インタビュー
エアリスの運命も含めて盛り上がりは最高潮に! 発売直前「FINAL FANTASY VII REBIRTH」開発陣インタビュー
北瀬氏、浜口氏、野村氏が見どころを語る
2024年2月7日 09:00
- 【FINAL FANTASY VII REBIRTH】
- 2月29日 発売予定
- 価格:
- 9,878円(通常版)
- 15,800円(デラックスエディション)
- 49,800円(コレクターズエディション)
スクウェア・エニックスより、2月29日に発売されるRPG「FINAL FANTASY VII REBIRTH」(以下、FFVIIリバース)。今作は、2020年に発売された「FINAL FANTASY VII REMAKE」(以下、FF7リメイク)の続編であり、シリーズ3部作の2作目としてリリースされる作品である。
2023年9月に東京ゲームショウのタイミングでも開発メンバーであるスクウェア・エニックス 第一開発事業本部長の北瀬佳範氏と、クリエイティブ・ディレクターの野村哲也氏、ディレクターの浜口直樹氏にインタビューをしたが、今回は発売間近ということもあり直前に行なわれたプレビューに関する疑問点など「FFVIIリバース」に関するさらに詳しいお話をお伺いしてきた。
ちなみに野村氏は前作の「FF7リメイク」ではディレクターという立場であったが、「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」などシリーズ自体が拡大しているということもあり、IP全体を見る立場から今作ではクリエイティブ・ディレクターとしてクレジットされている。また、それに伴い浜口直樹氏がディレクターに就任している。
インタビューは2回に分けて行なっており、前半では北瀬氏と浜口氏、後半では野村氏にそれぞれお話をお伺いしている。いずれも興味深い内容となっているので、シリーズのファンはぜひとも読んでほしい。
SNSでの盛り上がりに加えて海外からの期待度も高い――北瀬佳範氏&浜口直樹氏インタビュー
――発売が近づいていくに連れて、新たな動画や情報が公開されていき、そのたびに驚かされるような要素が発表されてきました。ここまでのユーザーの反応や手応えはいかがでしょうか?
北瀬氏:ユーザーさんの手応えという意味では、まだそこまで伝わっていませんが、動画を出すたびにSNSで話題になったりXのトレンドに上がったりはするので、非常にありがたいなと思っています。
――ちなみに「FINAL FANTASY VII」(以下、FF7)自体は海外でも人気が高い作品ですが、そちらはいかがでしょうか?
北瀬氏:そうですね。昨年の2023年末に「パリ・ゲームズ・ウィーク」に行ったときに、ファンの方と触れあってきました。そちらでも皆さん熱狂的で、期待は高かったです。
――公式サイトではリバースを3部作のなかでも今作は「コア」だと述べられていますが、どんな思いで企画や開発が進められていったのでしょうか?
北瀬氏:3部作の2作目ではあるので、人によっては「前作を遊んでないとできないの?」とか、「3作目があるからストーリーはどうなっちゃうの?」といった疑問があると思います。映画などでは、3部作の2作目は名作になることが多いです。前作とセットになった「ツインパック」やダイジェストムービーなどで、改めてプレイできる機会や、簡単におさらいできる施策は用意していますので、2作目ということに対して心配されなくても大丈夫です。
ストーリーに関しても、原作をプレイしている方はご存じですが、エアリスの運命も含めて非常にドラマチックな展開で盛り上がります。そちらも含めて、期待できる作品として位置づけています。
――先日プレビュー版を遊ばせていただきましたが、新たに登場したカードゲームの「クイーンズ・ブラッド」が、なかなかヤバイ面白さでした。これだけやってるとそれだけで時間が過ぎてしまいそうでしたが、単発の作品としても楽しめそうな印象です。こちらは、どんなアイデアから生まれたゲームなのでしょうか?
