【名作発掘】「Badland: Game of the Year Edition」レビュー

Badland: Game of the Year Edition

奇妙な世界観と、トライ&エラーで進んでいく達成感がたまらないアクションゲーム

ジャンル:
  • アクション
発売元:
  • Frogmind
開発元:
  • Frogmind
プラットフォーム:
  • PS4
  • PS3
  • PlayStation Vita
価格:
1,159円(税込)(PS Plusフリープレイ中)
発売日:
2017年6月7日

 筆者は毎月PS Plusのフリープレイをチェックしている。PS Plusに加入していれば、毎月ゲームが無料でプレイできるのだ。リストの更新日には何をするよりも先にPSストアをチェックしている。

 今回のフリープレイの中で、異様な存在感を感じたのが、プレイステーション 4/3/Vita向けアクションの「Badland: Game of the Year Edition」だ。調べてみるとFrogmindというメーカーが2013年に発売したゲームで、スマートフォン向けのアクションゲームとして世界的に有名なタイトルのようだが、筆者は今回のフリープレイ初めて知った。

 本作の大きな魅力は“わけのわからなさ”だ。ストーリーや背景の説明が全くなく、プレーヤーは影絵のようなグラフィックスで表現された、機械と自然が混ざったような不思議な世界で、「クローン」という真っ黒な謎の生物を操り、ゴールを目指す横スクロールアクションゲームだ。この不思議な世界と、シビアで奇妙なゲーム性はプレイしていて夢中になってしまう魅力がある。今回はそんな不思議な魅力がある「Badland」を紹介していきたいと思う。

【BADLAND: Game of the Year Edition - Launch Trailer | PS4, PS3, PS Vita】

生を求めて、ひたすら突き進む……幻想的でダークな世界観

 「Badland」の世界は美しく幻想的な景色が広がる森の中で展開する。しかしその美しい森にはそこには影が……というよりも真っ黒な影でステージの仕掛けやキャラクターを表現している。背景には目だけを輝かせているよくわからない生物の不気味なシルエットなどもあり、美しさの中にもどこか不安を誘う世界観だ。

この謎のゲートから吐き出され、ゲームがスタートする。クローンはどこから来たのか?
陰のある美しい世界が広がるステージ。この不思議な魅力に引き込まれた人も多いはず
謎解き要素もあり。強制スクロールが迫るなか、冷静に仕掛けを解いて進まなければならない

 そんななか、大きな土管のような形をしているゲートが赤く光る。するとゲートの中からゴミのような物が吐き出される。そのゴミの中に丸いフワフワのシルエットがひとつ。大きな目とウサギの耳を持ったような黒い生きものその不思議な生物がプレーヤーキャラクターとなる「クローン」なのだ。スタートボタンを押したところ、何の話もなく唐突にこの場面となり、少しの間待っていたが場面が進む気配がない。そこで、もうこれゲームが始まっているんだと気づいた。この投げっぱなしで始まる洋ゲー空気感、筆者も嫌いじゃない。

 「Badland」はステージクリア方式の横スクロールアクションゲームだ。操作方法はシンプルで使うボタンはなんとたったのひとつ。1度ボタンを押すとクローンは翼をはばたかせフワリと上昇しながら前進する。この浮遊するアクションを駆使してステージの仕掛けを解きながらゴールを目指していく。操作自体はシンプルなのだが、これが自由自在に動かせるようになるには多少の慣れが必要だったりする。最初の内は羽ばたく加減がわからず、連打のし過ぎで天井に激突しながら進むなんてこともあると思う(経験談)。

 最初のステージは、少し不気味だけどどこか不思議な美しさがある森。スタート地点から一歩進むと画面の強制スクロールが始まった。スクロールに置いていかれてクローンが画面からフェードアウトしてしまうとミスとなってしまう。無力なクローンは生きるために止まることは許されず、死から逃げるために前へ前へと進んでいかなくてはならない。死がどんどん迫ってきているという感じがうまく表現されている。

