★ PS Vitaゲームレビュー★
“再構築”をテーマに生まれ変わった
テイルズ オブ イノセンスがPS Vitaに登場!
「テイルズ オブ イノセンス R」
ジャンル:
  • RPG
発売元:
開発元:

プラットフォーム:
  • PS Vita
価格:
5,980円

※DL版の価格は3月31日まで4,980円
発売日:
2012年1月26日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:B(12歳以上対象)

“再構築”をテーマに生まれ変わった本作。様々な追加、変更が施されている。PS Vitaならではの高画質、高解像度の映像表現もその1つだ

 1月26日、株式会社バンダイナムコゲームスから「テイルズ オブ イノセンス R」が発売。2007年12月に発売されたオリジナル版「テイルズ オブ イノセンス」をPS Vita向けにリメイクしたタイトルだ。タイトルに付け加えられた“R”は“リ・イマジネーション”(再構築)を意味しており、オリジナル版のデータを流用することなく、全て作り直されている。

 開発はオリジナル版の株式会社アルファ・システムに代わり、2008年に設立され、ニンテンドーDS「オール仮面ライダー ライダージェネレーション-」や「ケロロRPG 騎士と武者と伝説の海賊」などを手がける株式会社セブンスコードが担当している。

 プレイには別売りのメモリーカードが必須となる。



■ メインシナリオは全てフルボイスに!新キャラクター、新エピソードも追加!

夢を見た。
どこか知らない世界の、どこか知らない遠い国――
そこで、僕は――

主人公ルカは毎晩のように見る夢の中で、
強く男らしいアスラとなり敵軍と勇敢に戦っていた。

自分とは正反対のアスラに憧れていたそんなある日、
教団から追われていた少女イリアを救ったことをきっかけに、
いつも見ていた夢が自分の前世の記憶であることを知る。


政府に追われることとなったルカはアスラの
恋人イナンナの記憶を持つイリアとともに旅に出ることを決める。


「創世力」と呼ばれる力を手に入れようと
たくらむ教団の大主天「マティウス」。
2人はマティウスよりも先に創世力を手に入れ、
平和な日常を取り戻そうと計画する。

道中、前世の記憶をもつ仲間と出会い、
ルカは彼らとの前世の縁を感じながら旅を続けていく。

行く先々で次第に明らかになる前世での出来事。
全ての記憶が戻ったとき、彼らをむかえる運命とは――。

 リメイクということでメインのシナリオ自体に大きな変更はないのだが、“再構築”をテーマとしているだけあってその変更点は多い。

 最も大きな変更点の1つが新キャラクターの追加だ。新キャラクターは、異世界からやってきた「キュキュ・セレツネワ」、「コンウェイ・タウ」の2名。彼らはプレーヤーが操作できるキャラクターでもある。彼らの本作への関わり方や今後の展開をにおわせるエピソードは非常に興味深いものになっている。どんなものになっているかは実際にプレイして確認してもらいたい。

キュキュ・セレツネワ
CV:藤田咲さん
異世界からやってきた、自称考古学者。ルカたちの世界の技術に強い興味を示す。言葉は実地で学ぶ主義のため、片言で話す。武器に槍を使用。身体の傷はこれまで潜り抜けてきた激しい戦いのあかしである。テンションがあがるとクルクル回り、人に抱きつく癖がある
コンウェイ・タウ
CV:野島健児さん
キュキュ同様、異世界からやってきた謎の青年。無数の術を使いこなして戦う。物腰は柔らかく争いごとを好まない性格だが、他人の感情に頓着しないため、たまにわざとグサリとくる物言いをする。時折、すべてを見透かしたような言動や予言めいた言動をとり、それに関してスパーダたちに聞かれても笑顔ではぐらかしてしまう。人に弱みを見せることを嫌う

 メインシナリオがフルボイスになった点も大きい。フルボイス化されたことでオリジナル版とは全く印象が違う。シナリオ面だけでなく、本作で使われている全てのボイスは新規に収録したという。また、オープニングアニメやテーマソングが新しいものになっている。アニメ制作は株式会社Production I.Gが担当している。テーマソングはKOKIAさんの歌う「Nwe Day,New Life」。オリジナル版の「Follow The Nightingale」とは対になるよう作られた曲となっている。

 他にもサブイベントや宿屋で宿泊した際に発生する宿屋イベントなども追加されている。

株式会社Production I.Gの手で新たに作られたアニメーションは必見。オープニングだけでなく、ゲーム中に登場する幕間アニメも同社が制作している
「テイルズ オブ」シリーズには欠かせないスキット。今回は宿屋イベントとして、宿泊すると特別なスキットを見ることができる。また、キャラクターが互いをどう思っているかを表す絆値も追加。絆値が一定に達すると絆イベントが発生する


■ 「DI-LMBS」として生まれ変わったバトルシステム!新たにレイヴシステムやタッチ機能を搭載!

