏: 「Angry Birds」はiOS向けにリリースされ、爆発的なヒットとなりました。様々な機種に移植され、現在は7億ダウンロードを達成しました。「Angry Birds」は2009年末に発売されましたが、それから2年ちょっとで、社員が20名から250名に増えました。本社にいると毎週知らない顔の社員と出会いますね。

 本社は、12階建てと7階建てのビルが2つ繋がっている場所にあるのですが、最初は1フロアだけでしたが、今は4フロア、さらに繋がっている建物の1フロア分のオフィスとなっています。本社の壁は「Angry Birds」のグラフィックスが描かれていますし、会議室はトリの名前がついています。

 「Angry Birds」はpop cultureの1部にしたいと私達は思っているんです。後世に残るものにしたい。グッズやアニメーションなども作っています。私達もライセンスでグッズを作っていますが、偽物のグッズも販売されるようになっていると言うことも聞いています。私は海賊版が販売されていることも「キャラクターが愛されていること」の証の1つだと思っているんです。海賊版にも良いところはあり、製品のインスピレーションになるところです。より多くの人に「Angry Birds」を知ってもらいたいと思います。




■ パワーアップ、ソーシャル要素、オリジナルステージを追加した「Angry Birds Facebook」

パワーアップは課金アイテムだが、1日に1個無料で支給される
フレンドのスコアと対戦するソーシャル要素

――「Angry Birds Facebook」の大きな特徴として「パワーアップ」があります。これまでは入っていなかった要素ですが、これを入れた理由を教えてください。

Sonninen氏: 「Angry Birds」はまだ生まれて2年のコンテンツです。その間、「こう言ったことをやれば良かった」、「こういうアイディアもあるな」というように、思うことがありました。会社も大きくなりましたし、様々なアイディアが出てくる環境になってきました。毎回新しいゲームを提供するにあたり、「新しいものをファンに提供したい」と考えています。Facebookゲームの場合はパワーアップやソーシャルな機能でした。

――パワーアップ要素ですが、どのようなものがあるでしょうか。

Sonninen氏: 開発では様々な意見が出ましたし、直接の開発チーム以外からも積極的に意見がもらえるようにしています。時には休憩中に、全く別の部署の人が「こういうことを思いついたんだけど」といって、話してくることもありました。

 パワーアップ要素としては、現在4つですが、その中の「BIRDQUAKE」は後もう少しでこれが倒れるのに、というときにスマートフォンを揺らしてしまう。この気持ちがアイテム開発のインスピレーションの1つになりましたね。他にも「SUPER SEED」でトリが大きくなるといった、ユニークなパワーアップが用意されています。

 今後も頻繁にアップデートを行なっていきます。ちなみに2月28日には、「Angry Birds Facebook」において15のステージを追加しています。これはこれまでの「Angry Birds」にはなかったステージでFacebook版オリジナルです。Facebook版オリジナルステージはこれで30面になりました。

 パワーアップは好評ですね。Facebookの「Angry Birds Facebook」コミュニティやTwitterで高評価が多く、手応えを感じています。

――ソーシャル要素は、友人と競える要素が熱いですね。Sonninenさんもハマっているとか。

Sonninen氏: 開発中から、同僚とバトルを繰り広げていました(笑)。点数を上げるために夢中になりましたね。「Angry Birds Facebook」でも多くの人達が盛り上がっているのを感じています。

――「Angry Birds Facebook」の今後のアップデートの予定はどうなっていますか。

Sonninen氏: 詳細はまだ話せませんが、新ステージは今後もどんどん追加されていきます。また、「Angry Birds Facebook」では、「Avatar」という項目がまだ開かれていません。これは、スコア表示などで出てくるトリ達をカスタマイズできるといった要素になっていきます。近日ディテールをあきらかにできると思います。

――「Angry Birds Facebook」の人気はどうでしょうか、爆発的なヒットとなっていますか?

