2017年4月19日 12:00
いきなり自分ごとではあるのだが、最近全くと言っていいほど潤いが無い。ぶっちゃけていえば、女の子との交流がない。学生時代の頃のような、毎日当たり前のように学校で女の子と会って楽しくお話する機会など今となっては皆無だ。……いや、よくよく考えてみると学生時代もそんなに無かったような……。
何故そんな切ないことをしみじみ思い出してしまったのか? それは、筆者がかつてPS2版で食と睡眠を削ってまでハマリにハマった人気恋愛シミュレーションゲーム、PS Vita版「エビコレ+アマガミ」が現在PSストアでセール中だからである。4月30日まで71%オフの1,500円(税込)で購入することができる。筆者はこの情報に大いに喜び、購入してプレイした。
筆者がPS2版の「アマガミ」を手にしたのは、キャラクターデザインの高山箕犀氏が描くヒロインたちの可愛さに惹かれ、正直、ゲームの中身など二の次だった。しかし、「アマガミ」は、“ヒロインが可愛いだけのゲーム”ではなかったのだ!
本作の最大の魅力は“女の子の気持ちを探っていくこと”にある。「アマガミ」の女の子達は一筋縄ではいかない。彼女たちの心を開くにはどうすれば良いか、攻略の道筋を考え、自分の手でヒロインを攻略していくというゲーム性の高さが「アマガミ」の特徴だ。そして親密になっていく中で、さらに女の子のことを理解していく楽しさがあるのだ。そして、筆者にとっては、もういちど、あこがれの幼なじみ「桜井梨穂子」と甘い時間を過ごせるゲームでもある。筆者の「アマガミ」への愛、梨穂子への想いを語っていきたい。
6人のヒロインたちと織り成す、クリスマスの物語
ゲームの舞台は現代の日本で、季節はクリスマスが迫る冬。主人公はどこにでもいるような普通の高校生。彼はあることがきっかけで恋をするのに前向きになれないでいた。そんなある日、親友の梅原正吉から、「今年こそは彼女を作ってクリスマスをエンジョイする! お前もそろそろ前に進め」と言われ、主人公は過去を払拭しようと決意するのだ。
主人公の恋愛対象となるヒロインは、主人公と同じ高校に通う生徒で、先輩から後輩までの個性豊かな6人の女の子たち。この6人たちと親交を深め、クリスマスを一緒に過ごす関係になるのがこのゲームの目的だ。
ゲームを始めると、物語は主人公のトラウマである過去の回想シーンから始まる。クリスマスの夜、プレゼントを手に、待ち合わせ場所で女の子が来るのを待っている。しかし、待てども待てども姿は見えず約束の時間もとうに過ぎていた。もしかして待ち合わせの時間や場所を間違えたか? 一瞬そんな都合の良い事を考えるも冷静に考えてそんな訳はない。現実に直面して落胆する。
女の子が何故約束を破ったのか。そもそも女の子と主人公はどういう関係性だったのか。ゲーム内では語られないのでわからないが、冒頭から心をえぐる展開だ。今日のために用意したプレゼントはもう見るのも嫌で、家に持って帰る気になれずに公園のゴミ箱に捨てるシーンは見ているこっちまで辛い気分になってくる。
プロローグから精神を削られながらも、ようやくここからがゲーム本編だ。ゲームの核となるのは「行動マップ」。行動マップでは、マス目が敷いてある学校内のマップが広がっており、マス上にはヒロインたちとのイベントアイコンが散りばめられている。カーソルを動かし、そこから自分の好きな女の子とのイベントを選択していく。コンタクトを重ねて女の子の好感度レベルを上げていくのがゲームの基本の流れだ。
「アマガミ」には日にちと時間の概念もあり、1回行動を選ぶたびに時間が進み、4回行動をすると1日が終了する。全てのイベントには期限が設けてあり、規定の日にちを過ぎてしまうとマップ上からイベントアイコンが消滅して選択できなくなってしまう。クリスマスまではわずか40日間。1日1日をいかに無駄なく行動して、落としたいヒロインの好感度レベルをうまく上げていかなければならない。このシビアさとゲーム性の強さがアマガミの難しさであり面白さでもある。
さぁどのヒロインのイベントを進めようか……このワクワク感こそが1番楽しい瞬間だ。クラスの優等生「絢辻詞」に行くか、しかし学園のマドンナ「森島はるか」も捨てがたい。正直言ってどのヒロインも可愛いので選ぶのを迷うのは必然。だがしかし、今回誰を攻略するかはすでに心に決めていた。筆者がアマガミ中最も好きな、ぽっちゃり系幼馴染の「桜井梨穂子」だ!
