インタビュー

止まった時が動き出す! 「ロックマンXメガミッション」インタビュー

エピローグから20年、心残りだった想いがついに遂げられる!

 そしていよいよ、カードダス「ロックマンXメガミッション」と、「ロックマンX」の“復活”に触れていこう。「ロックマンXメガミッション」は1弾から3弾までがフルコンプで復活する。さらに今回の目玉である“第4弾”が盛り込まれるのだ。加えてカードダス「ロックマンX」からは人気の高かったカードも復活となり、収録される。

当時「ロックマンXメガミッション」を手がけたフリーライターの栗原昌宏氏。今回第4弾で20年間抱えていた思いを遂げることとなる
今回の企画のディレクターを務めるレイアップの紫藤義隆氏
竹廣氏が所蔵していた企画書。イラストなどは復活に合わせて新たに描き込まれている

 今回話を聞いたレイアップという会社は、玩具の企画・デザインを手がける会社で、カードダスでも様々な人気キャラクターに携わっている。フリーライターの栗原氏はかつてレイアップに所属し、カードダス「ロックマンXメガミッション」を担当していた。今回の復活企画のディレクターである紫藤氏はあの頃はカードダスのある人気キャラを担当していた。「ロックマンX」は猛追してくる存在であり、脅威であると同時に人気を得ていくところはうらやましかったという。

 「会議をやっていると、ユーザーからのアンケートが発表されるんですよ『○○』はいくつ、『△△』はいくつ、という感じで。ロックマン関連がドンドン順位を上げてくるわけです。キャラクターも良いし、ゲームは面白いし、そりゃそうだよなと思っていました」と、紫藤氏は当時を振り返る。

 そういう人気が高まっていく中、オリジナル企画として「ロックマンXメガミッション」はスタートした。栗原氏は絵を担当する竹廣慎一氏と共に「ロックマンXメガミッション」の世界を構築していった。「ロックマンXメガミッション」は、これまでゲームの設定に従って作られていたカードダス「ロックマンX」とは異なり、初のオリジナルであり、版権元であるカプコンも初めて行なうオリジナル企画となった。相当に気合いを入れていたという。

 「本当に竹廣さんは『ロックマンX』が大好きで、彼の中に色々な設定や世界観、キャラクターがあったんです。僕はソレを聞いてきちんとキャラクター像を設定したり、物語を“カードダス”のフォーマットに当てはめていったんです。カードダスは枚数が決まっていて、語り方も手法がある。竹廣さんのアイデアをどう具現化するかを担当しました」と栗原氏は語った。

 そして今回“発見”された「ロックマンXメガミッション」第4弾は、実はイラストを担当した竹廣氏が所蔵していたものだという。竹廣氏と栗原氏は第3弾に続き、第4弾を販売すべく構想を練り、企画を進めていた。しかし販売にまで至らなかったのだ。その企画書やイラストは竹廣氏が個人的に「お蔵入り企画」として保存しているものだった。

 「後は出るだけ、というところまでは煮詰まっていませんでしたが、大枠のストーリーとキャラクターはもう決まっていました」と栗原氏は語った。そして今回、この残っていた資料をベースに、戸澗氏との話し合いを元に紫藤氏がディレクションを担当し、栗原氏はテキストを起こし、竹廣氏はイラストに手を加え「幻の第4弾」が作られ、加えられることとなった。

 紫藤氏も今回企画が決まった中で「埋もれていた歴史」が出てきてびっくりしたという。これらが出てきたのは竹廣氏が別の雑誌のインタビュー企画の中での発言で「実は『ロックマンXメガミッション』の幻の企画書がある」という情報を戸澗氏が掴み、そこから紫藤氏と共に探した結果だというのだ。竹廣氏も自分の仕事として、大事に保存していたというのだ。今回竹廣氏も改めてキャラクターイラストに手を加えて“復活”したとのことだ。

20年越しの復活の苦労。語られなかった物語の続き

 実は栗原氏は「ロックマンXメガミッション」に対していくつか悔いを残している。栗原氏にとって第4弾を前提に第3弾を製作しており、第3弾のエピローグで重要キャラクターが復活するという大きな盛り上がりを用意していた。ここでユーザーに期待させ、第4弾を提供するはずだったのに、それはかなわなかった。ここが1番悔しかったと栗原氏は語った。今回20年を経て、その想いがようやくかなうことになる。

当時栗原氏が変形機構の検討を行なった「ライドチェイサー」の試作品。ここまで商品に関わったことは当時なかったとのことで、思い入れは非常に強いという
今回第4弾でついに「ライドチェイサー」がカード化される
栗原氏はメガアーマーにも関わっており、今回はコレクションを見せてくれた

 栗原氏が「ロックマンXメガミッション」で思い入れのあるキャラクターは「イクス(X)」。エックスのデーターから生まれたレプリロイドで、エックスの分身と言える存在だ。「ロックマンXメガミッション」発売時は組み立て式玩具の「ロックマンX メガアーマー」も展開しており、こちらの企画もやっていた栗原氏は、商品を改造してイクスを作ってしまうほど思い入れも深かったとのこと。

