インタビュー
ドイツ戦艦ツリーついに実装! 「World of Warships」インタビュー
2020年まで実装計画で一杯! 英国巡洋艦ツリーの後は、フランスかイタリアツリーへ
2016年8月22日 17:08
9月17日で正式サービス開始から1年を迎える「World of Warships」。gamescomでは、ドイツのゲームイベントであることを意識して、ドイツの戦艦ツリーの実装を目玉に持ってきていたが、そのほかにも海軍大国英国ツリーの第一弾として巡洋艦ツリーを発表するなど、2大勢力である日米の対抗軸が少しずつ育ち、バラエティに富んだゲームプレイが楽しめるようになりつつある。
「World of Warships」開発担当のArtur Plociennik氏へのインタビューでは、8月19日に実装されたばかりのバージョン0.5.10の話題を中心に、今後の展開について話を伺ってみた。
1艦の建造に8~9カ月! ドイツ戦艦はアーマーに優れ近~中距離戦が得意
――アップデート0.5.10の基本コンセプトについて教えて下さい。
Artur Plociennik氏:まずメインになるコンテンツの1つとしては、ドイツの戦艦が追加されたことです。これによって、8隻の新しい艦艇が追加されました。それ以外にももちろん一部プレミアムシップのバランス調整や、マイナーアップデートなどがあります。
――ドイツの戦艦というと、ビスマルクやティルピッツ、シャルンホルストなど非常に有名な艦が多いですが、なぜドイツ戦艦ツリーの実装に、サービス開始から10カ月、β版を含めるともう1年以上の時間が掛かってしまったのですか?
Artur Plociennik氏:まず第一に私たちが船のモデルを作るにあたって、資料を集めるところから始めないといけません。なので、まずドイツの船をつくるにあたり、その資料を探す段階から始まりました。なので、まずそこで時間がかかります。そして実際に船のモデルを作り始めるとなると、戦艦ひとつをつくるのに約8カ月から9カ月かかります。
――ひとつのツリーを作るのに8~9カ月ですか?
Artur Plociennik氏:そうです。ひとつの戦艦のCGモデルを作るのに、それぐらいの時間がかかってしまうわけなんです。今回実装された船の数も多いんですが、それら各チームが作ったりしないといけないですし、また、見た目に関しても図面や写真などから掘り起こさないといけないので、可能な限り再現するためにも時間がやはりかかってしまうんですよ。
ドイツのこれら艦艇を作り始めるという事自体は、昨年の割と初めの頃から作業を進めておりました。ただ、やはり資料などを確保しないといけないので、ドイツの軍のアーカイブなどに入って、まず資料をあさったり、あとは実際ハンブルグのほうにある造船所に行って、ドイツ艦艇がいろいろ作られた造船所には未だに資料が残っているものもありますので、そういうのを買い取って、スキャンして、開発を進めないといけないので、そういった面でやはり調べるのがとても大変でした。
――今回実装した8隻の戦艦は、ビスマルクは当然としても、その他の艦艇は、どのような基準で選んだのですか?
Artur Plociennik氏:まず第1に、やはり歴史的に有名な艦艇。これらが主に選ばれていきます。歴史的に何かしら非常に有名な船だったり、または、一般的な方々も知っているような、あとはファンが多い船。そういうのを優先的に選んでいきます。それら以外にも、私たちの調査チームであったり、歴史家の方々だったりで、歴史を調査したり、設計図などを調べた時に、どういったジャンルの別の船があったかも調べてそこから1番適したものを選択してゲーム内に導入しております。
――ちなみになぜビスマルクはなぜ大和のようにTier 10ではなく8だったんですか?
