【名作発掘】「エルダー・スクロールズ・オンライン: オルシニウム」レビュー

エルダー・スクロールズ・オンライン: オルシニウム

オークをテーマにしたストーリー重視のDLC。生き方、信仰、恋にグルメまで!

ジャンル:
  • MMORPG
発売元:
  • DMM Games
開発元:
  • Zenimax Online Studio
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
3,240円(税込)
発売日:
2016年6月23日

 「オルシニウムが好きなんだよ!」。MMORPG「エルダー・スクロールズ・オンライン 日本語版(以下、「ESO」)」のアップデートパッケージ「モロウウインド(Morrowind)」先行体験レポート取材の際、プロデューサーの松本卓也氏がくり返し語っていた言葉だ。

 「オルシニウム」とは、「ESO」のDLC第2弾で追加されたコンテンツだ。この地はオークの氏族とその頂点に立つ王に治められているが、今は侵略者との戦いのただ中にある。プレーヤーはこの戦いに助力することになる。オルシニウムはタムリエル北部の雪に覆われた地であり、ここでプレーヤー達は冒険を通じ「オーク」という種族への理解を深めていくこととなる。

 松本氏がこのオルシニウムを好きなのは、なんと言ってもストーリーだという。松本氏のオルシニウムへの想いは1年以上前のサービススタート時のインタビューまでさかのぼることができる。そして6月に発売されるアップデートパッケージ「モロウウインド」もまたストーリーを重視したコンテンツだ。松本氏は開発チームと「モロウウインド」打ち合わせの際、「“オルシニウム”が帰ってきたよ、今回もストーリーに期待してくれ」といわれて、楽しみにしているというのだ。そのようなストーリーが体験できるか、期待が大きく膨らんだ。

 オルシニウムは2015年実装のコンテンツである。そこで今回は“名作発掘”として、6月の「モロウウインド」の前に、松本氏を魅了している「オルシニウム」をきちんと体験し、レビューしておきたい。テーマがきちんと設定された、楽しいコンテンツである。

【「オルシニウム~DLCゲームパック」 -エルダー・スクロールズ・オンライン 日本語版】

シリーズならではのオークの歴史や価値観が学べるDLC第2弾

 「ESO」プレーヤーが「オルシニウム」をプレイするには、月1,944円(税込)の課金サービス「ESO Plus」に加入しているか、3,000クラウン(3,240円)で直接購入するかの2種類の選択肢が用意されている。DLCはセールなども行なわれるので、プレーヤーは見逃さないようにしたいところだ。

王・クログの母。彼女に呼ばれ、プレーヤーはオルシニウムの冒険を開始する
オルシニウム。オークの都は現在侵略の危機にさらされている
「スカイリム」でおなじみの巨人も登場。オークの部族の継承問題に関わってくる
オーク達が信仰するマラケシュ。血と争いを好む神である
オルシニウムのあるロスガー地方は、タムリエル大陸の北西にある

 プレーヤーは「オルシニウムへの招待」というクエストを通じてオルシニウムへの旅をスタートする。オルシニウムの大使から「王を助けて欲しい」という依頼を受け、タムリエル大陸の北西に位置する、雪に閉ざされた地方オルシニウムへ向かうこととなるのだ。この地方はオークのいくつもの部族とそれをまとめる王によって統治されているが、ウィンター・ボーンという敵に襲撃を受けている。また、各部族もさまざまな問題を抱えているという。プレーヤーはこの地に赴き、「オーク」という種族を深く知るようになっていく。

 ファンタジー的な世界観を持つゲームでは、オークは“悪役”として有名だろう。しかし、「エルダー・スクロールズ」シリーズでのオークはプレーヤーキャラクターとして選べる種族の1つであり、コミュニケーション可能な人々として描写されている。下あごから伸びた鋭い牙が口の外に出ている外見は恐ろしいが、独特の文化と価値観を持っており、特に金属加工技術に秀でている。建物は鋭角的なデザインで、鎧や武器も直線的なデザインが多い。

 「オルシニウム」はオーク達の国だ。もちろん他の地域同様、他にも様々な種族が闊歩しているが、オーク達は大きな城塞都市の他、部族で村落を形成している。鉱山なども多いが、鉱山の奥には滅んでしまったドワーフの遺跡などもある。険しい山々が連なり、北側には氷山が浮かぶ氷の海となっている。この海は氷山による難所で、難破船も多い。

 この地域には「スキャンパー」という生きものがいる。トナカイのような角と毛並みを持つが、昆虫のような6本の足を持つ生きものだ。オーク達はこれを家畜として飼い慣らし、荷運びに使ったり、雪の中に隠れている「雪トリュフ」を掘り出すのにも使っている。かなり気性の荒い生きものであり、野生のスキャンパーは襲いかかってきたりもする。

 彼らオークが信仰するのが超自然の存在“デイドラ”の1人である「マラキャス」。拒絶された者や、追放された者の後見人と知られている。オークはオルシニウムから追われたこともあり、苦難の歴史を歩む中、マラキャスへの信仰が強くなった。マラキャスは「血と呪い」を求める神であり、その信仰は過酷だ。神からの神託を得るためにその身を生け贄に捧げる者すらいる。

 マラキャスへの信仰、そしてオークの独特の価値観が強く感じられるクエストがオークの部族の長を継承するクエスト「継承問題」だ。“シャトゥル”という部族の長が巨人と戦って死んだとき、継承者問題が発生した。壊滅した小さな部族の長だったラウリグはプレーヤーと共に巨人を倒し、部族は彼を次の長にしようとするが、もう1人の候補者が現われてしまう。

