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【E3 2013】3種のAndroidゲームマシン勢揃いでゲームの未来はどう変わる?
近日発売「SHIELD」、「OUYA」、初披露の「M.O.J.O」。それぞれのコンセプトとスペックをチェック
(2013/6/16 13:08)
既にお伝えしている通り、今回のE3ではゲーミングデバイスメーカーのMad Catzが新しいゲームマシン「M.O.J.O」を発表した(関連記事)。
会場ではこのほか、NVIDIAのポータブルゲームマシン「SHIELD」がNVIDIAブースに出展され、またKickStarterプロジェクトとして大成功を収めたゲームマシン「OUYA」が、会場近くの広場でローンチパーティを開催していた。
この3種のゲームマシンの共通点は、いずれもモバイルプラットフォーム向けのOSであるAndroidをベースとしていることだ。「OUYA」は6月25日の一般販売開始を予定し、「SHIELD」は6月末の北米向けの出荷を控える。「M.O.J.O」は2013年内の発売を目指す。
つまり、今年は3機種ものAndroidゲームマシンが登場する年になるわけだ。にわかに活気づいたこれらのゲームマシンは今後、ゲームシーンをどのように変えていくのか。まずは今回E3で見ることのできた3マシンのコンセプトとスペックの違いをまとめつつ考えてみたい。
手軽なクラウドゲーム端末として浸透しそうな「OUYA」
まず、6月25日の一般販売開始を予定している「OUYA」を取り上げよう。「OUYA」はAndroidベースのカスタムOSを搭載する据え置き型の小型ゲームマシンで、独自設計のコントローラーが付属。心臓部にはNVIDIAのモバイルプロセッサ Tegra3 を採用。HDMIを通じてHDTVへの接続が可能で、据え置き機水準の大画面ゲームを楽しめるというものだ。
一般販売開始時期が近づいてきたということで、E3 2013の会場ではローンチパーティを兼ねる形でE3会場近くの広場にて「OUYA PARK」を開設し、フリードリンク&フリーフードのサービスと「OUYA」ゲームで多くの来場者を集めていた。
筆者はこの会場ではじめて「OUYA」に触れたが、会場でプレイすることのできたゲームの中に、据え置き機水準として期待されるゲームがなかったことに少々面食らってしまった。
「OUYA」は専用の配信スタンド「OUYA Marketplace」からゲームをダウンロード&プレイできることがウリのひとつとなっているが、そこで公開されているOUYA専用ゲームに、いまだパッとしたものがないのが現状なのだ。現時点で遊べる専用ゲームは、2Dグラフィックスのクラシカルでシンプルなゲームが多く、新ハードのローンチで遊ぶものとしては少々さびしい。
もちろん、AndroidベースのOSを搭載していることで「OUYA」では一般のAndoroid用ゲームもプレイできる。しかしそれなら、普通のAndroid端末で良い、という話になってしまうのが正直痛いところのようだ。Tegra3という、現在ではスマホでも珍しくもないチップを搭載したゆえ、性能面で違いを見せることもできていない。
ひとつ突破口があるとすれば、それは今後市場拡大が見込まれるクラウドゲーミングサービスの端末としての存在だろう。NVIDIAブースでは、クラウドゲームシステム「GRID」のデモを披露していたが、その端末の中に「OUYA」があり、Tegra3パワーでは当然不可能クオリティのゲームを大画面でサクサクとプレイすることができていた。
こういった使い方では、テレビ近くにジャマにならない大きさで常設できる小型据え置き機の外観と、フルスペックの据え置きゲーム機水準のコントローラーが標準付属しているという点がぴったり武器になる。99ドルという価格もお手軽感たっぷりで強力だ。純粋なゲーム機とうよりも、このような形で市場に浸透していきそうな気配がする。
モバイルゲームを次の段階に引き上げる「SHIELD」。将来の性能向上で革命を起こすか
GPUメーカー最大手のNVIDIAが手がけるモバイルゲームマシン「SHIELD」については弊誌で既に度々お伝えしているが、今回のE3でも出展が行われており、出荷直前のバージョンに触れることができた。
