インタビュー

「LoL」SHG Evi選手、PCS初戦直前インタビュー! 「PCSプレイオフで勝つために必要なものは総合力」

【PCS Playoffs】

3月11日より開催中

 2024年から、PC用MOBA「リーグ・オブ・レジェンド」(以下LoL)のプロリーグの大会形式に大幅な変更が入った。これまでは日本のプロリーグ「LJL」の優勝チームが世界大会「MSI」の出場権を得ていたが、今年から上位3チームが「Pacific Championship Series(以下PCS)」のプレイオフに進出し、PCS地域およびLCO地域のチームと共に「MSI」の出場権をかけて戦うこととなった。

 今シーズンLJLから参加しているのは3位の「V3 Esports」(以下V3)、2位の「DetonatioN FocusMe」(以下DFM)、そして1位の「Fukuoka SoftBank HAWKS gaming」(以下SHG)である。残念ながらV3とDFMはすでに敗退してしまったが、LJL第1シードのSHGの初戦はまだ始まっていない。

 筆者は今回、台湾での現地取材を通じて特別にSHGのTopレーナー・Evi選手にお話を伺うことができたので、早速インタビューの模様をお伝えしていきたい。

「Fukuoka SoftBank HAWKS gaming」Topレーナー・Evi選手

僕が考えていたこともSHGが僕を入れたことも正しかった

――本日は、練習前の貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます。早速ですが、今シーズンからSHGに加入して古巣DFMを倒してのLJL優勝というのはEvi選手にとってどんな意味を持つのか、まずはお聞きしたいです。

Evi選手:難しいけどいい質問ですね。個人的な面と責任という面での2つの意味で、すごく大きかったと思います。僕個人としては優勝できたっていうのはすごく嬉しいし、僕が考えていたことは正しかったということを自分のなかで証明できたのが良かったな、と。持論が優勝という結果によってある程度は保証されたことが、個人的に嬉しかったです。

 責任という意味では、僕をチームに誘ってくれた人に対してひと仕事できたのかなっていう風にも感じました。

――チームを初優勝に導いたというのは、本当に大きな功績ですよね。

Evi選手:SHGは去年も準優勝はしているわけじゃないですか。僕がいなくても準優勝はできていたので、チーム側が求めるものって優勝しかないですよね。僕を入れてまた準優勝だったら入れた意味がないというか。報酬ももらっているわけだし、そこに対する責任は果たせたかなと思います。よりちょっと強く言うなら「僕を入れたあなたの目は正しかったですよ」っていうのが証明できたかな、と。かなり気分がいいですね(笑)。

――実際Evi選手は本当に、日本のLoL界のスーパースターだなって思いますよ。PCSのSNSでも「メジャーリージョンで経験を積んだ初の日本人」と紹介されていましたけど、LECで1年間経験したことで今回の優勝に何か影響ってありましたか。

Evi選手:実はPCSの公式インタビュー撮影でも同じ質問をされたんですけど、答えはひとつじゃないのであちらで言ってないことをお話しすると、自分の弱みを明確に知れたことですね。「LoL」には強くするサイドと弱くするサイドがあって、例えばTopでアクションをしているときはBotは控え目にするとか、プロなら誰でも知っている常識的な概念なんですけど、そういうウィークサイドっていうのを本当の意味で理解できていなかったなと思いました。正直、理解する必要がなかったんです。

――と、言うと?

Evi選手:LJL内では僕が一番上手かったから、「僕のところでプレイしたら勝つじゃん」っていう意識があったんです。でもLECに行ったら、全然僕も戦えたとは思っていますけど自分よりも上手い選手もいたなって思うし。なおかつ、そのなかでコミュニケーションも満足に取れない。日本にいたときは最適解だった「僕が強いサイドでプレイする」ということが、LECでは最適解じゃなくて。でも今までずっとそれでやってきてたから、急に変えるのは難しかったし理解度も低かった。ただ、新しい環境ということで、初心に戻って俯瞰的にゲームを見る意識はできたのかなと思います。

――本当の意味でのウィークサイドを経験したことで理解できたっていう感じですかね。

Evi選手:そうですね。今回LJLでも僕、全然レーンをアグレッシブにやってないんですよね。それってアグレッシブにやる必要がないからなんですよ。他のキャリーが優秀なのもありますが、たぶんLEC行く前の僕だったら「なんで自分が下がらなきゃいけない? 勝つのに?」という感じだったんですけど、今はゲームに忠実にというか、不必要なリスクは取らないプレイングに変わりましたね。

【SHG】

PCSプレイオフでも「面白いピックの準備はある」

――では、「PCSプレイオフ」に先に参戦してすでに敗退してしまったV3とDFMのプレイングについて、Evi選手はどうご覧になりましたか。

Evi選手:DFMに関してはもうちょっとできた気がするな、とは思うんですけど。Bo5で5戦目まで行くということは接戦だったということなので、どっちに転んでもおかしくない試合ではあったと思っています。ただ、DFMは自分たちのスタイルが確立できなかったのかな、と。結構ちぐはぐというか、バランスがとれていなくて振れ幅が大きい印象がありましたね。V3に関しては正直TaNa選手にかなり頼っていた部分があるので、やっぱりそれだけじゃ厳しいですよね。Ace選手とBotレーンのキャリーが必要だと思います。