実は筆者は、今回のPS Vita版だけでなく、PSP版も所持しており、必ず初めに梨穂子を攻略している。筆者にとって、梨穂子と親密になり、幸せなエンディングを迎えることが、「アマガミ」をプレイする際の“最初の儀式”なのである。なぜそこまで梨穂子が好きなのか? もちろん見た目が可愛いさは重要だが、キャラクター性や主人公との距離感などがとにかく筆者のツボをついているのだ。
ヒロインたちのほとんどが、スタート時は同じ学校に通いながらも主人公との接点、面識はほとんどない他人状態なのである。ある意味リアルともいえる距離感なのだが、筆者はワガママなことに開幕から女の子と仲良くイチャイチャしたいのだ!!
他のヒロインでは最初は歩み寄っていく段階から始まるが、梨穂子は違う。彼女は“幼馴染”であり、最初から主人公と仲が良い。冗談を言い合ったりできる一緒にいて心地よい間柄なのだ。梨穂子の最初の登場イベントは、冬の寒空の下、校庭のそれも地べた昼寝をしている。どうやらベンチで寝ていたハズが転げ落ちて、そのまま地面で寝ているのだ。それに気づかず主人公は転がっている梨穂子のお腹を踏んづけてしまう。
普通だったら激怒ものだが、梨穂子はとにかくゆる~い性格。主人公は悪びれもなく「踏んだのが他の子じゃなく梨穂子でよかった」と告げると、「それはそうだけど」と何故か言いくるめられて納得してしまう天然さ。踏んづけたお詫びをジュースで許してくれる無邪気なところもたまらなく可愛い! この梨穂子の可愛さは、ぜひ皆さんにも伝わって欲しい!
「アマガミ」はこのように女の子とイベントを繰り広げつつ、「会話モード」で、女の子の好感度を上げていくことになる。会話モードは、女の子が話したいと思っている話題振ってあげて、会話を楽しませて好感度を上げる重要なイベントだ。
会話モードの画面には、「世間話」、「勉強」、「娯楽」、など10個の話題コマンドが表示されている。この中から女の子が今欲している話題コマンドを選んでいく。1回の会話モードで選べるコマンドは5回。正解の話題コマンドを選べば好感度が上がり、逆に女の子が無関心な話題を振ってしまうとテンションが下がってしまい、最悪話の途中で帰ってしまうので油断できない。
女の子が欲している話題は、右上の話題アイコンの“色”で判断する。「オレンジ色は、「食べ物の話題」だ!」といった形で会話を選んでいく。制限時間がないのでゆっくり会話が選べる。しかし……この色は女の子の性格や状況で表示されないことがあるのだ。そうなるとプレーヤーは女の子の話題や性格を考えて、慎重に女の子の心を探っていかなくてはいけない。「アマガミ」の面白いところの1つとして、メインヒロインの「絢辻詞」が最難関級のヒロインというところがある。彼女は実は“猫を被っていて”本当の顔を中々明かさない。この子に“攻略魂”を刺激され「アマガミ」のファンになった人も多いはずだ。
一方、梨穂子はとても素直で、わかりやすい。だけどそれで梨穂子がつまらないキャラクターだ、と言うわけではない。「アマガミ」は、“女の子仲良くなる過程”、もしくは“関係性を自分で作っていく”のが面白いのだ。会話の傾向で好感度を上げてもそれだけではない。ヒロイン達と仲良くなるにつれ、最初では見せない顔も見えてきたりするのが楽しいし、達成感がたまらないのだ。
会話をうまく運び、いくつものイベントを重ねると、ヒロインの好感度とテンションが最高潮になる。こうなると、話題コマンドの"アタック"が選べるようになる。アタックはその名のとおり、女の子に急接近を仕掛ける攻めのコマンドである。会話でのハードルがひくい梨穂子だが、このアタックで見せてくれるイベントがドキドキでたまらないのである。ちょっとネタバレになってしまうが、次章でさらに梨穂子とのイベントと、彼女のかわいらしさを掘り下げ、「アマガミ」そのものの魅力をもっと語っていこう。
梨穂子を攻略しなければ、自分の「アマガミ」は始まらない!
梨穂子への“アタック”で筆者が強く印象に残ってるのが「爪切り」だ。主人公が梨穂子に「新しく買った爪切りの試し切りをさせてくれ」と申し出るのである。こんな無茶な願いをちゃんときいてくれる梨穂子は本当に天使だ。
しかも彼女は、誰もいない茶道部の部室で、「手の爪は切っちゃったので、足の指で……」とかいいながら、靴下を脱ぎ始めるのである! 頬を染めながら「もしかして、足は嫌かなぁ?」という梨穂子の言葉に、主人公も筆者もノックアウト寸前。嫌な訳がない。むしろ前のめりでお願いしますと叫びたい!!
