インタビュー

Wargaming.net CEO Victor Kyslyi氏インタビュー

「ガルパン」コラボは今後も継続! 新たな「World of」シリーズも開発中か

8月17日~21日開催

会場:Koln Messe

 ヨーロッパの雄Wargaming.netが、今年もgamescomへの大規模な出展を果たした。フラッグシップタイトルである「World of Tanks」と「World of Warships」の2本柱を軸に、新バージョンのフリープレイの試遊と、絶え間ないステージイベントで会場を盛り上げていた。

 今年もWargaming.netの主要スタッフのインタビューを実施することができたので順番にお届けしていきたい。まず1人目はWargaming.net CEOのVictor Kyslyi氏。自ら生み出した「World of Tanks」をはじめ、主要タイトルの今後の展開と、新規タイトルについて話を伺った。

戦車100周年を盛大に祝う「World of Tanks」。「ガルパン」コラボは今後も継続を約束

連日盛況だったWargamingブース

――まず初めにgamescom 2016出展の感想と手ごたえを聞かせて下さい。

Victor Kyslyi氏:毎年gamescomは少しずつ大きくなっていて、今年もまた例年通り素晴らしいショーを繰り広げられています。私の仕事はここで基本的に皆様とお話することなので、実際ブースを見る機会はないのですが、ここにはライブモニターが設置してあって、ブースの様子が伺えるようになってますので、非常に素晴らしい皆様に楽しんでいただけているかなと思います。正直もし向こうに見に行く機会があれば、きっと今回来ている30万人を超える方々がポケモンを捕まえてるんだろうなと楽しみですね。

――今回の出展テーマは何ですか?

Victor Kyslyi氏:まずヨーロッパで非常に愛されている「Master of Orion(マスター・オブ・オリオン)」なんですが、今回こちらのヨーロッパの方々に紹介して、これは私たちの今までのタイトルとは違い、F2Pではなくて、単体で発売されているタイトルです。

 また、私たちがご提供している「World of Tanks」においては、スウェーデンの戦車が近々登場することを発表しました。「World of Warships」に関しては、本日からドイツの戦艦が追加されました。その中にはドイツの有名な戦艦ビスマルクもあります。Tier8 ビスマルクに関しては現存していた船なんですが、Tier9と10に関しては企画されていたプロジェクト艦になります。ただ、先ほど開発メンバーと、Tier10のドイツ艦がどれくらい強いのかという話をしたのですが、日本の大和より強いということはないのでご安心ください(笑)。Tier10の中では、大和が一番なので大丈夫です。

――それは良かったです(笑)。ちなみに今年E3には出展せずに、gamescomだけに出展したわけですが、その理由はなんでしょうか?

Victor Kyslyi氏:E3には参加しなかったんですが、東京ゲームショウには必ず行きますのでそちらのほうは楽しみにしておいてください。まずご理解いただきたいのが、E3はBtoBの場所であまりプレーヤー、一般の方々とコミュニケーションをとる場所ではありません。E3はどちらかと言うと、各会社や企業の方々が自分たちの製品を紹介したり販売したりする場所です。その観点から見ていただいて、私たちは、今までは会社をもっと紹介する多くの方に知って頂くという形で進めておりましたが、今年からはより一層プレーヤーの方々を喜ばせるために動いております。なので、E3はそう言った理由で参加しておりません。今回のgamescomにおいても今までは例年はメディアの方々、関係者をお誘いしてパーティーをしていたのですが、今年はそちらを廃止しました。代わりに一般のプレーヤーの方々を多く招待して彼らをもてなすためのパーティーを設置いたしました。

