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上海「GEFORCE eSPORTS」にて「SHIELD」お披露目

国内発売は年内目標。Tegraロードマップに沿った将来計画にも言及

5月18日~19日開催(現地時間)

「SHIELD」試遊ゾーンとなっていたNVIDIAブース

 5月18日から19日にかけて上海にて開催されたNVIDIAによるゲームイベント「GEFORCE eSPORTS」では、会場内のNVIDIAブースにて、Androidベースのポータブルゲーム機「SHIELD」がアジアで初めてプレイアブル出展された。

 また、これに合わせてプレス向けの説明会も開催され、「NVIDIA SHIELD」の実際的な情報が次々と明らかになっている。本稿ではこれについて詳しくお伝えしていこう。

オープンプラットフォーム・高品質ゲームデバイスとしての「SHIELD」

カバーを閉じた「SHIELD」の外観
NVIDIA プロダクトマネージャー Jason Paul氏
ローンチ時のタイトルラインナップ
「Sonic 4 WEpisode II THD」をプレイ

 既報の通り、「SHIELD」はNVIDIAの最新モバイルプロセッサ Tegra 4を搭載する、Android Jerrybeanベースのポータブルゲーム機だ。マルチタッチに対応した5インチ、720pのRetinaディスプレイを搭載し、多彩なハイエンドAndroidゲームをプレイできる。また、「GeForce GTX 650」以降を搭載したPCで実行されているゲームの映像を受け取り、ストリーミングプレイ方式でフルスペックのPCゲームを遊ぶことも可能。クラウドゲーミング端末としての活用も意識され、NVIDIAらしいアイディアを盛り込んだゲーム機だ。

 NVIDIAブース内のプレイアブル展示については、「混乱を避けるため」として撮影がいっさい禁止されていたためビジュアルでお伝えすることができないが、「SKYRIM」などのPCゲームや、複数のAndroid向けゲームで感触を確かめることができた。3月末、GDC 2013での試遊でお伝えした際と印象はあまり変わらなかったが(関連記事)、ひとつ気になる問題があったので、それについては記事後半でお伝えしよう。

 プレス向けの説明を行なったNVIDIAのプロダクトマネージャー、Jason Paul氏は、ほぼ製品版というモデルを手にし、「SHIELD」の魅力をアピールした。「これは、ハイクオリティなオーディオと映像でAndroidゲームを楽しむベストな方法であり、PCゲームの新しい楽しみ方も提案する、サイコーのモバイルゲーミングデバイスです」と自信たっぷりだ。

 その中でもPaul氏が特に強く訴えていたのは、「SHIELD」がAndroidというオープンプラットフォームに基づくゲーム機であることだ。つまり、ローンチを前にして大量の対応ゲームが既に存在しているというのがポイントとなる。Tegra向けに最適化されたゲームについても、ローンチ時点で30タイトルあまりが用意されるという。

 発売時期については、米国・カナダにて6月末に出荷開始の予定となっているが、アジア向けの出荷については、現時点では「近いうちに」という曖昧なコメントだった。少なくとも年内には展開していきたいと考えているようだ。

 さらに興味深いのは、Paul氏が「SHIELD」を単発の製品とは考えていないことだ。NVIDIAでは毎年新たなTegraプロセッサを発表・発売しており、2014年には「Logan」、2015年には「Parker」と、2年先までのロードマップが既に明らかになっている。これに合わせて「SHIELD」も、最新プロセッサを搭載したリビジョンを継続的に投入していくつもりであるという。

 これについてPaul氏は、「SHIELD」はオープンプラットフォームに基づくゲーム機であり、従来のコンソールとは異なる概念で製品を展開していきたい、と語っている。

 「Tegra 5」になるとみられる次世代プロセッサはOpenGL 4.3をフルサポートするなど、デスクトップ用プロセッサ並の能力を持つ見込みであるため、単なる処理能力やフレームレートの向上といった量的な進化に留まらないはずだ。現在は初代「SHIELD」もまだ発売されていない段階ながら、さっそくシリーズとしての将来が楽しみになってきた。