浜口氏:ミニゲーム自体は「クイーンズ・ブラッド」以外にも、いっぱい力を入れて作っているものがあります。そういう意味では、このカードゲームだけが特別に頑張っているわけではありません。しかし、その中でも力を入れているミニゲームのひとつであることは確かです。
チャプター1は、前作のプレイ体験でストーリーを引っぱっていくものになっていますが、チャプター2でプレイアブルになった瞬間に、扉を開けたらミニゲームのチュートリアルが始まるのは、ある意味メッセージ性が込められています。
ここから1作目とは異なるゲーム体験が始まって、メインストーリーではない要素がいっぱい出てくるんだよという、期待感を問いかけるように引っかけてあります。
――なるほど! それでドアノブに引っかけて置いてあったんですね(笑)。ちなみに「クイーンズ・ブラッド」では、カードバウターに勝利するとランクアップしていきますが、何かメリットなどはあるのでしょうか?
浜口氏:「クイーンズ・ブラッド」のカードバウトにはストーリーがあって、進行していくとそのカードが作られた経緯にまつわるお話が展開されていきます。街にいるカードバウターだけではなく、特別なネームドのシナリオを持っているキャラクターも出てきて倒すみたいなものもありながら、どんどん世界各地に広がっていくような感じになっています。
――なるほど、そんな深いストーリーがあるんですね。
浜口氏:ストーリーが結構しっかりと用意されていて、「FF7」をプレイしたことがあるユーザーなら知っているようなネームドのキャラクターも出てくるなど、かなり作り込まれています。
――これはまた、やりこみ要素がひとつ増えますね! ミニゲーム繋がりではないですが、オープンフィールドでゴールドソーサーのミニゲームとして登場した「モグ・はうす」のようなものが、「モーグリレポート」として登場して驚きました。こちらはゴールドソーサーとは別の要素なのでしょうか?
浜口氏:今回のゴールドソーサーに「モグ・はうす」は、同じように配置していません。原作にあった世界観が、「FFVIIリバース」の世界にあったらこうなったのかなといった感じで、現実のワールドマップに展開させました。
――フィールド上で楽しめるコンテンツに格上げされたんですね!
浜口氏:そうですね。
――開発陣の中でお気に入りのミニゲームはございますか?
浜口氏:スタンダードなところでは、「チョコボレース」は力を入れているミニゲームのひとつです。レーシーングゲームとしての手触りも、非常にいいところで作ることができました。コースを含めて数も多いので、楽しめる方が多いと思います。
後は……本当にいろいろなゲームがあるんですよ。サッカーみたいなものから射撃ゲームなど、いろいろなミニゲームがあるので、触っていただいたお客様が「俺はこれが好きだ」みたいな声も聞きたいですね。コンドルフォートは、2021年発売の「FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE」の中のミニゲームでも入っていましたが、今作ではそちらがさらにバージョンアップして登場します。
ゲームならではの体験をするためにパーティ経験値を導入
――原作では好感度によってデートの相手が異なるといった要素がありましたが、今作ではどんな影響があるのでしょうか?
浜口氏:クラウドに対しての好感度は、基本的にはストーリーに対して影響するパラメーターにとどめています。そちらを上げることで、バトルの攻略性が上がるといった方向には振っていません。それには理由があり、たとえばこのキャラクターとデートがしたいとなったときに、他のキャラクターの好感度を上げない方がいいといった心理が働きます。
その心理が、バトルの成長に対して影響を与えてしまうと、ネガティブになってしまいます。そのため、好感度に関してはストーリーの変化に特化する形でデザインしています。プレイしているときに、たまに選択肢のなかで選ぶものがあったり、本編が進んでいくなかのミニゲームの結果などでも変わったりします。もしくは、サイドクエストをどのようにクリアするかなどでも変わるなど、幅広いところで好感度は変化していきます。
――好感度とは別にパーティ経験値という要素がありますが、こちらが導入された理由はなんでしょうか? 例えば、偏ったメンバーのパーティばかりになってしまうことを防ぐためでしょうか?
