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【GDC 2013】NVIDIAのゲーム機「Project SHIELD」を試遊してみた
Tegra4によるモバイル最強の性能はゲームコンソールにどう活かされるのか?
(2013/3/31 15:40)
GDC 2013のエキスポ会場では、毎度おなじみチップメーカーのNVIDIAが大型ブースを出展。大別して3つのコーナーで製品展示を行ない、来場者の関心を集めていた。ハイエンドGPUコーナー、「Project SHIELD」コーナー、「NVIDIA GRID」コーナーである。
その中で特に人気があったのはNVIDIA初のモバイルゲーム機である「Project SHIELD」だ。据え置き機水準のコントローラーに、720pモニターをくっつけた外観。中身は「Jelly Bean」搭載のAndroid端末で、そのコアとなるチップは最新のTegra4というシロモノである。
今回、このゲーム機(?)を体験することができたので、NVIDIAが準備しつつあるモバイルゲーミングプラットフォームの感触を、関連情報を交えつつお伝えしたい。
ゲームデバイスとして本気を感じさせる作り。高性能Androidゲーム機としての使い方
「Project SHIELD(以下『SHIELD』)」は、2種類の顔を持つデバイスだ。ひとつは、高性能Android端末としての顔。現在ハイエンドモバイル端末で広く採用されているモバイルプロセッサTegra3の後継となるTegra4を搭載し、既存のAndroidゲームをスイスイ動かすことができる。搭載ディスプレイサイズは5インチ、解像度1,280×720ドット。外部ディスプレイに映像を出力することも可能で、据え置きAndroidゲーム機として話題の「OUYA」のような使い方もできる。
もう1つは、PCゲームのストリーミングゲーム端末としての顔だ。SHIELDはGeForce GTX 650またはGTX 660M以上のGPUを搭載するPC上でレンダリングされた映像を、Wifiネットワークを通じてストリーミング表示することができる。コントローラー入力をPCにフィードバックする仕組みを組み合わせ、ハイスペックPCで動作するゲームを、手元の SHIELDを使ってプレイできるのだ。
今回のNVIDIAブースでは両方の使い方がプレイアブル展示されていた。まず、Androidゲーム機としての感触から見てみよう。
肝心のコントローラー部はなかなか良い出来だ。2つのアナログスティック、デジタル方向パッド、アナログトリガーと、PS3/Xbox 360コントローラーと同水準の機能が網羅されている。モニター部がタッチパッドになっていることを加えれば、ゲーム入力の自由度に関してWii U Game Pad に匹敵する構成だ。
ホールド感はXbox 360コントローラーに近い。アナログスティックの配置はプレイステーションふうだが、スティックのストロークはかなり短く、強いて言えば3DSのスティックに近い感触だ。スプリングテンションは滑らかで、ぬめぬめと快適にアナログ操作ができる。
十字パッドのストロークが少し大きく、クリック感がほぼ無いためグニグニしすぎているのが気になるが、その他のボタン配置、トリガーの感触などは問題なし。今世代の据え置きコンソールに慣れたプレーヤーなら数分でマスターできる。作りも堅牢で、ゲームガジェットとしてきちんと作りこまれている印象だ。
会場の実機で動作していたゲームタイトルは、「グランド・セフト・オート:バイス・シティー」、「Real Boxing」、「The Conduit HD」など。いずれも、NVIDIAのAndroid向けゲームサイトであるTegraZoneで配信されているハイエンドのAndroidゲームタイトルだ。
これらのタイトルは、Tegra4専用というわけではない。映像品質はプレイステーション 2に毛が生えたくらいの感じで、現行世代の据え置きコンソールと比べるとひとまわり劣るクオリティではある。
ただし、Tegra4のパワーのおかげだろう、高いフレームレートが確保されている。基本的には60fps動作のようで、非常になめらかな動きだ。Tegra4のポテンシャルを引き出す専用タイトルが登場するまでは、既存のAndroidゲームを快適に楽しめる端末として存在感を発揮しそうだ。
PC連携のストリーミングゲーム機能は宣伝通りの実用レベル