 本作のバトルシステムの名称は「DI-LMBS」(ダイレクトインタラクション リニアモーションバトルシステム)。オリジナル版と同様に攻撃をヒットさせたりやコンボを繋ぐことでプレーヤーは有利になっていくのだが、そのシステムもオリジナル版とは違った、カスタマイズ性の高いものに変わっている。また、タッチ機能や第二秘奥義といった新要素も追加されている。

新要素や多くの変更が加えられたことで、遊びやすく、深みを増したバトルシステム。戦闘に参加できいるメンバーが3人から4人に増えた点も大きい。また、新キャラクターのコンウェイは敵から術を受けることでその術を習得できるという特殊な能力を持っている。新キャラクターが増えたことでシナリオだけでなく、戦闘の楽しみも増えている

■ レイヴシステム

 オリジナル版の「覚醒」(コンボを繋げることなどでテンションゲージが上昇し、MAXになると覚醒状態となり、攻撃力などにボーナスが得られる)を昇華させたと言えるのが「レイヴシステム」だ。レイヴゲージは戦闘の勢いを表しており、敵に攻撃を当てると増え、攻撃を受けたり、時間経過で減ってしまう。また、状態異常や戦闘不能のキャラクターがパーティ内にいる場合にはゲージの減少が早まってしまう。

 レイヴゲージをためることで得られる効果はレイヴアビリティに依存。レイヴアビリティはプレーヤーが任意にセットできるもので、戦闘の有利・不利に直接関わる「物理攻撃力上昇」、「一定時間毎にHPとTPを回復」や「獲得経験値増加」、「入手した事のないアイテムの取得率上昇」など幅広いものが存在する。セットできるアビリティはLv1~4の4つで、同タイプのアビリティを2つ以上セットすることはできない。レベルの高いアビリティほど高い効果が得られるが、その分レイヴゲージを多くためなければならないため、発動させるのが難しい。実力に応じてセットするアビリティを決めるのがいいだろう。新規アビリティは各タウンにあるグレードショップでグレードポイント(戦闘で得られるポイント)と交換できる。

画面左上に表示されているのがレイヴゲージ。コンボを繋げてゲージをためることでセットしておいたアビリティが発動する。ガードカウンター(敵の怒り攻撃中にタイミング良く□ボタン)を決めれば、怒り攻撃を無効化し、コンボが継続できるだけでなく、一定時間レイヴゲージが増加しやすくなる

■ スタイル

 オリジナル版で評価の高かった、“イノセンス”ならではと言えるスタイルも健在。スタイルとはアビリティをセットすることで様々な効果が得られるシステム。アビリティは戦闘で得られるAP(アビリティポイント)を消費することで習得できる。特定属性のダメージアップ、クリティカル発生率アップ、詠唱時間短縮、戦闘終了後のHPやTPの回復量増加、ガード時に受けるダメージ軽減などその効果は様々。シリーズで同じみの特技→秘技→奥義という技後の硬直をキャンセルできるルールを無視できる「ルートブレイク」や同じ特技や奥義を連続で出せるものもあり、これらを利用することで連携の幅が広がり、1人だけの攻撃でもかなり強力なコンボが生み出せる。他にもレイヴゲージを上昇させやすくしたり、後述のOVL(オーバーリミッツ)に関わるものも存在する。

 習得したアビリティ=セットできるアビリティとはならない。各アビリティにはコストが設定されており、最大コスト内でアビリティをセットすることになる。最大コストはアビリティと同様にAPを消費して増やすことができるが、その数は限られており、全てのアビリティをセットすることはできないわけだ。プレイスタイルに合わせてセットするといいだろう。習得できるアビリティやコスト増加はストーリーなどに合わせて増えていく。

アビリティの性能は様々。普通にプレイしているだけでは全アビリティを習得できるほどのAPはたまらず、どのアビリティから習得すればいいか悩みどころだ。線でつながれているアビリティを全て習得するとHP、TP、防御などにボーナスが得られるので、アビリティ自体の性能と合わせて習得するアビリティを決定するのがいいだろう。変わったものでは、参加メンバーと同じ量の経験値がもらえるアビリティが存在する。通常、戦闘に参加しないメンバーが得られる経験値は参加メンバーより少なく、メンバーを固定してゲームを進めるとレベルに差が出てしまうが、これを利用すれば獲得経験値の違いを埋めることができる

■ OVL(オーバーリミッツ)/秘奥義

 画面下にあるキャラクターステータスには、HPやTPに加え、OVLゲージが表示されている。OVLゲージがたまるとLボタンでオーバーリミッツ(OVL)が発動できる。OVL中は使用キャラクターが発光し、敵の攻撃にのけぞらなくなったり、詠唱時間が短くなったりと、一定時間キャラクターが強化される。スタイルのアビリティによっては、OVLゲージを上昇させやすくしたり、OVL中の技連携のルールを無視したり、OVL中にダメージを受けなくしたりといったことも可能。