浜口氏:このゲームのテーマのひとつとして「絆」を掲げています。シナリオライターの野島一成さんから上がってきた台本を読んだときに、最後のエアリスの運命に対してパーティの感情がそこに向けて描かれていました。それをストーリーだけで体験するのは、映画でもできることです。自分でプレイして、絆や仲間たちとの関係性がゲームの中でも構築されていくことで、自分が体験したこともシンクロします。それにより、さらに相乗効果が生まれるだろうということで、バトルシステムも「絆」をテーマにした設計を行なっています。
また、今回バトルに連携システムがかかわってくることも理由の1つです。キャラクターの成長ツリーなども含めて、よりキャラクター同士の関係性が深まっていくことで、どんどんスキルツリーが展開されていくというようにしたほうがゲームとして1本筋が通っていると感じたので、そのようなデザインにしています。
――バトルに参加するメンバーは最大3人までですが、そのほかのメンバーも周りから攻撃などをしている様子が見られました。彼らはバトルに影響を及ぼしているのでしょうか?
浜口氏:影響を及ぼしているかどうかでいうと、一応影響自体はあり攻撃をしているとダメージが入っています。ただ、そのダメージ量がバトル攻略に著しい影響を与えているかというと、そこまでのものではないので結局フレイバー(雰囲気作りの要素)になっています。
逆に、バトルの主メンバーの3人がピンチになったときに、サイドのキャラクターたちが連係攻撃でヘルプしてくれるシステムが入っています。そのため、サイドパーティの攻略として意味があるものになっています。
――なるほど、ただの賑やかしじゃなかったんですね!
浜口氏:基本的に通常時は賑やかしです。本当に困ったときには、ちゃんと助けてくれます。
――こいつら本当に戦ってるのか? と思いながらプレイしていました(笑)。
浜口氏:これも先ほどの「絆」と同じで、原作ではPHS(パーティメンバーを入れ替えるときに使用するアイテムとして登場していた)を渡してほかのメンバーは違う行動をしてもらうというような扱いになっていました。今作ではやはり「絆」がテーマになっているので、みんなで団体で行動させたいというのが最初にあったんです。
メモリーの負荷でいうと、結構高いんですよ。一般的なワールドマップがあって冒険タイプのゲームでは、せいぜい主人公とゲストひとりぐらいまでが多いと思います。我々は、まずメインキャラクター3人いて、それに合わせてリザーブメンバーの3人とか4人がメインキャラクター級のリソースを使って付いてきてという、この部分のメモリー調整というか負荷調整は苦労しました(笑)。
――今回チャプター2までプレイした範囲では5人までしかいませんでしたが、最終的にもう少しメンバー増えていきます。そのメンバーも含めて全員参加するのでしょうか?
浜口氏:全員で行動します。ある意味、今の時代のゲームではあまり見ない光景です。なので、このゲームの魅力のひとつだなと作っていて思いました。
――地味ながら苦労されている部分でもあるんですね。
浜口氏:そこが今回の「絆」というか、みんなで一緒に冒険して運命のところまでいくところに掛けられています。
――PHSの話が出てきましたが、先日原作をプレイし直しているときに、いきなりPHSという単語が出てきて今の時代通じないのでは? と思いました。このPHS的な要素は、今作ではどのようにアレンジされているのでしょうか?
浜口氏:今回はPHS自体は登場させていません。その代わり、パーティがみんな一緒に行動するので、パーティ間でコミュニケーションを取る必要がなくなりました。PHSそのものではなく、代わりに今回は「ワールドレポート」でチャドリーというキャラクターが出てきます。
彼がテクノロジー的には最先端の技術で動いているロボットなので、彼とのコミュニケーションにおいて通信端末を新たに導入しています。
冒険を進めていくことで世界がひと繋ぎで探索できるようになっていく
――今作はフィールドもかなり作り込まれている印象です。行けそうなんだけど行けないところなど、絶妙な配置になっていました。最初はマップ上が雲で覆われているので行ってみないとわからないところが多く、実際に行ってみると行けないなど、ルートを探す行為がオープンワールドというよりも昔のRPG的な良さを感じました。
浜口氏:最初に悩んだ部分でして、現在よくあるオープンワールドのゲームでは、世界規模の話はスケール的に難しくなります。どちらかというと、どこかの地域の特定の区域だけに特定するみたいな感じのスケール感になっています。
今作は原作ありきで、全世界を渡り歩きながら行動します。ただ、リアルスケールで世界を作って冒険をするのは不可能に近いです。しかし、ユーザーが広いと感じつつ、いろいろなロケーションを移動していくことで様々な世界を移動してきたなと感じられる広さだけど、開発としても作りきることができ、かつコンテンツの密度もしっかりと保つことができる線引きを最初に探すところが苦労したところです。
――先日8時間ほどプレビュー版をプレイして、フィールドとしてはグラスランドエリアひとつだけでしたが、それでもすべてを遊びきることはできないほどのボリュームがありました。あれはほかの地域でも同じようなボリュームが用意されているということなのでしょうか?
