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「World of Tanks」、アジア、北米、欧州の王者決定戦「Challenger Rumble」開催

世界トップレベルの激戦は、手に汗握る名勝負を生み出した!

【Challenger Rumble】

11月19日開催

会場:Altman Building

「Challenger Rumble」の優勝トロフィー
欧州、北米、APACのトップチームが集まった

 Wargaming.netは米国時間11月19日、「World of Tanks」の世界大会のひとつ「Challenger Rumble」をニューヨークにて開催した。本イベントは「WoT」の公式リーグであるWGLと並列的に実施される招待制のイベントで、2シーズン制を採用するWGLのシーズン1でCISを除く3つの地域で1位~2位をおさめたチームが集まり、雌雄を決するイベント。「Challenger Rumble」で1位~2位となったチームは、後に開催される「Champion Rumble」にてCIS地域の1位および昨年度「The Grand Finals」の王者と戦い、1stシーズンの1位を暫定的に決する戦いに参加することができる。

 通年で2シーズン開催されるWGLが長丁場のリーグ戦とすると、「Challenger Rumble」および「Champion Rumble」は短期決戦型のカップ戦といえる。この日ニューヨークの会場には、北米(NA)からeClipse、Apex、欧州(EU)からDinGとKazna Kru、アジア・パシフィック(APAC)からEL GamingとB-Gaming、各地域のシーズン1ファイナルでトップ2となった全6チームが集まり、「CIS地域の王者と対戦する権利」をかけてのバトルが展開した。

 日本から出場のB-Gamingは、10月22日に開催されたシーズン1のファイナルでAPACの上位チーム勢を相手に厳しい戦いをこなし、準優勝を果たしてきたばかり(関連記事)。同じAPAC地域で無敵の強さを誇るEL Gamingを相手に何度も食い下がる戦いを見せてきたが、この大会ではプレイレベルがより高いと言われる北米、そして欧州から各地域のチャンピオンチームと対戦することになる。世界の「WoT」プレーヤーにとっては2シーズンの最後に年に一度開催される「The Grand Finals」を待つことなく各地域の現状を測ることができる貴重な機会といえるだろう。

欧州>北米>アジアという構図が明確になったグループリーグ

試合に臨むKazna Kruの選手たち
良い勝負が展開したが、全体的に欧州勢が上回った

 この日世界3地域6チームの最強を決めるため、まずは3チームずつに分かれてのグループリーグが実施された。日本のB-Gamingは北米2位のeClipse、欧州1位のDiNGと対戦。中国のEL Gamingは北米1位のApexと、欧州4位(シーズン1ファイナルでは2位)のKazna Kruと対戦した。

 まずメインステージ行なわれた試合は、Kazna KruとApexの一戦。欧州上位と北米1位の対決という構図だ。たっぷり時間をかけて相手を攻略しようとするKazna Kruに対し、Apexは硬軟織り交ぜた対応で序盤数ラウンドをリード。ラウンド取得数3-3までもつれたものの、そこからはマップ「崖」でKazna Kruが2本連続勝利し、総計5-3でKazna Kruが勝利した。

 続いてメインステージ上では同じく欧州北米対決の格好でDiNGとeClipseが対決。多くのラウンドで残り1~2両同士の対決というところまでもつれたものの、DiNGは毎ラウンド、終盤で強さを見せる。最後の1対1、2対2といったシチュエーションでことごとく勝利したDiNGがラウンド数では圧倒し、総計5-1でDiNGが勝利している。

Apex
Kazna Kru
eClipse
DiNG

APAC勢との死闘を制したばかりのB-Gaming
余裕のない試合展開に表情も硬め
積極的に仕掛けていくが、DiNGの壁は厚い
1対1まで持ち込んむなど善戦したラウンドも多い
見事勝利したラウンド。終盤まで優勢を維持できた

 さて、ようやく日本のB-Gamingがメインステージに登場だ。ここまでの間にB-GamingはバックステージにてeClipseと対戦しており、残念ながら0-5の大差で敗北。決勝トーナメントに出るためには続く試合でDiNGに勝たなければならないが、下馬評は絶望的だ。特にB-Gamingはこの大会で唯一のアマチュアチームであることの弱点が出ていた。メンバーのうち複数人が仕事の都合で参加できず、ベストメンバーで臨むことができなかったのだ。

