EA、PS3/Xbox 360「シャドウ オブ ザ ダムド」インタビュー&プレビュー
闇を払い、拳と銃で仕留める爽快アクション! リップシンクまでこだわった日本語版には要注目


6月21日収録




 エレクトロニック・アーツ株式会社は6月21日、東京・WAREHOUSEにて、“「シャドウ オブ ザ ダムド」ジャパンプレミア”を開催した。発表会終了後に、エグゼクティブディレクターの須田剛一氏、クリエイティブプロデューサーの三上真司氏、サウンドディレクターの山岡晃氏にインタビューを行なう機会があったのでお届けしたい。インタビューは今回で2度目となるが、今回は改めて日本版と海外版の違いや、表現まわりの問題などなど気になる点を質問をしてみた。

 また、イベント会場では、今回発表されたばかりのプレイステーション 3/Xbox 360「シャドウ オブ ザ ダムド」日本語版を試遊することができた。ゲームそのものの概要については、GDC期間中に実施されたEA Partners Showcaseで初出展された試遊台によるプレビュー記事ですでにお伝えしているが、本稿では試遊により明らかになったゲームシステム、感触などをレポートしたい。



■ 日本人が、日本人に、そして世界の人々に向けて作ったゲーム

エグゼクティブディレクターを務めた株式会社グラスホッパー・マニファクチュアCEO/ゲームデザイナーの須田剛一氏
クリエイティブプロデューサーの三上真司氏
サウンドディレクターを務めたグラスホッパー・マニファクチュアCCOの山岡晃氏

――EAからゲームを出す、というところで、海外のパブリッシャーと、日本のパブリッシャーで、1番違ったと感じたところはどこでしょうか。

須田剛一氏: 物を作る、パイプラインの合理化の部分です。ここが圧倒的です。そして報酬の提示という部分でもかなりわかりやすかった。成功すればどのくらいなのか、というところの提示が明確でしたね。生臭い話ですが(笑)。良い物を作ればいい、というところでの目標になりました。取り決めも非常に多かったですが、どう応えてくれるかと言うところでわかりやすかったですね。

 こちらが出すものに対しての反応もわかりやすかったです。EAはアメリカのメーカーですし、大きい会社なので、考え方もマッチョなんですよ。感情を強く出す人達でした。機嫌が悪いときはほんとうに悪いですし、こちらも感情をぶつけられる。最初の1年はお互いを尊重し“お見合い”なところもありましたが、2年目からはガチガチやっていきましたね。「何を考えているんだろう」と戸惑うことはありませんでした。

――これからもどんどん海外とのパートナーを組んでいきたいと思われますか。

須田氏: 私達は日本のパブリッシャーとも仕事していますし、仕事を続けていく内に、国内、海外のボーダーはなくなっていきました。僕たちの企画に「面白い」と興味を持ってもらえるのがハッピーで、日本でも、アメリカでも、オーストラリアでも……もちろん言葉の壁はありますが、もっと英語がしゃべれれば、よりフラットな関係が作れるでしょうけど、正直、日本だから、海外だから、という意識はあまりないんですね。

 私達の作品を面白いと思ってくれる方は、日本中にも、世界中にもいますので、それだけのことです。これからも、EAや他の国内・海外のメーカーとやりとりをしていくと思いますが、作品単位で面白いゲームを作っていきたいと思っています。

三上真司氏: グラスホッパーさんは日本のデベロッパーとして、珍しく独自性を持っているメーカーさんだと思いますね。日本国内だけでは独自性を持っているところはありますが、海外でも評価されるデベロッパーは少ない。グラスホッパーさんの作品は、コアなところから、もっと広い層へ浸透してきている。「シャドウ オブ ザ ダムド」でその認知はさらに広がると思っています。

――次に、ゲームに関してお聞きします。ゲーム性は作っていきながら変わった。最初は殴るゲームだったのがTPSになったとのことですが、これは市場を意識するパブリッシャー側の意向も大きかったのでしょうか。

三上氏: そうではなく、求めるゲーム性の中で変わっていきました。FPSにしなかったのは、須田さんのデザインやキャラクター性がスタイリッシュで良いじゃないですか。キャラクターを見せるという意味でTPSで、現在の手法が最終的にはマスだったなと。それ以外の細かいところは、僕は忘れちゃったかな(笑)。

須田氏: 電話で三上さんとはほんとに話し合いましたね。月に2回はお会いして話すのですが、それ以外でも電話で話し合いました。電話ミーティングは1時間以上の長いものをやってましたね。とても細かいところまで話し合いました。

――プレイしてみて、特にスペシャルキルがかっこよく楽しかったです。多彩なパターンがあるようでしたが、どのくらいあるのでしょうか。

須田氏: ストンピングや、ぼこすかに殴るものなど、全部で10種類くらいですね。日本人は格闘的な描写が好きですね。普段銃を持ってないですから、実感としてはやはり格闘を好むところはあると思います。

