インタビュー

「エルダー・スクロールズ・オンライン」、運営・開発者インタビュー

日本語で深い世界観とストーリーを楽しんで欲しい!

6月23日サービススタート

 DMM GAMESは6月23日より、Windows/Mac向けMMORPG「エルダー・スクロールズ・オンライン」の国内サービスをスタートさせた。

 このスタートに合わせて来日したBethesda SoftworksのエクゼクティブプロデューサーColin Mack氏、ZeniMax Online StudiosのエンジニアScott Malone氏、そしてDMM.comラボの本作のプロデューサー松本卓也氏にインタビューを行なった。

 Mack氏は日本での勤務経験もあるゲーム開発者で、日本語が堪能で今回は通訳も担当していただいた。Malone氏は非常に楽しい雰囲気で日本語版開発の苦労話を語ってくれた。そして松本氏からはゲームのコンテンツに対する強い思い入れを聞くことができた。

大ボリュームとこだわりに満ちた世界とストーリーを、日本語で楽しめる!

 まず最初に、Mack氏に「ESO」の日本でサービスすることについての感想を聞いてみた。Mack氏は、「まずは、5時間後に日本のユーザーが『ESO』に来てもらうことになるんですが……うまくいって欲しい、というのが1番です。何も問題がないとうれしいなあと」と答えた。サービス直前と言うこともあり、緊張感が伝わってきた。

Bethesda SoftworksのエクゼクティブプロデューサーColin Mack氏
Zenimax Online StudioのエンジニアScott Malone氏
DMM.comラボの本作のプロデューサー松本卓也氏
先日開催された先行体験会のSS。フルローカライズで世界が楽しめる

 そのあとMack氏は、「『ESO』はゲームとして非常にボリュームのある作品で、ローカライズは本当に大変でした。しかしローカライズスタッフの努力により、この大きなゲームがきちんと日本語化され、日本人のプレーヤーの皆さんもきちんと内容がわかる形でプレイできる。アーリーアクセスの日本人プレーヤーからは『このクエストの意味がやっとわかったよ』などの声も聞かれていますし、皆さんにはぜひ『ESO』のストーリーや、世界観をたっぷり楽しんで欲しいですね」と言葉を続けた。

 「ESO」は北米でのサービス開始から2年が経過している。その間様々なアップデートがあり、いくつかのDLCが導入され、新地域も増えた。進化したことで「ESO」は現在どのようなゲームになったのだろうか? 日本のユーザーにオススメしたいコンテンツはあるだろうか?

 Mack氏は「劇的に変わっています。一言で言えば、プレイしやすくなってます」と答えた。初期の「ESO」はキャラクターがレベルアップしていく導線は限られていたし、巡っていく地域などもある程度固定されていた。バランスが悪い部分もあった。しかしまず1年後にPS4/Xbox Oneユーザーを意識し、ゲームバランスに手が加えられ、プレイしやすくなった。

 その後追加シナリオや、新地域、新職業「シーフ」の導入により、プレイスタイルの幅が広がり、メインの地域だけではなくサブクエストでのレベルアップや、パーティプレイでの活躍の幅なども広がっていった。ゲームの導線も多彩になり、ユーザーの好みで様々な地域を巡る楽しさも増えたという。

 松本氏は「スキルツリーが増えたのは特に低レベルキャラクターのプレイスタイルの幅を広げましたね。初期から比べて成長の幅が広がり、序盤では多くのプレーヤーが似たプレイスタイルになり、使うスキルも限られていました。しかし現在はどのようにスキルを組み合わせるかを初期から楽しめるようになり、自分なりのスキルの組み合わせを試せるようになっています」と語った。

 松本氏はさらに次期アップデートとして計画されている「Barber Shop」を挙げた。そこでは、キャラクターを作成後でも外観や種族を再設定できる要素が導入されるという。プレイを続けていくことで感じたより自分のキャラクターに合った外見を追求できる様にもなるわけだ。

 しかもさらに今秋導入の「One Tamriel」では、敵対勢力の地域への冒険も可能になるなど、さらに冒険の幅は広がっていくという。しかしここまで自由度が広くなると「どう遊んでいいか」がわからなくなるのではないか?

