インタビュー
「CS:GO」日本代表SCARZ Absolute、「ZOWIE eXTREMESLAND」8位入賞
アジア上位チームに善戦。課題を修正して目指すはアジア最強奪取へ
2017年10月22日 11:26
「Counter-Strike: Global Offensive」のAPACトーナメント「ZOWIE eXTREMESLAND CS:GO ASIA OPEN 2017」は10月21日より決勝トーナメントがスタートし、第3試合に登場した日本代表チームSCARZ Absoluteは、中国代表で、前大会優勝チームのViCiと対戦して0:2(16:10、16:10)で破れ、8位入賞という結果に終わった。獲得賞金は4,000ドル(約45万円)。
準々決勝第1試合は、Aグループ1位で勝ち上がったオーストラリア代表King'sがタイ代表のBeyond Mapleをまったく寄せ付けない展開で2:0で破り、2試合目もCグループ1位の中国代表Flashが、シンガポール代表のB.O.O.T-d[S]に対して、2ゲーム目を1:12まで押し込まれながらも、そこから14ゲーム連取という鬼神のような戦い振りで16:13の大逆転劇で勝利を収めた。
なお、第4ゲームも中国代表eclipseが勝利し、本大会は大番狂わせなしという結果となった。予選トーナメントではBO1で、短期決戦の一発勝負のため2位争いにいくつかの番狂わせがみられたが、決勝トーナメントからはBO3になるため、綺麗に実力差が結果となって現われてくる。ただ、そうした中でも、目に見えない流れがあり、常識を超越した勢いがあり、それをシステム的に生み出すルールの存在があり、それらが試合観戦を加速度的におもしろくさせる。あらためて「CS:GO」の観戦の魅力に気づかされた。
さて、Aグループを2位で勝ち上がったSCARZ Absoluteは、他のグループの1位と当たることがあらかじめ確定していたが、対戦相手はよりによって優勝候補の筆頭であるViCiという最悪の組み合わせとなった。逆に言えば、これ以上強いチームは本大会にはいないため、この試合で勝てば一気に優勝が見えてくる。
SCARZ Absoluteのメンバーは、時間ギリギリまでトレーニングルームに篭もり、BOTモードでひたすらBOTを相手にマシンのような正確さでヘッドショットを繰り返していた。勝つ気満々、まさに気合い十分といった印象だ。
試合はほぼ定刻の16時丁度にスタートした。緒戦のピストルラウンドを落としたSCARZはそのまま3ラウンドを連取されたが、武器を手にした4ラウンド目は、仲間と息を合わせた連携が決まり、1ラウンドを取り返した。そこから一気に波に乗らせてくれないのは、さすが優勝候補筆頭といったところだが、その後、一進一退の攻防が続き、6:9で折り返すというほぼ互角の戦いを見せた。
攻守交代しての16ラウンド目は、またしてもピストルラウンドを落としたものの、次のラウンドをしっかり連携を決めて取り返し、その後、初めて勢いに乗ることができ10:10の同点まで戻した。
これまでのところ、両チームの戦いは完全に互角で、1対1の撃ち合いも撃ち負けていない。ただ、作戦の引き出し、個人技のバリエーションは、ViCiのほうが格段に上で、1on1の状況、とりわけ最後の1対1になったときにSCARZは動きが硬くなり、取れるラウンドを落としてしまう展開が目立った。1ゲーム目は、そのままViCiに押し切られ、16:10で落としてしまった。
2ゲーム目も、さっそくピストルラウンドを落とし、波に乗れないイヤな流れが続く。毎ラウンド、活躍する選手をかえながら、かなり良い勝負をするが、最後の最後で勝ちきれない。攻守交代の時点で3:12と大差が付いてしまった。こうなってくると、これまでの戦い方では勝てないため、思い切った作戦でいく必要がある。
2ゲーム目のマップはトレイン、攻守交代後は、SCARZが得意とするCT側ということで、先の試合のFlashの14ラウンド連取と同じ展開を期待したものの、残念ながらそうはならなかった。SCARZの動きは決して悪くないが、ViCiがその上を行く動きを見せる。上には上がいる。そのことを実感させてくれた戦いだった。
SCARZは最後の最後まで追いすがったが、なかなか2ラウンドを連取できない展開が続く。後半のラウンドはかなり優勢に試合を進めて10:15まで戻したものの、連勝できない影響でお金が貯まらず、火力不足の影響が出てしまい、10:16で試合終了となった。SCARZ Absoluteの「ZOWIE eXTREMESLAND」2度目の挑戦は8位入賞という、「予選トーナメント敗退」に終わった前大会を上回る上々の結果で幕を閉じた。
日本最強の次は、アジア最強を目指すlaz選手にとっては非常に悔しい結果に終わったようだが、eスポーツの20年近くの歴史においてFPSの分野で日本チームがここまで活躍したことはほとんど記憶にない。日本のeスポーツ史において、着実な第一歩を刻んだチームとして胸を張って日本に帰って貰いたいところだ。
また、日本予選を実施し、さらに本戦でも長期間にわたって日本語配信を行なってくれたGALLERIAの関係者、度重なるスケジュール変更にもめげず、実況解説を行なったOooDa氏をはじめとした実況解説の皆さんにも感謝したい。それでは最後に、試合後のインタビューをお届けして日本代表SCARZ Absoluteレポートの締めくくりとしたい。
中国戦で大きな手応えを掴んだSCARZ Absolute。今後の目標は「アジア最強」
――中国ViCi戦を終えた感想からお願いします。
crow選手:めっちゃ悔しいです。思っていたよりも戦えたんですけど、自分たちのミスが原因で落としたラウンドも多くて、そのミスがなければ勝ってたんじゃないかと思うと、凄く悔しいです。
barce選手:悔しいです。
poem選手:悔しいこともそうなんですけど、勝てるなと感じたことが大きな収穫でした。色々課題が見つかったんで、それを直していきたいですね。
t4k3j選手:正直もっとボロボロで負けるかと思っていたんですけど、そんなに撃ち合いでも差が出なくて、もうちょっと頑張りたかったなと思います。
laz選手:もちろん悔しいんですけど、今回は久しぶりに個人的な問題が出てきて、それが最後まで解決できなかったのが悔いが残りますね。
――2ゲームとも10ラウンド取りました。かなり善戦したと言えると思いますが、後6ラウンド、何が足りなかったんでしょうか?