それでは、SHIELDのウリである、もうひとつの使い方について見てみよう。会場にはストリーミングゲーム端末としての機能を披露するプレイアブル機も用意されていた。デモされていたのはPC版「Elder Scrolls V: Skyrim」と、「ボーダーランズ 2」の2タイトル。どちらも、SHIELDを通じてフルにコントロールできる。
映像はPC側でレンダリングされたものなので、Androidゲームとは比べ物にならない品質だ。ストリーミング再生にともなう圧縮ノイズ等の混入は全く感じられず、720pのクリアな映像が60fpsで動作している。画面は5インチと小さいので、文字が読みづらいのが問題になる程度だ。
そこで気になるのは、ストリーミングにともなう遅延がどの程度になるのか、ということだろう。現地のNVIDIAスタッフに質問をぶつけたところ、「遅延はあるけど、気にならないレベルでしょ?どう?」とのこと。
確かに、動きがモッサリ系の「Skyrim」なら遅延の影響は全く感じない。ただ、「ボーダーランズ 2」では、トリガーを引いて銃口から弾が出るような、1フレームで反応するインスタントなアクションにおいて、ほんのわずかに遅れが感じられた。まあ、よほどハードコアなゲーマーでなければ全く問題にならないレベルではある。
このPCとのリンク機能はWifiネットワークを前提としているため、基本的には家の中にあるPCで使う形だ。「Steam Big Picture」などと併用すれば、ゲームの選択や起動もコントローラー操作で完結できるので、PCのモニターをOFFにしたまま、いろんなゲームを遊べるようになる。
最近ではコントローラーで遊べるPCゲームが大変な勢いで増えてきており、そういったゲームをわざわざデスクトップに張り付いてプレイするのは面倒だと感じているゲーマーも多いはず。SHIELDならPCの品質を生かしつつ、カジュアル色の強いゲームをリラックスして楽しめる。日常的にPCゲームを遊ぶユーザーにとって、とても良いインターフェイスになりそうだ。
SHIELDのポテンシャルを広げるはずのNVIDIA GRID。ジャンルを絞れば遊べそう
コアゲーマーには魅力的なSHIELDのストリミング機能だが、その原理上、ハイスペックPC水準のゲームを遊ぶには高性能PCが必要であるため、少々ニッチ感が強すぎる。そこで気になるのが、SHIELDと「NVIDIA GRID」の連携だろう。NVIDIA GRIDは、NVIDIAのGPU技術をサーバーに用いたクラウドゲーミングのソリューションだ。
会場にはちょうどSHIELDコーナーの隣にNVIDIA GRIDコーナーがあったので、すぐ試すことができた。ただ、NVIDIA GRIDのデモ端末として用意されていたのはSHIELDではなく、各社のTegra搭載Androidスマートフォンやタブレット、スマートTV、ノートPCなどだ。肝心のSHIELDとの組み合わせは確かめられなかったのが残念。
デモゲームとしてクラウドサーバー上で実行されていたのは「ストリートファイター 4」、「ボーダーランズ 2」といったアクション系ゲームだ。早速プレイしてみた印象は、やっぱりラグを感じるな、ということである。
特に「ストリートファイター 4」では遅延の影響をモロに感じる。例えば、スティックの上を入れてジャンプする際、スティックを上に弾いて、指を離して、スプリングのテンションでスティックがニュートラルに戻って、さらに少し経ってから、やっと画面内のキャラがジャンプするという感じだ。このため、相手の動きを見極めてから何かするのではもう遅い。全部の操作を先読み&先行入力するはめになるので、ちょっとゲームにならない。
「ボーダーランズ 2」でも似たような感じである。エイミングにかなり遅延があるので、マウスで素早く狙うのが難しい(スティック操作では多少緩和される)。また、トリガーを引いて弾が出るまで、見てわかるくらいの遅れがあり、どうにもテンポが悪い。
これを踏まえると、NVIDIA GRIDでフルに楽しめるゲームは、多少の遅延があってもゲーム性に悪影響が少ないものに限られそうだ。例えばストラテジーや、非アクションRPG、カードゲームなどだ。
そもそも、現時点では、NVIDIA GRIDはまだよくわからない存在である。実際のクラウドゲーミングサービスが具体的にどのような形で提供されるのか、どういったタイトルが供給されるのか、それがいつになるのか、明らかではない。ゲームユーザーとしては、今後そのあたりがどうなっていくか、様子を見ていこうと思う。