 B-Gamingが本来の編成で戦えなかったのは残念だったが、欧州王者のDiNG相手に良いところも見せることができた。「ゴーストタウン」で戦われた第1ラウンドこそ大差で負けてしまったものの、第2ラウンドでは最後1対1になるまでDiNGに食い下がった。しかし、DiNGは他の試合でも見せたように、ラウンド終盤で驚異的な粘りを見せる。1対1ではほぼ完勝する強さだ。B-Gamingが勝つためには互角以上の形でラウンドを進め、終盤で数的優位を確保する必要がある。

 その形ができたのは「プロホロフカ」で戦われた第3ラウンド。攻撃側でスタートしたB-Gamingはマップ西側から中央の敵を囲い込むような積極的な動きでDiNGの主力を分断。局地的な数的優位を維持したまま陣地占領に移り、地形と連携をうまく活用してDiNGの残勢力を次々に各個撃破する形で最後は3対1の形に持ち込み、ラウンド勝利をおさめることができた。しかしDiNGの対応力も高く、鏡に写したかのような布陣で推移した次のラウンドではB-Gamingの動きのことごとくに機先を制し、5両も健在なまま圧勝している。

 続くマップ「ステップ」で戦われた第5ラウンドでもDiNGの勢いは止まらない。B-Gamingはほぼ全員で一丸となって敵の片翼を崩すような積極的な動きを見せたが、DiNGの対応は極めて早く、B-Gamingは逆に中途半端な位置で包囲される形となって全滅。大差での敗北となってしまった。B-Gamingは積極的に自分たちの作戦を出そうとしていたように感じられるが、それが裏目に出てしまうケースも多かったようだ。

 DiNGがラウンド取得数4としてリーチをかけた次のラウンドでは、B-Gamingらしい動きが出た。防衛側となったB-Gamingはマップ半周を大回りする作戦でDiNGの裏をつき、局所的に敵を混乱に陥れることで有利な状況をつくることに成功。このラウンドのように、作戦でしっかり上回ることができれば個々の撃ち合いで大きな差はなく、作戦上のリードをしっかりとラウンドの勝利に結び付けられるB-Gamingだ。

 こうしてラウンド取得数2-4と食い下がったB-Gamingだったが、「ムロヴァンカ」で行なわれた次のラウンドではDiNGの速攻に翻弄される形で敗北。4両を残して余裕のある勝利を果たしたDiNGがラウンド取得数5とし、B-Gamingはここで敗退が決まってしまった。負けてしまったとは言え、欧州最強のチームに対していくつか自分たちの形が出せたのは収穫と言える。全く通用しないわけでは決してなかったのだ。

大きく差がついてしまったラウンド。積極的にしかけるもDiNGの対応がよく、却って不利な形になってしまった

EL Gaming。APACでは凄まじい勝率を誇る
序盤優勢に立つEL Gamingだが、ラウンドが終わると負けていたということが多かった
非常にもったいなかったシーン。車体後部が僅かに見えていた

 一方、APAC王者として出場したEL Gamingも、欧州・北米のチーム相手には苦戦を強いられた。まずバックステージで行なわれた対Kazna Kru戦では、ラウンド取得数1-5という大差で敗北している。続いてメインステージで北米王者のApexとの対戦では、各ラウンドの序盤ではダメージ量で上回り優勢に見えることが多かったものの、ラウンド中盤~終盤に覆されて結局は負けてしまうという展開が続出。どうにも中盤の撃ち合いではApexのほうが上回っているようだった

 特にEL Gamingの勢いがそがれる様子が見えたのは「ヒメルズドルフ」で戦われた第3ラウンド。攻撃側のEL Gamingはラウンド終盤に1対1の状況に持ち込み、陣地占領を餌に有利な打ち合いをしようと画策。しかし最後に残ったFlag選手は戦車の残骸にうまく隠れたつもりが、ほんのわずかにはみでた車体後部を死角から狙撃され、一方的に負けてしまった。EL Gamingのメンバーには「こんなはずでは」という表情が見え始めた。

