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【特別企画】「Oculus RIFT DK2」で覗きこむVRゲーミングの現状と将来

ゲームに関してはまだまだ発展途上。バッチリハマるもの、不快感を催すものの違いはどこにあるか?

ゲームに関してはまだまだ発展途上。バッチリハマるもの、不快感を催すものの違いはどこにあるか?

対応ソフトの公式カタログサイト「Oculus Share」。https://share.oculusvr.com/

 続いてコンテンツ面について見てみよう。DK2はリリースされたばかりで、SDKの新バージョンに各開発者が対応中ということもあって、現時点で使えるコンテンツは限られているが、それでも各種各様の使い心地は確認することができた。DK2で快適に楽しめたもの、そうでなかったものを、タイプ別にいくつかご紹介していこう。なお、今回操作はキーボード/マウスもしくはXbox 360コントローラーを使用している。

快適そのもの、相性抜群なタイトル

 固定シートで乗り物を運転するドライビングシム系ゲームとの相性はバツグンだ。対応済みというレースシム「Live for Speed」は筆者環境でうまく動作しなかったので、トラック配送業をシムする「Euro Truck Simulator 2」で試したが、非常に快適で楽しい。大型トラックの運転席の内装と外に広がる風景を同時にリアルスケールで楽しみつつドライブ。積み荷の配送先では思い切り振り返って窓から顔を出し、方向を微調整しながらバック、カーゴをドロップポイントへピタリ。完全にトラック野郎になりきれた。今後、ドライビングシム系をVRヘッドセットなしでプレイするのは苦痛になるだろう。

運転席視点で大型トラックを運転する「Euro Truck Simulator 2」。相性完璧

 3人称や俯瞰視点の各種アクション/シューティングとの相性も以外に良い。スペハリ的な視点で自キャラをヘッドトラッキングで操作で動かしつつ障害物を避けていく「Vangard V」をはじめ、ユーザーの意志のみで視点を動かす設計のゲームは酔いにくく、快適だ。

3人称スペースアクション「Vangard V」。無料デモの範囲でも相性の良さが確かめられる

 非乗り物系の主観視点ゲームの中でも快適さが際立ったのが「AaaaaAAaaaAAAaaAAAAaAAAAACulus!」。Steamで人気の、ビルから飛び降りて障害物を避けつつ着地するだけのゲームだが、DK2対応により一皮むけた面白さに。眼前にせまるビル群に“実体”が感じられることで、より迫力が増し、しかもより緻密に動けるようになった。距離感が正確に掴めるので薄皮一枚レベルの精度で避けられるのが特に良い。基本的に動きはフリーフォールであり進行方向はひとつ、平行移動はゆっくりであり、頭を振られることもないのでVR酔い無し。完璧な題材だ。

「AaaaaAAaaaAAAaaAAAAaAAAAACulus!」。基本落下するだけ。VR酔いは無し。迫力は充分。

 2Dゲームとの相性も良い。東方っぽい弾幕シュー「すわぴょん2012 すわこちゃんcubic for Oculus Rift」は俯瞰視点だが、立体視を活かして敵や弾が“高さ”を持っており、トンネルのように潜って避けられる“立体弾幕”という新境地を開拓。空から弾が降ってくるような2D画面では不可能なゲーム演出もあり、プレイの幅がまさに1次元増した感じでである。UI等の画面要素も立体視向けに整理されており、ステージ画面は大きく、スコア等はその上空に立体的に配置。ヘッドトラッキングとの相性も抜群だ。これはVRヘッドセットを使った2Dシューターのお手本になる。