今年はMark Iが実戦投入されて100年を迎える

――「WoT」では、今年に入って戦車100周年をずっと祝ってますけれども、Wargamingさんが100周年を強力に祝っている理由は何なんでしょうか。

Victor Kyslyi氏:私たちの企業方針のひとつとして、そういった歴史、そしてそれらを学ぶというものがあります。ここドイツだけではないんですが、アメリカだったりロシアだったり、いろんなところの博物館と協力してレストアのサポートをしたり、博物館に寄付をしたりと、様々なことをやっているわけです。やはりただゲームをするだけではなくて、プレーヤーの方々に歴史にもっと興味をもって頂いて、そして私たちのゲームや、やっているコンテンツなどから学んでいただきたいというのがあります。なので、こちらのイベントをサポートをしているのにも、そう言ったバックグランドがあります。

 そして学んでいただくというのを主に考えておりますので、ゲーム内コンテンツ以外にも今回こちらで体験できるVRのコンテンツだったり、YouTubeのコンテンツだったりで、歴史を学べるような、例えば戦車の中が見えるものだったり、ドキュメンタリー風にした戦車兵の方々のお話をまとめたもの、そういったコンテンツをどんどん作っていっております。

――先日、個人的な興味で、今年戦車100周年ということで、ボービントン戦車博物館にいってMark Iを実際に見てきたんですね。非常にデカい戦車で大変興味深かったのですが、このMark Iを実際にゲーム内で実装する予定はないのですか?

Victor Kyslyi氏:9月15日に100周年を祝って、PC版、コンソール版、Blitz版で、それぞれ特別なモードが提供されますので、何らかの形でMark Iが使えるようになるはずです。

――それはクエストか何かをクリアすると手に入るのですか?

Victor Kyslyi氏:特別なファンモードになるので、皆様に配布されてそれを使用することで何かしらのクエストやミッションにチャレンジできたり、専用のプレイモードが選べるようになったりするものになります。

――「バトルフィールド 1」では、Mark Iが登場し、実際に乗って戦うことができますが、それと同じようにWWI世代の戦車だったり、あるいは逆に現代の戦車だったり今の「WoT」の枠組みを広げる可能性ってあるのかなと思って。その可能性を聞かせていただけますか。

Victor Kyslyi氏:まだ、そういったそのすべてを広げてそこまで時代背景を広げる予定はないのですが、今回このイベントを機に、そういった可能性もあるかもしれません。

――日本でも今年PS4版「WoT」のリリースがスタートして、コンソール版「WoT」が賑わっています。個人的にはテレビ表示に最適化されて、戦車が大きく映し出されて気に入っているんですけれども、PS4版にどのような手ごたえを持っているのか聞かせてください。

Victor Kyslyi氏:始まってすぐの段階で多くの日本のプレーヤーの方々がこのゲームに参加してくださいまして非常に大きな数値になっております。非常に成功しているなと思っております。また、「ガールズ&パンツァー」や様々なコラボレーションの話が進んでおりまして、実際ゲーム内で戦車を登場させるなどコンソール専用のコンテンツというものも出てきています。今後も引き続き成長させていきたいと思っております。

コラボでは「ガルパン」仕様のIV号戦車が獲得できた
現在急ピッチでアップデートを継続している「World of Warships」

――ちなみに、「ガルパン」コラボは日本では非常に高い人気でしたけれど、「ガルパン」コラボの続きはないのですか?

Victor Kyslyi氏:「ガルパン」コラボは、前まではアジアサーバー限定だったのですが、現在は今のところグローバルに変っています。今後もコンソール版に限らず、PC版でも、新規コンテンツが出てくる予定になっております。ですので、もしかしたら東京ゲームショウで何かしらの発表ができるかもしれませんが、まだちょっとなんともいえません。

――7月にコンソール版の初の大会が開かれましたよね。今後コンソール版で世界大会を開く可能性はありますか?

