2016年12月1日 00:00
「ウォッチドッグス2」で主人公・マーカスは“潜在的な犯罪者”にされてしまう。彼は黒人で、高いコンピュータースキルと、フリーランニングができる優れた運動神経を持っており、反社会的な気質を持っている……それらの特徴をctOS2.0の「犯罪予測アルゴリズム」が判断し、「こいつは犯罪者になる」と彼の個人情報に“烙印”を押したのだ。
「冗談じゃない!」。マーカスのctOS2.0、そしてブルームへの怒りが、彼を正真正銘のハッカーにしてしまう。彼は接触してきたハッカー集団・デッドセックのバックアップの元、ctOSサーバーセンターに潜入、自分のデータを消去し、バックドア(潜入プログラム)を仕込み、見事逃走に成功する。この成功でデッドセックも本格的な活動ができるようになった。街を支配する「ctOS2.0」を逆利用し、人々を支配しようとするブルームの企みを暴き出すのだ!
前作「ウォッチドッグス」はシカゴを舞台にピアースという男の“復讐”の暗い物語が描かれたが、今作は主人公が変わり、舞台も開放的な明るさを持つ「サンフランシスコ」となった。マーカスと彼の仲間「デッドセック」は明るく、無秩序で、ハイで、ちょっとバカっぽい(褒め言葉)。サンフランシスコも陽気で、美しい街である。その“ノリ”は“「ウォッチドッグス2」ローンチトレーラー”からも強く伝わってくる。楽しいオープンワールドゲームをプレイしたい、という人にオススメしたいゲームだ。
情報ですべてを管理しようとする企業に、社会に反逆してやる!
「ウォッチドッグス2」はサンフランシスコを舞台としたオープンワールドゲームである。前作「ウォッチドッグス」で“人々の生活をのぞき込むハッカー”という魅力的なアイディアが提示されたが、今作ではさらにその能力・演出が強化された。前作以上に様々なハッキング能力、デバイスを使いこなし、不可能を可能にし、人々の監視をすり抜けるのはたまらなくスリリングで、成功した時は最高だ。
“仲間達”のデッドセックメンバーの“イカレっぷり”もいい。絶対に顔を明かさないくせに覆面で色々な表情を見せる「レンチ」は、マーカスと様々な“オタク趣味”で馬鹿話をする。「エイリアンとプレデターは本当はどちらが強いか?」をサンフランシスコからゴールデンゲートブリッジまでの移動中に延々と話しているし、映画俳優の物まねで大喜びしたりする。こういうアホな会話がたまらなく楽しい。
「ジョッシュ」はこだわりが強くて内気な青年だが、ちょっとずれた感じが面白い。「シターラ」はかなりパンクな女でセンスもぶっ飛んでるが、実は結構なお嬢様で、ちょっと色っぽい感じも良い。「ホレイショ」は検索エンジンで有名な「ヌードル」の社員で、苦労人の一面を見せたりする。彼らはオペレーション(ミッション)でさらなる一面も見せてくれる。プレイしていると、ドンドン彼らが好きになってくる。
そして、「ウォッチドッグス2」の大きな魅力は、ゲームそのものもかなり“カオス”なところである。いつも色々な目的があり、面白そうなことがプレーヤーを誘うのだ。ゲームのメインオペレーションでは、ブルームのダサイ映画制作を邪魔したり、ブルームご自慢の家庭用システムをこき下ろしたりと、巨大企業ブルームに刃向かう、爽快で凝ったものが続いていくのだが、この合間に膨大な量のサブオペレーションが立ち上がってくるのである。
一流企業の社長が自分だけのためにアーティストに曲を書かせようとするのをだましたり、チャットシステムに感染する「ゾンビウイルス」を見つけてしまったり、都市伝説の“謎の電波”を検知してしまったりする。さらにレースコンテンツや収集要素まで本当にやりたいこと、やりたくなるものがドンドン見つかる。“目移りする”という言葉がこれほどふさわしいゲームもないのではないだろうか。かなりのやり応えを持った作品だ。
さらに、地味に楽しいのが「ファッション」である。サンフランシスコには様々なテーマを押し出した衣料品店が存在する。パンク風、カジュアル風、高級店、ストリートファッション……これらの店に入って帽子から靴まで一揃え購入すると、マーカスの雰囲気ががらりと変わる。店のコンセプトがしっかりしているので、品揃えから適当にチョイスするだけでそれなりに決まるのだ。服を変える楽しさも、他のオープンワールドゲーム以上に力が入っていると感じた。