Artur Plociennik氏:ツリーを作る際に、プレイの性能だけで選ぶわけではなく、可能な限り歴史に沿った成長の仕方などをさせたいと思っております。ですので、そういった意味でビスマルクなどは、その船の性能はもちろんですが、できるだけ歴史に沿った登場の仕方をしたいと思って、あの位置になっております。
今回ビスマルクがTier8になった理由としては、ビスマルク以外にも実は計画艦というものが当時ありまして、ヒトラーが発案、提案、命令したものがあるんですけど、そういったものの性能を比較した時にビスマルクをTier10にもっていく際は、ビスマルクをより改修したものにしないと、他のTier 10の艦艇とつり合いがとれないというのもありましたので、Tier 8で史実通りのスペックで出して、計画艦の方がよりTier 10に近い性能だったので、Tier 9と10に入れています。
――ドイツのTier 9と10は計画されたのみで実在しない艦ということですが、日本のTier 10の大和と比較して、どういったアドバンテージを持っていますか?
Artur Plociennik氏:ドイツの計画艦については、Tier10のものを単純に比較した場合、どちらかというとアメリカの戦艦のモンタナととても似ていて、使用感もモンタナと非常に似たものになります。ただ、ドイツ艦の特徴としては、アーマーの配置の仕方が非常に優れていますので、そういった意味でヒットポイントが多めになっていたり、バイタルを守る装甲になっていたりしますので、そういった意味では大和よりも生存性能が高いのかもしれません。また、主砲も大和ほど大きくはないのですが、代わりにその、装填速度が速かったりしますので、近距離から中距離においては、大和に対して非常に優位な立場になるかもしれません。
――ところで、「WoWS」のマッチングは、最大Tier1の差で組まれますか?
Artur Plociennik氏:はい、だいたいそうですね。
――だいたいと言いますと?
Artur Plociennik氏:最初ゲームが出たときは、Tierが2つまでの差が出るようになっていたのですが、今現在は、Tier 1から4にかけては、Tier 1の差しか生まれないようになっております。また、上位Tierでも、航空母艦ではTier 1の差しか出ないようにしていますし、今後もしかしたらほかの艦艇でも、Tier1差で収まるようにするかもしれません。
――そのTier差が1か2かによって、大和とビスマルクが戦うかどうかが決まりますよね。個人的には同じ戦場で戦って欲しい気がしますが、今のレギュレーションだとそもそもマッチングされなくなる可能性がある?
Artur Plociennik氏:そうですね。今後の、そのバランス調整や、皆さまの反応次第では、Tier 1差になった場合はない可能性があります。
――Tier 8以降の戦艦で使える水中調音というアイテムですが、これはどういった効果をもたらすものですか?
Artur Plociennik氏:これを使用することによって、普段見えないものが見えるようになります。それを使用している間、特定範囲内に、魚雷など本来見えない位置で発射されたものだとか、非常に視界が悪いものの位置が全部わかるようになるので、その範囲内であれば、例え発見されていない相手の艦艇だろうが、場所がわかるようになります。
これがなぜドイツ艦にあるかというと、ドイツ艦というのは、非常にそのほかの戦艦と比較した際に、長距離よりも、中距離から短距離で戦闘を行なうコンセプトとして作られておりますので、これを使うことによって、生存率が大幅に上がるようになります。魚雷をよけたり、敵の位置を把握したり、そういったものに役立つので、こういった特別なユニークな機能が備わっております。
――なるほど。今日本のプレーヤーは、例えば大和やアイオワを目指して日本やアメリカの戦艦ツリーを育てている人も多いと思うんですけど、ドイツの戦艦ツリーを改めて育てていくメリットって何なんでしょうか?
Artur Plociennik氏:このツリーをプレイすることによって、大きなメリットというのは存在しません。何故かと言いますと、各国それぞれ特徴的な部分がありますので、それが自分に合っているか合っていないかというのが1番のところです。特定のツリーを一部だけ強くしたりというか、そういったことは、ゲームのバランス上やりませんので、今日本のツリーがすごく気に入っていいて、そのプレイスタイルが合っているのであれば、その方がわざわざドイツを選ぶ必要はまったくないんです。ただ、逆に言うと、遠距離よりも、中距離や短距離で戦闘するのが得意な方や好きな方がいれば、そういった方々にはきっとドイツの戦艦ツリーっていうのは非常にマッチするんで、そういった意味ではそれがアドバンテージになるかもしれません。
艦艇建造計画は2020年まで一杯! 潜水艦実装の予定はなし
――今回のアップデート情報の中には、ドイツの戦艦ツリーだけではなく、イギリスの巡洋艦ツリーの情報も含まれていましたが、こちらはどういった艦船を準備していて、いつくらいに実装するんですか?