 クローンは常に死と隣り合わせにあり、画面からフェードアウトする他にも、天井から降る落石に潰されたり、設置されている爆弾や電動ノコギリなどに接触しても死んでしまう。丸くて目が大きい可愛らしいマスコットキャラのような見た目をしているにもかかわらず、容赦なく命を散らしていくという過激な作品でもある。この森林にはいささか不自然ともいえる数々のトラップは、まるでこの世界はクローンを殺すための世界なのではないかとも思えてくる。

 本作は複雑な操作は要求されないが、瞬時の状況判断力が要求される。例えば、突然上下のわかれ道が来ることがある。どちらの道を進むかを即座に判断して進まないと、画面スクロールに置いていかれてしまう。このゲームに迷いは禁物なのである。

 わかれ道には、もちろん行き止まりのハズレ道も存在し、行き止まりの道を選んだ時点で当然ミスになってやり直しとなる。そんなの運ゲーじゃないかと思うかもしれないが、本作にはゲームオーバーの概念はないので、何度でもやり直すことができる。なので、少々理不尽なミスも許せたりする。

 先ほどの話に通ずることなのだが、筆者が「Badland」をプレイしていて感心したポイントは、ミスからのやり直し作業に面倒臭さを感じさせない工夫がされているところだ。本作は細かくチェックポイントが設定されている。そのポイントがきちんと初見では突破できないであろう“死にポイント”直前に設定されているのだ。死んだところの直前からリトライできるので、トライ&エラーが全く苦にならず、なおかつ何度も挑戦してやっとクリアできた瞬間の達成感をはたまらない。地味な配慮ながらゲームを楽しむモチベーションをかなり上げていると思う。

 ステージ中には様々な効果のアイテムも出現する。中にはクローンの体を大きくしたり、小さくしたりするものもあり、これらを使わないと突破できない仕掛けもたくさんある。ステージ中のギミックで、ものすごい狭い道や、進行ルートを塞いでる障害物などがあったりする。ここでアイテムを取れば、小さくなって細道を進めたり、道を塞いでる障害物も大きくなれば破壊して突破することができる。なので極力アイテムが落ちていたら拾って進んでいくのがおすすめだ。

 クローンが数十体に増殖するという面白いアイテムもあり、これがステージ攻略にかなり役に立つのだ。クローンは複数になると、個ではなく団体を操作することになる。団体なので小回りは効かなくなるが、メリットは最後の1体になるまではクローンが何体死んでもミスにならない。その特性を利用して、先ほど述べたようなわかれ道なんかも分散させて進めば、どちらか一方が行き止まりであっても最低1体は生き残るので必ず突破することができる。ブロック崩しゲームでいうところの“玉が増えた”状態の頼もしさがある。

 アイテムは役に立つものが多いのだが、残念ながらマイナスな効果のものもある。ゲーム中でアイテムの説明などは当然無く、基本は取って効果を確認するしかない。いつものように効果不明なイガグリのようなアイテムを取ると、クローンの体がハリネズミのようなトゲトゲな姿に変化した。取ったばかりのときは見た目が変わった以外の変化はわからなかったのだが、そのマイナス効果に気づいたのは天井に触れたときだった。クローンのトゲトゲの体が天井にグサッと刺さり、一定時間動くことができないではないか。

 もちろん動けないなかでも強制スクロールは無情にも進んでいく。画面がどんどん進んでいくことの焦りから、動けるようになってもまたすぐに床に接触してしまう。天井同様、床に触れても一定時間動けない。そうこうしているうちに、クローンの姿は完全に画面から消えていった。役立つアイテムのように見せかけて実はトラップという、どこまでも油断のできないゲームである。

【スクリーンショット】
ステージ中にはクローンを襲うトラップがいたるところに仕掛けられている。これらをかいくぐり死を回避するのだ
ステージ攻略には必要不可欠のアイテム。基本的にはどれも役立つが、なかにはマイナス効果のアイテムもあるので注意が必要

進めば進むほど、歯ごたえ&遊びごたえのある難易度に

 こうして筆者は「Badland」を進めていった。徐々にステージの難易度が上がっていくも、トライ&エラーを繰り返しながら順調にクリアしていく。プレイしていて思ったことは、どんなに難しいステージもチェックポイントから何回もやり直していればいずれはクリアすることができるというこどだ。

ゲームが進むにつれて、トラップがどんどん凶悪になっていくのだ
潰されたり、切り刻まれてバラバラになったりする死亡シーンはなかなかにハードな表現だ
ステージをクリアするごとに光が点灯していく。この意味とは……?

