東京ゲームショウ2009レポート
KONAMIブースイベントレポートその1 「MGS PW」のイベントを開催
小島秀夫氏をはじめ、開発陣が「MGS」最新作の特徴を紹介
全世界に先駆けて、今回の東京ゲームショウが初めてのプレイアブル出展となった「メタルギア ソリッド ピースウォーカー」(以下、「MGS PW」)。本作は、いわずと知れた人気シリーズ「メタルギア ソリッド」(以下、「MGS」)シリーズの最新作だ。ビジネスデイ初日となる24日、KONAMIブースのイベントステージは「MGS PW」のみというところからも、同社の本作にかける意気込みをうかがい知ることができる。
本稿では、KONAMIブースで行なわれた「MGS PW」のイベントのうち、シリーズの生みの親である小島秀夫監督が「MGS PW」のストーリーとテーマ、キャラクターについて語ったステージAと、「MGS PW」の新システムについて開発者が登場して解説を行なったステージBの内容について紹介していこう。
■ 核抑止をテーマにしたストーリー
「MGS3」との関連にも注目が集まる
最初のステージイベントであるステージAは、ヒデラジのメインパーソナリティであり「MGS4」のレイヴン役を演じるなどシリーズと関係が深い菊地由美さん、広報の山本さやか氏、マーケティングディレクター担当の大石次郎氏の司会でスタート。そしていよいよ小島秀夫氏が登場すると、観客席からは自然と拍手が沸きあがり、同氏の人気の高さが伺えた。小島氏はまず、KONAMIブースでダウンロードできる体験版について「現段階でもかなり面白いものができました。どこでも遊べるので、PSPを持っている方はまずダウンロードしていただければ。一番長い行列は「FF13」だと思いますが、行列に並びながらでも「MGS PW」を遊んでいただきたいと思います(笑)」とアピールした。
続けて登場したのは、「MGS」を徹底解剖した単行本「メタルギア ソリッド ネイキッド」を編集した矢野氏。「ゲームは下手だけど(笑)、僕よりもメタルギアを知っている」と小島氏が絶賛するほど「MGS」に造詣が深い矢野氏を迎えて、9分20秒にもおよぶトレーラームービーの上映がスタートした。
トレーラームービーは、ストーリーの導入部分から始まってゲーム中の印象的なセリフが次々と現われては消えていく、印象的な内容。途中、音楽が変わってからは、主な登場人物であるネイキッド・スネークを始め、新キャラクターのミラーやガルベス、ヒロインとなるパスなど、ストーリーを彩る主要キャラクター達が、キャラクターデザインの新川氏のイメージイラストのままアメコミのように動く内容となっていた。
小島氏は「MGS PW」の時代設定である1974年について、「オイルショックがあって、世界が暗い方向へ傾き始めている時代。アメリカでもウォーターゲート事件があったりした時代で、実はストーリーともちょっとだけ関係してきます」と紹介。続けて「最初は僕はいつものように作らないつもりでした。でも、舞台が1974年のコスタリカ。テーマが核抑止ということで、若い子が戸惑いまして、今はどっぷりと制作に関わっています。冷戦構造の中で、善でも悪でもない人達が、色々なことがある中で、悪になったり善になったりする。ネイキッド・スネークも善でも悪でもないのですが、巻き込まれていってしまう、という過程を描いています」と本作のストーリーの概要について語った。
さらに核抑止については、「核抑止という理論があって、米ソが核兵器をどんどん増やしていった。軍隊がいるから敵が攻め込んで来ないというのも1つの抑止論。なぜ、核兵器や軍隊がこの世の中からなくならないのか?と皆さん思っていると思うのですが、現実はこうなっているんだというのを『MGS PW』をプレイして考えていただきたい」と、現実世界の問題ともリンクしたテーマについて語っていた。
続けて始まったキャラクター紹介では、各キャラクターのポイントを紹介するのはもちろん、主役のスネーク役の大塚明夫さんをはじめ、主要キャラクターである杉田智和さん、水樹奈々さん、井上喜久子さんからのビデオレターも上映。この4人はTGS 2009の最終日16時からの、ステージAに登場するということなので、ファンは忘れずにKONAMIブースを訪れよう。