背面の各種インターフェイス。ヘッドフォン端子はマイク入力も対応でボイスチャットが可能。USBで電源供給・外部デバイス接続が可能。外部モニタへの映像出力はHDMI、もしくはMiracastでのWi-Fi経由での出力も可能。SDカードスロットでストレージ拡張もできる
720pの液晶モニタと、据え置き機水準のコントローラー、このサイズではかなりの高音質を持つスピーカーを搭載しており、Androidのゲームを非常に高い品質でプレイできる

PCゲームストリーミングは60~80fpsが目標。現在も最適化を進めるNVIDIA

PCゲームストリーミングプレイの様子
「Steam Big Picture」を操作
ストリーミングプレイには「GeForce GTX 650」以降を搭載のPCが必要

 Paul氏はPCゲームのストリーミングプレイも実演してくれたオススメはValveの「Steam Big Picture」を通じてのアクセス。ゲームの選択・購入・起動・プレイや、ウェブブラウジングがコントローラー操作で全て完結するため、「SHIELD」にうってつけであるようだ。

 ちなみに、ストリーミングプレイを利用するためにはPC側に「GeForce GTX 650」(Keplerアーキテクチャ世代)以降のGPUが必要となる。その理由は、それが「NVENC」と呼ばれる新世代ビデオエンコードエンジンを搭載しているためだ。

 PC側のゲームでレンダリングされた映像はオンダイの「NVENC」に送られ、リアルタイムにエンコードされたのち、ネットワークを通じて「SHIELD」に出力されるという仕組みになっている。

 つまり、レンダリングとエンコードが同チップ内で完結するため、CPU処理を経由するソフトウェアエンコーダーに比べて高速であり、遅延が少ない。またCUDAベースのエンコーダーとは違って、専用ハードウェアであるため、グラフィックス処理に向けられるべきリソースを奪わない。これにより、「SHIELD」でのストリーミングプレイの品質が高められているというわけだ。

 ちなみに、PC側でリアルタイムにQoSを監視し、エンコーダーのビットレートを自動的に最適な値に変更するという仕組みもあるため、Wi-Fiの品質が変化する不安定な環境でも安定したゲームプレイを実現できるという。

 冒頭に述べた「気になる点」というのはこのあたりだ。Paul氏の実演、また、NVIDIAブース内で筆者が実際に確認した範囲では、実際に「SHIELD」側で得られているフレームレートは期待値に及んでおらず、見た感じでは実効30fps程度。PC側は軽く60fps以上のヌルヌル感で動いていたため、見比べると「SHIELD」側はガクガクという感じで違いは一目瞭然だった。

 これについてNVIDIAのアジア・パシフィック担当テクニカルマーケティングマネージャーのJeffrey Yen氏は事実を認め、今回の会場に用意された「SHIELD」は、安定性を重視した保守的なセッティングになっていると説明してくれた。

 NVIDIAでは、「SHIELD」の製品版に向けて現在も安定化と最適化の作業を続けており、ストリーミングプレイ時に60~80fpsのパフォーマンスを引き出すことを目標にしているとのことだ。PC側の「NVENC」、また「SHIELD」側のハードウェアデコーダー的にはその能力が十分にあるため、あとはドライバ及びファームウェアの完成度向上がテーマとなっているようだ。

 「GeForce 6」シリーズに搭載されたハードウェアエンコーダー「NVENC」はこれまでほぼ活用されていなかったが、「SHIELD」での利用を皮切りに、今後は、汎用エンコーダーとしての活用、ゲームプレイ配信向けの活用など様々な展開が期待される。それだけに、「SHIELD」発売時にどれほどまでソフトウェアのチューニングが行われるかは、大勢のPCゲーマーにとって無関係な話ではなさそうだ。

 「SHIELD」については今後も新たな情報を入手次第、続報をお届けして行きたいと思う。

(佐藤カフジ)