浜口氏:グラスランドエリアが特別大きいというわけではなく、他にも大きなエリアがあります。グラスランドがあって、次はミスリルマインを挟んでジュノンを探索するという、最初はオープンリージョンごとに攻略していくという感じになっています。次第にゲームが進んでいくうちに、乗り物で海が渡れるようになります。全世界がひと繋ぎになって探索でき、ふたたびグラスランドエリアに戻ると新たなコンテンツが登場します。
後半に近づいていくにつれてどんどん世界観が広がっていき、プレイ体験もダイナミックになっていくような構成になっています。
――ここが終わったら次というわけではなく、そんな仕掛けが施されていたんですね。
浜口氏:どんどんエリアを移動して、どんどんできることを見つけていきますが、最終的にはひとつのワールドマップを冒険することができるような感じですね。
――昨年の9月に試遊させていただいたときから時間が経ちましたが、最終的なボリュームに変化はございますか?
浜口氏:そこは9月の時点からは変わっていません。サイドストーリーなどをプレイせずに、メインストーリーをストレートに進めていった場合は、40時間ほどのプレイボリュームになっています。ただ、バトルが苦手な人は少しボスが強いところがあるので、メインストーリーの間にサイドコンテンツを2割ぐらい触るのが平均的な想定になっています。そうしたときに、プレイボリューム的に50時間から60時間ぐらいになるのが平均値になるのかなと思います。
なかには全部のワールドマップを埋めていかないと進みたくないという人もいるので、そういう方は100時間を超えるプレイ体験になるだろうと思います。
――やりこみによってプレイ時間が伸びていくということですね。チャプター2に登場するミドガルズオルムは、原作では1撃で倒されたのでチョコボに乗ってスルーしましたが、今作では強制バトルになっていました。
浜口氏:そうですね。今回は章立てにしているので、その区切りにはデカイものが必要です。そこに、原作になかったものを引っぱってくるよりは既存のものを使った方がいいと思いました。なおかつ、今回は倒したあとのカットシーンで、串刺しになるシーンが見られます。
――原作では1枚絵だけでしたからね。
浜口氏:そうした原作では見られないシーンが見られるのも、リメイク作品の魅力かなと思ったので、早い段階でミドガルズオルムをこの場所のボスにすることは決まっていましたね。
――かなり強かったので、最初にプレーヤーの前に立ちはだかるボスになりそうな予感はしますね。
浜口氏:結構強いので、うまい人はワールドマップを探索しなくても行けるし、バトルが苦手な方はワールドマップを探索して強化してから行くみたいな、そこでプレーヤーの幅を持たせています。
――チョコボは見た目を変えていくことができますが、何か他に特別な効果を発揮するといったことはありますか?
浜口氏:ワールドマップでチョコボに対してパーツを付けること自体は、冒険する時間が長いので好きな見た目にしてほしいということから導入しています。ただ、チョコボはエリアごとに山チョコボで崖を登ることができたり、空チョコボで空を飛ぶことができたりと、違う種類が登場します。そうしたチョコボを捕まえておくと、ゴールドソーサーの「チョコボレース」に出場できるようになります。
そこに関しては、見た目のパーツでコーナリングの数値が上がるとか加速度が上がるといった要素が付けられています。自分は速度は速いけど加速度は遅くてもいいやといった、パラメーターをいじる遊びとして装備パーツが使えるようになります。
――今作ではゴールドソーサーも進化しているのでしょうか?
