インタビュー

海外で発売直前! 「Deus Ex: Mankind Divided」開発者インタビュー

新たなゲームモード「Breach Mode」の魅力について聞いた

8月17日~21日開催

会場:Koln Messe

 海外ではいよいよ8月23日に発売を控えた「Deus Ex」シリーズ最新作「Deus Ex: Mankind Divided」。前作「HUMAN REVOLUTION」の発売から5年、発表からずいぶん待たされた気がするがようやく完成した。日本ではまだ発売時期すら発表されていないのが気になるところだが、すでにローカライズはスタートしているという。ただ、今の時点で発売日がアナウンスされていないということは逆算するとホリデーシーズンの投入は絶望的で、2017年以降の発売になる可能性が高い。「Deus Ex」ファンや海外ゲームファンにとっては残念なニュースだが、米国を代表するストーリー重視のアクションゲームだけに、時間は掛かってもいいからクオリティの高いローカライズを期待したいところだ。

 gamescom 2016では、完成したビルドをプレイアブル出展し、来週の発売に向けてアピールに余念がなかった。E3に合わせて発表された新しいゲームモード「Breach Mode」を大きくクローズアップし、「HUMAN REVOLUTION」からの変化を強調していたのも印象的だった。今回は「Deus Ex: Mankind Divided」でゲームプレイディレクターを務めるPatrick Fortier氏とのインタビューで、発売に向けての抱負や、完成した作品の魅力について伺ってみた。

最大の難所は複雑なゲーム性のゲームパッドへの落とし込み

「Deus Ex: Mankind Divided」でゲームプレイディレクターを務めるPatrick Fortier氏
スクウェア・エニックスブースの「Deus Ex: Mankind Divided」コーナー。Breachをクローズアップしている
DUALSHOCK 4を手にコントローラーへの最適化作業の苦労を語るFortier氏

――ゲームプレイディレクターの役割について教えて欲しい。

Fortier氏:たとえばクリエイティブディレクターは、ゲームを商品として、ストーリーやアニメーション、ゲームプレイなどを含めてゲーム全体を見る役割だが、ゲームプレイディレクターは、キャラクターのコントロールやアクションなどゲームプレイを中心に見ている。でも実際にはそのほかの色んなところも見ている。

――ゲームプレイディレクターとして、プレイフィールについてもっともこだわったところは?

Fortier氏:私のチームはキャラクターコントロールやプレイフィールだけを見ているわけではなく、もっとも上のレイヤーで、どのオーグメンテ-ションがいいかとか、武器のアイデアを出して作って行くなど、プレイ全体を見ている。チームが大きいのでチーム間でとコミュニケーションが取りやすいように連携を取っている。ゲームプレイ上のチーム共通の目標は、「Deus Ex: Mankind Divided」ではアダムジェンセンという人間を超越したヒューマン2.0、1バージョン人間より上がったキャラクターを主人公にしているが、それを説明するだけでなく、どうゲームプレイ中に感じられるようにするか、普通の人間とは違うのか、こんなこともできるのかということをチーム全体の課題として注力していった。

――開発でもっとも苦労したところは?

Fortier氏:まず開発初期は、色んな人が色んなアイデアを持ってきて、それを最終的にどうゲームとして組み上げるかが大変だった。一番大変だったのは去年で、出来上がったものが組み上がってきて、こことここは繋がりが弱いだとか、伝え方が弱い、見せ方を変えたいということが一緒になって初めて見えてきて、それをひたすらプレイしながら製品版に近づけていくプロセスが一番大変でした。

―― ゲームプレイの面で大変だった点は?

Fortier氏:ゲームプレイでは、敵を見る、銃を撃つ、会話するといった30近くのアクションを、16個のボタンに埋め込むのが大変だった。コントローラーの操作を決定して、落とし込んでいくプロセスは本当に大変だった。FPSをやった人がFPSの操作感を壊さないように遊べることを目標にしていて、それは達成することができた。「Deus Ex」はFPSではないが、FPSの操作感でも快適に遊ぶことができるようになっていると思う。たとえば、射撃、エイムはFPSと同じになっているし、さらにプラスしてオーグメンテーションの要素があるので、スティック押し込みでホールドして一瞬で武器を切り替えるといった操作もでき、実際プレイして移動してる時に一瞬で武装を切り替えられるようになっていて、そこはうまく落とし込めたかなと感じている。

――開発期間は?

