PS4/PS3/Xbox 360/PCゲームレビュー「ウォッチドッグス」

ウォッチドッグス

車泥棒から現実の向こうのデジタルトリップまで、多彩なサブミッション

車泥棒から現実の向こうのデジタルトリップまで、多彩なサブミッション

ワールドマップには様々なミッションが提示されている
銃撃戦を繰り広げるシチュエーションも多い。カメラで敵の姿をマークしておけば、壁に隠れても位置がわかる
「コレクティブ」では連続殺人犯の事件も
とてもユニークなデジタルトリップ

 「ウォッチドッグス」の中心になる要素は、やはりメインストーリーにある。復讐をするために妹が止めるのも聞かず突き進んでいくエイデン。そしてなかなか姿を見せない黒幕は何なのか、物語にグッと引き込まれる。

 日本語版スタッフの力も評価したい。日本語版ローカライゼーションの監修に「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の脚本などを手がけた佐藤大氏を起用するこだわりがうれしく、メインストーリーだけでなく、盗聴する携帯電話の会話まで吹き替えられているのがとても楽しい。冷徹な女社長から、病的な犯罪者の脅し文句、エロ話をするおっさん達など、声優達のノリノリの演技で“日常会話”が繰り広げられたりするのだ。

 そして「ウォッチドッグス」の楽しさは、メインストーリーに加え、豊富なサブミッションにある。街には様々なイベントがちりばめられている。依頼された車を盗み届ける「フィクサー契約」、移動してくるターゲットを襲撃する「車列襲撃」、人の家の中をのぞいたり、隠されたものを探す「コレクティブ」といったものがある。これらはある程度メインストーリーを進め、様々なスキルを取得してからの方が有利に進められる。

 車列襲撃は任意の場所にくっつけられ、起爆させられる「粘着爆弾」があると便利だろう。敵のルートは表示させられているので待ち伏せは容易だ。凝った方法としては、爆弾の起爆に監視カメラからのぞいて行なうという方法がアリかもしれない。「フィクサー契約」も逃走用のスキルや、ヘリを止められるスキルなどを持っているとかなり有利だ。「コレクティブ」は色々な人の生活が見れるだけでなく、謎の連続殺人事件を追う、というものまであったりする。

 現実の光景にCGなどを重ね合わせることで現実に新たな要素を加えることを「拡張現実」というが、「ウォッチドッグス」ではシカゴの街にレトロなコンピューターゲーム風の世界を重ねることができる。「キャッシュラン」はドクロを避けてコインを集めるというもので、コインを取るとおなじみの“あの音”がするのが楽しい。「NVZN」はエイリアンが街に現われ、レーザーガンで倒す。こちらもレトロな感じだ。ちなみに街の中には虚空に向かって見えない銃を撃ちまくる「NVZN」プレーヤーの姿を見たりもする。

 さらにぶっ飛んでいるのが「デジタルトリップ」だ。こちらは街が完全に異世界になってしまう。「サイケデリック」ではエイデンは大きくジャンプし、地面から生える花に着地することで再び空高く舞い上がれる。花に着地できないと地面に叩きつけられるのが妙に生々しい。「マッドネス」は街中にゾンビが出現、燃える車で轢きまくるゲームだ。この他にも街がロボットにに占拠された「アローン」などユニークなゲームが揃っている。

 そして、今回体験できなかった「オンライン要素」がある。下記掲載ののPVやこちらの記事で触れているが、本作は他のプレーヤーのシングルプレイに“潜入”してハッキング合戦を挑むこともできる。マルチプレイモードも用意されており、シングルとは全く違う楽しさが体験できそうだ。さらにスマホ向けアプリの「ctOS Mobile」でも対戦できるということで、これらはぜひ製品版で楽しみたいと思っている。

 「ウォッチドッグス」は発売が当初より遅れたものの、SF小説の世界をそのままゲーム内で再現したような世界観が素晴らしい。全ての人間のプライバシーが明らかになってしまうような社会は恐ろしい管理と差別を許してしまいそうである。極端な現象や視点を持ち込むことで現実を再認識するのがSFの楽しさであり、本作はとても優れたSF作品といえるだろう。

 特に今回体験したPS4版は実写のようなグラフィックスがより現実との“近さ”を生み、のめり込めた。突然知らない“ハッカー”が紛れ込んでくるような、オンライン要素もとても楽しみだ。製品版でさらにこの世界を深く味わっていきたい。“次世代”のゲームを感じる「ウォッチドッグス」は多くの人にオススメしたい作品だ。

【ウォッチドッグス マルチプレイトレーラー】

【多彩なサブミッション】
依頼された車を盗み届ける「フィクサー契約」
移動してくるターゲットを襲撃する「車列襲撃」
「コレクティブ」では人の家への覗き見も
ユニークな拡張現実ゲーム
ぶっ飛んだ内容のデジタルトリップ。専用のスキルツリーがあるのも面白い

(勝田哲也)