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【特別企画】バンダイ「HG ガンダムバルバトス」、“素組み”レビュー
異色のデザインながら、作りやすくてよく動く、完成度の高いキット
(2015/11/5 00:00)
10月4日より放映が開始された、「機動戦士ガンダム」シリーズの最新作「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の主人公「三日月・オーガス」が駆るモビルスーツ「ガンダムバルバトス」(劇中名称は「ガンダム・バルバトス」)が、1/144スケールのガンプラHGシリーズとして、放映開始前から発売されている。
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」は、火星を舞台に、過酷な環境に置かれた少年兵達を描く、乾いた雰囲気が異色さを感じさせる作品となっている。主人公機のガンダム・バルバトスも、そのシルエットはかなり独特で、特に腰の部分は装甲がなく内部構造がむき出しで、異様な雰囲気もある。トリコロールカラーでなければ、一見ではガンダムとは思えない姿をしている。
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」はテレビで第1話が放映されるなり、その世界観とストーリーテリング、そしてメカ描写がファンに受け、プラモデルの「HG ガンダムバルバトス」も一部の店舗で品薄になるほどの人気を博した。
筆者自身も魅力を感じ、そのデザインを細かくチェックするとともに、バンダイの新シリーズに盛り込まれた技術を見るため、プラモデルを実際に作ってみようということになった。改造や塗装をしない素組みでのレビューとなるが、この製品の特徴や製作における簡単なポイントなどを、写真とともにお届けしよう。
見た目以上に、作って触って楽しめるキット、「HG ガンダムバルバトス」
本製品の1,000円(税別)という価格は、近年では2,000円を超えるものもあるHGシリーズとしては、かなり安価な部類に入る。このためかキット自体のボリュームはやや少なめだが、ランナー枚数(ポリキャップを入れて7枚)の割にパーツは多く、キットのディテールや色分けもかなり細かいところまでフォローされている。
ポリキャップ以外のパーツは全てスチロール樹脂で構成されている。今回製作には、模型用精密ニッパーとゲート処理用のデザインナイフ、シールを貼るためのピンセットなどを使用した。そのほかに特別な工具は使用せずとも組むことができた。
このガンダムバルバトスは劇中設定では、300年前の戦争「厄祭戦」と呼ばれる大きな戦いに参加したモビルスーツのうちの1体で、その内部に「ガンダム・フレーム」と呼ばれる機構を内蔵している。
キットでは、設定画のガンダム・フレーム状態には完全に再現できないものの、製作過程でフレームから作りあげる部位が多く、さらに機体自体がフレーム部分を多く露出したデザインなので、キットを組み立てることでガンダム・フレームの構造を感じさせる構造になっている。
「鉄血のオルフェンズ」のアニメーション公式サイトでは、ガンダム・フレームの設定画も公開されていて、キットと見比べてみると、むき出しになっている腰や関節部はもちろん、装甲に隠れる胴体や脚部分も設定通りにデザインされているのがわかる。ネット上のモデラーは、最低限のフレーム状態で組んでその写真を公開している人もいる。完全ではないものの、設定画のガンダム・フレームのようにも組めるのだ。
製作自体これといって難しいところはないが、多少頭部の難易度が高くなっている。頭部はかなり小さいにもかかわらず、9つのパーツで構成されており、かなりの密度だ。パーツ自体がかなり小さく、筆者も制作中頭頂部にはめるパーツを紛失しかけた。組み立て時には注意をしておきたい。
またいわゆる“ガンダム”の共通の意匠であるマスク部分にある2本の「へ」の字型のスリットや、この機体独特のクマドリのような頬とあごのディテールを塗装するだけでも見た目の印象がかなり変わるかと思うので、ぜひ試してみてほしい。