アタックコマンドで発生したイベントのほとんどには、1枚絵のご褒美CGが用意されている。このご褒美CGにたどり着けた瞬間こそ、このゲームに出会えて良かったと心底思う。とりあえず梨穂子の生足が堪能できるこのイベントは是非見ていただき、そしてこの興奮を共感したいと思う。ホント素晴らしいのです!
「アマガミ」は攻略とゲーム性が素晴らしいという評価を受けている。特に前述したメインヒロインの絢辻詞の攻略の難しさが話題を集めた。その視点からすると、梨穂子は“難易度が低い”といえるが、だからこそ「関係の変化」を丁寧に書いており、そこに筆者はグッとくるのである。主人公は梨穂子の前で茶道部の先輩に、「夕月先輩は大人の魅力がある」なんていうことを言う。好感度が低かった頃の梨穂子はそんな話題は笑って同意してくれたりしてたのだが、関係性が深まってくると「やきもち」を焼くのだ。
梨穂子の好感度があがってくると、「他の女の子とそんなに比べられたら傷つく」など、本音を漏らす。梨穂子は無邪気で、天然で、どこまでもまっすぐだが、それでもやっぱり秘めている想いや、主人公を異性として好きになったからこその感情の変化がある。「アマガミ」はそういう梨穂子をきちんと描いているのが素晴らしい。
他のヒロインは関係を深めて好意が上がっていく過程を楽しむのだが、梨穂子は近い関係だけに、意外な一面に驚かされる。幼なじみという筆者にとっての“あこがれの存在”をとてもリアルに感じさせるシナリオとキャラクター描写がたまらないのである。
そしてもう1つ大きな「アマガミ」の魅力が「エンディング」である。エンディングは各ヒロインになんと5種類以上(バッドエンドを含む)用意されているのだ。好感度レベルは3段階あり、クリスマスまでにどのくらい好感度レベルを上げたかでエンディングが変化する。最高のグッドエンディングを見るには、様々なイベントでフラグを回収し、クリスマスまでに好感度を最大まで上げなくてはならない。他のヒロインと同時に好感度を上げていたりする場合、目当てのヒロインを3段階まで上げるのは難しい。
難しさだけでなく、「ヒロインの全ての面を見たくなる」というところもある。「グッドエンディングではあんなに主人公にべったりだったのに、バッドだとこんな風に冷たい態度もとるのか……」など、ヒロインの全てを知りたくなる。攻略と同じように、本当に女の子の内面とキャラクター描写が丁寧だからこそ、やりこんでみたくなる。さらに周回プレイを重ねるごとにイベントの追加や隠しヒロインルートも開放されて、もはや永久にアマガミの世界に浸かれるほどのボリュームがあるのである。
今回は梨穂子の紹介に全力をかけたが、他のヒロインの話も本当に面白いし、可愛い子ばかりだ。その中でもメインヒロインの絢辻詞ルートはとにかくプレイしてもらいたい。そして筆者がなぜそこまでオススメしたかを感じ取ってもらえると嬉しい。今回、久々に「アマガミ」をプレイし、梨穂子への愛を再確認したのだが、始めてプレイした時と気持ちは変わらず、とにかく面白かった。ヒロインとの楽しい学園生活、自分の手で女の子と親交を深めていくゲーム性の高さ、簡単には落とせない攻略しがいのあるゲームバランス、その全てが詰まっているからこそ、こんなにもこの作品に魅了されているんだと痛感した。
やり込み要素にヒロインごとのイベント達成率というものが存在するのだが、これをがむしゃらに埋めていた過去を思い出し、今回もまた100%になるまで徹底的にプレイしたい気持ちでいっぱいだ。
本編以外にも、ちょっとした息抜きに遊ぶにはピッタリのオマケモード「ぬくぬくまーじゃん」や、200点以上の立ち絵やラフ画、描き下ろしイラストを観覧することができる「ギャラリーモード」など、本作を隅の隅まで楽しめるモードが満載だ。
本作を1,500円で購入できるセールは4月30日まで。まだプレイしたことのない方や、このレビューで面白そうと思ってくれた方は、この機会に是非手に取ってもらいたい。そして推しヒロインを見つけて、筆者のように盲目的なまでに本作を楽しんでもらいたい。
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