 この強力なOVL中にLボタンを押すことで秘奥義始動技を繰り出すことができる。秘奥義始動技は相手がガードしているかに関わらず、当てさえすれば高いダメージが期待できる秘奥義が発動する。秘奥義の威力はレイヴゲージに依存しており、レイヴゲージがたまっているほど威力も高くなる。しかしながら、秘奥義発動後、レイヴゲージはリセットされてしまう。誰が秘奥義を発動しても、レイヴゲージはリセットされてしまうので、秘奥義の使用タイミングを調整したいなら、作戦でCPU操作キャラクターの秘奥義使用を禁じておくといいだろう。

 作戦では、秘奥義をどのレベルで使用するか、OVLだけを使用するかなど、CPU操作キャラクターの行動を細かく設定できる。他にも基本行動、TP消費、回復アイテムの使用条件など細かい設定もできる。

詠唱時間短縮や秘奥義に繋がるOVLの恩恵は大きい。攻撃面に加え、スタイルでOVL中のダメージ無効のアビリティをセットしておけば、全滅しそうな場合の回避にも役立つ。秘奥義と共に使いどころが鍵だ。CPU操作キャラクターにはOVLを一切使わせず、OVLゲージがたまったら操作キャラクターを切り替えて、自分で使うといったこともできる。OVL以外においても作戦は重要で、設定次第でCPU操作キャラクターの動きが大きく変化する。強敵であっても、作戦次第では楽に勝ててしまうほどだ。ちなみに本作では全滅時に戦闘をリトライする機能はなく、セーブデータをロードし直してのリスタートとなるため、こまめなにセーブすることをオススメする

 高い威力を持つ秘奥義。本作では第二秘奥義が追加されている。特定の条件を満たすことで習得でき、習得後に追加されるアビリティをセットすることで第二秘奥義へと変化する。キャラクターによっては第一と第二で属性が異なるため、状況に合わせて使い分けることでより効果を発揮することも。

 第二秘奥義の発動に必要なアビリティには、1ながらもコストが設定されている。秘奥義を使わせないキャラクターがいるのなら、コストは他のアビリティに回しておきたい。

ゲーム後半かつ特殊な条件を満たさないと習得することのできない第二秘奥義だが、習得が難しいだけあってその威力は高い。演出も見ものだ

■ 称号システム

 シリーズお馴染みの称号システムも追加。ゲームの進行、サブイベント、戦闘の内容などにより獲得できる称号には、HPアップや物攻アップといった様々な効果があり、各キャラクター1つセットできる。キャラクターの戦闘スタイルに合わせて設定するといいだろう。また、称号の中には服装や戦闘終了後のかけあいが変化するものも存在する。

キャラクターを強化できる称号獲得の条件は様々。称号を集めも本作の楽しみの1つだ。また、称号の中には服装が変化するものも

■ 料理システム

 回復やパラメータアップ効果が得られる料理システム。本作では、方向キーの上下左右に料理をセットしておくことで、戦闘後のリザルト画面からすぐに料理することができるようになり、使い勝手が向上している。高い効果が得られ、1戦闘毎に食べることができる料理の利便性が上がるのは誰もが歓迎するところだろう。

料理ショートカットに料理を登録しておけば、戦闘後すぐに料理ができる。作成する料理を誰に作らせるかも設定可能

■ タッチ機能/快適な操作性

 PS Vitaらしく、タッチ機能を使ったバトルシステムも搭載されている。画面下に表示されているキャラクターをタッチすることで設定した術技を使ってくれるもので、特定のタイミングで回復したい場合や、離れた位置で戦うよう設定したキャラクターに特定のモンスターからアイテムを盗ませたい場合などに便利なシステムだ。

 タッチ機能は、戦闘に必須ではないが、使えるようになると結構便利。しかしながら、PS Vitaを両手で握った状態のまま、右手親指でタッチするとなると、タッチする際には右親指がボタンや右スティックから離れる。当然右側に近いキャラクターの方が距離が近いため、タッチしやすく、親指が離れてしまう時間も短くなる。これらのことからタッチ機能の使用頻度の高いキャラクターは右側に配置することをオススメしたい。

設定した術技を任意のタイミングで使用できるタッチ機能。タッチすると使用する術技が吹き出しで表示される。方向キー、スティック、ボタンが操作のメインとなる本作において、無理にタッチを要求されない作りにしてあるのが好印象