このほか面白かったのは、足首の構造だ。足首はリング状のパーツによって、支柱を軸に足首が左右に大きくスイングできるようになっている。その形状から、可動範囲が非常に広く、完成時に限界まで開脚させた状態でも脚が接地する機構なので、かなりポージングの自由が効く。
パーツの色分けは、顔以外は素組みでもほとんど気にならないレベルで、ヒザや胸、第4形態(後述)の肩の装甲にある紋章のようなマークは、付属のシールで色づけされている。ヒザと肩は細いシールなのだが、胸のマークはさすがに小さいため、ディテールを隠す形でシールを貼る仕様だ。この程度の塗装ならガンダムマーカーで塗ってしまうのもいいかもしれない。そのほかふくらはぎ、腰部、脚の付け根、バックパックの中央部などの一部がシールで色づけされている。
劇中同様装備の組み替えも再現。オプションセットなどシリーズの広がりも期待
このキットの、そしてガンダム・バルバトスの大きな特徴が、機体の「第1形態」と「第4形態」を差し替えにて再現できるコンパーチブル仕様だ。ガンダム・バルバトスは劇中で、敵の武装や装甲を奪い活用して姿を変えていくという。
この記事を執筆している10月末では肩アーマーをつけたキットの“第4形態”は登場していないが、公式サイトでのモビルスーツ紹介のページでは基本的な姿として第4形態が、そして別に第1形態も紹介されている。ガンダム・バルバトスは、これからどのように姿を変えるのだろうか。
第1形態は肩にアーマーがなく、左腕に六角形の「ガントレット」呼ばれる武装が取り付けられた、左右非対称の形態だ。それに対して第4形態は、ガントレットが取り外されて左右対称となり、肩にアーマーが取り付けられ、よりマッシブなシルエットになる。
前者はやや細身に見えるが、肩に可動を妨げるものがないため、両腕を上げたポージングなども容易だ。コンパーチブルといっても、腕や肩の差し替えはいつでもできるので、好みや気分で楽しんでみたい。
新しいキットだけあって、総合的な完成度は非常に高いと感じられたこのガンダム・バルバトス。合わせ目を消す必要がある場所も、両腕と後頭部あたりしか見あたらず、成形色で足らない色味はほとんどシールで事足りるので、簡単なスミ入れだけでも十分見栄えするものとなるはずだ。
パーツ数もほどよく、初心者にも作りやすいキットといえるのではないだろうか。ちなみに筆者は完成までに、並行して写真撮影を行ないつつも3時間弱で完成させることができた。
個人的に気に入ったのはやはり可動範囲だ。独特なデザインを立体化しつつも、可動域の自由度は高く、ケレン味のあるポージングや劇中のシーンなども比較的楽に再現できる。アクションフィギュアとまではいかないものの、素組みならガシガシとポージングさせて楽しむのもいいかもしれない。
一方、少し気になったのは、手のパーツが1種類しかなかったこと。せっかくケレン味のあるポーズも可能だというのに、本製品には武器用の握った手しか付属しないため、「ここで手を開けるポーズができたら格好いいのにな」と感じることがあった。
「鉄血のオルフェンズ」のプラモデルは積極的に発売されており、10月10日には「HG 1/144 グレイズ(一般機/指揮官機)」、「HG 1/144 MSオプションセット1&CGSモビルワーカー」が発売されている。オプションセットは大型の武器も同梱されており、物語に合わせた装備の組み替えも楽しめる。今後表情のついた手首パーツも発売して欲しい。
見た目以上に、作って触って楽しめるキットとなったこの「HG ガンダムバルバトス」。ラインナップは続々充実しており、“ブンドド”を楽しむ環境もできている。今回筆者は本稿のために何も手を加えずに製作したが、記事掲載後にスミ入れ程度はしてみようかと考えている。
そして、11月28日には「1/100ガンダムバルバトス」の発売が控えている。こちらのキットは、ガンダム・フレームが再現されているとのことで、今回のキットとはまた違う楽しみ方ができそうである。もちろん番組でまだ未発表のモビルスーツなどがどのように展開されていくのかも期待したい。
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