「HyperX Pulsefire FPS」ゲーミングマウスレビュー

HyperX Pulsefire FPS

Amazon新着ランキング1位の期待作をレビュー!
オムロン製ボタンと布製ケーブルを採用した新規参入モデル

ジャンル:
  • ゲーミングマウス
発売元:
  • キングストン
開発元:
  • キングストン
プラットフォーム:
  • Windows PC
  • Mac
価格:
5,480円前後(税込)
発売日:
2017年6月26日

キングストンがゲーミングマウスに参入する!
「Pulsefire FPS」のパッケージ内トレイ。外装も標準マウスより1グレード上

 ゲーマーにとって、キーボード同様、非常に重要な役どころを担うのがマウスだ。ゲームプレイ上、文字通り生死を分かつことから、機能的に高い精度での動作が必要になるほか、物理的に“手になじむ”形状が求められる。

 性能面では、ボール式から光学式にシフトしたことがマウスの歴史の中で最もドラスティックな変革だった。以後、光学式は、赤色LEDから、レーザー、赤外線LED、青色LEDと利用する光線の波長を変えて進化し続けている。物理的形状については、性能面より幅広い工夫の余地があることから、これまでにも多種多様なマウスがリリースされてきた。この形状面の違いによって、キーボード以上に好みが別れるのがマウスだと言えるだろう。

 今回、HyperXブランドでゲーミングデバイスに参入しているキングストンから、同社の最新ゲーミングマウス「HyperX Pulsefire FPS」(以下「Pulsefire FPS」)をお借りすることができた。ゲーミングマウスの分野はロジクールとRazerが支配的で、そこにSteelSeries、Corsair、Cougarといったメーカーが参入して、すでに飽和状態になっている。激戦区のゲーミングマウス市場で、“メモリのキングストン”はポジションを確立することができるのだろうか。6月26日に発売が迫った「Pulsefire FPS」の売れ行きを占うべく、早速レビューを進めていきたい。

確かな基本性能と耐久性を持つオーソドックスな製品


ボタンレイアウト。ゲーミングマウスとしては非常にシンプルな構成だ

 「Pulsefire FPS」の手触りは、良くも悪くもオーソドックスな定番マウスという印象だ。人間工学に基づいて設計された軽量デザインで、特段奇をてらった部分は何もない。ケーブル側のマウス前部は左右対称、HyperXロゴ側のマウス後部はやや左側に湾曲したデザインとなっているが、湾曲は極端なものではない。重量95gは確かに軽く、小型ながら比較的重いマウスを常用する筆者にとっては、かなり軽く感じられた。

 筆者は、側面に添えた親指と薬指、小指でマウスをつまんで、わずかにマウス前部を浮かせてマウスを操作するいわゆる“つまみ持ち”で、手首の位置を固定したまま、手のひらの内側で親指と薬指の曲げ伸ばしで操作するスタイルだ。「Pulsefire FPS」は、筆者のように操作するには、マウス後部がやや大きい。しかも後部の天地方向は、どっしりとマウス底面に向かって末広がりのフォルムになっているため、いわゆる“かぶせ持ち”で、手のひらで押し引きしてマウスごと手を大きく動かす人に向いていると感じられた。大型のソールが前後の底面に均等についていることからも、“かぶせ持ち”が想定されているのだろう。ところが、標準サイズの“かぶせ持ち”は、ただでさえ指の短い筆者には手に余る。そこでマウス前部を左に30度くらい傾けてみると操作しやすくなった。親指側の前後ボタンの操作も容易になって丁度良い。

 ボタンの構成は、左側面に2ボタン、上部前方にホイールを含めて3ボタン、ホイールの前後スクロール、上部中央にポインタの移動量を制御する4色調光LED付きボタンと、これもまたオーソドックスな構成だ。側面のボタンは非対称ということになり、左利き対応は特にない。LEDボタンは、クリックするごとに白、赤、青、黄の順に切り替わり、カラーに応じてポインタの移動速度を400、800、1,600、3,200dpiと順に2倍の速度に切り替える。最高速度の次は最低速度といったように、クリックでトグルループする仕様だ。

底面中央部の赤外線LEDセンサーから不可視な赤外線を照射して反射をセンサーで検出する

 台湾、PixArt ImagingのPMW3310赤外線LEDセンサーの動作は良好で、トラッキング精度に特に問題は感じられない。移動中にポインタに予期せぬジャンプが発生することもないし、マウスを持ち上げた際のリフトオフディスタンスも6~7mm程度と、マウスを持ち上げる必要があったとしても、そう大きく持ち上げる必要はない。

 オムロン製の各ボタンのクリック感も良好だ。クリックのストローク量は、左右ボタン、サイドボタンおよびトップボタン、ホイールボタンの順に弱くなるが、どのボタンもカチカチと小気味良い音を立てるため、確実に入力されていることがわかる。ボタン耐久度も2,000万回と申し分ない。