詳細は関連記事に譲るとして、ざっくりと言って「SHIELD」はTegra4搭載のゲームコントローラー一体型Android端末、というものである。6月末にアメリカ・カナダ向けの出荷が開始される予定で、価格は349ドル。正直ちょっと高価すぎる印象ではある。
「SHIELD」はAndroid 4.2 “Jerrybean”をピュアな形で搭載し、一体型のディスプレイがタッチ操作にも対応していることで高性能Android端末としても普通に使えるとされるが、コントローラー一体型の形状ゆえ取り回しが悪く、一般アプリの使い勝手は良いとはいえない。やはりゲーム機としての使い道がメインだ。
その点で言うと、本製品はTegra 4を搭載することが最大の強みとなる。ウルトラブック並のパフォーマンスを誇るこのプロセッサをもってすれば、従来にない品質のAndroidゲームを快適に遊ぶことが可能となるからだ。
NVIDIAでは「SHIELD」のローンチに合わせてTegra 4 に最適化されたゲーム25タイトルが用意されるとしている。その中のひとつ、「Dead on Arrival 2」の映像を見ると、これはもう据え置き機でたとえるならばPS2以上、PS3寸前という品質だ。
「SHIELD」は毎年更新されるTegraシリーズのロードマップに沿って進化していく見込みであるため、来年の Tegra 5(仮称、コードネーム Logan)搭載型においてはゲーム性能的に今世代の据え置き機に並ぶか、やや上回る可能性もある。
それどころか、Tegra 5ではOpenGL 4.3がフルサポートされる見込みであり、APIレベルでPCゲームとの互換性が生まれる(実際、NVIDIAでは試験的にTegra5端末にて『Battlefield 3』を動作させている)。そうなれば最新PCゲームの水平移植も原理的には可能だ。それによってモバイルゲームマシンの存在感が大きく変わっていく。純粋な据え置き機を未来永劫不要とする革命を引き起こすかもしれない。
Androidゲームマーケットのエコシステムに浸透する「M.O.J.O」
Mad CatzがこのE3 2013で存在を明らかにしたAndroidゲームマシン「M.O.J.O」(関連記事)。これは「OUYA」、「SHIELD」に次ぐ、Androidゲームマシンの第3形態とでもいいたくなる存在だ。
前述の2マシンがそれぞれカスタムOSを搭載、もしくは独自のコントローラーを搭載することに対して、「M.O.J.O」はごくごく純粋なAndroid端末。開発者の言を借りれば「スクリーンのないAndroid端末」である。
その上で、1ポートのHDMI、2ポートのUSB端子を搭載し、各種ゲームパッド、マウス、キーボード、その他の入力デバイスを自由に接続できる。現時点で製品版のスペックは明らかにされていないが、もし「SHIELD」と同じTegra4かそれ以上の能力を持つプロセッサを搭載し、その上で価格を低く抑えることができたなら、Androidゲームをリッチに楽しむ端末として最右翼の存在になりそうだ。
独自の配信スタンドを採用する「OUYA」とは違い、あくまで純粋なAndroid端末であるため「M.O.J.O」上で購入したゲームはそのまま手持ちのスマホやタブレットでも遊べる。また「SHIELD」と違って自由に使用コントローラーを選択できるため、オープンプラットフォームであるAndroidならではの周辺機器の進化をスムーズに享受できる。
これはお題目に終わらない。Mad Catz自身がゲームデバイスメーカーであるため、既にUSB、Blutoothで接続できる据え置き機水準のコントローラーは準備済みだ。例えば、ソフト側の対応さえあればアケコンを使った格闘ゲームを楽しむことも可能になるはず。
その意味で、「M.O.J.O」はAndroidゲームマーケットで自然発達しつつあるエコシステムにスムーズに入り込み、その流れを加速させうる存在といえるだろう。ハード的にはタッチパネルもディスプレイも不要のため、スマホやタブレットよりも安価に製造できるのも強み。今までなかったのが不思議なほどである。
「OUYA」、「SHIELD」、「M.O.J.O」。これらのようなモバイルプロセッサ搭載型の端末上で、据え置き機にも引けをとらないリッチなゲームをプレイする。億の桁で普及していくAndroidというオープンプラットフォームに基づくゲームマシンゆえに、その将来は予想以上にダイナミックに展開していくかもしれない。