「電遊道」~Way of the Gamer~ ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ
ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第27幕】
イタヲタのレトロなゲームライフ~ジョン・カミナリのハプニング満載オタク人生~
僕のゲーマーとしての人生を懐かしさたっぷりで語っていきたい。毎回、特定の時代をセレクトして、自分の記憶への冒険をしたいと思う。最終的には1つのストーリーになる。僕というオタクのストーリー。僕という和ゲー好きゲーマーのストーリー。文章だけでなく、クライマックスのシーンをもっとダイレクトに伝えるために漫画も使うことにした。とにかく、日本ではありえないシチュエーションについてたっぷり語っていくぞ!
- 今回の時代設定:
- 1990年
- イベント:
- クリスマスの冬休み、ゲームなしのスキー場生活が始まる。
- ハプニング:
- 山村を散歩中、ゲームの革命を起こすあのゲーム機に出会う!
1990年の冬休み。クリスマスをローマで祝い、そして、12月26日に家族と一緒に“ホワイトウイーク”を過ごす為に、北イタリアの山村に向かった。ホワイトウイークとは、雪の中で一週間を過ごすという意味だ。つまり、山村のホテルに宿泊しながら、昼間はスキーをやって、雪を楽しむという、多くのイタリア人にとって定番の冬休みの過ごし方だった。
僕もスキーはとても好きだったが、ローマを離れるというのは、一週間ゲームなしの生活を送らなければならないということも意味していた。ファミリーコンピューターを持ち込むわけにはいかないので、しばらく我慢するしかなかった。
北イタリアの山村「セストラ」に到着した。セストラには、オリンピックで金メダルを受賞したあのアルベルト・トンバも練習する為に使っていたスキー場があった。僕もここでスキーを学んだ。毎年、ここに来るのがとても楽しみだったが、ゲームができないことだけは辛かった。
翌日、早朝に起き、家族と一緒にスキー場行きのバスに乗った。晴天の朝のスキーはたまらなく気持ちいいのだ。雪の冷たさと陽光の温かさとのコントラストが気持ちいい。お父さんが下手で、倒れても必死に滑り続けるのを見るのがとても楽しかった。
お母さんは、山小屋の窓から映画館のスクリーンを見るかのように、僕たちの滑る姿を観賞していた。僕は妹と一緒に日が暮れるまで気持ちよく滑り続けた。暗くなると、お母さんからの大きな呼び声が聞こえてくる。音波で雪崩を巻き起こすのではないだろうかと心配するぐらいの高音だった。
「ジョンちゃん、ティッティちゃん、もう帰る時間ですよ!?」
「はい」
その10分後、みんなで村行きのバスに乗っていた。早朝に見た景色が、今、夕日に照らされており、また違う魅力を持っていた。ゲームのことさえ忘れさせるほどの魔法の力を持っていた。バスに揺られることおよそ30分。山の麓にある村に着いた。ホテルでの夕飯まではあと2時間ぐらいある。バスを降りた僕たちは散歩することにした。
黄色い街灯に照らされたレンガ作りの古い建物が、とても幻想的だった。自分たちが、まるでファンタジー映画から出てきた村を散歩しているかのようだった。50年前からずっと変わらない八百屋さん、床屋さん、精肉屋さんが次から次へと姿を見せていく。クリスマスだからこそ、雪に囲まれているからこそ、この素敵な雰囲気が味わえるのだ。
時間が止まっているかのようだった。この素敵な雰囲気の中ゲームで遊べたら最高だろうなと、その瞬間願った。すると、左側に小さなおもちゃ屋さんが現われた。ショーウインドーには様々な人形やおもちゃが展示されていた。
近づいてみると、その中にまぎれて見たことのないゲームが目に飛び込んできた。任天堂のGAME & WATCHに似ていたが、よく見れば違うものだった。そのゲームの箱には、こう書かれていた。「Nintendo Game Boy」。任天堂のゲームボーイ? ゲーム少年!? 一体、これはどういうゲームなのだろう……。「早速、店に入って、店長に聞かなきゃ!」と思う前に、僕の足は既に自動的に店内へと向かっていた。
店長はサンタクロースを思わせる真っ白な髭のお爺さんだった。カウンターの周囲にはおもちゃやテーブルゲーム、そして、女性に大人気の人形が置かれていた。しかし、僕の狙いはもちろん、別にあった。
「すみません、ショーウインドーにあった『Nintendo Game Boy』って、何ですか?」
「それは世界初の携帯ゲーム機です。カートリッジ形式で、様々なゲームで遊べるようになっております」
