【特集】

乙女たちを虜にした格ゲー「KOF」シリーズを知れば「KOF for Girls」がもっと楽しくなる

11月8日 配信

基本プレイ無料(アイテム課金制)

 JVCケンウッド・ビクターエンタテインメントのAndroid/iOS用格闘×恋愛ADV「THE KING OF FIGHTERS for GIRLS(以下KOFG)」が正式サービスを開始した。

 「KOFG」の世界観は、「THE KING OF FIGHTERS 2002 UNLIMITED MATCH(以下、KOF2002UM)」をベースに作られている。「KOF」シリーズは元々女性ファンが多い格闘ゲームだ。それは、もちろんキャラクターの見た目のカッコよさも関係しているが、それ以上に世界観や、キャラクターのバックボーンが丁寧に描かれていることが大きな要因だ。

【KOF2002UM】
Steam版「KOF2002UM」

 「KOF」シリーズには「95」、「96」、「97」の3作品で語られる通称「オロチ編」と呼ばれるストーリーと「99」、「2000」、「2001」の3作品で語られる「ネスツ編」、「2003」、「XI」、「XIII」の3部作で描かれる「アッシュ編」という3つのストーリーがある。「KOF2002UM」はオロチ編とネスツ編完結後の中休め的な作品なので、オロチ編、ネスツ編の基本を押さえておけば「KOFG」でのキャラ達の関係性などをより理解しやすくなる。

 さらに「餓狼伝説」や「龍虎の拳」など、SNKの過去の人気ゲームについても基礎知識があれば、テリーやリョウたちの掛け合いもさらに楽しめるものになるはずだ。そこで今回は、ネタバレにならない程度に「KOFG」に登場している「KOF」シリーズで主役級の5人の裏設定などを紐解いてみたい。

【KOF2002UM】
シリーズを通して描かれる様々な人間関係が「KOF」の魅力だ

謎多き存在オロチと戦う「オロチ編」

 オロチ編では、神話の時代にヤマタノオロチを封じた草薙一族、八神一族、神楽一族の継承者3人が、現代に蘇ろうとするオロチを再び封じるために戦うというストーリーが展開する。オロチは人類創世以前より地球に存在している意識体。人の歴史を見守るうちに、やがて人を敵として滅ぼそうとするようになる。

 草薙京や八神庵は、太古よりオロチを封じてきた一族の末裔であり、本来なら敵対する関係にはない。だが過去に起きたある出来事が原因で、現在は敵対関係にある。

草薙京

いつも偉そうな京、実はストレートに自分の気持ちを表現するのが苦手な照れ屋な面も

 草薙京はオロチ編の主人公であり、「KOF」シリーズすべての作品に登場している重要人物。草薙流古武術の継承者であり、性格は一言でいうと「俺様」。怖い者知らずの自信家で、誰に対しても常に上から目線の不遜な態度で接する。

 「KOFG」では、最初は主人公に対してかなり当たりが強く、嫌われているのではと心配になるほどだが、実はとても仲間思いで、主人公のことも心配しているのにその本心を素直に言えない子どもっぽい一面もある。

 「KOF'94」の頃は高校生だったが、その後留年を繰り返した末に「ネスツ編」でうやむやになってしまった。焼き魚が好きという設定があり、「KOFG」でもこの設定を活かしたエピソードが登場する。

親友の紅丸(右)もシリーズを通して出場しているレギュラーメンバー、押しかけ弟子の真吾(左)は「KOF'97」で登場した
本シリーズではチームを組んでいることもある大門五郎。「KOF2002UM」ではもちろんプレーヤーキャラとして使用することができる

 傲岸不遜な言動の多い京だが、草薙の宿命や庵に対してもきちんと真正面から向き合っている。ただそういう真面目なところを人に見られたくなくて、クールなふりをしている感じは可愛くもある。

 十分に関係を築くまでは、言葉足らずなきつい物言いで主人公を傷つけてしまうこともあるが、そこは親友の紅丸にしっかりフォローしてもらいつつ、京に認めてもらえるようにしっかりサポートしていこう。