 Apexはその後も戦力の集中やフォーカスのうまさで上回り、「ゴーストタウン」ではEL Gamingの超重戦車E 100を数秒で撃破するなど見事な連携を見せ、EL Gamingに思い通りの試合をさせない。こうしてAPACと北米の最強対決はラウンド取得数5-2で北米が勝利する形となった。

 APAC勢に勝利した北米勢だが、それぞれ欧州勢には大差で負けており(Kazuna Kru 5:3 Apex、eClipse 1:5 DiNG)、グループリーグの結果としては下馬評通り、欧州>北米>APACという力関係を今一度確認する形となった。それにしても、APACでは貴重なプロチームとして毎日8時間の練習を積んできたというEL Gamingでも北米・欧州勢には歯がたたないというのはちょっとショッキングだ。APAC勢がレベルを上げる以上に、他の地域でも進化が続いているということだろう。

ラウンド内の流れ自体は決して悪くなかったEL Gamingだが、詰めの確実性というべき部分でApexが上回り、総合的には大差となった

これぞトップレベルの戦い! 手に汗握る名勝負となった決勝戦

準決勝までの結果。欧州勢が大差で勝利している
決勝のステージは欧州勢の対決となった
一進一退、完全に互角な試合を続ける両チーム

 こうして決勝トーナメントは欧州対北米という構図となったが、準決勝の各試合では上記の力関係がそのまま出る形となった。DiNGはApexに5-1で勝ち、Kazna KruはeClipseに5-2で勝利したのだ。後者の試合ではeClipseが序盤2ラウンドを先取したので一瞬は番狂わせも期待させたが、その後は積極的なeClipseを周到なKazna Kruが叩き潰すかのようなラウンドが続き、終わってみれば大差で欧州勢が勝つという形だった。

 こうして決勝に残った2チーム。いくつかの試合で各チームの性格がおぼろげに見えてきていたが、強いていうとDiNGは攻めや奇策の姿勢が強く、素早く連動した戦いぶりで一気に試合を決める傾向が強い印象。最後数両となった状況での粘りも強い。対するKazna Kruは、攻防どちらにしてもじっくり時間をかけて有利な状況を作り拡大していく印象が強い。アジア・北米勢との戦いでも、制限時間の半分が経過するまでは大きく仕掛けず、慎重に動く場合が多かった。

 攻めのDiNG、守りのKazna Kruという印象もある両チームだが、さて両者の対決は全くの互角で推移した。「ムロヴァンカ」での第1ラウンド、一気に前進したDiNGが3分間で占領勝利をおさめると、次のラウンドではDiNGの積極防衛を迎え撃つ形でリードしたKazna Kruがたっぷり時間をかけて占領勝利。続く「プロホロフカ」では戦力を集中して積極的に押し込んだDiNGが占領勝利すると、今度はマップ全体に広く布陣したKazna KruがDiNGの主力をうまく分断して全滅勝利。ラウンド取得数で一歩も譲らない戦いが続いた。

 両チームの戦いで目を見張るのは、複数車両で同一ターゲットを補足攻撃するフォーカス射撃の見事さだ。少しでもうかつな位置にいる車両は3方向4方向からの攻撃を受けてあっというまに撃破されてしまう。Kazna Kruは布陣のうまさで、DiNGは機動の素早さでフォーカス射撃を成立させることが多いという傾向はあったものの、どちらのチームも、少し動きが乱れただけで手痛い打撃を受けるというプレッシャーを受けていたのは確かだ。それでも両者ほとんど譲らないラウンドが続いたのは、互いにミスらしいミスがなかったからとも言えるだろう。

DiNGが決めた見事な速攻での占領勝利
うかつに顔を出すと凄まじいフォーカス射撃を受ける

DiNGが投入した自走砲は全くダメージを出せなかった
大差でKazna Kruが勝利。そのまま勝負が決まるかと思われた
奇跡的な跳弾で逆転を決める
勝負を決めた1on1

 このような形で、マップ「ヒメルズドルフ」でも互いにラウンドを分け合い、ラウンド取得数3-3で次なるマップ「鉱山」へ。ここでまず攻め側となったDiNGは自走砲を投入し、ユニークな位置からの狙撃でKazuna Kruの守りを崩そうとしたものの、これが裏目に出てしまった。Kazna Kruは自走砲の弾が命中しうる場所には決して動かず、マップ全体に広く布陣してスキなく防衛。そのまま時間を稼いでDiNGが攻めざるを得ない時点までほぼノーダメージで耐えしのいだのだ。