Artur Plociennik氏:こちらはGamescomが終わった後の実装になりますが、もうモデルは大体できていますので、バランス調整を掛けている段階です。実際に皆さまが触れられるようになるのは、おそらく9月が10月付近だと思いますが、これらどんどん追加されていくので、楽しみに待っていただきたいです。少しだけ追加される巡洋艦の話をしますと、基本的にイギリスの巡洋艦は、軽巡洋艦なので、機動力が少し高めですが、その代わり装甲はあまりありません。その代わり全部の巡洋艦が魚雷を搭載しています。
――日本の「WoWS」ファンの多くは、日本のツリーで遊んでいますが、日本ツリーのアップデート計画について、もし、話せることがあれば教えてください。
Artur Plociennik氏:今のところ、近々で日本のツリーに何かしら変更が入る予定はないんですが、実はまだ内緒なんですが、日本の駆逐艦をいくつか作っています。それらが完成すれば、日本のツリーに随時追加されていくかもしれません。
――それは何という名前の艦艇で、Tierはいくつという話は?
Artur Plociennik氏:それはまだ出来ないですね。それに関しては(笑)。
――わかりました。βテストの際にも質問しましたが、「WoWS」に潜水艦は追加するつもりはないですか?
Artur Plociennik氏:まず、潜水艦に関してですが、この話は、「WoWS」のサービスを開始する前からずっと出ております。今現在、このゲームは結構いいバランスで出来上がってきていると思っています。ただ、潜水艦という要素を入れることによって、ゲームを1から作り直すレベルでバランスが変わってしまいますので、また1からゲームバランスを調整したり、プレーヤーの方々が今楽しんでいただいているゲームに潜水艦を導入することによってまったく別ものにすることはやりたくないと考えています。ですので、もし将来的にそういったバランスの見直しが大幅に入らない良いアイデアが出れば入る可能性はありますが、今現在はそういったプランは一切ありません。ただ、もしゲームのバランスを著しく壊さないアイデアがあれば、それによって潜水艦が入る可能性はあるので、まったくないわけではなく、今現在いい方法が見えていないという形になります。
――今良いバランスになっていると言われましたが、高Tier帯の空母運用に関して、主力艦隊の直掩をするのが当たり前という風潮があって、それ自体はいいと思うのですが、いまのレギュレーションだと戦功に反映されにくいですよね。戦艦を雷撃して戦果を上げたい人からするとちょっとフラストレーションが貯まる状態だと思います。空母の運用に関して現状が適切なのか、それとも変える予定があるのが、そのあたりを詳しく教えてください。
Artur Plociennik氏:まずゲームのシステムとしては、チームプレイが大事なゲームなので、そういう風に直掩機が付いたり、船同士が集まってお互いを守りあったりというのはゲームの構造上まったくもって正しい行動です。ただ、それを実際に空母をプレイされている方や艦艇をプレイされている方が、楽しいかというと、本人たちのプレイスタイルにもよるので、そこのところは今後のフィードバックを聞きながらより多くの方々が納得して楽しめるようなゲームバランスにしていきたいと考えておりますので、今が完成形というわけではありません。
またゲームのバランスに関してなんですが、こういった行動は序盤には私たちの方でも予想できるもの、できないものがもちろんあるんですが、今現在経験値やゲーム内クレジットの収入というのは、主に攻撃をしたときや与えたダメージや敵を発見したとき、そういったものによって入るんです。今回高Tier帯に関しては、味方を守ったり支援したりということが非常に重要なポジションになるので、それをゲーム内の経験値や収入に反映するような調整を行なっております。ですので今現在、直掩をすることによってあまり経験値や収入が得られないので、損な役回りになっているかもしれないですが、そういうのがいずれ報われるようにちゃんと考えながら調整をしておりますので、その役割がとても上手い人にはそれなりの報酬があるようにしたいと考えております。
――なるほど、必ず報われる調整を入れるので、空母の皆さんはめげずに直掩活動を頑張ってくださいということですね。
Artur Plociennik氏:それもゲームとして非常に大切な要素の1つなので。別にないがしろにしているわけではありません。
――「WoWS」にも観戦モードが入って、そろそろ世界戦なのかなという期待もあるんですが、世界大会についてどのように考えていますか?