浜口氏:ゴールドソーサーは、すごく進化しています。どの部分に対して期待するのかは人それぞれですが、ミニゲームという意味ではそれぞれが作り込まれています。また、デートイベントも、ものすごくエンターテイメント色が強くリメイクされています。あそこは、たぶん原作以上に記憶に残ると思います。
北瀬氏:ミニゲームだけではなくて、エンターテイメント施設なので劇場で演劇をやるようなシーンが出てきます。そこは、ひとつの見どころになっています。FFシリーズだと、過去に「FINAL FANTASY VI」のオペラなど劇中劇の部分が結構印象に残る数々の名シーンがあります。
「FF7リメイク」のエンディングでは、主題歌の「Hollow」がエンドロールで流れていましたが、今作の主題歌「No Promises to Keep」も当初はエンドロールだけで流れる予定でした。しかし、ゲーム本編のシーンとリンクするように演出したほうが、ユーザーの心に残ると考えて、今回はゴールドソーサーの演劇シーンで主題歌が流れるように、僕の方から直接指示させていただきました。
――最後に本作を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。
浜口氏:発売に向けて作品自体は仕上がっていますので、2月29日から延期することなく皆さんのお手元にお届けできることをお約束します。ゲーム内容に関しても、今回はユーザーの選択を重要視しながら、メインストーリーも前作同様に作り込まれており、いろいろなサイドの要素や脇道が用意されています。何を今プレイするのかということを、ワールドマップを舞台に自由に選択できるゲームに仕上がっています。前作とはまた違った魅力を持った作品に仕上がっていますので、ぜひ多くの人に触っていただきたいです。
北瀬氏:今作は原作に比べて、セフィロスがクラウドたちを追いかける相手としてフィーチャーされています。そこがひとつのポイントで、後は忘らるる都までのストーリーを描いているので、その運命がどのようになるのかという意味では、一番盛り上がる作品になっているので、そこに期待していただきたいですね。
――ありがとうございました!
開発チームは隙間恐怖症!?――野村哲也氏インタビュー
――発売が近づいてきましたが、ここまでのユーザーの反応や手応えはいかがでしょうか?
野村氏:反応は想像以上にいいなと思っています。ただ、それ故に怖いですけどね。それはプレッシャーというよりも、ここから先に反転があるならばシナリオ回りだろうなと思うので。
――シナリオが今作においての核心的な部分だからでしょうか?
野村氏:それは前作においても、オリジナルのままではなかったので、そこに対しての善し悪しの反応は分かれていました。さらに今回は、原作でも重要だった場面が来ます。そこを、今回の「FF7リバース」バージョンで皆さんがどう思うかというのが、プレーヤーのみなさんと別の意味でドキドキしています。
――改めてですが、「リバース」というタイトルに込められた思いを教えていただけますか?
野村氏:これは何かひとつの意味ではありません。前作の「FF7リメイク」と同じような意味のあるものにしたかったというのもひとつありますし、オリジナルから生まれ変わるという意味も含まれています。それ以外にも、ストーリー上のもろもろもあります。ストーリー上のほうは、やってみていただいた方がいいですね(笑)。
――テーマとしては「絆」がありますが、こちらは当初から掲げられていたものでしょうか?
野村氏:今回でパーティメンバーが揃います。そうした意味で、この「絆」を掲げてシステムなど構築していったんだろうと思います。オリジナルは「命」でしたからね。
――今作で特に「ここにこだわった」といったところや、「ここに注目してほしい」といったポイントがあれば教えていただけますか?
野村氏:ワールドマップが今回は一番インパクトがあるのかなと思います。単に広いマップを作ればいいというものではありません。広大なマップで、どのような遊びが盛り込まれているのかというところに意味があります。そこをスタッフ一同が頑張って作ったと思っています。
――先日チャプター2を8時間ほどプレイさせていただきましたが、それだけでは遊びきれないぐらいのボリュームでしたね。
野村氏:そこに対する恐怖心があるのかな? と思えるほどですね。
――えっ、恐怖心とは!?
野村氏:「FF7リメイク」のときも、当初の想定以上に内容が詰まっていました。おそらくこのチームは、隙間恐怖症のかな?と(笑)。実際にはサービス精神が旺盛なチームなんです。
――なるほど! 今回チャプター2だけでも膨大なボリュームになっていましたよね。
野村氏:「FF」のチームとしてはすごくいいと思います。「FF」って昔っからスタッフがやりたいことを盛り込んでいくというスタイルなので。
――勝手に15パズル入れちゃったりとかですね!
