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「Deus Ex: Mankind Divided」開発者インタビュー
“人と機械”の対立を描く、“自分自身”に問いを投げかける作品に
2016年6月17日 07:46
「Deus Ex: Mankind Divided」は前作「DEUS EX:HUMAN REVOLUTION」からの続編となる。今回北米で8月23日発売のアナウンスが行なわれた。対応ハードはPS4/Xbox One/Windows。
発売に先がけ、E3のブースでは本作の試遊台も設置され、人気を博していた。また、本作のテーマを扱った実写ドラマや、世界を拡張するスピンオフ作品なども展開する。今回、本作のゲームプレイディレクターを務めるPatrick Fortier氏に具体的なゲーム内容、テーマなどを質問してみた。
たくさんの選択肢。ゲームプレイも自由度を追求
最初にFortier氏は改めて本作の概要を語った。「Deus Ex: Mankind Divided」は前作の2年後を描く。前作の終盤ではオーグメンテート(機械化)した人々がハッキングを受けて暴走するという事件があり、機械化した人間を危険視する世論ができている。今作では“生身の人間と機械化された人間との対立”というテーマに踏み込んでいく。
主人公アダム・ジェンセンは自ら望んだ形ではなく、企業に勝手に機械へと体を変えられてしまったが、2年たち、自らの体を受け入れ、世界に渦巻く陰謀に立ち向かっていく。対立を深めていく世界の中で、アダムはどのような役割を果たすのだろうか。
Fortier氏は今作では前作以上に“選択”が重要な意味を持つという。ゲームはより流動的、ダイナミックになっている。アダムも様々な能力をより多彩に使いこなす。具体的にはY(縦)の軸へのマップの拡張、より幅広いマップ、多彩な選択肢が提示され、目的地へのルートもさらに広がっている。瞬時に離れた場所に移動する「イカロスダッシュ」といった能力などもある。
今作ではエネルギー管理も進化しており、多彩な能力が使える。大別すると「エネルギーを消費する強力なもの」、「細かく最チャージできるもの」にわかれ、全身を装甲が覆い一定時間敵の攻撃を受け付けない「タイタンシールド」や敵を衝撃波ではじき飛ばす「ペップスブラスト」は前者で、使うとエネルギーが減り、マップ上でエネルギーを拾わなくては再チャージできない。感覚を強化する「スマートビジョン」や足音を消す「サイレントウォーク」などは後者であり、一定時間で再利用できる。
今作ではアダムはよりパワフルな存在になっているとFortier氏は語った。ペップス、ナノブレード、電気を発するテスラと3つの武器を内蔵している左腕ガンアームはアダムの強さを象徴するものである。右手で銃を撃ちながら、回り込んだ敵を左手で迎え撃つことも可能だ。ペップスは敵をはじき飛ばす衝撃波だが、筋力を強化しなくては動かせないものを吹き飛ばしたり、投擲された手榴弾を跳ね返すことも可能だ。敵の武器をたたきをとすことも可能だという。
今回オーグメンテーションの使用は非常に流動的だ。戦闘だけでなく移動にも使用できる。メニューもホイールを呼び出して瞬時に使えるようにしている。コントローラー向けにも最適化されており、いくつものボタンを駆使することで、多彩な活躍ができるという。このため、前作でははっきりわかれていたアクション部分と、探索部分もシームレスになっている。これは新しい「DAWNエンジン」がもたらしているという。また前作のような強制される戦闘はなく、全く戦わず、1人も殺さないでプレイすることも可能だ。もちろんそういった縛りプレイは難易度は高いが、実現できるようになっている。
Fortier氏自身は様々な能力をバランスよく使う戦い方が好きだという。その場でベストだと思うオーグメンテーションを駆使する。むやみに敵を殺すのではなく、非殺傷系の武器が好きとのことだ。イカロスダッシュが使えなくても筋力増強でオブジェクトを動かすことで上に移動できたりと、様々な選択肢が用意されているので、そこを楽しんで欲しいとFortier氏は語った。Fortier氏は仕事柄様々なアプローチで本作を何度もプレイしているが、どんなプレイスタイルにも、きちんと応えてくれる作りになっているとのことだ。
「機械化された人間は生身には戻れないのか?」という質問もぶつけてみた。作品世界ではそれは不可能だという。このため対立は解消できない。「Deus Ex: Mankind Divided」は今回の質問のように、様々なテーマで、“機械と人間”を問うアイディアも用意されている。サイドミッションではテーマをあえて強調したものなども考えているという。
本作はエンディングは複数用意されている。それはグッドエンディングか、バットエンディングかはユーザー自身の中にあるとFortier氏は語った。アダムは選択をしながらやがて物語の結末にたどり着く。その時世界は変化する。その世界をどう受け止めるか、プレーヤーの意識で答えは変わるという。
そして、「ニューゲーム+」の存在も明らかになった。オーグメンテーションのパワーアップなどを引き継いだ形でのゲームプレイが可能だ。やり込み派のプレーヤーにはアダムをとことんまで強化することが可能だ。
本作は発売が伸びたが、様々な点をブラッシュアップした。余計に思える会話を減らしたり、テーマを象徴するようなシーンを足したり、開発チームがゲームを隅々まで検証することで、本作をさらに磨き上げたとFortier氏は語った。現在は完成に向けてBGMとサウンドエフェクトを調整している。このため、E3期間中も音楽班はがんばっているとFortier氏は語った。
このほか、「VRへのアプローチ」も挑戦しているとのこと。まだ技術デモの段階で、どのような形になるかは未定だが、この試みが今後どうなるかにも注目したい。
最後にFortier氏は日本のファンへのメッセージとして「本作が日本で発売できることはとてもうれしい。本作が問いかけるテーマは、ひょっとしたらプレーヤーの皆さんの自分自身を問うことになるかもしれません。そしてクリエイティブに、自分のやりたいことをゲーム内で追求してもらえればと思います」と語りかけた。