Artur Plociennik氏:まず以前にエキシビションマッチを行ないましたが、あれによって多くのことを学ぶことができました。かといって、あれをやったから今後すぐにトーナメントや世界大会、そういったものに進むかというと、それはまた違う話なので、まずはあれをやったことによって出てきた反省点や課題などを克服して、よりe-Sportsというレベルに近づけていき、大会開催へ繋げていきたいとは考えています。ただ近々でそういったことをやるプランはないので、より完成度を高めてからやりたいと考えております。
――今後どういった形でゲームを進化させていこうと考えていますか?
Artur Plociennik氏:私が導入したいものとしては天候関係のシステムを導入したいと思います。今現在マップ固定の天候はありますが、マップの中に様々な天候を入れて、例えば雨がすごい、スコールが降っているような場所だったり、霧が濃かったり、そこで戦ったり、またはそれを迂回したりといったゲーム内での要素を増やしたいと考えています。またゲームの容量自体も減らしたいと考えております。現在アップデートをする度に数GBの更新が入るのですが、少なくともそれを最低でも1GBくらいに減らしたり、そういったことをやりながらより皆様が快適に過ごせるようにゲームを改良していきたいと考えています。
――今回ドイツ、そしてイギリスのツリーを発表したばかりですが、今後まったく新しい国の艦艇のツリーが入る可能性は?
Artur Plociennik氏:もちろん今後もどんどん新しい国をやっていきたいと思います。プランだけでいったら、2020年までプランは詰まりに詰まって凄いことになっているんですが、今後どんどん、研究とか資料の確保が進めば新しいツリーや艦艇が増えていくと思います。イギリスの巡洋艦が終わったら、ドイツの駆逐艦なども入れたいんですが、だいたい理想で言えば、1年間に1つ、新しい国を追加していきたいと考えています。
――次に追加される新しい国はどこですか?
Artur Plociennik氏:フランスかイタリアのどちらかになると思います。
――「WoWS」のコンソール版の計画は?
Artur Plociennik氏:コンソールに関しては、まだやるかやらないかの正確なプランはありません、ただ、コンソールに移植できるように1回コントローラー操作を開発してプレイできるようにしたことはあります。そちらは素晴らしく遊びやすい感じになりましたので、やろうと思えばできるんですが、実際やるかどうかは今後の展開次第だと思います。いま私たちが集中しているのは、このゲームをより完成度を高めていくことなので、それがまずはできてからだと思います。
――今後のアップデートでPC版がゲームパッドでの操作に対応することはあるんですか?
Artur Plociennik氏:非常にいい質問ですね。ただ、それに関しては、今はあまりそういった要望を受けていないのです。もしそういったご要望が皆さまからくるのであれば、もちろんその可能性は大いにあると思います。なのでコントローラーでプレイしたいという方がいるのであれば、ぜひご要望を送っていただければ、実現に近づくかと思います。
――最後に日本のゲームファンにメッセージをお願いします。
Artur Plociennik氏:「WoWS」を遊んでいただいて本当にありがとうございます。東京ゲームショウでも何か発表できると思いますので、ぜひTGSも楽しみにお待ちください。
――ありがとうございました。