Fortier氏:だいたい5年ぐらい掛かっている。前作の「HUMAN REVOLUTION」が5年前で、完成後にチームが休暇を取ったり、新しいテクノロジーを調べたり、次のゲームのアイデアを練ったりしていたので、そこからカウントするとだいたい5年ぐらい。

Breach Modeはユーザーのクリエイティビティと、ゲームのリプレイバリューが活かせる新モード

――「Deus Ex: Mankind Divided」で新たに実装される新しいゲームモード「Breach Mode」について教えて欲しい。

Fortier氏:Breach Modeは、ストーリーとは全然別のモードで、サイドクエストのような存在でもなく、メインストーリーとは完全に切り離されています。ゲームセンターでワンコインで遊べるアーケードっぽいモードで、主人公はハッカーになって、データバンクのサーバーにハッキングしてデータを盗み出し、そのスコアをフレンドと競ったり、自分のベストスコアを追求するというモード。サーバーの奥に侵入してスコアを稼ぐことで、新しいコンテンツがアンロックされていく。ゲームプレイそのものは「Deus Ex」本編と同じ感じで遊べる。

【Breach Modeスクリーンショット】
ゲーム本編とはがらりと雰囲気を変えたBreach Mode。72ものステージが用意されているようだ

――Breach Modeのコンテンツボリュームは?

Fortier氏:初期段階で72ステージ。今後も追加予定。プレイしてみるとわかるが、かなり奥が深い。たくさんのステージがあるので何時間というレベルではなくて、何日も遊べると思う。

――ストーリー重視のゲームに、別のゲームモードを新たに追加した理由は?

Fortier氏:ストーリー沿ってプレイしていると、どうしても自分の意思と異なる選択をしなければならないことがあるが、Breach Modeでは、ストーリーや設定に引っ張られずに自由にプレイする。性能の高い銃を思う存分使ってみたり、ステルスプレイに徹したり、豊富な武器を使いこなしたりなど、このゲームのリプレイバリューの高さを活かすためにあえて切り分けた。スコアベースのゲームになっているので、何回も遊んで、何回も違う進め方で攻略できる。

――作り手として「Deus Ex」シリーズの魅力は何だと思うか?

Fortier氏:どういう立場で見るかによって変わるが、デベロッパーとしては、深みがあること。それはストーリーという点でも、ゲームプレイという点でもそうで、開発中に、毎日違う方法、今日はステルス、今日はコンバットという風にプレイしているとプレイするたびに発見がある。ここから進むことができるのかとか、ここで彼を仲間にすると展開がこうなるのかとか深みがある。そこが魅力的なポイント。

 プレイヤーとしては何もわからない何ができるかもわからない状態で始めても、オーグメンテーションを駆使して遊ぶことで、遊び手の創造性にゲームが応えてくれる。それが面白い。他のゲームはそこに行っちゃダメだよというところがこのゲームは、むしろどんどん好きなところに行って欲しい。そこも魅力的。

――前作はストーリー分岐やマルチエンディングが存在したが、今回のストーリー展開は?

Fortier氏:テロをはじめとする様々な出来事が発生するが、大筋の物語は割とリニア。ただし、その中で無数の分岐がある。誰に話しかけるか、装備をどうするかによって、大筋に流れに変わらないものの、細かいストーリー分岐がある。

――今回はマルチエンディングか?

Fortier氏:そのとおり。ただし、いくつあるかはわからない。なんでわからないかというと、分岐ではなく、今までやってきたことがすべてエンディングに影響を与えるからだ。だから、厳密にいくつとは数えられない。全部のプレイがエンディングに影響するので、直前のセーブデータを読み込んでもエンディングは変わらない。 エンディングもいくつかの種類、方向性があって、この世界をどう生き抜いてきたかというのがよくわかるエンディングになっていると思う。

――「Deus Ex」シリーズの今後の行方は? アダム・ジェンセンの物語は終わるのか?

Fortier氏:いい質問、ただなんとも言えない(笑)。ぜひプレイしてみてほしい

――日本ではまだ発売日が未発表だが、気になる日本発売時期は?

Fortier氏:グローバルでの発売は来週(8月23日)だが、日本版の発売時期に関する発表はまだないため、海外より少し時間があいてしまうのかもしれない。

【スクリーンショット】