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【特別企画】2015年、VRゲーミングの時代が始まる!
CES 2015を前後して進展のあった各社VR製品を総点検する!
(2015/2/10 12:00)
CES 2015を前後して進展のあった各社VR製品を総点検する!
Oculus Riftが注目を集めてからというもの、VRを取り巻く状況は激変した。ゲーム開発者はDK1、DK2向けのゲーム開発を始め、ハードメーカーは新たなVRヘッドセットを次々に開発中だ。Oculus Riftに続いたものとして最も有名なのはSCEがPS4向けに開発中の「Project Morpheus」で、2014年のGDCにて初披露された。当のOculus VRもDK2に続くプロトタイプ「Crescent Bay」を2014年9月に発表するなど、製品化を目指す動きが本格化している。
今年1月に開催されたCES 2015ではゲームデバイスメーカーのRazerが、オープンソースを謳うVRヘッドセットのプロトタイプ「OSVR」を発表。VRゲーミングのプラットフォーム競争に新たなビッグプレーヤーが登場した格好となる。
いわゆるゲーミング分野の外にも、VRの波は押し寄せてきている。コロンブスの卵的な発想でスマホを使った簡易的なVRシステム「Google Cardboard」の発表を皮切りに、スマホ向けVRは品質よりも手軽さを重視する形で商業ベースに乗り始めている。これらの事情をそれぞれかいつまんで見ていこう。
Crescent Bay(Oculus VR)
「Crescent Bay」は、2014年9月に開催されたOculus VRの開発者カンファレンス、Oculus Connectにて公開された最新プロトタイプだ。DK2の課題であったヘッドトラッキング範囲の狭さを解決し、360度自由に、ある程度の幅で動きまわることもできるようになったほか、解像度を向上し(具体的な数字は明らかにしていないが、2,560×1,440ドットと言われている)、映像の詳細度を向上させつつ、網目感を低減。大幅な軽量化や重量バランスの見直しも行なわれており、DK2で見られた数々の問題点を解消したモデルとなっている。
だが「Crescent Bay」は製品版ではなく、DK2に続く開発キットにもならない予定だ。昨年9月に発表されてから今年1月にCES 2015で一般公開されるまでの製造数はわずか数十個。どちらかといえば製品版に向けたコンセプトの実証、および、現在Oculus VRが重視しているVR向け3D サウンドシステム開発のための検証機という位置づけとみられる(そのためヘッドフォンが標準装備されている)。
現時点ではっきりしているのは、製品版にヘッドフォンは搭載されないということだ。また、多くのPCゲーマーの環境でゲームを実行するための必要性能を考えれば、2,560×1,440ドットのパネルで、内部解像度はそれ以上(Oculus Riftは、レンズ歪みを補正するためワンランク高い解像度でレンダリングする仕組み)というのは荷が重い。同等以上の解像度を製品版でも目指すのであれば、HMD側にアップスケーラーの実装が必要になるはず、といった点で新たな課題も見えてきている。
Project Mopheus(SCE)
SCEが開発中の「Project Morpheus」については、これまでたくさんの記事でご紹介してきている。Oculus Riftとの違いを挙げるなら、PS4を母機として想定しているためにたくさんの利点(共通のハードスペック、DUALSHOCK 4、PS Move等の同時活用)があり、またPS4そのもののスペックは固定であるため、それを前提とする製品版のイメージも持ちやすい、ソフトの最適化もし易いというのが特徴だ。
現在までに公開されている開発機は、すでに非常に完成度が高い。ここからさらに製品版に向けて大幅に仕様が変わっていくことは考えにくく、あるとすればさらなる軽量化といったマイナーチェンジが主になるだろう。となれば、製品化への道のりで重要になってくるのはローンチ時に充分な数の対応ゲームを用意できるかどうか。これについても既に多数のトップデベロッパーが名乗りを上げており、そのラインナップもそう遠くないうちに明らかになっていくはずだ。
OSVR(Razer)
OSVR(Open-Source Virtual Reality)は、賛同するハードメーカーやゲーム開発者とともにVRプラットフォームの開発を進めようという、ゲームデバイスメーカーのRazerが主導する試みだ。その中心となるが、CES 2015で発表されたVRヘッドセットのプロトタイプ機「OSVR Hacker Dev Kit」である。
この試みにはSIXENSE、SENSICS、LEAP Motionといったそうそうたる入力デバイスメーカーが賛同を表明しており、実際にCES 2015ではヘッドセットにLEAP Motionを組み合わせたデモも披露されている。ただ、同様のことは既に1年以上前からOculus Rift DK1/DK2を使って実現されており、Razerが“オープンソース”を謳う本当のメリットはまだ見えていない。
2015年の第二四半期に正式出荷が予定されている「OSVR Hacker Dev Kit」は、パネル解像度など、基本的なスペックの面ではDK2に近い。ただ、外部と内部にUSB 3.0ポートを3つ搭載するなど、拡張を前提としたキットとなっているため、特定のアイデアを試したい開発者にとってはOculus Riftよりも良い選択肢となるだろう。
こういった“たたき台”的なバージョンを世に出しての製品開発を、Razerはかつてアーケードコントローラー「ATROX」で成功させている。しかし、VRゲーミングの世界にはOculus VRという偉大な先駆者がいて、まだ道を切り開いている途中だ。拙速な仕様乱立はアダともなりうる。「OSVR」がその流れにどういった影響をあたえるか、筆者としては興味半分、不安半分である。
スマホ利用型VRシステム
「Google Cardboard」を皮切りに、スマホを使った安価なVRシステムに注目が集まりつつある。HMD部のガワは安価な素材で、自分で作れば材料費のみ、完成品を買っても2,000円~3,000円程度と極端に安い。必要となるのは4.5~5.5インチ程度の一般的なスマホだけだ。
手軽さもあって、スマホVRはあれよという間に商業ベースに乗ってきた。ここ日本でも「ハコスコ」のような製品の販売や、コンテンツサービスの提供が始まっている。ただし、トラッキングセンサーがスマホ内蔵のものを流用することや、スマホをガワ内部に装着するため「進む/戻る」程度の簡単な操作しかできないなどの制限から、パノラマ3D映像を眺めるといった受動的なVR体験に用途が限定されるのが弱点だ。ゲーマー層の関心を惹くものではない。
とはいえスマホの性能向上や高解像度化といった後押しもあり、ノンゲーマー向けのVR体験としては“これで充分”という水準に急速に近づいてきている。そこに一定の市場があることが明らかになれば、さらにノンインタラクティブ系のVRコンテンツが充実していく流れを生み出しそうだ。それはOculus Riftが目指すような高品質のVRとは全く違う世界だが、その入口にはなりうる。
Microsoft Hololens(Microsoft)
1月21日にMicrosoftが発表した「Microsoft Hololens」は、現実の風景に3D映像をオーバーレイ表示するAR(Augmented Reality拡張現実)システムだ。Oculus Riftのようにユーザーの視界を完全に奪うVRシステムではないし、ゲーム専用でもないが、HMD製品というカテゴリーにMicrosoftという巨大IT企業が乗り出した、という事実は注目に値する。
Hololensのシステムには、Kinectで培われたと思われるモーションセンシング技術の発展形を組み合わせてあり、ユーザーの位置やジェスチャーをリアルタイムに追跡できる。同様の入力形態はVRゲーミングの分野でも求められるようになるはずだ。
実際、Oculus VRは昨年末に、ジェスチャー入力技術のKickStarterプロジェクト「Nimble Sense」を買収している。このことから、今後はジェスチャー入力を前提としたインターフェイスデザインが急速に発達、標準化していくはずだ。