Victor Kyslyi氏:もちろんこういったトーナメントは今後も増やす予定です。今までは手動でトーナメントなどをセットアップしていたのですが、今回コンソール版やBlitzなどに、自動的に大会が行なえるようにトーナメントシステムといったものを別途導入いたしました。それを試すために今回PS4のトーナメントなども行なっているのですが、実際非常にいい結果を出しておりますので、今後それらを使ってどんどんトーナメントやe-Sports的なもの、コンペティティブゲームと弊社では言っているのですが、そういったコンテンツを増やしていく予定です。

――「WoWS」に関しては、サービス開始から10カ月が経過しましたが、どのような手ごたえを感じていますか?

Victor Kyslyi氏:今現在「WoWS」は非常に良い成長を遂げていると思っています。「WoT」とは全く違うゲームなので、やはり進め方、アップデートの仕方、ゲーム内容の変え方が全く違います。いま私たちが重視しているのは、より多くのフィードバックをプレーヤーからいただいて、彼らの求めるようにゲームを作り上げていくことだと思っています。いまサンクトペテルブルクの開発チームは非常に強いやる気を出していますので、新しい方針として、3週間に1度のアップデートを行なうことを約束させていただきました。今後急成長していくと私は信じています。

――「WoWS」のコンソール展開はないのですか?

Victor Kyslyi氏:「WoWS」が出て、まだ10カ月しかたっていないわけなんですが、「WoT」関しては、正式サービスからもう5年以上経っているので、ゲームとして完成していたので、今回コンソールに移行するのが非常にスムーズにできたのですが、「WoWS」に関してはまだ若いゲームですので、私たちの中で他のプラットフォームに移行させるほど完成しているとは思っていません。まずこちらをしっかりと完成させてから、そういった話を出していきたいと思っております。

「World of」シリーズの今後の展開について

――現在、Tank、Warship、Warplaneと3つのシリーズがありますが、今後「World of」シリーズはどのように進化していくんでしょうか?

Victor Kyslyi氏:まだ詳しくはいえませんが、今シアトルで1つ秘密のプロジェクトが進んでいます。今日はその話はできないのですが、これからも新しい何かが登場する可能性はありますので、期待してお待ちください。

――それは「World of」シリーズですか?

Victor Kyslyi氏:それに近しいものだと思います。

――その発表はいつくらいになるんですか?

Victor Kyslyi氏:時期は実は非常に難しくてお答えできないんです。なぜかというと、私たちは今まで作ったゲームを真似たものだったり、近しいものを出すわけではなくて、常にまったく新しいコンテンツを出して、皆さんに新しい経験と体験をお送りしたいと思っています。ただ、新しいだけではなくて、面白くなければいけないので、それをいろいろ試行錯誤しているので、実際に私たちの中でこれが良い作品だというのが出るまでは正直お話しできません。

――VRについてはどのように考えていますか?

Victor Kyslyi氏:まず私たちの中では、このVRというのは非常に成長していくものだと考えております。なので、最前Oculusが出て以降、HTC Viveが出たり、PS VRが出たりといろいろ出てきているわけですが、ただまだ現在成長途中ですので、一般のご家庭にまで普及しておらず、まだ成長段階だと認識しています。

 ただ、だからといって何も手を付けていないわけではなくて、今現在すでに出ているYouTubeの映像だったり、VRで体験できる360度映像を多く出しております。またグランドファイナルなどでは、ゲーム内のオブザーバーモードをこちらで見られるようにといった新しい試みもしっかりやっております。ですので、私たちがまったくこちらの分野に手を出していないわけではないので、今後もしかしたら皆様の手元にVRを使った何かを提供できると思いますが、そちらはまだもう少しVRが成長して、一般に浸透してからやりたいと思っています。

――コンペティターの「War Thunder」は、ゲーム本体がVRにフル対応しましたが、例えば「World of Tank」がVRに対応して、迫力の画面でゲームが楽しめることはありますか?