「ウォッチドッグス2」は本当に“楽しい”ゲームだ。美しいサンフランシスコの街はドライブするだけで心が浮き立つし、オペレーションは凝っており、多彩なアプローチができるゲーム性と、ストーリーが楽しい。イカしたデッドセックの仲間達と社会に向かって中指を突き立てるロックな所も最高だ。そして挑戦心をかき立てる収集要素に、自分の中の“オシャレ”を刺激するファッション要素……ユービーアイソフトのオープンワールドゲームの1つの到達点と言えるかもしれない。
カメラの視界を盗み、敵を欺き、ラジコンカーを操って目的を達成!
ハッカーであるマーカスは様々なハッキング能力を駆使してオペレーションをこなしていく。まず1番重要となるのが「ネットハック」だ。これを使うと視界が切り替わり、マーカスは壁を突き抜けて様々な目標や作動させられるオブジェクトを見ることができる。
ネットハック視点で最も役立つのが「カメラ」だ。カメラをハックすることでその視点をジャックできる。カメラからカメラに移っていくことで、目的となる場所をほとんど先回りしてみることができる。敵となるNPCをマークすることができ、目標までの経路、さらにハッキング可能なオブジェクトも見つけられる。電気パネルなどは暴走させて周囲の敵を気絶させることもできる。カメラと暴走を使ってあらかじめ敵を減らしておけば侵入の難易度は大きく下がる。
「ウォッチドッグス2」ではさらにデバイスを使いこなして目標を達成できる。特に「ラジコンカー」はものすごく有能な相棒だ。ラジコンカーを使えばマーカス自身は建物の外にいながら目的を達せられる。ラジコンカーはそのアームで、本来はマーカスがその場にいなくてはできない“フィジカルハッキング”や、アイテムを回収することもできる。そして「クワッドコプタードローン」は偵察に最適だ。カメラを中継しなくてはいけない場所も直接飛んでいくことができ、ベストな視点を提供してくれる。
「ウォッチドッグス2」は始めたばかりのプレーヤーにとって、難しく感じるかもしれない。他のオープンワールドゲームのようにアサルトライフル片手に突っ込んでも敵が多く、さらに増援まで呼ばれるので苦戦しがちだ。気絶させた敵も持久戦になると息を吹き返すし、結構オペレーションをクリアして行くには手こずるかもしれない。まずは本作ならではのシステムに慣れ、様々なものを使って進めていく楽しさを学んでいきたい。
今回発見した“攻略法”の1つが「騒ぎを起こすこと」だ。電気パネルを暴走させたり、車を動かして敵を攻撃すると、敵は仲間を助けようとそちら側に集まる傾向がある。持ち場を離れて集まっていくのだ。その隙にラジコンカーを潜入させ目標を達成する。大混乱が起きている建物の中に一歩も入らず、外から全ての目標をクリアし、去って行くマーカスの姿は最高にクールだ。「ウォッチドッグス2」では気絶攻撃やスタンガンがかなり強力なので誰も殺さないスマートなプレイにこだわりたくなる。もちろん強力な火器とハッキングを駆使するバリバリの武闘派プレイも可能だ。
個人的に好きなのが回路を繋いでいくハッキングシーン。いわゆる“水道管パズル”なのだが、今回はかなり規模が大きくてやりがいがある。ある場面ではドローンを駆使して幅広い視点での回路を繋いだりするし、ある場所では制限時間がかかっていたりする。どこをどう繋いでいくか、回路をぐるぐる回しながらクリアしていくのはシンプルな楽しさがある。
また、サンフランシスコにはコレクション要素があり、特にスキルを増やす「リサーチポイント」を集められるポイントは特に見逃さずゲットしていきたい。そこまでどうたどり着くか、オペレーションで得たテクニックをかなり駆使しなくてはいけない。どこをどう通っていけばそこまでたどり着けるか、頭をひねる感じが楽しい。ゲームをやりこむほどやれることが増えていき、自分の“成長”が実感できるゲームだ。
盛りだくさんのコンテンツ。サンフランシスコでたっぷり遊べ!
