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NVIDIA、GeForce GTX 700MでゲーミングノートPCを再定義

Haswell世代CPUとの組み合わせで、ノートPCでもハイエンドゲームがプレイ可能に

5月31日発表

 NVIDIAは5月31日、ラップトップ向けGPUの新モデル GeForce GTX 700Mシリーズを発表した。Intelの次世代CPU、Haswell世代のノートPCやゲーミングノートPC各種に搭載され、各OEMメーカーから順次出荷が開始される模様だ。

 GeForce GTX 700Mシリーズは、2012年に出荷されたGeforce GTX 600Mシリーズの後継となるノートPC向けGPU。Keplerアーキテクチャへの全面移行および関連テクノロジーの改良により大幅なパフォーマンスアップを果たし、NVIDIAではノートPC上でハイエンドPCゲームのプレイが可能になると謳っている。

純Keplerアーキテクチャへ移行。50%以上のパフォーマンスアップも

GeForceシニアマーケティングマネージャー ブライアン・チョイ氏
前モデルGTX 600Mシリーズをベースラインとする新モデルのパフォーマンス水準
プロセッサの性能向上に加えて頻繁なドライバの改良も

 GeForce GTX 700Mシリーズの発表にあたり、NVIDIAは東京都内のオフィスにてプレス説明会を開催し、GeForceシニアマーケティングマネージャーのブライアン・チョイ氏によるプレゼンテーションで製品の特徴を紹介した。

 チョイ氏はGeForce GTX 700Mシリーズの能力について「ゲーミングノートの定義を変えるものだ」とし、前モデルに対する性能向上のポイントを解説。またこれに併せてNVIDIAが重視するPCゲーム業界におけるハイエンドなF2P(フリー・トゥ・プレイ)タイトルへの取り組みにも触れた。

 まず、GeForce GTX 700Mシリーズでは、前モデル600Mシリーズに対して30~55%ものパフォーマンスアップが果たされているという。これは、600Mシリーズのダイ設計において一部に1世代前のFermiアーキテクチャが混載されていたことに対し、700MシリーズにおいてはKeplerアーキテクチャに統一されたことが大きな理由となる。

 Fermiアーキテクチャで設計された部分はプロセスルール40nmだったのに対して、Keplerアーキテクチャでは28nmとシュリンクされている。700MシリーズではKeplerアーキテクチャに統一されたことで600Mシリーズに比べダイ面積を有効活用でき、消費電力も低下する。そのぶんを追加のCUDAコアとコアクロックの向上に割くことで大幅なパフォーマンス向上を果たした。

 例えば、最上位の「GeForce GTX 780M」のCUDAコア数は1,536個で、コアクロックは823MHz。同クラスの前モデル「GeForce GTX 680M」ではそれぞれ1,344個、720MHzだった。コア数・クロック数ともにおよそ14%の向上ということになり、単純計算でおよそ30%の高性能化ということになる。

GTX 700Mシリーズの基本スペック

 これに加えてNVIDIAでは、低負荷時の処理を自動的にオンボードGPUに切り替えるOPTIMUS技術、および発熱状況に応じてコアクロックを自動的に向上させるBOOST技術の改良版をGTX 700Mシリーズ向けに搭載しており、ドライバ面でも性能の向上が図られている。

 クラス別での前モデルとの比較では、「GTX 760M」で30%、「GTX 770M」で55%、「GTX 780M」で31%の性能向上と説明されている。さらに、Keplerアーキテクチャへの完全移行およびOPTIMUS技術の向上により最大40%の低消費電力効果も得られるとのことで、搭載ノートPCのさらなる軽量化にも貢献するようだ。

GeForce GTX 700Mシリーズを搭載することで、世界最速、携帯性にも優れたゲーミングノートPCが実現できると魅力をアピール

ノートPCでハイエンドゲームを快適実行。各社から搭載PCが続々登場

欧米圏で続々登場中の高品質なF2Pタイトル
F2Pタイトルの成長でPCゲーム市場全体が続伸
ノートPC市場ではゲーム向けだけが成長している
統合グラフィックスチップは同世代GeForceのローエンドにも及ばない

 プレゼンテーションを行なったチョイ氏は、GeForceシリーズのコンパニオンソフトェア「GeForce Experience」にも触れ、クラウド化された画質設定データベースにより、面倒な設定なしに最新ゲームを最適な画質・パフォーマンスで遊べることをアピール。GTX 700Mシリーズがゲーマー向けのパフォーマンスモデルであることを明確にした。

 NVIDIAが近年注力しているF2Pタイトルとしては「HAWKEN」、「Planet Side 2」、「World of Tanks」などがある。いずれも基本無料のゲームとしては別格のグラフィックスクオリティを持つタイトルだ。いずれもNVIDIA 3D VisionやPhysXへの対応も行なわれており、GeForceシリーズでのプレイが最適とされている。

 チョイ氏はこれらのタイトルを例示しつつ、「近年のPCゲームはF2Pカテゴリーが急激に伸びている」と、全体の売り上げのうち3分の2ほどをF2Pタイトルが占めている現状を紹介。それでいて従来型のPCゲームの売り上げが落ちているわけではなく、全体の売り上げが拡大しているデータが提示されているのが興味深いところだ。

 チョイ氏が提示したデータによれば、これらのハイエンドF2Pタイトルを含む近年のトップPCゲームの大半は、Intelの統合グラフィックスチップでは「Unplayable(プレイ不能)」であるという。次世代のHaswellアーキテクチャに統合されるGPUでも、2012年のトップゲームのうち50%がプレイ不能というのは衝撃的だ。

 これに対し、GTX 700Mシリーズであれば全てのゲームが高品質でプレイ可能だ、というのがNVIDIAの主張だ。その裏付けとしては、「GTX 760M」では近年のタイトルがフルHD、High設定で動作し、「GTX 780M」ではUltra設定で動作するというデータが示されている。

 実際に会場内に展示されていた「GTX 760M」搭載のノートPCでは、「Bioshock Infinite」がフルHD解像度、60fps相当の滑らかさで動作していた。きちんと測ったわけではないが、およそ2世代前(GTX 500シリーズの世代)におけるデスクトップ向けGPUと同等近いパフォーマンスが出ているのではないだろうか。

 冒頭、チョイ氏が「ゲーミングノートの定義を変えるものだ」と語ったのはまさにこのあたりを指していて、GTX 700世代のノートPCではデスクトップPCと変わりないゲーム体験を得られる、というところが注目だ。

 NVIDIAではHaswell世代のゲーミングノートPCにおいて99%以上のシェア獲得を見込んでいるとのことで、6月以降、各OEMメーカーからGTX 700Mシリーズを搭載するゲーミングノートPCが続々と登場する予定だ。ハイエンドゲームを余裕で動かせる新世代GPUが登場したことで、コアを含むPCゲーマーのゲーム環境が、いよいよGeForce搭載のゲーミングノートを中心とする時代が見えてきそうだ。

統合グラフィックスチップでは大半のトップタイトルがプレイ不可能
GTX 760ではフルHD High設定、GTX 780ではUltra設定で新作がプレイ可能
Kepler世代GPUが登場した昨年以降、NVIDIAがノートPC向けGPUシェアを伸ばす
Haswell世代のゲーミングノートPCにおいて99%以上のシェアを見込む

(佐藤カフジ)