「ドローン・トゥ・デス」レビュー

ドローン・トゥ・デス

見た目は悪ノリの極致だけど中身は至極まっとうなTPS

ジャンル:
  • 大乱闘アクションシューター
発売元:
  • ソニー・インタラクティブエンタテインメントアメリカ
開発元:
  • ソニー・インタラクティブエンタテインメント
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
2,460円(税込)
発売日:
2017年4月5日

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアは、プレイステーション 4用大乱闘アクションシューター「ドローン・トゥ・デス」をダウンロード専用ソフトとして4月5日より配信を開始した。価格は2,460円(税込)。プレイにはインターネット接続環境とPlayStation Plusへの加入が必要。5月9日までの期間中はPlayStation Plus加入者に「フリープレイ」で無料提供されるほか、ゲーム中のウェポンがすべてアンロックされる「ウェポン大人買いセット」が999円(税込:5月10日以降は1,230円)で販売される。

 「ドローン・トゥ・デス(原題「Drawn to Death」、死ぬほど落書き)」は、最大4人でオンライン対戦が楽しめるアクションシューター。原題にあるとおり“すべてがラクガキ”で構成された黒歴史ノートの世界で、アナログタッチを活かしたキャラクターたちが激しい戦いを繰り広げる。「GOD OF WAR」など数々の大作で知られるクリエイターのデイビッド・ジャッフィー氏が手掛けていることでも高い注目を集めている。

チュートリアル(トレーニング)から浴びせられる下品な言動の数々!

誰しも経験がありそうな“黒歴史ノート”が世界観

 どんなゲームも、まずはチュートリアルから。本作では「トレーニングルーム」と呼ばれているが、それを選択すると「カエル紳士のいけない地下聖堂を描いている」という謎のローディングメッセージが……。さっと開かれた黒歴史ノートが表示されると、解剖中なのか内蔵丸出しで磔にされたカエルにチ○カス野郎よばわりされ、思わず「あの……Z指定じゃないですよね?」と公式サイトを再確認。

 これに限らず、本作はとにかくメッセージや表現が下品。「大丈夫かこのゲーム?」と心配になるほどだが、これは本作のコンセプトの核である“中二病っぽさ”に基づいたもの。思春期など多感な時期、ノートなどに自分の理想や夢を描き込んだ経験は、恐らく誰にでもあるのではないだろうか。無敵の超能力やありえないご都合主義の塊など、他の人には絶対に見せられない“黒歴史”の数々。

 本作に登場するキャラクターなどの各要素は、すべてが“黒歴史の産物”といっていい。前述のデイビッド・ジャッフィー氏の世界観、生まれ育ちの違いからくる多少の差異は感じられるが、ノートに描き込まれた黒歴史の根源は一緒で、面映ゆくもあるが「ああ、そういうのあるある」とほくそ笑みたくなる。逆にいえば、黒歴史と無縁に過ごしてきた清く正しい人(そんな人がこの世に存在すればだけど)は、本作はただただ不快で汚いものにしか映らないかもしれない。

 閑話休題……トレーニングルームでは、撃つ、移動する、特殊能力を使うといった操作のすべてを“汚い表現”とともに習得できる。一応説明しておくと、左スティックで移動、左スティック押し込みでダッシュ、×ボタンでジャンプ、ジャンプ中に再び×ボタンを押すとダブルジャンプ、△ボタンで2種類のウェポン切り替えと落ちているウェポンを拾う、L2ボタンでズーム、R1ボタンでグレネード系の投擲、L1ボタンを押しながら左スティック左右で回避、〇ボタンで2種類のスペシャルアタック切り替え、右スティック押し込みで殴る、さらにはキャラクター個別の特殊スキル(トレーニングルームでは「パンク☆キッド」のもの)」も教えてくれる。

 後述するが、本作は中二病の黒歴史というコーティングのなかに“至極まっとう”というか“クソ真面目”な姿が感じられる。カエル紳士も表現こそ最低だが、教え方は親切丁寧の極み。トレーニングルームのプレイ時間、その質と量こそ実は本作の正体なの……かも?。

絶望的なまでに口が悪いカエル紳士。だが教えてくれる内容はとても丁寧で結構な尺が割かれている。ははーん、カエル紳士あんた実はとてもいい人だな!?