――今回、別途Yutapon選手とAce選手にお話をお伺いする機会があったのですが、ご本人たちの分析とほぼ同じなので驚きました。では次に、Evi選手が今回のPCSで注目しているチームや選手を教えていただけますか。

Evi選手:PSG TalonとCTBC Flying Oysterはやっぱり注目ですよね。去年も「Worlds」に両チームとも出ていますし、PCSを代表するチームと言ったらその2チームなので、その人たちと僕らがどれぐらい戦えるのか気になっています。

――LJLプレイオフではTopスモルダーが印象的でしたが、ズバリPCSプレイオフでも何か面白いピックを準備していますか。

Evi選手:それで言うとめっちゃありますよ。実はLJLで出したかったけど、VicaLコーチとB/Pを相談しながら「また今度でいっか」って言ってたらシーズンが終わってしまったものも結構あるので、出せる機会があるかはわからないですけど楽しみにしておいてください!

――以前インタビューで「LJLで優勝するためにはチームとしての練度が大事」と話していましたが、PCSプレイオフで勝ち上がるためにさらに必要なものは何かありますか。

Evi選手:同じようなことなんですけど、ちょっと言い方を変えるなら「総合力」ですよね。例えば僕はゲーミングハウスの清潔さっていうのもチームの強さに関わってくると思うし、食事の内容も関わってくると思うんです。もちろん優先順位はありますけど、あらゆるものが関わってそれが結果に繋がると思っているので。だから実力も雰囲気も環境も大事だし、そこを突き詰めてどんどん良くしていきたいなっていう感じです。

――とても興味深いお話ですね。先日ちょうどチームの皆さんとお会いしましたけど、SHGはコーチも選手もサブ選手もスタッフの方も全員がワイワイやっている感じで雰囲気がすごく良いなって思いながら見ていたんですよ。

Evi選手:雰囲気が良いとお互いに何でも言い合えるし、フィードバック等でぶつかっても仲直りしやすかったり、意見を言いやすいからより改善されやすくなったりするんですよね。それで雰囲気が良いとモチベーションが上がる、モチベーションが上がると自分で練習するようになる、だからプレイも上手くなるんです。

日本チーム「最後の砦」SHGの初戦は3月24日18時から

――シーズン序盤のインタビューで「SHGに入ったのはVicaLコーチがいたことが大きい」と話していましたが、LJL優勝を経て、改めてEvi選手から見たVicaLコーチについてお聞きしたいです。

Evi選手:今回優勝できたのって、僕が入った割合よりVicaLコーチの割合の方が大きいんじゃないかなって思いますね。「LoL」に対する理解度が高いし、それを教える技術もしっかりある。正直、最初のほうはForest選手も日本に来たばかりで色々と上手くいかなかったんですけど、根気強く教えてステップアップしていったのでめちゃくちゃ素晴らしいコーチだと思います。ただ、ちょっと僕とは衝突がすごい多かったですね。

――それはちょっと大変そうですね。

Evi選手:最近はそれもだいぶ解消されてきましたけどね。僕ら選手にも自分の意見があるけどVicaLコーチにもプライドがあって自分の意見に自信を持っているので、意見がぶつかったときに解決が難しいことがありました。でも最近はお互いに大きな衝突になる前に上手く一歩引くとか、そういう雰囲気ができてきたと思います。

――いい関係になってきて良かったですね。ちなみにForest選手の話が出たので思い出したんですが、言葉の壁もあるはずなのにForest選手がMarble選手にすごく懐いているのを見て驚きました。いつもあんな感じなんですか。

Evi選手:同い年なんですよね、あの2人。それでノリが合うんじゃないですか。Marble選手って面白いんですよね、ちょっかいかけるとすぐ反応してくれるので。Forest選手もそれが好きで絡んでいってるんだと思います。

――Forest選手もチームになじめて良かったですね。それから先ほどの「総合力」のお話のなかに環境のこともあったと思うんですけど、台湾での生活はどうですか。

Evi選手:めっちゃ過ごしやすいですね。ホテルも快適だし、周りに日本食のお店も多くて日本と変わらない食生活ができているんです。特にコンビニに日本のものが多く売られていて、おにぎりとかも美味しいんで。おにぎりはここ数日でもう10個ぐらい食べたかも(笑)。

――快適に過ごせているようで良かったです。では最後に、PCSプレイオフの意気込みと応援してくれているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

Evi選手:日本チーム最後となってしまったわけですけれども、僕らは十二分に勝てると思っているので是非皆さん試合を見てください。そしてSHGの公式SNSのフォローも是非よろしくお願いします!

□SHG公式Xアカウント

 待望のSHGの初戦は、3月24日(日)日本時間18時から予定されている。対戦相手はPSG Talon。LJL最後の砦となったSHGを是非みんなで応援しよう!

□LoL Esports JPの公式YouTubeチャンネル