インタビュー
【E3 2014】「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏E3 2014インタビュー
みんなが気にしているゲームバランス、ジョブ調整について
(2014/6/23 00:00)
みんなが気にしているゲームバランス、ジョブ調整について
―― 今回「極ラムウ」の実機映像が公開されました。極蛮神は毎回絶妙なバランスで出してきますが、“タイタンショック”があったようにユーザーの皆さんはどのくらいの、例えば今「侵攻編」をプレイしている人が今の自分の戦力を試すような感じでラムウにいくのか、それともリヴァイアサンが終わって、大迷宮バハムート侵攻編もあるけれど、ちょっと新しい極蛮神きたからいってみようかなみたいな感じで気軽に挑戦できる難易度になっているのか気になるのですが。
吉田氏: 今回パッチ2.2の極リヴァイアサン、極モグル・モグXII世と同じように、最初はコンテンツファインダーが使えない状態で行くつもりです。かといって「侵攻編」の2、3層をクリアしている人じゃないと太刀打ちできないかというと全然そんなことはないと思います。極リヴァイアサン、極モグル・モグXII世が終わって武器も取れたし、リボンも取れたのでそろそろ「侵攻編」に行って1層で爆発してみたりとかという人がたぶんちょうどいいくらいだと思います。
侵攻編4層をもう突破しちゃってる人は、どうぞ「大迷宮バハムート零式:侵攻編」の方に行っていただけたらなと。E3直前に「零式でいくけど、良いですよね?」と各所に確認し、決まりたてホヤホヤです(笑)。開発も「難しすぎてこれはないわ!」といいながら、侵攻編を調整して今の形でリリースしたのですが、「零式」はその「難しすぎた」方なので、僕たちもクリア可能なのかどうか、実地検証できないレベルです。ただ、少なくとも「侵攻編」をクリアした方は、4層の基礎タクティクスはご存じなわけで、それがあっての上でどう解決の糸口を皆さんが見つけていくのか、僕らも楽しみに見せていただこうと思います。その反響やフィードバックによって、今後も同じような方針でいくのか、多数の方が挑戦するので、ちゃんとリワード作っていくべきなのか、しっかり考えていこうと思っています。今回クリスタルタワーやフロントラインというみんなでワイワイできるコンテンツがメインですが、ガチな方はぜひ零式のほうもよろしくお願いします。ただ、本当に結構めちゃくちゃな状態でリリースになりそうなので、お手柔らかにお願いします(苦笑)。
――またBG(Order of the Blue Gartr)とかは挑戦するのでしょうけど、日本のチームに対して鼓舞をしていただきたいなと。
吉田氏: でも侵攻編、惜しかったのですよ。日本のFCも相当いい勝負されていると思います。あと一歩という感じでしたし。BGの人たちは、ヨーロッパのスタッフも入っているグローバルチームです。ぜひ日本のゲーマーの指先だったりチームワークだったりを見せつけてもらえたらなと思います。
―― 答えづらいかもしれませんが、2.3で黒魔導士のジョブ調整があるという発表がありました。その時にユーザーの一部に誤解があって、ジョブ間のバランスを見て調整しますというコメントが曲解されて、黒魔道士が修正されるがために俺らもその煽りを受けるのではないかという声を僕は結構見かけていて、誤解を解くために他のジョブに影響があるのかどうかを教えてください。
吉田氏: 黒魔道士の調整が、他のジョブに影響を及ぼすことはないです。日本語は難しいですね……。おさらいすると、黒はウォールもマバリアもあって、攻撃だけでなく、防御にも秀でています。例えばツインタニアのダイブボム2回目なんて、「はいはい、ウォールウォール」という感じでプレイもできる。鋼の意思を使うナイト以外、黒魔道士はかなり恵まれていますし、“ブレフロ士”と呼ばれているように範囲攻撃も得意ですよね。
ただ今回、瞬間的に動くことが多いシチュエーションでは、キャスト時間があるため黒魔道士は単体でのDPSが上げにくい状態です。もともと黒魔道士は単体DPSが強く、範囲もそこそこ使えるという感じで作っています。攻守全体的にバランスが良い、でも突出し難い、というイメージです。コンボの位置取りや近づかなければ攻撃できないという制限を持つ近接攻撃クラスの方が、常に攻撃できる状況であれば単体DPSは当然高いです。単純にこのDPSに追いつく調整をしてしまうと、全てのシチュエーションにおいて他のジョブの立つ瀬がなくなってしまうわけです。ですので、その点も踏まえながらも、「黒魔道士と他のジョブのバランスを見て、他のジョブに比べて下がり過ぎな点などは、キチンと見極めて調整します」というお話をしたつもりです。
その際にもう1つお話したことがあります。他のジョブで使われにくくなっているアビリティやアクションがあるので、それは少しずつ使いやすいように調整をかけていきます、というものでした。もしかすると、この「黒魔道士の調整」と「他ジョブの使いにくいアクションの調整」が、ひとつになってしまって、そういう誤解が生まれたのかも知れないですね。改めてですが、この調整はそれぞれ別になっていますので、お間違えないようにお願いしたいです。
―― 現状だとレベルが50で基礎的なステータスが頭打ちになっている状態ですが、「FFXI」のメリットポイントや○○ポイントみたいなものは今後実装されますか?