八神庵

ツンデレどころか、ツンツンな庵。ぶれない塩対応がだんだん癖になるかも……

 八神流古武術の継承者であり、京の命を狙うライバル。性格はクールで、凶暴。いつも「死ね!」、「殺す!」と物騒なことばかり口にしている。特に京を前にすると、もう京の事しか目に入らない。

 八神家と草薙家の因縁は深く、660年前から続いている。八神家はかつて八尺瓊(やさかに)家と呼ばれるオロチを封印する力を持つ家系だった。だが、オロチの力に魅入られた八尺瓊は、オロチの封印を解き、オロチ八傑集を蘇らせてしまう。八傑集の1人は謀略によって八尺瓊をだまし、草薙と対立させる。八傑集に騙されているとは知らず草薙への憎しみを募らせた八尺瓊は、オロチと血の契約を結び、八神と名を変えた。オロチとの血の契約によって、庵の炎は青白く染まっている。

オロチの血に染まっている庵の炎。クールな彼だがスピンアウト作品では女装したり、蕎麦屋になったりもしている

 呪われた血のために、八神家の人間は代々短命であり、理性を失って誰彼構わず襲い掛かる血の暴走に陥る心配もある。いつ爆発するかわからない宿命を背負っているせいで、庵は誰に対しても心を開かず、いつも独りで行動している。そんな陰を感じさせるところが、逆に女性を引き付けるのか「KOF」シリーズでも屈指の人気を誇っている。ちなみに、実はベーシストとしてバンド活動をしているという一面があり、家族も健在で両親と妹がいるという設定もある。

 クールでかっこいい庵だが、余りにも京にこだわりすぎて追いかけ続ける必死な姿が、逆に可愛いという声も一部にあるようだ。実際「KOFG」では、メインストーリーでもトレーニングやファイトでも、主人公と2人だけの交流ですら京の話をするほどの京オタク。今回の登場キャラクターの中でK'(ケイダッシュ)と並んで恋愛が下手そうな庵だけに、彼とのストーリーには注目したい。

秘密結社の野望を打ち砕く「ネスツ編」

 「オロチ編」から雰囲気を変えた「ネスツ編」は、秘密結社ネスツの野望を巡る戦いとなる。京はネスツに捕えられているので、ネスツ編ではゲストキャラクター的な扱い。代わりに主役として登場するのがK'だ。

K'(ケイダッシュ)

ツンデレその2。庵とは違ってK'はコミュニケーションを取るのが苦手なだけなので、そこが可愛いところでもある

 白髪に褐色の肌、ライダースジャケットにサングラスというK'。京の能力の一部を移植されているため、炎を操ることができる。ただし、右手からしか出すことができず、さらに制御するために常に赤いグローブを身に着けている。

 実は「KOFG」登場キャラクターの中では包や真吾に続いて若い。だが、秘密組織ネスツによって拉致され、改造されたうえに記憶まで奪われたという辛い過去のせいで心を閉ざしている。

 寡黙で何を考えているのかわかりにくいK’だが、実は単に人見知りなだけで、「KOFG」の中でも、ぶつかった主人公に対して最初は冷たい対応だったが、マキシマに注意されるとすぐに謝るような素直な一面もある。いつも保護者であるマキシマにべったりなK'が、主人公に対してどんなふうに心を開いていくのかが、K'シナリオの見どころだ。

マキシマとは「'99」ででチームメイトとして登場したときからの付き合い。マキシマは全身の80%を機械化したサイボーグだが、甘いものが好きな気のいいおじさん

SNKの名作2作品の主人公たちにも注目!