――キャラクター描写としては、常にガルシアとジョンソンが掛け合いをしているところが面白かったです。映画などの「相棒もの」の雰囲気がありますね。

須田氏: ロードムービー的な雰囲気が出したかった。あそこまでしゃべるとは僕自身考えていませんでしたが……。ただのホラーではなく、楽しめる、エンジョイできるホラーになったと思います。「相棒もの」に関しては、TVシリーズの「相棒」は大ファンですし、アメリカンニューシネマの「相棒」も大好きです。

――キャラクターという部分では、日本語版ならではのキャストというところで、声優ではなく、俳優にこだわったところは、なぜなのでしょうか。

山岡晃氏: キャラクターの特徴づけをしたかった。ただ翻訳したのではない、日本語がのっかているだけではない、キャラクターをきちんと演じてくれる人、というところで、映画俳優を起用しました。我々は映画大好きなので、そこで「この人だ」と考えついたのは、映画俳優でしたね。交渉は、直接僕らグラスホッパーでやりました。

 キャラクターの口の動きに合わせて台詞を言う“リップシンク”もこだわって、台詞回しも工夫し、俳優さん達の合わせるうまさも感心しました。収録も洋画の吹き替えをやっているチームにお願いしています。徹底的にやりましたね。

――日本語版というところで表現に規制が入るのではないか、というところがありますが、英語版との違いがありますか。

山岡氏: お酒がダメでしたね。ガルシアが飲んでいる、体力回復の飲み物は日本語版では「スープ」なんです。酒瓶に入ってる様に見えるけど、飲むとくらっとするけど、スープなんです。ジョンソンも「あそこにスープがあるよ」といいます。

三上氏: あれだけくらっとするから、ものすごくうまいか、ものすごくまずいかのどっちかだよね(笑)。

――他にはグロテスクなシーンなどでの違いがあるのでしょうか。個人的には、欧米の開発者のグロテスクなシーンへのこだわりは、共感しきれないところもありますが、グロテスク表現へのこだわりという部分ではどう思われますか。

須田氏: お国柄に合った表現になっているところもあります。例えば世界で規制が日本だけならば、我々も問題にしますが、オーストラリアはさらに厳しいし、ドイツはもっと厳しい。国ごとの基準に合わせるのはプロとしてしなくてはいけないと思っています。もちろん表現という部分で戦わなくてはいけませんが、価値観は国によって変わる。例えば、アメリカはエロチックな表現は難しいですが、ヨーロッパは緩い。流通やエンターテイメントに対しての考え方が違う。それに対して、僕らはしっかり合わせていくことを考えています。

三上氏: 僕は、海外では許されている範囲に比べて、日本で許されている範囲は狭いと感じています。海外の自由に比べて、日本は狭い。これだけインターネットが普及している時代に、「何を今更いうとんねん」という気持ちを持っています。

 CEROレーティングは、本来、高い年齢層の人なら受け止められる、表現の自由を認められる為の指標だったはずなのに、現在は逆になってる、厳しくなっていると感じます。レーティングが高いのに、表現も厳しいという、前よりひどい状況になっている。

 もちろんみんなが問題視しなくてはいけない部分はあります。でも、僕らが子供の時はドリフターズがあったし、今の子供ではクレヨンしんちゃんがあって、親が見せたくないものが、子供に1番受けてる。そして、クレヨンしんちゃんを見た子が、みんな犯罪者になるわけではない。そこら辺は、もっとちゃんとデータを取るべきだと思う。原発もそうですが、何かがあると大騒ぎするネガティブ体質は、悪いとまではいいませんが、ポジティブとバランス良くしていかないと、日本はこのままでは、世界の中でも閉鎖的な、置いていかれる危険性があると感じています。

 良いところは良い、悪いところは悪いとバランスが必要ですが、やっぱり「けしからんけしからん主義」というのは、ゲームに限らずあんまりよろしくない。そこまで規制したいのならば、中国のようにネットを制限すべきで、それができないならば、やはり考えて行かなくてはいけない。ただ、最終的には、合わせなくてはいけない現実はあります。販売するためには現時点のルールに従わなくてはいけないところも、確かにあります。

――日本語版を楽しみにしているユーザーへメッセージを。

須田氏: 9月22日を期待して待っていてください。日本語版でしか楽しめない、日本語版オリジナルの部分もたくさんあります。我々日本人が作って、日本人、そして世界の人々に向けて作ったゲームです。ぜひ日本語版に期待してください。応援してください。

三上氏: 今回は単純な吹き替えでなく、豪華な俳優達による、すごいコメディタッチの良い意味での+αになりました。日本の方に受け入れられる感じになっています。日本語版を是非買ってください。予約してください。

山岡氏: 日本語版は、本当に楽しいと思いますよ。ただの吹き替えではありません。例え英語版を買った方でも、日本語版はやる価値があります。両方楽しめると思います。期待してください。




■ 光と相棒を駆使し、地獄の闇を切り開け。狙うは爽快スペシャルキル

会場では発売に先がけて日本語版がプレイできた
ライトショットで、闇をはがす。はがした敵に銃弾をたたき込む
ライトショットで、ひるませて近付き、スペシャルキルを決める