吉田氏: 今のところそういった企画は出ていないです。まず次にやるのはレベルキャップの開放です。レベルキャップの開放が限界に達したとき、もしくはレベルとは別の育成企画が出た際に、そういったシステムは考えるべきものだと思います。「FFXI」も設計が非常にタイトなゲームなので、レベル上限をパラメータの数値的になかなか上げられない、という問題がありました。そこで生み出されたのがメリポだったりしますので、苦肉の策が非常に良い方に出た例だと思います。
「新生FFXIV」はまだまだレベルキャップを上げられる余地があるので、まずは普通にレベルキャップを上げていくと思います。その中で新しい成長システムとして「新生FFXIV」オリジナルな成長要素が入らないというわけではないですが、それはまた時期がきたらお話させていただきます。
―― いまレベル50になったら行くワンダラーパレスやアムダプールでシパーヒ装備ですとか、レベル60辺りの装備がドロップしますよね。その後新しく追加されたIDでダークライト(DL)装備とかが出るようになっていますが、もともとDL装備ってアーティファクト(AF)から次の段階で装備するものでしたよね。それを考えた時に現状のダンジョンはAF装備ではきついと思うのです。いまレベル50になったときに、そこから先何を取りに行けばいいのかわからない。個人的にはその辺りのバランスがいま取れていないのではないかと感じるのですが。
吉田氏: そこはパッチ2.2をリリースする際に、僕がバトルチームと話をしたポイントです。「哲学を廃止するのは早いのではないか?」という話で、レベル50になった時に「どうすればいいのかわからないところが出てくるんじゃない?」という話をしていて。最終的にはパッチ2.2でいれたエキスパートダンジョン3つの難易度に合わせて、その下の難易度になるワンダラーパレス、アムダプールも、さらにハイレベルカテゴリのシリウスとかも全調整をかけて難易度を下げました。これらのダンジョンをAF装備で何度も確認し、DPS的にも問題がないレベルに調整して今の状態になっています。
ですから普通のRPGのようにAF装備をとったら、レベル50ダンジョンへ行ってアイテムレベル60の装備を取る、60の装備が揃ったらアイテムレベル70のダークライトを揃える。更にその上を目指してもらってという、RPG本来の流れになっているのではないかと話し、哲学交換ではなく、今のドロップに落ち着いています。あとは哲学素材を使ったクラフト装備も安くなっているだろうから、それも使えるという辺りも想定していました。もちろん、AF装備でいきなりエキスパートに行こうとすると、たぶんキツくなります。普通にアイテムレベル55をドロップするダンジョンからスタートしていただければスムーズに行けると思います。
―― HPがみんな4,000、5,000ある中で1人3,000代で、ちょっと行きにくいというか気持ち的にまだ早いかなと思えてしまうのではないかと。
吉田氏: うーん、すごいレベルの人たちと一緒にいったら、「この人達、強そうだなあ」と思うのは普通だと思いますし……その差がないのもおかしいと思いますし、難しい所なのですよね。一気にダークライト装備でILを70にしてしまうと、IL55やIL60の装備はいらないことになる。でも、今のお話だと難易度下げても解決しないですよね。他の人が強くて自分が強くないから、ダンジョンに行きにくいということなので……。
―― 今後、パッチが進むにつれて今度は神話装備が落ちるようになるのですか?