Sonninen氏: 「ブーム」という形で終わらせたくないんです。もちろん手応えを確かに感じる人気を得ていますが、今後のアップデートで、さらに増やしていきたい。意欲的に新要素を加えていき、さらに多くのユーザーを獲得していきたいと思っています。新コンテンツには、期待していただきたいですね。


【Angry Birds Facebook】
左はパチンコを強化、中央は弾道を表示するパワーアップ。右は、Facebook版オリジナルステージだ




■ 「Angry Birds Seasons」に、3月7日より日本の春をモチーフとしたエピソード「CHERRY BLOSSOM」が登場

Sonninen氏は、「CHERRY BLOSSOM」のブレインストーミングにも参加していたという
日本の春をモチーフとした「CHERRY BLOSSOM」

――では次に、日本の要素を取り入れるという、「CHERRY BLOSSOM」についてお聞きしたいです。

Sonninen氏: 「CHERRY BLOSSOM」は、「Angry Birds Seasons」のアップデートで追加されるステージです。「Angry Birds Seasons」はこれまで、世界の様々な行事や風景をモチーフとしたステージを作っています。

 最初は「ハロウィン」や、「クリスマス」というものでしたが、日本ではあまりメジャーではない「聖パトリックの祝日」や、中国の「月餅祭り」なども追加されました。「CHERRY BLOSSOM」は“日本の春”をモチーフとしたステージ集です。エピソードとして3月7日に実装します。日本では、3月8日になるかもしれません。

――Sonninenさんは日本代表として「CHERRY BLOSSOM」ではかなり助言などしたのではないですか?

Sonninen氏: 私に限らず、多くの人が「CHERRY BLOSSOM」で様々な意見を出しています。私はあくまでその中の1人というところです。ブレインストーミングに参加しましたね。ただ、「CHERRY BLOSSOM」を作ったのは、日本人ではありません。ですので、「外国からの日本への解釈」として、見ていただければと思います。

――Sonninenさんは今後、日本代表として、「Angry Birds」をはじめとしたRovio Entertainmentの製品を、どう日本で展開していきますか?

Sonninen氏: 「Angry Birds」は世界で展開していますが、地元のパートナー会社と連携しても様々な企画を実施しています。日本の場合も、現在、パートナー会社を募集しています。現在既にいくつかの準備をしています。3月中に、いくつかをお知らせできると思います。(3月8日付でフジテレビジョンから日本国内におけるパートナーシップを締結したとの発表があった)

 “夢”としては、「Angry Birds」を、日本のpop cultureの1つにしたいです。色々な方法を考えているところです。自分たちで仕掛けているもの、パートナー企業と進めているものもあります。Rovio Entertainmentは、もともとはRovio mobileという会社でした。Entertainmentを名乗るようにしたのは、コンテンツ制作にとどまらない、幅広いエンターテイメントを提供するためです。他の国では、既にアニメ作品や、ぬいぐるみなどのグッズも販売していますし、日本でも色々やっていきたいと思っています。

――最後に日本のユーザーへのメッセージをお願いします。

Sonninen氏: これまで「Angry Birds」を支えてくださってありがとうございます。これからも日本の皆様のために、新しくて面白い体験をしてもらうために、コンテンツを提供し、色々なことをやっていきたいと思います。よろしくお願いします。


【Angry Birds Seasons】
世界の様々な景色や行事を盛り込んでいる

【CHERRY BLOSSOM】

3月7日より「Angry Birds Seasons」に追加されたステージ集。柔らかい色合いの桜が、春の雰囲気を出している。ブーメランのように飛ぶトリが出たり、高く積み上がったステージ構成など多少難易度は高めだ。海苔巻きやお椀、傘など日本要素のオブジェクトにも注目


2012 Rovio Entertainment Ltd. Angry Birds. Privacy Policy. EULA

(2012年 3月 9日)

[Reported by 勝田哲也]