「すわぴょん2012 すわこちゃんcubic for Oculus Rift」。立体弾幕という新境地。その他システム面の完成度も極めてソリッド。

 インタラクティブ性は薄いがVRヘッドセットの感動を深く味わえるのが各種MMD系コンテンツ。複数試し、今のところ1番出来が良いと感じたのは「Miku Entertainment Sphere Stage」。MMD用3DモデルとモーションをUnity上で動かしているだけのアプリだが、2D画面では見慣れきったこの光景も、その中に自分が入り込むとなれば別次元の破壊力。ポジショナルトラッキングのおかげでDK1よりもはるかに威力は上。個人的には、日本でCV1が1番売れるコンテンツはこれ系になりそうだなと思う。ちなみに、床に這いつくばって何かを見上げようとしてもポジショナルトラッキングの範囲外に出てしまうので、いろいろとDK2の現仕様に限界を感じる殿方は多いのではないだろうか。

やる気は買うが明らかに調整不足または無理筋なタイトル

 AAAクラスの現行タイトルとしてはオンラインミリタリーバトルシム「WarThunder」がいち早くOculus Riftへの対応を果たした。といっても現時点ではα版レベルの対応で、視差が適切でなく、目の前を飛ぶ戦闘機にすら焦点を合わせられない(二重に見える)し、かろうじてきちんと立体視できるコックピット内部も何かスケール感がおかしく、ゼロ戦のコックピットがジャンボジェットの操縦室並にデカく見える。とはいえ、乗り物系コンテンツとの相性の良さはレース系で実証済みであり、DK2への最適化がきちんと成されれば今1番遊べるコンテンツになることは間違いない。問題はDK2では解像感の不足により遠景の情報量が足りないことだが、このあたりはCV1で解消に向かうはずだ。

不自然に宙に浮く巨大なUI、焦点の合わない視差など調整不足。だが内容はいいので完全対応に期待

 ジェットコースター等の遊園地ガジェット系コンテンツは、DK2対応デモの中ではかなりのメジャージャンルだ。なのだが、VRヘッドセットとの相性は思わしくない。例えばジェットコースターではレールに合わせて姿勢、視線が激しく揺さぶられる。DK2の高精度トラッキングや実在感のある映像のおかげで完璧な視覚情報が得られるため、実際に動いているように錯覚されて体が身構える一方、身構えた先に現実のG(加速度)がないため、感覚の重大な齟齬が発生し、ぐらんぐらんと頭を揺さぶられるような感覚とともに悪性のVR酔いを誘発してしまうのだ。筆者は比較的3D酔いには強い方だが、それでも5分で吐き気をもよおす。その激しさは人によってはそのまま1日動けなくなっても驚かない。ユーザーの意志によらず視点・視線を激しく動かすコンテンツは、VRヘッドセットとの相性最悪であると、今なら言える。

ジェットコースター系デモの「Perseption」。速度調整可、位置を捉えやすい室内環境など配慮はあるが、しかし装着5分で三半規管が息をしなくなるレベルで気持ちが悪くなる

 では、自分で視点・視線を操作できるFPS系コンテンツはどうだろうか。DK1にいち早く対応した「Team Fortress 2」は残念ながらまだDK2に対応していないので、「Temple of Merk」というDK2対応のデモゲームを試した。「Skyrim」的な操作で近接武器を振り、襲い来るモンスターを殴り倒すだけのゲームだ。単体の敵と正面で殴りあっているうちは快適に遊べて迫力も満点。巨大なオーガが現われたときには心臓がドキドキするほど楽しい。

 しかし、敵が複数になり、周りを見回しつつ、動き回りながら立ちまわるようになると、感覚との微妙な齟齬が積み重なってだんだん気分が悪くなってくる。全体的に移動スピードを落とす、レーダーなどで視界外の情報を提供する(ユーザーの首振り頻度を下げさせる)、などの調整が必要になりそうだ。そう考えると、「Quake」系のようなハイペースのスポーツ系FPSはVRヘッドセットとあまり相性がよろしくないかもしれない。

「Temple of Merk」。足を止めて殴りあうのは楽しい。敵が増えて逃げまわる必要が出るとVR酔いとの戦いが始まる。近接アクションでこれなので、FPS系のVR対応はかなりのノウハウが必要になりそうだ

(佐藤カフジ)