 松本氏は「『ESO』は、こう遊んでみてはどうだろう、こういう風にも遊べるよ、という提案も多いゲームだと思っています。プレイすることでちゃんとどう遊んでいけば楽しいかを感じられるようになっている」と言葉を重ねた。グループダンジョンのレベル補正はより幅広くなっていたり、皆が楽しめるようにする工夫も随所に感じているという。

 DLCで追加された地域として松本氏はDLC第2弾「Orsinium」で追加された新地域の“ロスガー周辺”が大のお気に入りだという。「Orsinium」ではオークにスポットを当てた物語がロスガー周辺地域で展開される。この地域は雪に覆われている。「ESO」の雪に覆われた世界としてファンが頭に浮かぶのは「The Elder Scrolls V: Skyrim」の“スカイリム地方”だが、松本氏によれば「スカイリムとは“雪質”が違う。べたべたした雪ではなく、さらさらしてるんです」とのことだ。ぜひこれは確かめてみたいところだ。

 「ESO」は「The elder scrolls」シリーズで描かれていた「タムリエル大陸」を大きくカバーしているところに特色がある。「The Elder Scrolls IV: Oblivion(オブリビオン)」で描かれていた中央地帯の「シロディール」はPvP地帯に設定されている。「スカイリム地方」はクエストで巡ることになり、こちらもアップデートで拡張されているという。

 松本氏は「アルゴニアンがいる沼地の風景もぜひ見て欲しい」と語った。各地域の特色も「ESO」の楽しさだ。美しいグラフィックスによる自然情景の描写、各種族の文化/様式などは本作の大きな見所だ。ちなみに「ESO」の時代設定は、「オブリビオン」や「スカイリム」よりずっと過去の、「The Elder Scrolls II: Daggerfall」に近い時代とのことだ。

 松本氏は「日本プレーヤーに特にオススメしたいクエストは?」という質問にも「Orsinium」を挙げた。オークの王族をテーマにしたこのストーリーでは、オークの王の“浪花節”に松本氏はしびれたとのことだ。

 族長達はオークの王を軽んじ、タメ口で話しかけてくるし、こちらを妬み失脚させるように策略を練ってくる。オークの王の母親もうるさい。苦労しながら種族のためにがんばる王に、強く感情移入してしまったという。もちろん、日本語版はこの深いストーリーをフルローカライズで楽しめる。うるさい母親や、陰険な族長をきちんと演じている声優達の演技も聞き所だと松本氏は語った。

 日本語に堪能なMack氏にも吹き替え音声の印象を聞いてみた。「洋画風の雰囲気が良くででいて、いいですね」と語った。松本氏は声優の「こちらの予想を裏切ってくる」演技にも感心させられたとのこと。オリジナルの音声を聞きながらの収録になるが、声優達は単純にマネをするのではなく、きちんと雰囲気を活かした演技をしてくる引き出しの豊富さと、その使い方に驚かされたとのこと。

「気にせずタムリエルに飛び込んで欲しい!」。日本プレーヤーへのアドバイス

 一方、日本人プレーヤーとしては現在稼動している北米サーバーに参加するというところは、少し心配しているところだ。北米プレーヤーにとっては、ある日いきなり、チャット欄に読めない日本語チャットの文字が現われ、言葉のわからないプレーヤー達が世界に入ってくる。既存の米国プレーヤーと軋轢を生まないだろうか?

グループダンジョンは練ったキャラクターと連携を重視しないと生き残れない
こちらは英語版のSS。言葉は通じなくても何となく共闘できる楽しさも「ESO」ならではだ
こちらも英語版。戦争も言葉がわからなくても楽しめるコンテンツだ

 「全然心配ないと思う」と答えたのはエンジニアのScott Malone氏。「『ESO』は現在でも様々な言語が飛び交っている。フランス語、スペイン語、ドイツ語……英語圏プレーヤーにとってわからなかったり、わかりにくい言語が飛び交うのが『ESO』の世界なんです。ヨーロッパサーバーでは当たり前だし、北米サーバーでも同様です。それに日本語が加わっても、プレーヤーは気にしないと思いますよ」とMalone氏は語った。

