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「World of Tanks」のアジア大会「WGL APAC シーズン II ファイナル」開幕

日本の名門チームCaren Tigerはライバル相手にどう戦ったのか?

4月8、9日開催

会場:EcoARK in Taipei Expo Park

 Wargaming.netは4月8日、「World of Tanks」のアジア1位を決めるトーナメント大会「Wargaming.net League APAC シーズン II ファイナル 2016 - 2017」(以下、APAC FINAL)を台湾台北市EcoARKにおいて開催した。本稿では、本日行なわれた準決勝の模様をお届けしたい。

【2017 TAIWAN WGG+APAC S2 FINAL】
会場となったEcoARK in Taipei Expo Park
Wargaming.net主催のユーザーイベントWGGも併設されており、試合の合間にゲームを楽しむことができた
「World of Warships」APACプロデューサーの柳沼恒史氏も登場し、同日「三笠」艦内で発表されたアニメ「ハイスクール・フリート」とのコラボ情報が公開された

本大会の一般的な車輌編成
スタッツもこの通り。シーズン1まではまず見られなかった光景だ
Maus同士の超接近戦も頻発し、迫力あるバトルが繰り広げられる

 本大会には、日本からセミプロチームのCaren Tigerが出場した。Caren Tigerといえば、その前身であるCharlotte Tigerの時代から、「World of Tanks」では長い歴史と伝統を持つ名門チーム。シーズンIでは、同じゴールドリーグに所属する日本チームのB-Gamingに日本代表の座を奪われていたが、シーズンIIでは好成績を収め見事APAC FINALへの出場権を獲得し、2015年8月以来、約1年半ぶりの国際大会出場を果たした。

 当時から比較して半分以上が新メンバーで、国際大会は今回が初めてというメンバーも多い。対して準決勝の対戦相手Team Efficiencyは、シーズンIでもAPAC FINALに出場しており、経験豊富な選手が多い。この差をどう埋めるかが戦いの鍵を握った。

 もうひとつは、「World of Tanks」特有のバージョンによって、大きく変わるトレンドにどう対応していくか。他のゲームでは、国際大会開催時はバージョンが変わらなかったり、1つ前のバージョンで大会が行なわれるなど一定の配慮があることが多いが、「World of Tanks」はシーズンの進行状況に関わらず、常に最新バージョンが適用される。今回もシーズン中に変化した重戦車強化のトレンドにどう対応していくかがポイントとなった。

 本日は準決勝の2試合が行なわれたが、昨日の選手インタビューでもEL Gamingの選手が語っていたように、驚くほど重戦車主体の戦術になっており、7輌のうち半数以上が重戦車ということも少なくなかった。これは2015年のTier VIII時代のT-54 lightweightや、2016年のBat.-Chatillon 25 tといった快速、高パワーウェイトレシオ戦車による速攻戦術に完全に終止符が打たれたことを意味しており、今期のシーズン1までは最強を誇ったBat.-Chatillon 25 tは主役の座から降り、代わりに主役となったのがMausだ。

 Mausは、アニメ「ガールズ&パンツァー」でもお馴染みの超弩級の重戦車で、これまではB-Gamingなどごく一部のチームが防衛戦や市街戦に投入する程度だったが、ここ数回のアップデートで、HPや装甲、砲性能が底上げされ、名実共に重戦車の代表格としてWGLに君臨することになった。

 重戦車主体の戦術への転換を図られたことで、「World of Tanks」における車種毎の相性が正常に機能するようになり、バラエティに富んだ試合が見られるようになった。以前は「相手がBat.-Chatillon 25 tを使うから自分たちもBat.-Chatillon 25 tを使う」ことから、実質的に選択の余地がほとんどなく、全チームがオートローダーによる撃ちあいに終始していた。しかし、新バージョンでは、主力にMausがいて、Mausを倒すために高貫通を誇る駆逐戦車や、頭上から狙える自走砲が必要になり、それらを牽制するための中戦車や軽戦車も必要になるというわけで、各チームがそれぞれの戦術で自由に車両構成を組みたてて戦いに挑むことが可能になり、車輌に無数の選択肢がある「World of Tanks」本来の魅力が戻ってきた印象だ。

 Caren Tigerの場合は、やはり主力はMausで、相手もMausを使うため、これを撃破するためにT110E4等の駆逐戦車を投入し、Bat.-Chatillon 25 tの代わりの中戦車枠を状況に応じてSTB-1やE 50 Ausf. Mなどが埋める。軽戦車は、相変わらずRu 251だが、火力が欲しい場合、以前はTier IXのBat.-Chatillon 25 t APが2輌投入されるケースが多かったが、Bat.-Chatillon 25 t APではMausを貫通できないためWZ-111を2輌投入するなど、完全にMaus主体の戦術への転換を完了していた。

