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面白い人々を生み出す「ウォッチドッグス2」のAI技術

様々な“ロジック”が人々の豊かな反応を引き出す

2月27日~3月3日開催

会場:San Francisco Moscone Convention Center

 「GDC2017」、2月28日のAI Summitでは、「Helping It All Emerge: Managing Crowd AI in 'Watch Dogs 2'」として、Ubisoftの「Watch Dogs 2(ウォッチドッグス2)」のゲームデザイナーRoxanne Blouin-Payer氏が本作のNPCにおける反応などを語った。

「Watch Dogs 2」のゲームデザイナーRoxanne Blouin-Payer氏
写真を撮ると彼氏そっちのけでいきなりポーズを取り始める
車を壊し始めるおばさんにみんなドン引き。AIの多彩さを感じさせるシーンだ
各NPCの認識範囲を表示

 「Watch Dogs 2」は、“突飛なNPCに驚かされるゲーム”である。特に、ランダムで、ゲームとは全く関係なくドラマが進展してることがある。ダメ男を振ろうとして男にすがりつかれている女や、ひったくりを目撃するとかいろいろあるが、Blouin-Payer氏が紹介したのは男同士でいちゃついてる同性愛カップル。

 人目もはばからず愛の言葉をささやいているのだが、ゲームの主人公・マーカスがカメラを向けると突然相手のことをほっぽり出してカメラの前で筋肉を見せつけるポーズをするのだ。相手のいきなりの冷たい態度にもう1人は激昂、さっきまでのラブラブぶりはどこへやら、いきなり2人はお互いを突き飛ばす大げんかを始めてしまうのだ……このあまりの展開に、会場は大爆笑である。

 プレーヤーの行動に反応するAIは、前作「Watch Dogs」ではプレーヤーの犯罪行為に警察に通報するなど、比較的シンプルなものだった。しかし「Watch Dogs 2」では、複雑に、非常に楽しいものになっている。まず、「Watch Dogs 2」は“NPC中心の世界”になっている。

 彼らは市民として普通に生活し、様々な生き方をしている。ただ歩いてるだけでなく、健康のための体操をしていたり、みんなで踊りを踊っていたり、ストリートバスケットをしていたりする。かぶり物をかぶったストリートパフォーマーなどもいて、プレーヤーが街を歩き、彼らに興味をひかれてしまうようなユニークな人たちにあふれている。

 まず彼らNPCは3つのシステムで動いている。その地域、役割に合わせた行動を行なう「Attractors」、次に彼らは「Dynamic Attractors」で、お互いあって挨拶したり、犯罪に巻き込まれたり、NPC同士で何らかのドラマを繰り広げる。そして「Reaction System」だ。カメラに反応したり、プレーヤーが銃を撃ったことに対しておびえたり。そして、その動きは“伝播”する。プレーヤーによって引き起こされたNPCの行動が、他のNPCの行動を誘導していくのである。

 刺激を受けたNPCは行動し、その行動がさらなる他のNPCへ伝播していく。NPCにはそれぞれAIの“性格付け”がされており、「40%で怒り、20%でおびえ、10%で逃げる」など、行動の傾向が設定されている。また、敵対的か、そうでないかなども設定されており、敵の場合は反応が大きく違う。もちろん「普通に戻る」という選択肢も用意されている。

 この刺激行動プログラムは「Reaction」によって制御されている。まず、刺激点に対しての“距離”が重要となる。距離が離れすぎている場合は、刺激の伝播はしにくく、離れすぎている場合は無反応になる。距離に加え“視界”もある。大きな刺激であっても、NPCが見ていなければ、何が起きているかわからないのである。

 NPCの反応にも段階が設定されている。「幸せ」、「心配」、「怒り」を3つの極端な状態にし、真ん中に「平静」を入れる。何かの刺激を受けたときNPCは極端な反応を示すが、そこから徐々に兵制へと移行し、そしてデフォルトの状態へと戻る。たとえば1人のNPCが車をたたき壊す反応を始めると、通りがかったNPCがそれに反応し、ちょっとした騒ぎが起きるが、その後通常の雰囲気に戻るのだ。

 また、通常の設定はキャラクターごとに異なる反応を引き起こす。公園でくつろいでいる人々の前で突然マーカスがダンスを始めると、ただ不思議そうに見る人だけでなく、露骨にいやな顔を見せる人も出てくる。そして踊り続けていると、キャラクター達はマーカスに興味を失っていくのだ。このほかにもBlouin-Payer氏はNPC達が認識する範囲を提示したり、彼らの細かい性格設定も解説していった。各キャラクターは、お虎りっぽヵったり、臆病だったり、攻撃的だったり細かく調整が可能だ。

 さらにこれとは別に「ミッション中のNPCのAI」という項目もある。これはミッションそれぞれに合わせた特殊な性格付けで、反応は大きく異なってくる。Blouin-Payer氏はこういったAIの設定を行なうには少数のチームで、細かくレスポンスを見て、開発を行なっていくことが必要だと語った。

 Blouin-Payer氏はこういった“NPCの反応”は、プレイ時間の30%を占めること、そして反応を見るにはチームで実際に反応する仕草を実写ビデオで作ってみること、そして感想を言い合って磨き込んでいくことが大事だと語った。さらにAIは実際の反応よりも“ロジック”に力を入れ、パラメーターと決まりを設定することで、よりリアルな世界が作れると語り、講演を終えた。

【Helping It All Emerge】
多彩でユニークは人々は、プレーヤーのアクションやお互いの関係で“反応”を生みだし、プレーヤーに彼らを印象づける
反応は伝播していく。群衆の反応が起きていく
反応を段階で移動させていくことでよりリアルな情景を作り出せる
実際にスタッフで劇をやってみることで現実的な反応を模索できる。ユニークなアイディアも増える
デフォルトの性格設定と、反応の違いをセットすることで多彩な人々を演出
スタッフの数や、実際に使っているツールも明示する
まとめ。こういった群衆への気配りが、メディアやユーザーからの評価にもつながった