 バトルの操作設定は、本シリーズでは当たり前となったオート/セミオート(攻撃すると自動で距離を詰める)/マニュアルの3種類。セミオートやマニュアルの場合、プレーヤー操作キャラクターはタッチ機能が使えないが、オートの場合は4キャラクター全員タッチ機能が使える。戦闘が苦手というプレーヤーなら、操作をオートにし、タッチ機能で戦闘を楽しむというのも手だろう。戦闘の難易度はゲーム中いつでも変更できるし、作戦も細かく設定できるので、オートの戦闘でも十分に本作をプレイすることができる。

 設定できる術技は、×/←or→+×/↑+×/↓+×(矢印は方向キーの入力方向を指す)、右スティックの上下左右の計8つ。スタイルで1回の連携で使用できる秘技や奥義を増やした場合でもスムーズに連携が決められるし、方向キー+×ボタンを秘技や奥義、右スティックを術といった使い分けもできる。

 移動は、方向キーではターゲットしているキャラクターを軸に操作キャラクターが動く。左スティックを使えば、ターゲットに関係なく、入力方向に自由に移動できる。前方にる敵を迂回して、後方にいる敵から攻撃したい場合などに便利だ。難しい操作はなく、非常に快適な操作性を実現している。



■ 新ダンジョン、闘技場、船や飛行船など、多くの追加・変更が!バリエーション豊かなDLCにも注目!

勝利することで報酬が得られる闘技場には、特別なキャラクターも参戦!

 バトル関連以外でも、新ダンジョンやダンジョンギミック追加、シリーズでお馴染みの闘技場、世界を自由に移動できる船や飛行船など、多くの追加・変更が施されている。

 本作では闘技場も追加。闘技場ではシングル、パーティで難易度別に分けられた5連戦に挑戦することができ、勝利することで報酬が得られる。闘技場で勝利することでしか得られない称号やアイテムも存在するので利用しておきたい施設だ。闘技場では回復アイテムが使用できないため、特に1人で戦う場合は戦い方や使用する術技が重要になってくる。

 他にも、新たな街やダンジョン、ダンジョンギミック、自由に移動できる船や飛行船なども追加されている。また、クリア後のお楽しみとしてエクストラダンジョンが追加。雑魚戦でも油断できないほど凶悪なモンスターが待ち受けている分、強力なアイテムが得られるやりがいのあるダンジョンに仕上がっている。もちろん、グレードにより、引継ぎや経験値などの特典が得られる周回プレイも健在だ。

メインシナリオクリア後にもやりがいのあるエクストラダンジョン、グレードを使った周回プレイといった遊びが用意され、長時間楽しめるようになっている

 DLCも豊富に用意されている。発売日の1月26日から、アイドルマスターとのコラボ衣装、シリーズのキャラクターの衣装、アイテムセット、レベル、ガルド(ゲーム内通貨)、AP、グレードなどが配信。さらに2月2日には学園衣装やくせっけセット、2月9日には前世衣装が配信。今後もさらなるDLCが予定されている。なお、DLCでのみ入手できるアイテムは、ゲーム内のレコードや称号獲得条件には関係がない。

 有料のDLCはちょっと……という方も、DLCの中には頭部のみが変化する衣装称号セット「めがねセット」、回復系アイテムセット「冒険お役立ちセット」、2種類の料理食材が入った「お料理食材セット」と無料のものもあるのでダウンロードしてみるといいだろう。



■ 最後に

 シリーズのファンはもちろんのこと、PS VitaでRPGを遊びたいと考えていたプレーヤーにも待ち望まれていたことが予想される本作。キャラクター、エピソード、ダンジョンの追加、新システムなどによりオリジナル版をプレイした人でも新鮮な気持ちでプレイできることだろう。ネタバレになってしまうので詳細は伝えられないが、2名の新キャラクターに関係するエピソードはシリーズのファンには必ず見ておいてもらいたい内容になっている。

 筆者のクリアタイムは22時間。難易度はノーマルで、ダンジョン内の宝箱は逃さないようにしつつもシナリオを進めることを優先してプレイした上でのクリアタイムとなっている。少し短いと感じるかもしれないが、現在サブイベントやエクストラダンジョンをプレイしている途中ながらすでに30時間を突破している。キャラクター育成、アイテムや称号集め、グレードによる周回プレイも考えると、かなり長く遊べそうだ。

 “再構築”をテーマに、新要素が追加され、従来の要素に改良が施され、生まれ変わった本作。いつでも設定が変更できる難易度、アクションが苦手でも安心なオート/セミオートの操作を完備し、誰にでもオススメできる良作RPGだ。PS Storeでは体験版が配信されているので、興味があればまずは体験版をプレイしてもらいたい。DL版の購入を考えているのであれば、3月31日までであれば通常価格より安く購入できる。


Amazonで購入

(2012年 2月 9日)

[Reported by 木原卓 ]