 Mausは重戦車としての耐久力だけでなく、火力の面でも優れており、結果を見ると上位がすべてMausという試合も珍しくなかった。Mausの使い方は各チームともほぼ共通で、3,200という膨大なHPを“チーム共有のリソース”として捉え、撃破されない程度に相手に肉薄し、チームの盾になりながら、同時に自身も砲撃してダメージを与えながら、他の味方にも攻撃を促す。撃破されそうになったら下がり、盾の役割を他のMausと交代をする。彼らはこのスタイルを「HPを使う」と表現し、MausのHPという“肉”を切らせて、相手の撃破という“骨”を断つ戦術が本大会の基本セオリーだ。

試合に挑む両チーム。左がCaren Tiger
SU-14-2を壁にしてBat.-Chatillon 25 tがキャップする作戦
プロホロフカでは主力を北東の川に隠す戦術に出る
戦術が当たり喜ぶCaren Tigerのメンバー
試合前はお互いに7-0で勝つと言い合っていたCT Yupa選手と、TE Skell選手が抱き合って健闘をたたえ合った

 準決勝の結果は、Caren Tiger対Team Efficiencyが4対7、Horsemen対EL Gamingが1対7となり、Team EfficiencyとEL Gamingというシーズン2の上位2チームが順当に決勝に勝ち進む形となった。

 Caren Tiger対Team Efficiencyは、シーズン2では毎試合タイブレイクにもつれ込む接戦ばかりで、戦績では2勝1敗でかろうじてCaren Tigerが勝ち越していたが、今回の試合では、国際大会に慣れていて、落ち着いた試合運びで、終始ミスの少なかったTeam Efficiencyに軍配が上がった。

 ハイライトは4ゲーム目、6ゲーム目、そして9ゲーム目だろうか。いずれもCaren Tigerの持ち味が活かされた試合で、最後まで手に汗握る熱戦が繰り広げられた。

 4ゲーム目は、マップはムロヴァンカ、Caren Tigerは防衛側。高さのある自走砲、通称“スクールバス”と呼ばれるSU-14-2を壁として使い、Mausで横にしたまま運び、Bat.-Chatillon 25 t がその影でキャップするというユニークな戦術だったが、Mausによる挟み込みがうまくいかず、Bat.-Chatillon 25 tを撃たれてキャップを切られ万事休す。今回、マネージャー枠として参加していたOpelisk選手は「敵が裏から来るのはわかっていたのに、キャップを持っていないMausで挟み込めば勝てたのにそこに気づけてない。冷静な判断ができてない」と厳しい評価だった。

 6ゲーム目は、ステップ、攻撃側。本対戦のベストゲームと言える1戦で、いきなり相手の自走砲の攻撃が直撃し1輌撃破され、さらに中盤の重戦車同士での殴り合いでもかなり劣勢に立たされるも、moudame選手のRu251が、自走砲をはじめ、次々に敵車両を撃破し、2対2のイーブンまで押し戻した。ただし、Bat.-Chatillon 25 t 1輌ずつに対して、Caren TigerはRu 251、TEはMausという不利な状況だったが、キャップに入るMausに対してHE弾でキャップ切りを狙い、見事成功。終わってみれば7輌中5輌をmoudame選手のRu251が撃破するという神がかり的な活躍で流れを引き戻した。

 9ゲーム目は、プロホロフカ、防衛側。Bat.-Chatillon 25 tら主力を北東に流れる川に隠し、主力の位置を悟らせない作戦に出たところ、TEがこのゲームに勝てばマッチポイントを迎えるためか、慎重になりすぎて、誰もいない西側をじっくり侵攻していく。5分を切ったところで、Caren Tigerの主力が北東に集結していることを悟り、総攻撃に出たものの攻めきれず、時間切れでCaren Tigerの勝利となった。

 もう1戦のHorsemen対EL Gamingは、明確な実力差が感じられた1戦で、見ていて気づいたのはEL Gamingの引き出しの多さだ。2輌1組で同じ車輌を投入し、足並みを揃えて行動し、数的優位を生み出しやすい環境を作っていたり、重戦車に他のチームは投入していない日本の五式戦車を使っていたり、通常軽戦車を投入するTier VIII枠に自走砲を使うなど、さすがはプロというべきか、バリエーション豊かな魅せるプレイで観客を魅了していた。明日の決勝でも、思い切った戦術を採らない限りTEの勝利は難しいだろう。

 残念ながら4:7で敗退し、Grand Finalsへの出場の夢も絶たれたCaren Tigerだが、来季に向けて国際大会の経験も積むことができ、有意義なシーズン2となったようだ。

 試合前、APAC最高の自走砲の使い手であるOpelisk選手が出場しないことを知り、その出場と活躍を期待していた人間としては残念に思ったが、重戦車主体の戦術では自走砲にも活躍の機会が大いにあるため、彼を投入しても良かったように思う。ファンの1人として引き続き彼らの活躍に期待していきたいところだ。なお、試合後に短い時間だが、Caren Tigerの選手達にインタビューすることができたので、そちらも後ほどお届けしたい。