吉田氏: ダンジョンでドロップさせるかどうかはわからないです。今回1人、パッチ2.3のNPCが追加されていて、神話装備がなぜAFのレプリカっぽいのかがわかるようになります。単なる装備ではなく、AFのレプリカでもあるので、ダンジョンでボロボロドロップする、というのはあまりイメージしていないのです。
パッチ2.3のモブハントのポイントで交換する装備の中で神話装備が入っているので、手に入れやすくはなってきます。アラガントームストーン神話以外の入手手段が生まれるので今の「神話装備」という呼び方がしっくりこなくなりますね(笑)。神話はアートマの本にまわしたり、素材に回したり、という方もいると思いますので、引き続きアイテムの価値は色々変わっていきます。
―― 今極蛮神で「超える力」が実装されて、バハムートの邂逅編の方は非常にいいバランスになって行きやすくなったと思うのですが、逆に極蛮神だと超える力が付くと難しくなるという現象がありますよね。
吉田氏: 極タイタンがそうですね。
―― 「超える力」がついたせいで、大地の怒りとボムが一緒にきたりします。改めて聞く形になると思うのですが、そうしたメンバーの力が単純にパワーアップするような形ではない緩和は何か考えていますか?
吉田氏: 先ほどお話ししたとおり、特にタイタンに関しては考えています。あれはHPの量によってフェーズが変わるギミックになっているので、DPSの変動で当初想定していたフェーズの変わり目とズレてしまい、逆に難しくなるシチュエーションも発生してしまいました。
―― 手加減しないとキツくなりますね。
吉田氏: 手加減は上手い人ならできるのですが。そんな人たちは超える力がなくてもクリアしますので、全体的なバランスの見直しが必要だと考えています。
―― サブタンクが落ちるともうその先は。
吉田氏: 詰んでしまいますね。そこは我々も問題としては認識しているので、さすがにオートレビテトがかかって、溶岩に落ちても必ず帰ってくる……とまでは言わないですが、調整しようという話は出ています。まだ具体的にどうこうとお話はできないですが、やると決めたらさっとやってしまうと思います。かなり前向きに検討していることは確かですので、お待ちいただけると幸いです。
―― 以前、「初心者の館」を実装するという話がありました。コンボが練習できる場所とかそういう認識で合っているのでしょうか?
吉田氏: 最近の格闘ゲームにトレーニングモードがあり、コマンドの練習をしようとかありますよね。たとえば、初心者の館に行き「モンクの練習がしたい」とNPCに告げます。そうすると、専用MAPに移動したあとにお題が表示され、ダミーモンスターなども使い、それが達成できたらクリア!みたいなイメージです。
まずはコンボを2段つないでもらって、成功したら「達成!」と出て次の問題へ。一通りやるとそのジョブの基礎がわかる。最後には「この1分間の間に疾風迅雷を切らさずにひたすらコンボを出してこのDPSを超えろ」みたいな問題があって、結果がちゃんとDPSとして表示されて、DPSを出すための練習ができる。
こうやってモンクを例に出すと、まさに格闘ゲームのトレーニングモードに聞こえますが、タンクの場合なら「まずフラッシュを炊いて3体の敵視ゲージを全部赤にしましょう」みたいなものになります。段階が進むと、MAP奥で戦っているヒーラーがモンスターに襲われた状態で始まる……。「あのモンスターの敵視をこちらに向けて見ましょう」というように「挑発」の練習をして貰う、とか。トレーニング内容をジョブ毎に用意することになります。
黒魔道士では、アストラルの回し方を勉強したり……、そういうことをやることで、初めて新しいジョブをやったり、初めてMMORPGをプレイする方が、より自分のジョブの特性を遊びながら理解できる機会にしたいのです。敵視だったり、タンクの概念を覚えてもらうために位置づけでもあります。ただ、どうしても皆さん遊ぶコンテンツがメインなので、仕様はじりじり切っているものの、ついコンテンツ実装を優先してしまって、なかなか進まない……という状況です(苦笑)。
―― 以前からユーザーからの要望は高かったのですか?
吉田氏: いや、プレーヤーの皆さんの要望は「DPSを測る場所が欲しい」という意見であって、「初心者の館」というキーワードは僕が出したものです。初心者の館というものでトレーニングしてDPS計測するとか、DPS表示できるバトル用木人を立てるというお話をライブ放送でしたところ、「いいじゃんそれ」という反応をいただいたのです。何とかしたいと思っているポイントで、1人でも多くMMORPGに定着してもらうためには、あった方がいいだろうと思っている部分ですね。