laz選手:1つはファーストラウンドを全部落としたことです。そして一番大きいのは、ほかのメンバーも言ってますけど、自分たちのミスが多かったことです。
――ミスと言えば、昨日はオーストラリア戦でも数多く出てしまい、laz選手が珍しくメンバーを怒っていましたが、オーストラリア戦のミスとはまた違ったものだったんですか?
laz選手:ちょっと違いましたね。投げもののミス以外に、報告ミス、それから自由に動くべき場面で、引いてしまうというか、ひたすら出待ちをしてしまったので、そのあたりですね。ただ、こういった部分は、大会前から課題にしていた部分で、ミスったら周りがぼろくそ言われるぐらいに徹底しているのに、それが試合で出てしまったのは残念です。
――アジア最強の中国チームと戦ってみてどのような手応えを持ちましたか?
crow選手:正直に言うと、練習が同じぐらいの環境、練習時間、Ping、練習相手だったら、全然戦えるなと思いました。
barce選手:撃ち合いに関しては、正直普通に撃ち勝てていたので、後はどれだけミスを無くせるかだと思います。
poem選手:練習時間をもっと長くしたり、向こうと同じだけの努力をすれば絶対勝てると思います。
t43kj選手:僕もそう思います。
laz選手:正直に言うと、予想通りです。ただ、作戦がうまく決まれば絶対に勝てるというくらい強いものを選んで使っているので、悔しいですね。
――皆さんの戦いは今後も続くわけですが、今回見つかった課題をどのように克服していきたいですか?
laz選手:できる限り原因を突き止めて、着実に直していきたいです。具体的にこれというのはまだですが、原因さえ見つかれば修正は可能なので直していきたいです。
――“国内最強”の座は、名実共に獲得できたと思います。新たな目標を設定するとしたら何ですか?
laz選手:国内で勝てるようになる前から、アジア1位を目指してやってきているので、その目標は変わりません。
――アジア1位は実現できそうですか?
laz選手:僕は常日頃からいつかできるようになる、時間は掛かるかもしれないけどアジア1位には絶対なれると思っています。
――中国チームが強い理由のひとつとして、肥沃なユーザー層の存在が挙げられると思います。日本が強くなるためにはユーザーを増やすというアプローチも必要だと思いますが、どうすればユーザーが増えると思いますか?
laz選手:難しい質問ですね。まず、大会を定期的に開くこと。それから「CS:GO」というゲーム自体が、コミュニティ間で交流しにくかったり、ユーザー側の努力に依存しているところが多いので、そういうことを簡単にしてくれるような、クライアントの改良や、ランチャーのようなものがあると良いと思います。中国だと「5ewin」というものがあって「League of Legends」のランチャーのような機能を備えているのですが、そういうものがあるといいですよね。
――つまり、そうしたサポートをしてくれるような日本サービスが始まればもっと盛り上がるのではと?
laz選手:そうですね。日本サービスがあればいいですね。
――試合を観戦して「自分ももっと強くなりたい!」と思ったゲームファンもいると思います。彼らに対するアドバイスはありますか?
laz選手:物事をどれだけ正確に把握できるか、それだけです。それが可能になるようにトレーニングを積んでいけば強くなると思います。
――「僕もSCARZに入りたい」という「CSGO」ファンが出てくるかもしれません。どうしたら入れますか?
laz選手:強くなったら入れますよ(笑)。大会や練習試合で強いところを見かければ声を掛けることがあるかもしれません。ですので試合で戦って、その実力を示すのが一番早いと思います。
――国内大会で様々なチームと戦って、laz選手が有望だなと思う人はいますか?
laz選手:何人かいますね。チームでいうとMISOやALTERNATIVE、DETONATORにもいます。自分とは違った強さを持っていると思います。
――応援してくれた方へメッセージをお願いします。
laz選手:勝てなくてすいませんでした。
crow選手:以前に比べて日本のチームも戦えるぞってことは観ていてわかってくれたと思うので、今回の体験を次に繋げられればいいと思っています。
barce選手:ありがとうございましたー。
poem選手:応援ありがとうございました。
t4k3j選手:これからも応援よろしくお願いします。
――ありがとうございました。これからも頑張って下さい。