 今回触ることができたのは、試遊のための特別バージョンで、オープニングなどはなく、ガルシアが地獄にいるシーンからスタートする。本来は相棒のドクロのジョンソンとのやりとりで基本ルールを覚えていくのだが、今回はスタッフにゲームの基本ルールを教えてもらった。

 ガルシアは何も操作してないときはドクロのジョンソンをたいまつ状にして持っている。たいまつは近接攻撃ボタンで振り回すことができ、さらにボタン押しっぱなしで、たいまつをバットの様に構え、一定時間のチャージでハンマー投げのようにたいまつを体ごと回転させて攻撃できる。TPSやFPSの様にPS3ならL2ボタン、Xbox 360ならLトリガーでジョンソンを銃に変形させて構える。

 銃の時はレーザーポインターのように光が延び着弾地点が確認できるようになっている。ジョンソンは拳銃型だけでなく、ショットガン型、マシンガン型にも変形でき、十字キーで変更できる。左スティックがキャラクター移動、右スティックが照準だ。面白いのは、銃やたいまつの攻撃以外に、ライトショットという光の弾を撃つことができることだ。

 ライトショットは直接の攻撃力はないが、闇の中で燭台を撃って光を灯したり、闇に包まれた敵から闇をはがすことができる。さらに闇がはがれた敵にライトショットを撃つと敵がひるむので、ここで近付くと、タフな敵も1発で倒せる「スペシャルキル」ができる。スペシャルキルはたいまつで敵の頭をたたきつぶしたり、連続してパンチを与えたり過激で多彩だ。慣れてくるとこのスペシャルキルが楽しくなって、積極的に狙いたくなる。

 「シャドウ オブ ザ ダムド」の闇はまるで動く壁のようにガルシアに迫り、そして包み込む。逃れるには他の地域に行くか、山羊の頭をした燭台にライトショットを撃つしかない。闇の中ではガルシアは体力を失ってしまうが、活路を見出すためにはあえて闇に飛びこまなくてはならない場合もある。

 本作は探索要素も強い。隠しアイテムなどもあり、つい様々な場所を探してしまう。子供の顔をした鍵がかかってる扉は、求めるものを与えれば開くが、与える際口に物をむりやり突っ込んでいる感じでインパクトが強い。敵を倒して得られる「ダイヤ」は武器のアップグレードに使える。また、通貨となるダイヤもあるという。

 中ボス戦も体験することができた。中ボスは片手が回転ノコギリになっており、これを軽々と振り回してガルシアに迫ってくる。ライトショットを撃つと顔を押さえ、背中を向けるのだが、背中には巨大なルビーが埋め込まれ、これを撃つとダメージを与えられる。ライトショットの効果が短く、敵を倒すのは骨が折れた。このとき気になったのが、オートエイミングがほとんど無いことだ。昨今のゲームだと、照準を構え直すと自動的に近くの敵をポイントする機能があるが、本作はこれがなく、敵を撃つのが多少難しく感じた。

 とはいえ、弱点を露出して撃つという感じが、いかにも日本のゲームっぽい駆け引きで楽しく、そのほかのボス戦も期待できると感じた。ガルシアとジョンソンは常に会話をしておりその軽妙なやりとりも面白かった。今回はチュートリアル的な戦闘、闇の中を駆け抜ける要素、ボス戦、パズル要素が強い立体的なフィールドと、様々な要素がつまっていると感じた。

 今回の試遊バージョンのラストは、恋人ポーラとの遭遇だが、ポーラは生首というショッキングな姿で現われ、思わず持ち上げたガルシアの手の中で奇怪な笑い声を上げる。後ろから艶めかしい体が首を受け取り、そのまま首をはめ込む。このポーラは偽物だ。偽ポーラはガルシアににじり寄っていくが、次の瞬間腹が割け、そこから血塗られた悪魔がでてくる。悪魔にガルシアが銃を向けたところで終了となった。本物のポーラはどこにいるのか、ガルシアは彼女を助け出せるのか、グッとストーリーに引き込まれた。

 今回は結局このラストまで2回プレイすることができたが、コツをつかんだ2回目はかなり楽しかった。スペシャルキルが特に楽しく、積極的に狙った。もっとうまく立ち回りたくなるし、先のステージが気になる。今回触ったことで、もっともっとプレイしたくなり、発売日が待ち遠しくなった。


【スクリーンショット】
左はたいまつの溜め攻撃。中央は迫ってくる闇。ゼリーのような不気味で濃密な闇だ。右はライトショットでひるませるシーン
闇の中ではガルシアは体力を失う。山羊の燭台に火を灯して闇に対抗する。右は子供の顔の門。アイテムを持ってくると開く
立ちはだかる中ボス。ライトショットを撃つと、背中の弱点をむき出しに
奇怪な敵が次々と現われる
現われる偽ポーラ。中央の悪魔がその正体だ

(c) 2011 GRASSHOPPER MANUFACTURE INC. Shadows of the Damned is a trademark of GRASSHOPPER MANUFACTURE INC. EA and the EA logo are trademarks of Electronic Arts Inc. All other trademarks are the property of their respective owners.