気になるキャラクターの音声の収録状況について、現在はストーリーの3分の2程度が終わっているとのこと。台本の量は「MGS4」と同程度のボリュームになっているものの、ムービーは「MGS4」よりも少ないため、それだけ充実した内容になる模様。さらにコアな内容で人気の無線機での会話についても、ストーリーと同程度の量が用意されているとのことで、こちらも今回も期待できそうだ。
イベントが終わりを迎えると矢野氏は「役者さんやCGの表現であったり最先端のものを使っているのはもちろんすばらしいのですが、『メタルギア』の面白さというのは物語が一番面白い。物語の面白さと、それが抱えているメッセージみたいなものを、皆さんにどう伝えるかということを監督は一番考えていると思うんですね。そのためのCGや演出としてすごいものが結集しているのが『メタルギア』シリーズだと思うので、今回の「MGS PW」も最高峰のものになると思っています」とコメント。
最後に小島氏は「PSPというハードなのですけれども、『MGS』シリーズの続編として気合いを入れて真剣に作っています。『メタルギア』ファンの方はもちろん、シリーズをプレイしたことがない若い人達にもPSPならではの機能をいっぱい入れていますので、遊んでいただいて『メタルギア』のファンになっていただければと思います。『MGS3』のファンの方はぜひやっていただければ、あっと驚くと思います」とシリーズをプレイしたことがない人にも「MGS PW」アピールして、新情報が盛りだくさんの内容のトークイベントを締めくくっていた。
■ ステージBでは新システムの詳しい内容が判明
シリーズ初の協力プレイモードCO-OPS(コ・オプス)に注目
「メタルギア オンライン」などのイベントでもおなじみのプロデューサーの松花氏(写真右)と吉池氏(写真左) |
解説をしながらのデモプレイだったため、敵兵士に見つかってしまうアクシデントも。そのおかげで屋根の上に協力して登って敵の捜索をやりすごそうとする興味深いプレイを見ることができた |
時間を開けて始まったステージBは、「MGS PW」のゲームのシステム部分に関する紹介がメイン。ステージAに続いて司会を務める3人に続いて登場した開発者の松花氏と吉池氏が、「MGS PW」のゲーム内容について、アドホックモードによる通信プレイ「CO-OPS」システムに関する内容を中心に解説を行った。
まず最初に紹介されたのは、スネークのスーツタイプについて。スーツごとに装備やカモフラージュ率に違いがある、4つのタイプを紹介し、武器を多数携行できる代わりにカモフラ率が低い“BATTLE DRESS”と、武器は少ないもののカモフラージュ率が高い“SNEAKING SUIT”を使用して実際にゲームをプレイしながらの解説がスタート。
続いて説明されたのは、味方のキャラクター同士が近づきリングが接触することで発生する“CO-OPS IN”について。“CO-OPS IN”状態になると、キャラクターのライフゲージが合算されチーム共有となるため、やられにくくなる効果があるようだ。また、各キャラクターの持つ武器や装備品を貸し借りすることも可能となる。スニーキングの得意なキャラクターで進めつつ、武器が必要な場面では他のキャラクターから武器を借りるとこともできるわけだ。
さらに、敵の攻撃を受けて瀕死の状態になった場合も、仲間に心臓マッサージををしてもらうことで蘇生し、再度参戦することが可能だ。心臓マッサージをしている最中は完全に無防備となるため、敵が周囲にいる状況ではしにくいものの、他の仲間に囮になってもらって注意をひきつけてもらうなど、協力プレイならではの行動も紹介されていた。
プレーヤー同士のリングが接触するまで近づくと“CO-OPS IN”が発生。ライフゲージが合算されるほか、武器の貸し借りができるようになる | ただし、この大きなリングより外に出てしまうと“CO-OPS IN”は解除されてしまう。借りていた武器も自動的に持ち主に戻ってしまうので、リング外に移動しそうなときは気をつけよう |
続いて“スネークフォーメーション”についての紹介が行なわれた。味方に接近した状態でボタンを押しっぱなしにして“スネークフォーメーション”を行なうと、自分は操作しなくても味方と自動的に一緒に移動できるようになる。移動をほかのプレーヤーにまかせることができるため、後続のプレーヤーには敵の捕捉や攻撃に集中できるわけだ。また、静止した状態で“スネークフォーメーション”を行うと、シンクロゲージが増えていき、ゲージが満たされるとカモフラージュ率や移動スピードの高いプレーヤーの数値がほかのプレーヤーにも適用されるなど、さまざまなメリットがある模様。もちろん“CO-OPS IN”のメリットも使えるため、なるべく“スネークフォーメーション”をとった状態で一緒に行動したほうがよさそうだ。