野村氏:ひとりの人間が強い力で何かを作るというよりは、やりたいことをスタッフたちが楽しんでどんどんやるのがいいのかもしれません。
――今作もチャプター2でいきなりカードゲームが登場しますね。
野村氏:カードゲーム作りたかったんだろうなと思ってました(笑)。
――そういうアイデアがスタッフ側からどんどん出てくるんですね!
野村氏:そうですね、それが「FF」っぽいところですね。古くから関わっていますけど、昔の「FF」はみんながやりたいことを、これやろうあれやろうといいながら作っていました。
――そういうノリなんですね(笑)。ちなみにスタッフは前作から一緒でしょうか?
野村氏:新しい人も入っているとは思いますが、ほぼ前作から一緒ですね。コアなスタッフ以外にも、「REMAKE」チームは3作目まで一緒に走ることになっています。
お気に入りはバレットとダインのシーン
――ストーリーについては、オリジナル版とは明らかに違うところがあるなと感じさせるところがありますが、それ以外にも細かなキャラクターたちのやりとりや、ミドガルズオルム討伐後など原作にはなかった演出がいろいろと盛り込まれていて、かなり楽しめました。今作の中で、特にお気に入りのシーンを言える範囲内で教えていただけますか?
野村氏:お気に入りは、(バレットの親友の)ダインが良くできているなと思っています。バレットとの会話のやりとりなど、かなり胸を打つものがあります。フェイシャルチームにも、すごく良くできてるねと返したぐらい渾身の仕上がりになっています。声優さんの芝居も、かなり胸に迫るものがあります。ぜひ見ていただきたいなと思います。
――「FF7」は全体的にはちょっと悲しいストーリーがありつつもの、ひとつひとつの場面ではコミカルなシーンがあり、個人的に好きなところです。特に今回は、クラウドがティファとエアリスに攻められて困り顔をするような、微笑ましいシーンもいくつかありました。
野村氏:クラウドに関しては、「FF7リメイク」の時から一貫して、カッコつけているけどカッコ悪いヤツというキャラクターになっています。カッコつけているけど、笑えちゃうのがクラウドというか。ストレートにカッコイイわけではないということになっています。イケてねーのにイケていると思っているので、そこらへんを声優の櫻井孝宏さんがすごくが絶妙に演じてくださっています。絶妙にカッコイイ、カッコ悪いみたいな。
――そういうキャラクター性が作中で描かれているんですね!
野村氏:だから、ティファとエアリスのふたりに挟まれてオロオロしているのも、いかにも女性慣れしていないみたいな感じなんですよね。
――あのメンツだと、女性陣が強い印象ですからね。
野村氏:そうですね。エアリスははっきりしているし、ティファはなんか情念が。
――幼なじみ特有の!
野村氏:なんだろう。クラウドの今のスキルでは、難しいふたりですね。
――まだまだ若いんですね、クラウドも。
野村氏:そのへんは「FF7リメイク」からこだわった部分として演じてもらっているので、その面白さが出ているのかなと思っています。
レッドXIIIのしゃべり方の変化に注目してほしい
――前作を踏まえて、変更したところやあえて変えなかったところなどはございますか?
野村氏:基本的には変えていません。ブレることなく、3作目のオチまで含めてこういう形で走りきろうということでスタートしています。反応を受けての変更はありませんが、変化という意味では楽しみにしていただきたいのがレッドXIIIですね。原作を知っている方ならわかると思いますが、彼の本来のしゃべり方というか。
――ああ、故郷に戻ったときのですね!
野村氏:そちらと、「FF7リメイク」で見ているレッドXIIIとの違いは、声優のキャスティングで山口勝平さんにお願いしている時点でだいたい想像がつきますよね。そこはこだわりとしてふたつの異なるキャラ性をふたりの方に演じてもらうのではなく、ひとりの方で表現したかったんです。そこを踏まえてキャスティングを行なっています。ぜひ楽しみにしていてください。
――「FF7リバース」では、忘らるる都までのストーリーが描かれるそうですが、最近オリジナル版をプレイし直してみて、思っていたよりもミッドガル脱出から忘らるる都までのストーリーは濃厚でボリューミーに感じました。前回のインタビューでウータイを3作目に回すなど、ストーリーの順番が変更されているところもあるとお聞きしましたが、こちらは前作と次回作とのボリュームのバランスなどを考えられて決定されたことでしょうか?