 しかし、「俺、このゲームのコツ、つかんだな」と、若干調子に乗っていた矢先に、今回プレイしていてもっとも苦戦したステージに直面した。それはステージ19の「HIGH SPEED」というステージだ。ステージ名からも若干予想はついていたが、その予想通り、ものすごい早さで画面がスクロールしていくステージだった。あまりの早さに、1度でも木の枝に引っかかろうものなら、即画面からフェードアウトしてしまう凶悪なステージだ。

 これまではどんなに難しいステージであろうと、リトライを繰り返して次のチェックポイントまでを繋ぎながら地道に進んでいけば、いずれはゴールまでたどり着くであろうと思っていた。しかしこのステージは難しいのだ。チェックポイントは最初の地点のみ。途中までうまく進んだと思っても、何度も最初に戻されてしまう。1発でゴールまでたどり着かなければいけないという過酷なステージだったのだ。

 どれだけリトライをしただろうか、何度も同じ場所でミスを繰り返しまう。このステージの電動ノコギリゾーンはかなりの鬼門だ。細道の地面にビッシリと電動ノコギリが設置されているのだが、これを回避して進むのがとても難しい。画面のスクロールが早いせいで、電動ノコギリが見えたと思ったらもうすでに目の前まで来ていて回避不能なんてことがままある。電動ノコギリが地面に設置されているなら天井を伝って進んでみるも、天井に勢いよくぶつかったバウンドで、地面のノコギリに急降下ダイブする結果に終わった。

 「まずは落ち着こう」と自分に言い聞かせた。これまで、スクロールの早さから勢いに身を任せてプレイしていた節もあったので、ここからはじっくりとステージ全体を観察しながら、どこかに突破口がないかを探りながらプレイすることにした。勢いプレイのときはあまり気にしていなかったのだが、電動ノコギリゾーンの直前に、クローンの体が大きくなるアイテムが落ちていたではないか。よくよく思い返すと今までずっとそのアイテムを取って、体が大きくなった状態でノコギリ地帯に突入していた。

 やはりステージの中にクリアのヒントは隠されていた! 今度は体が大きくなるアイテムを避けてノコギリ地帯に突入する。体の面積が小さいままだと、圧倒的に突破しやすくなったのである! ここに気づいたことで、これまで苦しめられてきたノコギリ地帯を抜けることに成功した。その後はさほど難所も無く、ようやく難関ステージ「HIGH SPEED」をクリアすることができた。仕掛けの解き方や、攻略法を自分で見つけ出して突破できたときの達成感は相当なもの! この味を知った瞬間、もうこのゲームの虜になっていた。

 今回初めて本作をプレイしたが、海外で数々の賞を受賞するのもうなずける。今の時代のニーズに合った、「サクッと遊べる手軽さ」。それでいて、ステージの仕掛けを解いていくというゲームならではの「遊びごたえや達成感」もしっかり詰まっている。さらに最大4人でオンライン協力プレイもできるので、仲間とワイワイ遊ぶのも楽しそうだ。

 このゲーム、実はボリュームも尋常じゃない。ステージ数は全部で100ステージもあり、さらにクリア後には裏ステージも用意されているというのだから恐れ入る。筆者は1日数ステージをちょっとずつ進めていく予定だ。ゲームを進めていくことで「Badland」の世界観や、クローンの正体などが明かされていくのかも気になるところである。

 今回紹介した「Badland」はPS Plus加入者なら無料で遊ぶことができる。不思議な世界観や、お手軽なアクションゲームが楽しみたい人には全力でおすすめできる1本だ。7月4日までにDLすればいつでも無料で遊べるので、ちょっとでも気になった人は「Badland」の世界に1度足を踏み入れてもらいたい。

【スクリーンショット】
今回最も苦戦した高難易度ステージ。この電動ノコギリに何度クローンが散らされていったことか……
本編の他に裏ステージ、さらにステージごとに設定されているミッションなど、遊びごたえ抜群のボリューム