 オークの部族では、長になるために候補者が「儀式の間」で殺し合い、勝たねばならない。この候補者にもドラマがあり、さらに前族長の母は“試練”としてひびの入った儀式用の剣を片方の候補の剣とすり替えろというのだ。もし本当にマラキャスの加護があれば、折れる剣でも片方は生き残るはずだと母は言う。どうすべきか、プレーヤーの決断で結末が変わるが、族長の交代劇という事柄の中で、オークならではの価値観が色濃く見えてくる。かなり印象に残るクエストである。

【スクリーンショット】
オルシニウムを目指すプレーヤーの前で、ウィンター・ボーンとの争いを目にすることとなる
オルシニウムには博物館もある。冒険で手に入れた宝物を納めることができる
トナカイのような角と毛並みと、昆虫のような6本の足を持つスキャンパー
オーク達の歴史を深く知っていくこととなる
族長の交代に関する掟と、オーク達の過酷な生き様に直面する「継承問題」

オークの“恋”やグルメも! 力一杯戦えるアリーナも登場

 オルシニウムでオークは長い歴史を持つ。博物館に遺跡を届けるクエストや、発掘作業を手伝うクエスト、失われた歴史に光を当てるクエストなど、オルシニウムとオークの歴史にスポットが当たったクエストも多く、面白い。

オルシニウムの厳しい自然に立ち向かうシーンも
オークならではの酒やチーズなども見ることができる
超ムカツクキャラ、「ナルシス・ドレン」。有名な冒険者だが、実体は腰抜け野郎だ
デイドラの挑戦を受けるアリーナ。勝てば強い装備を入手できる

 キャラクター性という意味では、高名な冒険家である「ナルシス・ドレン」が活躍する話が面白かった。彼は腕利きのトレジャーハンターなはずだが、彼が調査を行なったというダンジョンに赴くと、何と彼は石棺に閉じ込められているのだ。偶然入り込んでしまったらしいのだが、この出会いをきっかけに一緒に遺跡を調査することになる。しかしすぐに彼の無能ぶりにあきれる羽目になる。敵に出会えば逃げ、謎解き1つできず、それでいて後ろから「そこを狙え!」、「思った通りうまくいったぞ」など言いたい放題。彼がただの詐欺師であることがはっきりわかる。

 しかも調査を進める内に、彼の余計な“探索”が怪物を目覚めさせ、近隣住民に迷惑をかけていたことが判明する。最後は宝物庫の中でドレンは石棺をのぞき込んでペラペラ解説を始める。……そうなったらやることは1つだ、石棺の中に彼を蹴り入れ、蓋をしてしまう。彼のか細い助けを求める声を聞きながらダンジョンを出て、周りの人に事情を話すと、さっきまでドレンに頼っていた連中も、「言われてみればあいつは怪しかった」と手のひら返し。思わず笑ってしまったクエストだ。

 無骨なオークならではのパロディ的なクエストも多い。オークに愛の詩を贈りたいというノルドの大使の依頼で「刀剣のように愛しい君! 私と君は手甲と柄頭のようだ!」といった愛の詩を集めたり、「ハーピーの内臓料理」、「オーガの脳みそシチュー」などゲテモノ料理のレシピを集めたりする。オークの歴史や宝物、彼らの考え方に触れるだけでなく、オークの色々な面を見ていくことになる。

 そしてクライマックスはオークの王と、その配下達のドラマだ。強大な敵ウィンターボーンとの決着は? 部族の長達と王との関係は? オルシニウムに秘められた歴史の真実とは? 様々な伏線と「オークとしての生き方」が見えてくるメインシナリオは、「エルダー・スクロールズ」の世界をもう一段深く知ることができた喜びをもたらしてくれるだろう。

 この他、オルシニウムには連携重視のパーティで挑む「パブリックダンジョン」が2つ、ソロで挑むアリーナ「メイルストリーム」が追加された。今回はアリーナに挑んでみたのだが、デイドラから与えられる試練として過酷な戦いが楽しめる。こちらを狙ってくるトラップがあるので移動しながら攻撃できる弓が便利だと感じた。

 今回は1つ目のアリーナは越えることができたが、2つ目はぶんぶん回るブレードの間で戦わなくてはならず、あっという間に体力を減らしてしまった。どう戦うか、かなり歯ごたえがありそうだ。この死を掛けた戦いを遊び半分で仕掛けてくるデイドラ達というのも、雰囲気があって面白い。

 「オルシニウム」は“オーク”という明確なテーマがあるのが良い。オークの生き方、価値観を学べ、彼らなりの歴史を深く知っていく。冒険者としてオークの歴史の転換点で役割を果たせた、というところもいい。プレイしてみて、松本氏が「オルシニウム」が好きだという理由もわかった。「ESO」のなかでかなり印象に残るコンテンツだ。

 6月に発売する「モロウウインド」もストーリー重視のコンテンツとなるという。舞台となる「ヴァーデンフェル」の歴史や文化を深く知るコンテンツになりそうだ。東洋的な雰囲気、この後大きく発展していく「ヴィべク・シティ」と、そこに住む超自然的な力を感じさせる人物・ヴィベクなど、今から楽しみである。

 「ESO」は現在、クライアントが2,138円(税込)の新価格で販売中だ。「オルシニウム」はそこからさらに追加料金がかかるが、良質なRPGを楽しみたい人にとって損のない価格だ。「モロウウインド」の前にオークの地を訪れてみてはいかがだろうか。

【スクリーンショット】
ドワーフの遺跡も数多く残っている
鉱山の奥から目覚めたドワーフの遺産が災厄をもたらす
恋や食事、オークの文化をより深く知ることも
歯ごたえのあるアリーナ。キャラクターの強さに合わせて調整される