 その他、マウスとPCを接続するケーブルの被覆が布巻きであるのもユニークだ。ビニール皮膜の場合、どうしても巻き癖がついてしまう。巻き癖をよじってケーブルを痛めてしまうことがあるが、これならその心配はない。ボタンとケーブルの仕様は、決して派手にアピールするものではないが、有線マウスとして「Pulsefire FPS」の最も良い点だ。

前部のボタン、ホイール、ケーブルの状態。ホイールはLEDで赤く点灯
左側面の親指部分には2つのボタンがある。右側面にはボタンなし

ブランド定着にはドライバとラインナップの拡充が必要か

ゲーミンググレードのマウスだが、普段使いにも高信頼性を発揮するだろう

 一方で、不満に感じる点もある。まず、前述したボタンに関して、本製品専用のユーティリティソフトウェアによってカスタマイズができないのだ。ボタンに対する機能割り当ての変更のみならず、キーストロークを割り当てて1クリックでマクロを発動することもできない。

 FPSユーザーをターゲットにしたということで、USB端子に接続すれば、何も難しい設定をすることなく即動作するというシンプルな仕様、と好意的に解釈することもできるが、FPSだけをそのままの設定で遊ぶというゲーマーはそれほど多くはないはずだ。

 特に、上部のLEDボタンについては、デフォルトではdpiの変更に割り当てられているが、高頻度でポインタ速度を変更する必要がないので、「戻る」に設定したり、アサインなし、といった使い方はできず、常にポインタ速度変更に機能が固定されてしまう。

 逆に、シューターなどでdpiを積極的に変更しながらプレイするスタイルの場合でも、もっと操作しやすい親指側のサイドボタンに機能を移すこともできない。こうした機能的な不足は、マウス製品のラインナップ拡充と並行して、速やかに進めていただきたいものだ。

 上記の機能面の不足に加えて、「Pulsefire FPS」の物理的な特性に起因する個人的な不満もある。前述した通り、「Pulsefire FPS」の重量は95gと軽い。筆者が常用しているマウスはノートPC用の比較的小型のものでありながら110g程度ある。個人的には重みがある方が好みだが、ローセンシでマウスを大きく動かすタイプのゲーマーには向いているといえる。

 さらに、ホイールスクロールに関しても、非常に軽く、滑りやすい。原因は2つあり、1つは樹脂と滑り止めのラバーで構成されているホイールの素材そのものが軽いことだ。もう1つはホイールノッチの抵抗感が弱いことで、分解してみないと正確なことはわからないが、おそらくホイールのラバー部分の刻みが本体側の樹脂に触れる程度でノッチ感を演出しているに過ぎないことだ。この結果、ホイールによるスクロール量はホイールの回転速度に依存するのにもかかわらず、ホイールをゆっくりと動かしたときに、ノッチを感じる回数とホイールの移動量のわりにスクロールが進まず、ホイールがかなり滑って感じてしまう。

 もっとも、これらの物理的な不満は、筆者が好むマウスと「Pulsefire FPS」の目指すマウスが相違しているだけに過ぎない。マウスの選択基準は、一にも二にも、“手になじむ”かどうかにある。サイズや重量、クリック感は、使用者の体格や慣れとの関係で、相対的に決まるものだから、「Pulsefire FPS」に関しても、ぜひ店頭で手にとって自身にふさわしいか確かめていただきたい。

 では、キングストンの「Pulsefire FPS」をゲーマーは、どう捉えればいいだろうか。「Pulsefire FPS」は、ネーミングに含まれるFPSに限らず、一般のアプリケーションやライトカジュアルなゲームプレイに際しても、ごくごくオーソドックスな動きを正確にこなしてくれる。本製品の可動部は、ホイールを含めたボタン6つに限られており、他社の製品にない独自のギミックも存在しない。

 マクロ、1dpi単位でのdpi調整、LEDRGBといったゲーマー向け機能を排しつつ、ボタン耐久度やケーブル強度、布巻ケーブルの採用など標準的なゲーミングマウスの基準をクリアしていることから、故障なく長く使えそうだ。とにかく素直でクセのないマウスが欲しいという人には検討候補に挙げられると思う。6月6日の時点で、未発売ゲーミングマウスの予約状況を示すAmazon新着ランキングにおいて、第1位を獲得していることからも、「Pulsefire FPS」の新定番としての前評判の高さがうかがえる。

 「Pulsefire FPS」の想定市場価格は5,480円(税込)と、ゲーミンググレードとしてはかなり安めとなっている。ただ、本製品のように1万円を切るミドルレンジのゲーミングマウスは、冒頭でも触れたように激戦区となっており、ロジクールの「G403」やRazerの「DeathAdder」など、数年前ならハイエンドで通用したようなゲーミングマウスが、ミドルレンジとして同価格帯で売られている。店頭でじっくり触り比べた上で、焦らずゆっくりと比較検討することをお勧めしたいところだ。

【Amazonゲーミングマウス新着ランキング】
6月7日時点で2位。新規参入のため、口コミということは考えにくいが、やはり価格設定が大きなアピールポイントになっているのだろうか
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