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【GDC 2014】VRの本命「Oculus Rift」が大幅グレードアップ中!

1080p対応で遅延も大幅削減。一般向け製品版の開発もスタート

3月17日〜3月21日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Convention Center

Oculus VRブースは今年も大人気

 米Oculus VRは3月19日、GDC 2014のセッションデイ開幕に合わせ、VRヘッドセット「Oculus Rift」の最新版となる“Developer Kit 2”を発表。1080pの高解像度に対応、平行移動を含む6軸トラッキング、大幅な遅延低減を実現したバージョンを開発者向けに出荷開始した。

 現在、世界のゲーム開発シーンにおいて、Oculus VRは台風の目だ。2013年のGDCではじめて「Oculus VR」の実機を披露して以降、VRゲーミングへの大きな潮流を巻き起こした。いまやインディーズからAAAスタジオ、プラットフォーマーに到るまで、無数のゲーム開発者がVRゲーミングの実現を目指して熱心な取り組みを進めつつある。

 きっかけとなったGDC 2013から1年、ゲーム開発者界の重鎮John Carmack氏(DOOM、Quakeの開発者)も参加して進められた「Oculus Rift」の開発はひとつの節目に到達。今回発表・出荷が開始されたDevelper Kit 2を最後にプロトタイプ機の研究は終わり、これからは一般販売に向けて最終製品版の開発が進められる模様だ。

【【Oculus Rift Development Kit 2】】

1080p、75Hz、6DoF、さらなる遅延低減を実現。“完璧なVR”を目指すこだわり

講演を行なったOculus VRのMichael Antonov氏
“Development Kit 2”の仕様
低残像・低遅延への工夫。黒挿入によって残像を低減
USBポート装備など拡張の余地も追加された

 セッションデイ初日、Oculus VRによる“Working with the Latest Oculus Hardware and Software”と題するスポンサードセッションが開催され、「Oculus Rift」最新版の仕様が明らかになった。それによれば、今回出荷が開始されるのは開発者向けの“Development Kit 2”。従来版から50ドル値上がりとなる350ドルで注文受付が開始されている。

 初期版からの進化点は多岐にわたり、ほとんど別物だ。

 まず液晶部分が低残像のOLED(有機EL)方式に変更。解像度は1,920×1,080となり詳細度が格段に上がったほか、最高75Hzの高リフレッシュレートに対応。視野角は従来と変わらず上下左右90度、対角110度となっている。

 さらにOLEDの高速な点灯・消灯メカニズムを応用し、高速な黒挿入を行なうことで大幅に残像感を低減。この点はさらなる改良を約束しており、最終製品版ではさらにリフレッシュレートを上げる方向。85Hz以上を目指すとのことだ。

 ヘッドトラッキングに使われる加速度センサーは1,000Hz駆動に引き上げられ、入力側からの遅延低減も実現する。また、付属カメラによる赤外線トラッキングにより上下左右前後の平行移動を含む6軸自由度(6DOF)のヘッドトラッキングに対応する。また、ヘッドセット本体にはUSBインターフェイスが装備され、追加でUSBカメラを装着してAR(強化現実)的な応用もできるとのこと。

 また、初期版では必要であったコントロールボックスが廃止され、システム全体がシンプル化された。USBデバイスをヘッドセットに接続しない場合はUSBバスパワーのみでの動作も可能ということで、製品版に向けて取り回しの良さが大幅に改善されている。

 特に力が入れられているのは、遅延の低減だ。実際の頭の動きに対して映像の反応に遅れがある場合、結果はひどいVR酔いとして現われる。これは意識されないレベルの小さな遅延でも違和感の原因となるため、ハード側とSDK側の両面で対策を講じているという。

ポジショントラッキングを実現するために付属するIRカメラ
本体側には多数の赤外線LEDが取り付けられ、あらゆる角度でのトラッキングが可能になっている
レンダリングされた画像は、Riftの画角に合わせて変形させるという仕上げの工程がある
画像を変形させる際に、最新のセンサー情報に基づいた変位を加え、描画ラグを低減

 SDK側の対策のひとつとして特に効果的と見られるのが、アプリケーション側の実装と連携して実現する“Timewarp”テクニックだ。これはどういうものだろうか。

 通常、ゲームプログラムはトラッキングセンサーの読み取り結果に応じて構図を決定し、画面をレンダリング、ディスプレイに出力する。このとき、60fps動作のゲームならレンダリングに10ミリ秒以上の時間がかかる。しかし、トラッキングシステムは1,000Hzで駆動しているため、プログラムはレンダリング前でも、出力の直前でも、いつでも最新の視線方向を取得することが可能だ。

 “Timewarp”のテクニックでは、レンダリング後に改めてセンサーを読み取る。得られたデータは、ユーザーが視線を振っている場合、レンダリング前のデータとは少しだけ異なる方向を示すことになる。例えばレンダリングされた映像と、最新のセンサー情報の間に0.1度の差があるとしよう。この0.1度の差を、既にレンダリングされた映像に少しだけ変位を加えることで埋めるのだ。これにより、レンダリングによって生まれる遅延が隠蔽され、ユーザーはより自然な視線運動を得られることになる。

 このテクニックは現在Oculus VRで働くJohn Carmack氏によって考案されたそうだが、その示すところは“少しの遅延も妥協しない”というハードとSDK両面からの取り組みだ。セッションで講演したOculus VRのMichael Antonov氏はこう繰り返している。「VRにベターは存在しない。完璧なVRか、そうでないかだ」。

 「Oculus Rift」は、それまでの常識を覆すVRゲーミングに特化した仕様によって世界の開発者を動かした。これからは製品化を目指すうえで、完璧なVRヘッドセットとなることを目指すということのようだ。

 Oculus VRでは、今回発表された“Developer Kit 2”以降、開発機の更新は計画していないという。製品版の開発に専念するということだ。製品版ではディスプレイ・レンズ部分の再考やボディ全体のリデザインなど、大幅な改良を予定しているとのこと。どんなものに仕上がるか、今からワクワクしながら待ちたい。

汎用的なSDKレンダリングモード、細かい最適化が可能なゲームレンダリングモード。2系統の描画系の制御方法が用意されている
センサー読み取り→映像の描画→ディスプレイへの出力、というプロセスで遅延が発生
センサー読み取りを描画直前に持ってくることで多少の削減ができる
さらに、ディスプレイ出力の直前にセンサーを読み取り、映像の変位処理によって反映することで、描画遅延をほぼ隠蔽できる

(佐藤カフジ)