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【特別企画】美少女ガンプラ!? 「HGBF 1/144 すーぱーふみな」レビュー
「ガンプラは自由だ!」 ガンプラ+フィギュアの新しい方向性
(2015/12/29 00:00)
2015年4月に放映されたアニメ「ガンダムビルドファイターズトライ」(以下、「GBFT」)25話に登場し、ファンの間で話題を呼んだサカイ・ミナトのオリジナル機体「すーぱーふみな」のプラスチックキット「HGBF 1/144 すーぱーふみな」が、11月7日にバンダイより発売となった。
この「すーぱーふみな」は、「GBFT」に登場する天大寺学園チーム「ビルドバスターズ」のサカイ・ミナトが、ライバルチームのホシノ・フミナへの想いを具現化して作りあげたガンプラで、フミナの姿(フミナ本人には無許可)と、彼女が製作した機体「パワードジムカーディガン」のカラーや武装をインスパイアした、れっきとしたモビルスーツ(のプラモデル)である。
劇中では、25話(最終回)最後のガンプラバトルが始まったきっかけとなったキットで、自由な発想で作るガンプラの本質を象徴しつつも、ガンプラの常識を覆すかわいらしさで、多くのファンを魅了した。
「GBFT」は様々なガンプラが登場する作品だが、その中でもあまりに異色の存在であるすーぱーふみなが、まさか実際の「ガンプラ」として発売されるというのは、ファンを驚かせ、その発売には大きな注目が集まった。筆者が店頭で見て回った限りでは、11月7日の発売日から数日で店頭から姿を消し、約1週間後に2次出荷のためか再び店頭で見かけ、この時購入することができたが、同様に数日で完売してしまったようで、現在も品薄な状態が続いている。
今回、この異色ながらも大きな魅力を秘めたガンプラを、2016年1月27日の再版を前にレビューしたい。なお今回のレビューも、ニッパーなどの最低限の工具を使用し、塗装などは行なわない素組みの状態で製作している。
複数のパーツとシールで顔を表現した、プラモデルならではの仕様
「HGBF 1/144 すーぱーふみな」は、パッケージやそこに描かれている完成画像を見る限りは、ガンプラというよりはフィギュアのような雰囲気を見せているが、実際に作ってみると、現代のプラモデル製品ならではの、工夫が設けられたガンプラだということがわかる。
“ガンプラらしさ”が一番現われているのが顔で、一般的なフィギュアならプリントで処理されてしまうところを、この「すーぱーふみな」は、目とまゆ毛を複数のパーツとシールによって表現し、作り手がそこに至るまでの工程を実際に作って楽しめる仕様になっているのだ。さらに技術のある人ならば、瞳やアイシャドウなどを塗装することでさらによく見せられるという、製作においてある程度の自由度が設けられているのも嬉しいところだ。
バンダイは5年ほど前に「MG FIGURERISE」というカテゴリで「ドラゴンボール」の悟空や「ONE PIECE」のルフィなど、アニメのキャラクターをプラモデルで表現した製品を出しているが、それから比較するとこの「すーぱーふみな」は、技術の進歩とともに“顔が命”の女の子キャラクターということもあって、特に顔に関しては大きな進化が感じられる。
豊かな可動域を実現した、ガンプラらしいボディの設計
顔の表現に独特のアプローチを行なっている「HGBF 1/144 すーぱーふみな」だが、その一方で手足などの可動部位は、近年のガンプラに見られる豊かな可動範囲を確保しつつ、非常に作りやすい設計となっており、完成後には動かして楽しむアクションフィギュア的な楽しさも持ち合わせている。
モビルスーツのロボット然とした姿ではないため、いわゆる内部フレーム的なパーツはなく、各部位は非常に素直な設計で、本稿の写真撮影時に動かしていても、パーツが外れてしまう「ポロリ」のアクシデントはほとんどなかった。
個人的に開発陣のこだわりが感じられたのは、劇中でミナトがアピールした「ほとんど見えない分割可動部」としてクローズアップされたフトモモのいわゆる「絶対領域」の部分でロールの可動域を持たせている点だ。よく見ると肌色のパーツからヒザへとつながる白いパーツにかけてわずかな段差を設けてあり、ここが回転することで、ヒザを閉じて両足の間にお尻を落とす「女の子座り」に近いポーズも可能となっている。見る人が見れば「わかってる」と納得させられる仕様である。
そして、モビルスーツとしてはやはり背中に背負ったバックパックに装備された武装一式が気になるところで、これは前述の「パワードジムカーディガン」を踏襲している。バックパックにバーニアがなかったり、シールドが小型化していたりと、若干仕様の違いはあるが、2丁の大型ライフルと2枚のシールドはアームによって自由に動かすことができ、バトル中をイメージしたポージングを再現可能だ。
両肩に装備されている設定のビームサーベルが付属しないのは残念だが、付属の拳パーツには穴が開いているので、パワードジムカーディガンを持っている人は、それに付属のものを流用するといいかもしれない。
「動かして楽しめるフィギュア」といえる魅力を持つキットだけに、贅沢を言えば顔の表情や手のパーツなどにもう少しバリエーションが欲しかったところだ。劇中での活躍シーンが短かったため仕方がないところではあるが、ミナトがアピールした「目パチ」のシーンを再現してみたいと思う人は多いのではなかろうか。可能であればプレミアムバンダイなどでオプションパーツの発売などがあればいいと思ったのだが、どうだろう。
単純な「組み立てフィギュア」ではなく、“プラモデルの成分”を強めた設計で、これまでにない斬新な魅力を持つ製品となっている。パーツ数はそこそこあるが、組立にはこれといって難しいところはなく、特に組み立てることで“顔”ができていく過程は新鮮で楽しいものだった。現状は品薄とはいえ、受注限定商品ではなく、一般流通商品なところも嬉しいところで、再版後はこのキットを使った改造作品などもさらに増えてきそうな予感がする。
「GBFT」の放送が既に終了している今、この機体のノウハウを活かした女性キャラクターの製品が出てくるとすれば「アーマーガールズプロジェクト」で展開されている「MS少女」のキット化などが考えられるが、我々が思いつかないような製品が出てくることにも期待したいところだ。
(C)創通・サンライズ・テレビ東京