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【特別企画】2015年、VRゲーミングの時代が始まる!
「Oculus VR」から「Microsoft Hololens」まで。いま知っておきたいVRゲーミングの基礎知識
(2015/2/10 12:00)
いま、ある分野でコンピューターゲームの世界が大きく変わろうとしている。VR(バーチャルリアリティ)ゲーミングという新ジャンルの遊びが、急速に実現へと向かっているのだ。
はじまりは2012年、設立されたばかりのOculus VRが、全く新しいコンセプトのPC用VRヘッドセット「Oculus Rift」をKickStarterで公開したことにはじまる。スマホサイズのディスプレイパネルに、大きなレンズを組み合わせた投影方式、高速なヘッドトラッキングセンサー、レンズ歪みを前提としたサイド・バイ・サイドのステレオ映像の出力方式。
それぞれの技術は単体では目新しいものではなかったが、それらの組み合わせは画期的だった。それまで高視野角・高解像度のVRヘッドセットといえば、業務用の高価な(数十万円~数百万円)ものという常識があったのだが、Oculus VRのアイディアはそれを完全に覆したのだ。いま揃ってきている技術を横断的に使用することで、“完全没入型のVR(Fully Immersive Virtual Reality)”が比較的安価に実現できるということを誰の目にもはっきりと示すものだった。
その後、2013年3月に「Oculus Rift」の最初の開発機Development Kit 1(DK1)がGDC 2013(Game Deveopler Conference)で初公開され、コンセプトは完全に実証された。潮目は代わり、誰もがコンシューマーVR、VRゲーミングの実現を確実視するようになった。
それから2年。1月のCES 2015(Consumer Electronics Show)では新興勢力による新たなVRソリューションが発表され、3月にはGDC 2015(Game Developers Conference)が開催され、最もアツいキーワードがVRになることは間違いない。筆者は、今年のGDCで「Oculus Rift」の製品版が発表されるか、少なくともその仕様がはっきりすることになるのではないかと睨んでいる。いろいろな意味で、その準備が整ってきているのではないかと思うからだ。
このジャンルの旗手であるOculus VRから製品版が発売されることになれば、今年はVRゲーミングが本格的に立ち上がる年になるだろう。それを踏まえて本稿では、コンシューマーVRとVRゲーミングを取り巻く現状をおさらいし、VRゲーミングの近い将来を予想してみたい。
なぜOculus Riftが注目されるのか──VRヘッドセットの必要条件
過去2年の間、Oculus VRは開発キットとして2つのVRヘッドセットを開発者向けに出荷してきた。2013年のDK1、2014年のDK2だ。現状で最新の開発キットであるDK2については昨年の記事(【特別企画】「Oculus RIFT DK2」で覗きこむVRゲーミングの現状と将来)にて使い心地や課題を詳しくご紹介しているので、ぜひそちらも合わせてご覧頂きたい。
いま、多くのゲーム開発者がOculus Riftの開発キットを入手し、VRゲーム開発の研究や、デモゲームの発表を多数行なっている。国内外の大手ゲーム会社も総じてVRゲームに高い関心を寄せている。Oculus VRによれば、2種類の開発キットだけでこれまで10万個近い数が出荷されている。これは今までの、VRという言葉が取り沙汰されてはやがてフェードアウトしていった時代には全く無かった現象だ。
どうしてOculus Riftはこれほどまでに注目されるのだろうか。それは、過去存在したVRヘッドセット的なガジェットの数々とは根本的な部分でいくつかの違いがあり、コンシューマーVRの全く新しい世界を切り開くことに成功したからだ。以下に最も重要な要素を3点挙げよう。
視野角が広い
Oculus Riftは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)として過去の製品と比べると、圧倒的に視野角が広い。代表的なHMD製品にはソニーのHMZシリーズや、オリンパスのEye-Trekシリーズなどがあるが、それらの視野角は30~40度程度。DK1、DK2は90度~100度と、倍以上の視野角を持つのだ。
これほどの視野角になると、レンズを通してディスプレイを眺める感覚ではなくなり、映像が作るVR空間の中に自分自身が取り込まれたような感覚となる。アプリ側の設計としても、グラフィックスの視野角をユーザー自身の現実の視野角に一致させる仕組みとなっている。これによって得られる“没入感”こそ、ユーザーがかつてない感動を覚える部分であり、VRヘッドセットの最低条件なのだ。
低遅延のヘッドトラッキングセンサーを内蔵
ユーザー自身をVR空間の参加者とさせるためには、視界をユーザーの頭の動きに合わせて動かせる仕組みが必要となる。かつては既存のHMD向けのアドオンとしてヘッドトラッキングモジュールが提供されてきた製品もあるが、Oculus Riftではそれを当初から内蔵し、オプション扱いしていないことが根本的な違いとなっている。
内蔵とすることでハードウェア的、ソフトウェア的な連携も高まる。これによってDK2では高精度のポジショナルトラッキングを含む6DOF(6軸自由度)のヘッドトラッキングを、30ms以下の映像遅延で提供することに成功した。映像側の予測機能を組み合わせると体感遅延はほぼゼロとなる。これは快適で、説得力のあるVR体験のために絶対に必要だった要素だ。
安価である
Oculus Rift以前のVRヘッドセットは非常に高価だった。ひとつの例を挙げると、HMD製品の老舗であるVusixは、VRヘッドセット的なソリューションを非常に早い時期(1990年代~2000年台初頭)から提供してきたが、視野角や解像度が極端に低いローエンド品でも5~10万円、ある程度解像度を確保したハイエンドモデルとなれば数十万円だ。これではとても手を出せない。
これに対して、Oculus RiftのDK2は350ドル(4万円程度)で提供されている。開発キットゆえ利益を取っていないと仮定しても、これほど視野角が広く、本格的なVR体験ができるデバイスの値段としては革命的である。製品版では量産効果が働くこともあるため、さらに良い仕様となっても価格帯が大きく変わることはないだろう。Oculus VR自身も「誰もが買える価格で提供したい」と表明している。これこそOculus Riftが新たなゲームプラットフォームとして大きな期待が寄せられている決定的な理由のひとつだ。