最大4人でオンラインプレイ ~マッチングに少々難あり!?~

 トレーニングルームで操作を身に着けたら、あとは実践あるのみ。ゲームを開始直後に選べるモードは、PSNのフレンド同士で戦う「フレンドマッチ」と、世界中のプレーヤーと戦う「フリーマッチ」の2つ。フリーマッチを5回こなすと、勝敗によってプレーヤーランキングが変動する「ランクマッチ」が解禁される。マップは全7種類で、スタート時に各プレーヤーのリクエストにより決定される。

 現時点で選べるキャラクターは6人で、前述のとおり特殊能力が異なる。ウェポンは(これまた現時点で)25種類あり、スタート直後から持っている2種類とグレネードのほか、マップ上にランダム配置される3種類をあらかじめ決めておく。ウェポンはベーシックなものよりも非常にクセの強いものが多く、ちょっと触った程度では「これホントに使いこなせるようになるの!?」というものまでバリエーションは豊富のひとこと。

 アクションシューターなので、アサルトライフル、ロケットランチャー、スナイパーライフル的な“無難”なウェポンもあるのだが、それ以外……たとえば下半身がちぎれた男性がドッジボールを敵に向かって投げる「ドッジボール・ダン」、棺桶に入った肥満体系の中年男性の死体を長時間チャージして投擲する「ジョーおじさん」、旧型ゲーム機がパッケージを射出する「RPG(別バージョンでJRPG)」、タイミングよく押すと鷲が出現する「愛国砲」など、文字どおり悪ノリしまくったウェポンばかり。黒歴史ノートがモチーフなので、全ウェポンに詳細(?)な説明がついているのも面白い。

 「最初だしなんでもいいかな」と適当にゲームを始めたところ……初回からマッチングトラブルが発生し、本来2対2のはずが筆者側だけなんとひとり。「これ途中乱入者がきてくれるのかな?」と思いきや、それもなしで多勢に無勢のままゲームが終了。幼少期からゲーム漬けでこんなことには慣れっこの筆者はいいが、そうじゃない人が初回からこれを喰らったらと思うと、ちょっと心配になる。以後も頻繁ではないにせよパートナーや相手の脱落、マッチングに時間がかかるといった状況が見受けられたため、ここは早急に改善していただきたいところだ。

ゲームを進めて各要素を順次アンロックしていく。ウェポンのみ面倒くさい人は「ウェポン大人買いセット」で、お金で解決できる

初期も初期なので“わからん殺し”が横行 ~そんな今こそ腕を上げるとき~

 前述のとおり本作は尖ったウェポン、特に「当たればデカイ」系が多い。使い勝手は悪いがハマれば凄いというやつで、ベーシックなウェポンでチマチマ当てるよりこっちのほうが全然早い! という感覚で、不慣れな人が多い状況で「一芸に秀でたプレーヤー」が猛烈な勢いでキルスコアを挙げていく状況に陥りがち。

 ゲームの方向性としてはアリだと思うが、実は筆者はこれを特に心配していた。なぜかというと、一撃必殺級のウェポンやキャラクター能力は、いわゆる“わからん殺し”でゲームに不慣れな人を遠ざけてしまう最大要因のひとつだからだ。対人戦が大前提のゲームはプレーヤー層に厚みを持たせる工夫が必要不可欠。そのための誘導として初期はなるべく「わからん殺し」が横行しないようにすべきだと思うのだが、本作は作品コンセプトからして殺伐としており、トレーニングルームの段階で一撃必殺の能力を教えてくれるほど。

 オンライン対戦の数を重ねていくと、やはり尖った部分を最大限に活かすプレーヤーが圧倒的に強く、フリープレイは馴れてなければ一方的にやられてしまう展開に陥りがち。ただ……ウェポン、キャラクター、マップの特徴を少しずつ“身体”つまりは感覚を染み込ませていくと、当然のことながら「わからん殺し」はそうそう喰らわなくなる。シチュエーションによっては一撃必殺系を回避できないこともないが、それはそういう状況に追い込んでいく“形”を持つことが重要で、当然のように実践するアクションシューターに秀でた人も少なからず見受けられた。

 「いきなり殺されてワケがわからない」とワンプレイで敬遠してしまう人もいそうだが、前述のとおり本作は外観こそ突飛で下品ながらコーティングの下は至極真面目かつ丁寧に作られており(たまに発生するアプリケーションエラーはいただけないが……)、やればやっただけ手ごたえが感じられるはず。特に昨今のアクションシューターは多人数がトレンドで、4人という最大数は逆に新鮮に映るかもしれない。ごらんのとおり決して万人向けとはいえないが、PlayStation Plus加入者は無料ということもあり、アクションシューターが好きな人はこの機会にぜひ一度、そして重ねてプレイしていただきたい。

最大人数が4人というアクションシューターも昨今では珍しいかも。バディ形式なので多人数とは違う責任の重さを実感しつつ遊ぶのもいい。ただ世界観的なノリとしては「勝てば俺のおかげ」、「負けたらアイツのせい」という気がしなくもない