インタビュー

空を飛ぶ敵や、周りの敵の位置まで実感! PS5の「3D Audio」開発者が語る「Marvel's Spider-Man 2」の空気感

【Marvel's Spider-Man 2】

10月20日 発売予定

価格:
通常版 8,980円
デジタルデラックスエディション 9,980円
コレクターズエディション 31,980円

 今回、「Marvel's Spider-Man 2」の発売に合わせ、改めてPS5ならではの機能、特性をアピールし、ゲームをプレイすることでPS5のポテンシャルを実感して欲しいと言うことで、メールインタビューによって担当者からコメントをもらうことができた。

 本稿ではソニー・インタラクティブエンタテインメント シニアプリンシパルソフトウェアエンジニアの今井憲一氏にPS5の「3D Audio」の話を聞いた。3D AudioはPSVR用のヘッドフォンでプレーヤーが音を立体的に実感できるシステムとして開発され、PS5では基幹システムとして、通常のTVやヘッドフォンでその効果を体験できるという。今回のメールインタビューでは改めてこのシステムの基本システムと、「Marvel's Spider-Man 2」でどのように実感できるかを質問してみた。

【PS5の魅力あふれるゲームタイトル |3Dオーディオ】

通常のテレビやヘッドフォンで"空間"を実感できるPS5の3D Audio

――PS5での「3D Audio」はPSVRからの発展システムということですが、具体的にはどういったことができるようになったのか、教えていただけますか。

今井氏:ハードウェアとしてパワーアップしたことで、扱える音源数が増えましたし、高次のアンビソニクス音源を扱うこともできるようになりました。また、3D空間に配置する際、より細かな位置を指定・表現することが出来るようになりました。また、ゲーム開発者さんに向けては、PS4で導入したAPIからは大きく変更していないので、3D Audioへの対応のしきいが高くならないように心がけました。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント シニアプリンシパルソフトウェアエンジニアの今井憲一氏

――3D Audioにおいて、人の聞こえ方を測定しデータ化したHTRF (Head Related Transfer Function)は大きなキーワードとのことですが、こちらの説明をお願いします。

今井氏:HRTFは日本語で言うと頭部伝達関数といい、人間の聴覚をモデル化したフィルターになります。3D空間に配置された音源をヘッドホンで聞くためには2チャンネルにする必要がありますが、その時の処理に使われます。この関数は人によって異なります。それは頭や耳の形や大きさが個人によって異なるからです。

――3D Audioはすべてのテレビで体験可能とのことですが、システムなどの対応の差はないのでしょうか?

今井氏:テレビによって若干効果は異なりますが、すべてのテレビで3D Audioをお楽しみいただける機能があります。コントローラーを使ってお客様の部屋の音響特性を測定することでより、適切な処理が行われます。

――一方で手軽に体験できる環境としてはコントローラーのジャックにヘッドフォンを差すだけで体験可能とのことです。ヘッドフォンからの音の強弱、音の出力の仕方、例えば音源からの距離を表現するための、リアルタイムでの変化などで実現できるのでしょうか? 具体的にヘッドフォンから音をどのように出せば3D空間を表現できるのでしょうか? また、高いヘッドフォンを使うと、やっぱりより明確に効果が出ますか?

今井氏:HRTFを用いて、3Dに配置された音源を2チャンネルに処理することでどんなヘッドホンでも 3D Audioをお楽しみいただくことができます。一般的には高いヘッドホンのほうが周波数特性などの基本性能が高いため、効果は分かりやすいかもしれません。

敵がどこにいてどんな音を立てているのか? 3D Audioでは耳で敵の位置を実感できる

――ゲームでこの実感ができるところ、「Marvel’s Spider-Man 2」で特に3D Audioが実感できたシーンはどこですか?

今井氏:それほど長い時間トライできたわけではないのですが、まず空気感というか自然な感じ、「その場」を再現していて、当たり前に感じるところがすごいです。その中で、自分の頭の上を飛んでいたり、後ろに回っている敵やオブジェクトが印象的に配置され、よりどこにいるという定位感を感じることができました。

――今井さんが「この機能をこういう表現で使ったのか」と感心できた要素はどこですか?

今井氏:全般的に3D Audio がより自然な「場」、「環境」を表現してくれることに驚きました。グラフィックスがよりリアルに、本物と区別がなくなっていくのと同じようにオーディオもよりリアルになってきたと感じています。

――今回の「Marvel’s Spider-Man 2」で改めて実感できた部分と、これからの課題はありますか? 例えばソフトウェアアップデートでより強化できる要素などはあるのでしょうか?

今井氏:3D Audio を使った場合の空間表現、臨場感についての可能性を改めて感じました。HRTFはいま我々が用意したものから選んでいただく方式を採用していますが、より個人にあったものを提供できる方式も検討していきたいと考えています。

ビルの上では路上とは環境音が大きく変わる。実際にゲームでの技術の使われ方が基幹システムをよりパワーアップさせていく

――ユーザーへのメッセージをお願いします。

今井氏:PS5は発売してから3年経って、ゲームデベロッパーのみなさんがハードウェアの性能をより引き出していただけるようになり、我々の想像を超えた素晴らしい体験を提供してくれるゲームがたくさんリリースされるようになってきました。オーディオは聞いてみないと実感できませんので、百聞は一見にしかず、是非ともご体験いただきたいです。

――ありがとうございました。