野村氏:それもひとつの理由としてはありますが、一番大きな理由としては、ウータイがこれまでは神羅と対抗しているある程度の軍力を持った国であるという描かれ方でした。おそらく原作通りのままだと、あまりそれを感じられません。
――そうですね、どちらかというとユフィにマテリア全部盗まれて大変だった記憶しかないですね(笑)。
野村氏:ウータイ、ウータイって神羅はすごくいうのに、来てみたらあれ? みたいな。
――ウータイは独立した団体という位置づけでしたっけ?
野村氏:ウータイは全く別の国ですね。神羅にちゃんと対抗できる力を持つ国であるという描き方を、今回はちゃんとしましょうと。
――なるほど。それが3作目で描かれることになった理由なんですね。
野村氏:肉付けがかなりされると想定しているので。まるまる国を作るわけですから。
――今回カームもかなり大規模な街に変貌していましたが、2作目に登場する他の街もパワーアップしているのでしょうか?
野村氏:それは今作を遊んでもらえればわかります(笑)。カームだけではなく、すべてパワーアップしていますが、それらを訪れていただければ、ウータイを3作目に回したのも理解していただけると思います。
ソッチとコッチの名司会がゴールドソーサーで復活!
――主要キャラクターだけではなく、原作ではモブ扱いだったようなキャラクターなど、いずれも少し濃い人たちが多いところも「FFVII」の魅力に感じます。中でもカームのブロードや牧場のグリン、そして前作でも登場したペグたちにふたたび会うことができたのは個人的にはすごく良かったです。
野村氏:「FF7リメイク」でもかなり個性的に描かれて、ペグのような本来は斬られ役のようなキャラクターでもかなりしっかりとしたキャスティングを行なっています。雰囲気に本当に合う人を、しっかりキャスティングして演じていただいていますので、出番あるあるなら今後もというのはありますね。
――また彼らに会えること期待できるんですか!?
野村氏:そりゃ、期待しちゃいますよね(笑)。期待せずにはいられないキャラに仕上がってきているので。ブロードなど、原作ではそこまでではなかったのに今作では解像度が上がっています。このクオリティで作っていると、どうしても肉付けが必要になります。しっかり作り込まないと、説得力もないし回りを固めるキャラクターたちもかなり奥深いものになっています。
そこでただのモブにしてしまうよりかは、ある程度しっかりと描いた方がストーリー的にもちゃんと奥行きが出ます。要所要所でいたキャラクターたちは、しっかり厚みは付けることにしています。
僕は、「FF7リメイク」のスラムの格闘技場に登場したソッチとコッチが名司会がお気に入りで、「FF7」開発当初からシナリオ班にソッチとコッチをゴールドソーサーに連れてきてくれというリクエストをしていました。また、今回もいい感じに盛り上げてくれます。
――ゴールドソーサーは今作ではかなり盛り上がりそうですね。
野村氏:相当アツイですよ、あそこは。ミニゲームも楽しみですけど、出てくるキャラクターたちもお楽しみにということで。
――ヘタすると、最初に登場するカードゲームを延々と遊び続けちゃいますからね(笑)。
野村氏:そういう遊び方も正解なんです。
――結構やることが多すぎて、なかなか先に進めないんですよね。
野村氏:スマホゲームでもずっとリセマラしている人がいるじゃないですか。人によって、遊び方は違うので。ゲーム配信とかも僕はよく見ますが、ずっとカードゲームにハマって動かない人が出てきたら、それはそれで面白いと思います。
――最後に原作ファンと、新規のファンそれぞれに対して向けてメッセージをお願いします。
野村氏:新規で今作から入っても、原作からずっと遊んでいる方でも、まったく同じような驚きや体験ができる内容になっています。なによりも、今回は本筋以外の遊びのバラエティさはすごいので、何かしら楽しめる要素を見つけることができます。これは人から聞くとか見るだけではなく、ご自身で体験していただきたいなと思っています。
――ありがとうございました!
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