「ウォッチドッグス2」は「リサーチポイント」を集め、それを消費してスキルを得ていくことでマーカスを強化していく。リサーチポイントはデットセックへの「フォロワー」が増えることで、より多くのポイントが獲得できる。このため、デッドセックはより多くのフォロワーを獲得するために活動していくのだ。
だからこそ彼らのオペレーションは、派手で爽快だ。筆者は最初のメインオペレーション「サイバードライバー」で本作を大いに好きになった。サイバードライバーはしゃべる車を相棒にしたアクションヒーローの物語だ。もちろんアメリカのテレビドラマ「ナイトライダー」のパロディだ。マーカス達はこの脚本を盗み出し、さらには車も盗みだして大騒ぎを巻き起こす。
なによりクライマックスがド派手なのだ。思わずコントローラをつかんでいた手を離してガッツポーズを撮りたくなるような爽快な演出だった。デッドセックメンバーが力を合わせてどんなハチャメチャな騒動を巻き起こすか、ぜひゲーム内で体験して欲しい。
「ウォッチドッグス2」は他にも楽しいネタがてんこ盛りだ。チャットを邪魔する謎のコンピューターウイルスや、合成写真で偽の不倫問題に巻き込まれた男の話、新興宗教の“再教育施設”に忍び込んだり、時にはデッドセックに挑戦を挑んでくるやつもいる。シターラデザインのグラフィカルアートを、街中に描くサブミッションも用意されている。面白かったのは実在するUbisoft San Franciscoを舞台としたサイドオペレーションがあるところ。このミッションはどこまで“本当”なのか、興味が惹かれた。
仲間達との絆の書き方も良い。メンバーはそれぞれ背負っている過去があるし、世の中に反逆したいという思いがデッドセックでの活動の原動力となっている。勝手にレッテルを貼られ、情報を盗まれて管理されたくない。時にはブルームの強大な力の前に怖じけづきそうになるがメンバー達の反逆の思いは消せない。彼らの前に立ちはだかるブルームのCTO「ドゥシャン・ネメック」は敵として貫禄があり、カッコイイ。悪ガキ集団デッドセックがいかに立ち向かうか、どんどんストーリーにのめり込んでいく。
個人的にはサンフランシスコという土地が良かった。サンフランシスコは世界中からゲーム開発者が集うGDCが開催されており、筆者達ゲーム関係者には思い入れを持つ人が少なくない。見覚えのある風景を見つけるとうれしかったし、この魅力的な街をゲーム内でさらにディープに探索できるのは本当に楽しい。筆者が2015年に行った時に撮った写真を数枚載せておくのでプレイする人はぜひゲーム内で同じ風景を探して欲しい。
「ウォッチドッグス2」は街を歩いてるだけで楽しい。バイクや車、さらにはカートのレースコースも用意されているし、ぶっ飛んだタクシーミッションも、コレクション要素もある。本当に盛りだくさんのゲームだ。11月から様々な大作が出ているが、「ウォッチドッグス2」はそれらに決して引けを取らない、お正月や冬休みまでたっぷり楽しめるゲームである。今回は発売前のためオンラインコンテンツには挑戦できなかったが、こちらもかなり面白そうだ。オススメのオープンワールドゲームである。
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