とても丁寧な言葉で、お爺さんは商品の機能をアピールしていく。単三電池4つで30時間以上遊べる。しかも、「テトリス」というパズルゲームが同梱されている。ラインナップの中に、ファミコンで有名なになったマリオの新作もあった。タイトルは「スーパーマリオランド」。
その箱を見た瞬間に欲しくなった。大好きなゲームが、どこでも遊べる日が来るなんて、夢にも思わなかった。しかし、クリスマスは過ぎてしまった。親から既にクリスマスプレゼントをもらったし、僕の所持金はゼロだった。どうしようと悩んでいたら、親も店内に入ってきた。
「ジョンちゃん、どうしたの?」
「いや、何でもないよ……」
微妙な間が店内に流れた。その沈黙が全てを物語っていた。
「またゲームが欲しいんでしょう?」
お母さんの勘は鋭い! その台詞から察するに、買ってくれる可能性はゼロに等しいだろう……。
「次のクリスマスはプレゼント要らないから、今日買ってくれない?」
お母さんはしばらく考えてから、口を開いた。
「昼間はずっとスキーをすると約束するんだったら、買ってあげてもいいよ」
「ほ、ほ、本当?」
興奮でどもりまくった。僕は信じられないような幸せを感じていた。雪の中で、世界初の携帯ゲーム機で遊べるのだ! お母さんは財布からお金を出し、Nintendo Game Boyと「スーパーマリオランド」を買ってくれた。
「条件はもう1つ。深夜まで遊んじゃだめだよ」
「はい、了解!」
兵士が隊長に応答するかのような勢いで即答した。条件は何でも受け入れるよ。任天堂の世界初の携帯ゲーム機で遊べるなら……。
ホテルでの夕飯が終わった。お腹いっぱいになった僕はロビーのソファーに座った。そして、僕にとっての携帯ゲーム機のファーストプレイが始まった。同梱されていたパズルゲーム「テトリス」と、一緒に購入した「スーパーマリオランド」で遊ぶことに夢中だ。
ロビーの窓から見える素敵な雪景色を楽しみながら、Nintendo Game Boyのすごさを実感していく。画面はミニテレビかのようだ。背景は固定ではなく、スクロールしていく。モノクロームだが、それでもすごい。いや、すごすぎる! 熱中しすぎて、あっという間に1時間が過ぎた。
「ジョンちゃん、もう10時よ!」
画面に釘付け状態の僕にお母さんが、就寝の時間を告げに来た。
「はい、すぐ行きます!」
と言っても、やっぱり、ソファーから動けない。完全に夢中なのだ。
「ほら、早く!」
無理矢理腕を引っ張られルームに“連行”された。約束は守るべきだ。誘惑に負けそうだが、お母さんとの約束を守るべき。そう心に近いながら、ベッドに横たわり毛布で全身を包む。
「おやすみなさい」
「おやすみ!」
消灯。1時間が経っても興奮で寝られない。Game Boyが僕を呼んでいる。「点けてくれ」って。ここだけの話だが、あの夜は、やっぱり約束を守ることができなかった。親が寝るのを確認してから、毛布の中でボリュームなしでGame Boyで遊びまくった。翌日、早朝からスキーをしたが、元気な自分を演出するのに四苦八苦した……。
スーパーマリオランド
- プラットフォーム:
- ゲームボーイ
- 発売元:
- 任天堂
- 発売時期:
- 1989年
- ジャンル:
- アクション
ゲームボーイの生みの親、横井軍平氏がプロデュースした「マリオ」シリーズの一風変わった作品「スーパーマリオランド」。ゲームボーイのハードの制限で、甲羅を蹴って敵を倒すなどの様々な要素がなくなっていた。ステージも12種類しかなかった。それでも、同時発売タイトルだったので「テトリス」に続くミリオンセラーになった。そして、ファミコンを持っていなかった僕にとって、初めて家で遊んだ「マリオ」作品だった。
グラフィックスやステージ構成はとてもシンプルだが、他のタイトルでは味わえない2つの要素がある。1つ目はボスだ。今回のボスは突然空から現われた謎の宇宙怪人「タタンガ」だ。言うまでもなくマリオは、タタンガに連れ去られたデイジー姫を救出するため冒険する。
もう1つは、マリオが乗り物に乗った強制スクロールのシューティングゲームステージの存在だ。電池切れや照明不足という2つの“大敵”に苦戦しながら、雪に包まれたホテルの中でステージのクリアに挑戦する日々を今でも鮮明に覚えている。あの時の思い出や気持ちは本当に宝物だ。皆さんも3DSのバーチャルコンソールで「スーパーマリオランド」をダウンロードして、この一風変わった名作をプレイして欲しい!
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