 その当時の「ロックマンXメガミッション」に夢中になっていた少年の1人が戸澗氏である。カードを一生懸命集めていたものの、限られたお小遣いではコンプは叶わず、ストーリーもキャラクターも断片的にしか得られなかった。今回の企画を後押ししたのは「今コンプセットが復刻されれば、全部手に入れてちゃんとストーリーがわかるのになあ」という、インターネット上のファンの声だったという。そしてこの企画を作り、紫藤氏と進めることになったのだ。

 第4弾はキャラクターカードのみになるが、ストーリーに関しては付属のブックレットで概要が描かれるため、当時の子供の頃に戻り、キャラクターカードを眺めながら、彼らがストーリーでどう活躍するかの想像を膨らませることができるという。

 もう1つ栗原氏が思い入れがあるのが「ライドチェイサー」。「ロックマンXメガミッション」オリジナルメカで、バイク型の乗り物からエックスが乗り込めるロボット型に変形するメカで、第4弾のカードにも登場する。実はこのライドチェイサーはこれまでのカードダスでも“背景”として登場していたのだが、今回きちんとカード化される。

 このライドチェイサーは「メガアーマー」シリーズで立体化される予定になっていた。栗原氏としては自ら機構試作を製作して、変形機構の検討まで行なった商品で、自分の想い入れが強い。しかし、残念ながらこちらも商品化に至らなかった。今回のブックレットでは変形機構の検討モデルの写真も掲載される。この商品の試作品だけでも発表できる、というところも栗原氏の念願が叶ったところだ。

 「誰も見たことがなかった第4弾を見ることができる、それが最大のセールスポイントだと思います。当時全貌を知ることができなかった子供達にとっては、今回全貌を知ることができる。『ロックマンX』はオリジナルがゲームだからゲームをプレイすればストーリーはわかるけど、『メガミッション』はカードダスしかない。今回、ようやく再び皆さんにお見せできることができるのがうれしいです」と栗原氏は語った。

 実は、「ロックマンXメガミッション」の“復活”にも大きな苦労があったと紫藤氏は語った。当時はもちろんカードはデータとして保存されていないので、当時のカードをスキャンで取り込み、そこからなるべく近い形に手を入れていくという形で“復活”させている。

 もう1つ紫藤氏は「竹廣氏も久しぶりにカードの絵柄を描くので、戸惑いがあったと言っていました。『昔はもっと早く描けたのにな』と言っていましたよ(笑)。昔カードを手がけてたときの絵柄で、20年ぶりの素材に挑戦するのはやっぱり苦労したみたいです」と裏話を披露した。

 最後にファンへのメッセージとして、岩本氏は「『メガミッション』やカードダスは当時関わりたいと思っても関われなかった。その想いが20年を超えて実現できました。この企画も含め、今後もファンの方々と一緒に盛り上げていきたいと思います。よろしくお願いします」と語った。

 紫藤氏は「『ロックマンXメガミッション』が出た頃は児童誌ではボンボンさんとコロコロさんが激しい戦いをしていた、いわば恵まれた時代でした。そんな時代に育った子供時代を過ごした皆さんに喜んでもらえる様に作りました。ぜひ手に入れていただいて、懐かしい気持ちになって欲しいと思います。復刻されたゲームやカードダスもぜひ!」と語った。

 栗原氏は「僕にとっては第3弾のエピローグカード、これから次が始まるぞ、という展開をカードに描いてから20年、ずっと心残りがありました。今回ようやく止まっていた時を動かすことができました。そこが1番良かったと思っています。そしてライドチェイサーです。僕が変形試作まで手がけた玩具はこれが初めてで、商品化できなかったのは本当に残念でした。今回試作品の写真だけでも世に出せたのは本当にうれしいです。今回完全なカードダスではないですが、第4弾を作ることができました。20年越しに、ぜひ楽しんで下さい」とコメントした。

 戸澗氏は「当時カードダスをフルコンプできなかった人は、多いと思うんです。今回の商品は全部入ってます。幻のメガミッション4弾も実現したので、ぜひ楽しんで下さい」と語った。

 筆者自身にも「あの頃のものをもう1度みたい」、「中止になってしまったあのシリーズの続きが見たい」と思う作品や商品がある。その想いが実現するというのは、改めてすごいことだと思う。筆者自身はカードダスという文化も余り触れてこなかったので、改めてその文化や独特のストーリーテリング、そのメディアとしての楽しさに触れられたのはとても面白かった。

 新しいコンテンツが生まれながら、古いコンテンツも復活する。今回しみじみ「今は良い時代だな」と実感した。こういう“復活企画”もとても面白い。今後もどのような企画が動いていくのか、興味深く見守っていきたいと思う。

【カードの1部】