テリ―・ボガード

アメリカンで強引なノリで主人公を巻き込んでくるテリー。でも笑顔ですべてを許せてしまう

 SNKの看板キャラクターといってもいいテリー・ボガード。トレードマークは長い金髪と、「Fatal Fury」と書かれた赤いキャップ。頼りになる兄貴であり、アメリカ人らしい陽気さで場を明るくするムードメーカー。サウスタウンの平和を守る伝説の狼であり、「KOFG」では前回「KOF」の優勝者として登場する。「KOFG」ではリョウたちとともに、大人の魅力を見せてくれるテリーだが、彼も辛い過去を背負っている。

弟のアンディ・ボガード(右)と、親友のジョー・東(左)とは「餓狼伝説」時代から苦難を共にしている仲間同士だ

 テリーは弟のアンディとともに孤児院で育ち、孤児院の支援者だった格闘家のジェフ・ボガードの養子になる。だが、ジェフはサウスタウンの支配者ギース・ハワードに殺害され、テリーとアンディは復讐を誓う。テリーが主人公である「餓狼伝説」は、サウスタウンでのギース一味との戦いが描かれる。ちなみに、ビリー・カーンは、ギースの片腕として登場する。

ビリー・カーン(中央)と山崎竜二(左)はどちらも「餓狼伝説」に敵として登場したキャラクター。ビリーは一見アナーキーだが、可愛い妹を溺愛しており、洗濯が趣味と家庭的なところがある。ギース・ハワードに心酔しているが、「KOFG」でも変わらずギースへの忠誠心を見せてくれる

 「KOFG」でふとした瞬間にテリーが見せる陰は、彼の不幸な生い立ちが原因かもしれない。テリーとの関係は、明るく陽気にぐいぐい押してくる積極さに気おされつつも、テリーが心の片隅に秘めている欠落を埋めるようなものになるかもしれない。

主人公の手作りサンドイッチに感動するテリー。アメリカンな感情表現も彼の魅力だ

リョウ・サカザキ

ド真面目という言葉がぴったりなリョウ。真面目過ぎて融通が利かないところもあるが、安心感はピカイチ

 リョウ・サカザキは「餓狼伝説」と並ぶSNKの名作対戦格闘ゲーム「龍虎の拳」の主人公。「龍虎の拳」は、超必殺技を始めとした現在の対戦格闘ゲームの基礎を築いた作品であり、格闘ゲーム初の乱舞技「龍虎乱舞」は当初はコマンドが公開されない隠し必殺技だった。

 リョウも幼いころに母親を亡くしたり、父親が行方不明になったりと、苦労しているが、現在は父親タクマ、妹ユリ、親友のロバート・ガルシアらと極限流空手の道場を経営しており、重い宿命を持っているキャラが多い「KOF」の中では、どちらかと言うとギャグっぽいパートを担当することも。だいたいは真面目なリョウが、破天荒なユリやタクマ、ロバートたちに振り回されていることが多い気がする。結構苦労人なのだ。

道場への入り方を注意される。でも、怒っているわけではなく、とにかく真面目なだけ!

 性格は真面目で謙虚。多少空気が読めない鈍感なところもあり、「KOFG」ではリョウから道場を経営するための心構えを学ぶことになる。真面目で手を抜けない性格なので、少し怖く感じられるところもあるが、テリーと同じく朗らかで明るい性格なので、優しく主人公を導いてくれるはずだ。

親友のロバート・ガルシア(中央)はリョウと正反対な性格。包(右)は「KOF」ではリョウたちのチームではないが、「KOFG」では一緒にチームを組んでいる

ファイターたちとのドキドキの恋愛

 今回は「KOFG」に登場するキャラクターのうち、過去の原作作品にて主役を務めた5人を紹介した。俺サマな京、京しか眼中にない庵、人見知りのK'、明るくて積極的過ぎるテリー、真面目なリョウとさすがに個性的な面々が揃っている。彼らがあまりにもマイペース過ぎるので、傍でいつもサポートしているアンディや紅丸、ロバート、マキシマらはみんな気遣いができて優しいタイプが多い気がする。

 女性に優しいロバートや紅丸たちとの恋愛は、それはそれでお姫様気分が味わえる格別なものかもしれないが、苦労させられてもやはり主役級の彼らとのドキドキする関係は格別のはずだ。ファイターとしての一面を知ることでより深く、本作での世界観を堪能できるだろう。

乙女ゲームだからこそ見ることができるキャラクターたちの表情を楽しみたい