 「日本プレーヤーが6月23日から来る」というのは、あらかじめ全プレーヤーに告知されているので、受け入れる気持はあるとMack氏は語った。ちなみにデフォルトの状態で日本語の2バイト文字はきちんと全プレーヤーのクライアントで表示できる設定になっているという。プレーヤー側のフィルタで、他言語を表示させなくすることも可能だ。

 「皇帝になろう! みたいに、真剣に、まじめにプレイしている人達は同じ言語のグループやギルドチャットを駆使していると思います。しかし、『ESO』はひたすらソロで強くなれるゲームですし、強いボスの時は横から手助けしてくれたりする。戦争の時だって他のプレーヤーと一緒に走り回って、勝手に攻撃し、仲間を助ける。言葉を交わさずにプレイできる要素が多いんです」とMack氏は語った。

 日本語対応の技術的に苦労した点も質問してみたが、Malone氏は「それより何より、時差が一番大変だった。打ち合わせに苦労しました。開発はテキサスとボルチモアにある。東京との時差は14時間。昼夜が逆転してしまう。コリンのいるボルチモアとも時差があるからね。Eメールの返信にも待たされるし、とにかく何を進めるのも時間がかかるのが大変だった」と語った。2バイト文字に変換するため、テキストの見せ方や、フォントも工夫しなくてはいけないのが大変だったという。

 この時差は大きな問題で、日本語版開発初期は数人の担当者がビデオ会議で連絡を取り合っていたが、ローンチが近づくにつれ人数が増え、ついにはプロジェクト担当者全員が出席しなくてはならなくなり、深夜や早朝に集まらなくてはならない状況は本当に大変だとMack氏は語った。「今はまさに本当にヤバイですよ」と松本氏が語った。エンジニアのMalone氏がこの時期に来日しているのは、何か問題があったときに、開発側の人間が日本にいないと対処できない可能性があったためだったという。

 日本語版制作において、松本氏は開発チームの「英語フォント」のこだわりに驚かされたという。日本版でも名詞などは英語名が使われる。このフォントにUI担当者も含めた打ち合わせで、かなり修正を求められた。フォントメーカーに意見を取り入れた「ESO」用特別フォントを発注するほどにこだわった“文字”はぜひチェックして欲しいと松本氏は語った。「『The Elder Scrolls』シリーズはやはり開発チームのこだわりは非常に強いです」とMack氏は語った。

 Malone氏にも日本のユーザーへのアドバイスを聞いてみた。「チュートリアルから序盤のクエストで基本のプレイを学び、グループツールで同レベル帯のプレーヤー達と協力してゲームを進めて欲しい。このグループツールは便利なのでぜひ活用して欲しいね。そしてストーリーと世界観をたっぷり楽しんで欲しいです」とのことだ。

 DMM GAMESの運営についても質問してみた。現在のクライアントでは日本語吹き替えのみで、英語版の音声には切り替えられないという。ユーザーの交流の場としてDMM GAMES公式の掲示板は用意するが、公式ギルドや、公式のゲーム内イベントなどは今は用意する考えはないとのこと。ゲームのアドバイスや、わからないとユーザーが感じられる部分などはサポートしていきたいということだ。「『ESO』を日本のプレーヤーに触ってもらいたい」というのが、DMM GAMESの「ESO」への基本的な関わり方だと松本氏は語った。日本人コミュニティ形成のサポートなども考えていきたいとのことだ。

日本のプレーヤーへのメッセージとしてMack氏は、「タムリエルへようこそ! いっぱい楽しんで下さい」。Malone氏は「日本の皆さんに、これまでの世界中の『ESO』ファンと同じくらいゲームを楽しんで欲しいです」と語った。松本氏は「DMMが関わらせていただく超大作MMORPGとなります。ぜひ皆さんのご意見をいただきたいと思います。もし皆さんなりの楽しみ方を見つけたら、ぜひこちらにも教えて下さい」と日本のユーザーへ語りかけた。

 いよいよ始まった「ESO」。欧米の超大作MMORPGがこれほど丁寧なローカライズでプレイできることはとてもうれしい。筆者は「The Elder Scrolls」ファンであり、MMOファンである。特に欧米の奥深く独特のダークさを持ったMMORPGは大好きだ。欧米のMMORPGとして久々のローカライズタイトルであり、フルボイスというところまで力の入れたタイトルはほとんど例がない。ぜひ人気を得て欲しい。