Victor Kyslyi氏:将来的にもちろんそういったことはあるかと思いますが、今現在すでに「War Thunder」がそういうことをしているので、後追いで同じことを行なうつもりはありません。差別化という点で現在我々はYouTubeの映像など、ビデオコンテンツを充実させているところなのですが、もちろんゲーム内でそういう声が出て、「War Thunder」とは全く違う形で、皆様にVRのゲームなりをお届けできるのであれば、もちろんそういうものはどんどん出していく予定です。

【WAR KNOWS NO NATION. 360° Panoramic Video】
Wargaming.netが公開している360度映像

――今年4月に私も参加させていただいたポーランドの「WoT」グランドファイナルは、最後の最後まで非常に手に汗を握る闘いが展開されましたが、今後の世界大会に対する抱負やビジョンについて教えてください。

Victor Kyslyi氏:e-Sportsというのは私たちだけではなく、ほかの企業と一緒になって頑張って育てているものでもありますので、私たちはほかの会社同様サポートをしている形になります。特に大きな目標や野望はなく、私たちはイベントをやって、そこから反省点を探し出し、次のタームでよりどうやったらより良くなるかを考えながらイベントを常に成長させていって、より多くの方々を楽しませる方法をどんどん見つけていって実践していきたいと考えております。

【World of Tanks PC - The Grand Finals 2016 - Top 10 Moments】
今年のグランドファイナルのハイライトを10分で振り返る動画。1位はやはりあの最終戦

――「World of Warplanes」ですが、こちらは日本で楽しむことはできないのでしょうか?

Victor Kyslyi氏:もちろん「World of Warplane」を日本の方々に提供したいとは考えていますが、まだゲームが成長段階なので、こちらは「WoT」ほど成功しているとは言えないので、こちらをもう少し改良して、よりカジュアルなゲームにして、多くの方々が簡単に楽しめるようにしたいと思っております。それができ次第、アジアの方々にもぜひ楽しんでいただけるように正式サービスを開始したいと考えております。

――ようやく完成した「Master of Orion」についてですが、日本展開の計画について教えて下さい。

Victor Kyslyi氏:まずは日本語版はすでに作業中です。正式版はまだ出ていないのですが、ちゃんと日本の方々にも提供させていただきます。ただ、こちらのゲームはとてもクラシックなゲームで、ヨーロッパでは昔から多くのファンがいますが、日本の方々に対してなじみがあるゲームかというと、それはまた難しい質問になってきますので、何ともいえませんが、ぜひ日本の方々にもこちらのゲームをSteamなどで触っていただいて、楽しんでいただきたいと思っています。

――東京ゲームショウへの出展を発表しましたが、去年はPS4版をSIEさんと一緒に発表されたりしましたが、今年も何かサプライズはありますか?

Victor Kyslyi氏:弊社の過去の方針などを見ていただければわかるのですが、基本的に事前にちょこっとずつ情報を出したりはしません。なので実際当日にしっかりとアナウンスができる準備ができたものを、がっつりアナウンスさせていただきますので、そちらはお楽しみにしておいていただければと思います。

――楽しみにしています。日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

Victor Kyslyi氏:まず最初に我々が日本に進出したときは、日本の方々に向けて何も用意できませんでした。ただ、「WoT」のサービスを始めてからは、ゲーム内で日本の戦車が登場したり、「WoWS」には日本の艦船が出たり、また様々なローカライぜ―ションを行ない、「ガールズ&パンツァー」といった地域特有のコラボレーションなど様々なイベントをこれまでやってきました。

 何が言いたいかというと、私たちの中で日本はとても重要な場所だと信じており、そしていろんなものを皆様にご提供したいと考えておりますので、今後も様々なものを皆様にご提供できるように勧めていきますので楽しみに待っていてください。

 最後にちょっと余談なんですが、現在私は日本の重戦車ツリーの4式戦車に乗っておりまして、Tier 10の5式戦車まであと10万経験値なので、たぶんTGSまでに日本の重戦車ツリーのTier 10は作れると思います。それくらい日本の戦車が好きなので、ぜひぜひ皆さんも遊んでみてください。

――ありがとうございました!