“スネークフォーメーション”を行うと仲間に自動的についていくことができる。味方の背後を警戒してあげたり、盾を構えた味方に守ってもらいながら攻撃するなどの連係が有効だ | AUTO AIMをONにすると、一定範囲内に入った敵を自動的にロックオンできうる。狙いをつけるのが苦手な人も、“スネークフォーメーション”とAUTO AIMをONにすれば、攻撃だけに集中できる |
最後に松花氏は「今、チームのほうはいい雰囲気で一生懸命作っています。もうしばらくかかりますが、きっといいゲームを皆さんにお届けしますので、今しばらくお待ちください」と開発の状況について語り、吉池氏は「一体感を感じられるゲームになると思いますので、期待して待っていてください」とコメントして、ゲームシステム部分の紹介ステージを終えていた。
ゲームシステム紹介の最後に行なわれたのは、菊地さんと山本氏も参加して、4人協力ミッションのデモプレイ。開発者の2人が主に戦闘を行ない、司会の2人はサポートをメインに行なっていた | 4人協力プレイのボスは戦車。単純に破壊する以外にも、メタルギアらしく戦車長を眠らせることでも勝利となる。瀕死の状態になった味方に対して、松花氏のスネークが危険を覚悟で心臓マッサージしにいく姿が印象的だった |
■ 歌いながら襲ってくるAI兵器!? 音声にはVOCALOIDのシステムを採用
ユーザーが作成したデータをNetVOCALOIDに使って配信することも検討中
「MGS PW」の音楽を担当している、サウンドプロデューサーの村岡一樹氏 |
「MGS PW」のボスとなるAI兵器。VOCALOIDの独特の抑揚のない声が、AIキャラクターの声としてマッチしていた |
続いて、「MMGS PW」のサウンドプロデューサーを担当している村岡一樹氏が登場。「まずはこちらをお聴きください」と村岡氏がコメントした後に会場に流れたのは、同じ小島プロ作品の「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS」のオープニング主題歌である「Beyond The Bounds」。ただしよく聴くと、ボーカルはVOCALOIDのもの。村岡氏によると、「MGS PW」で登場するボスのAI兵器は、VOCALOIDのシステムを使って歌ったり喋ったりするとのこと。実際に会場では、ハミングだけの歌に実際に歌詞をつけたサンプルや、「通常モードに移行」などのVOCALOID特有の抑揚のないセリフを聴くことができた。
さらに、このVOCALOID音源は、YAMAHAの協力を得て、司会も努めている菊地由美さんの声をサンプリングした、オリジナルのVOCALOID音源であることを発表。VOCALOIDの収録について、菊地さんは「特殊な録音方法だったので、何時間もスタジオに連れ込まれ5日間かかりました」と、データサンプリング時の苦労を語っていた。
さらに、このAI兵器のボイスはネットワークを通じてVOCALOIDのデータを配信するNetVOCALOIODにも対応し、ユーザーが作成した新たなボイスや歌のデータを配信することも検討されているという。「MGS4」ではiPodの曲や装備などのアイテムが配信されていたが、「MGS PW」ではダウンロードデータをユーザーが作成するという新たな楽しみができることになりそうだ。
最後に村岡氏は「このVOCALOIDは今はまだ実験中なのですが、質を高めていって新たな遊びをゲームに取り入れたい」とコメントし、VOCALOIDという技術をゲームにさまざまな形で取り込む決意を新たにしていたのが印象的だった。
ビデオレターに登場した、YAMAHAの剣持氏は「今までVOCALOIDは楽曲制作ツールとしての扱いでしたが、今回はゲームの盛り上げに貢献することができそうで楽しみにしています」とコメントし、VOCALOIDの新たな可能性となることに期待しているようだった | NetVOCALOIDを使ったデータ配信システムのイラスト図。どのようなデータが配信されるのかも楽しみといえそうだ |
(C)2009 Konami Digital Entertainment
VOCALOID,NetVOCALOIDはヤマハ株式会社の登録商標です。
(2009年 9月 25日)