 時間切れなら防衛側の勝ちである。動かざるをえなくなったDiNGは一気に攻勢をしかけるが、自走砲が完全に戦力外となっていた影響で前線の不利が大きく、大差で撃ち負けてしまう。こうしてラウンド取得数を4としたKazna Kruが試合の勝利にリーチを決めた。

 勢いに乗るKazna Kruは続くラウンドでも優勢に試合を進行し、ついに勝負が決したに見えたが、ここで本大会最大の見せ場が到来した。DiNGが防衛側となったこのラウンド、マップ中央を押さえたKazna Kruがやや有利に攻撃を進め、ダメージ量では互角ながら車両数で上回りつつラウンドが進行する。そして最後は、いずれもあと1発で撃破されるHPを残し、Kazuna Kruは3輌、DiNGは1輌となった。Kazuna Kruは占領をすれば勝ちである。

 DiNGのPositiwe選手操るバッチャはマップ東側の高台に登っていたため隠れることができ、かろうじて生き残っていたという状況だったのだが、他の味方が全滅した瞬間、勢い良く丘を駆け下りた。すごいのはここからだ。3輌残った敵の位置を完全に把握しており、まずは単独で迎撃にきたVeco選手を出会い頭の走行間射撃で撃破。そこでKazna Kruは1輌が占領に、1輌が遊撃に入る形で布陣。これに対し占領中のEalien選手はキャップ位置の攻撃先を予測して構えていたところ、読み通り顔を出したPositiwe選手に一撃を加えるが、これが奇跡的に弾かれてしまった。この幸運を無駄にしなかったPositiwe選手はEalien選手をカウンターで撃破し、試合は1対1へ。

 このとき、残った両選手のHPは1と9である。砲弾を受けるどころか、高台から少しずり落ちるだけで撃破されてしまうHPだ。マップ端に隠れたPositiwe選手に対し、Kazna KruのDiplomat選手も大まかな位置を把握していたのは流石だが、有利な位置をるべく進んでいく。そして両者が互いに射程に捉えられた瞬間、1発づつ射撃を外した。見てる方もドキドキの展開である。

 そして、Positiwe選手が最後の一撃を命中させた。斜面を利用してチラチラと隠れつつ、Diplomat選手の視界から消えたその瞬間だった。最後に残った1輌で敵3両を撃破したPositiwe選手。このラウンド総計では5輌を撃破するという大活躍を見せ、DiNGの命脈を繋いだ。間違いなくこの試合のMVPである。対するKazna Kruは、最後3対1となった時点で分散せず、ひとつに固まって動けば確実に勝てたかもしれないだけに、非常にもったいないラウンドとなってしまった。

 そしてラウンド取得数4-4となった試合は、「ヒメルズドルフ」での本大会初のタイブレーカーに突入。両者ともマップ南側に戦力を集中し乱戦となる形になったが、Kazna Kruはどうにも連携がうまくいかず、固まって動くDiNGから各個撃破を受けてしまう。勝てたはずのラウンドを落とした精神的ショックだろうか。この最終ラウンドは短期決着となり、最後までまとまって動けたDiNGが大差で勝利した。1ラウンド前には想像もできなかった風景である。

 こうして欧州同士の頂上決戦をDiNGが制し、「Challenger Rumble」の勝者が決定した。決勝で敗北したKazna Kruを含む2チームは、後に開催される「Champions Rumble」にてCIS地域のトップチームと対決することになる。まさに世界レベルという試合展開は、見る者にも興奮を呼び覚まさずにはいられない、非常に見応えのあるものだった。

 このレベルにAPACのチームが到達できるだろうか。中国のEL Gaming、日本のB-Gamingをはじめ、彼らとライバル関係にあるAPAC上位チームの数々にはさらなるレベルアップを期待しつつ、さらにプレイレベルが上がっていく「WoT」のトップランカーによる戦いを楽しんでいきたい。

最終ラウンド、精彩を欠くKazna Kruを一網打尽にしたDiNG
優勝をきめたDiNG。2位のKazna Kruとともに「Champions Rumble」に出場する