インタビュー

「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(前編)

PS Vitaを使ったリモートプレイ、シェアボタンの使い方について

PS Vitaを使ったリモートプレイ、シェアボタンの使い方について

吉田氏自身かなり手応えを感じているというPS Vitaのリモートプレイ
真タイタン戦をPS Vitaでプレイ。WiFi接続ならかなり快適に遊べる
このPS4版のHUDレイアウトをそのままリモートプレイに持ってくるのは無理があるため、リモートプレイ専用のレイアウトの保存機能が欲しいところ
PS4版では、ストリーミングや動画、スクリーンショットなどを簡単にシェアすることができる

――そしてPS4の独自要素の中でも素晴らしいのがリモートプレイですよね。こちらも触らせていただいたのですが、素晴らしい出来ですね。

吉田氏:ありがとうございます。僕も自分の家のプレイ環境をPS4に変えようと思っています(笑)。

――PS Vitaは別途必要になるわけですが、これだけでもPS4を導入する価値があるなと思ってしまいました。

吉田氏:実は僕も最初に動かした段階で、触りながら「あ、これはいける」という感じがありました。

――触る前はストリーミングでぼやけた映像を、ラグを意識しながら操作するという感じを想像していたのですが、絵が綺麗だし、とにかくラグがない。だから、バトルコンテンツも含めて、リモートプレイでぜんぜん行けるという手応えを持ちました。これは制作に苦労はなかったのですか?

吉田氏:ここはSCEさんが素晴らしかったです。本当になかなか一般的に外付けのツールだったりすると、パフォーマンスは食いませんよと言いながら、実装してみたら「く、食ってますよねこれ……」みたいなケースってやはりあるのです。例えば弊社のプレイオンラインでも、想定以上に「すげーメモリ食うじゃん」ということがあったり。ただ、今回は本当にレンダリングバッファも計算もすべてセパレートしてくださっていたので、とても対応しやすかったのです。これだけ短期間で、あっという間ではありましたね。

――今回インターネット接続ではなくWi-Fi接続で試遊しましたが、インターネット接続だと多少は遅延が発生しますか?

吉田氏:それは絶対に出ますね。そこは今プレーヤーの皆さんの間でも、ご家庭で使っている環境、プロバイダさんや、回線で何mm/secか違ったりしています。そこからさらにインターネットを経由してPS Vitaに繋いで、PS4へ入力を送り、またVitaへ戻して絵を更新する、その裏でサーバーとのやりとりもあるので……遅延は避けられないですね。

――せいぜいクラフトくらいかなと?

吉田氏:ただ、日本の場合はインフラ環境が非常に良いので、僕はデイリークエストぐらいならぜんぜん余裕だろうなと思います。あとはクラフトやギャザリングが一般的でしょうね。

――PS Vitaの画面はテキストメッセージを読むには文字が小さすぎますが、これはフォントサイズを140%くらいまで大きくして遊んでくださいということですか?

吉田氏:基本はそうです。あまりリモートプレイ中にコミュニケーションをとっていただきたいとは思っていないのです。ここにキーボードを繋ぐと本末転倒ですし、必死にソフトウェアキーボードで文字入力するかというと、それもなぁと。どちらかというと1人でエオルゼアを覗くときに使うイメージでしょうか。もちろん、固定メンバーに「なんとか俺、今日はPS Vitaでいくから!」というのも仲間内ならぜんぜんアリだと思います。多少のラグも仲間内なら多めに見てくれるところもあると思いますし。個人のプレイ環境次第ですね。

――外出先からインターネット接続でプレイする方法は、PS4で「新生FFXIV」を起動しっぱなしにした状態にしておけばいいわけですか?

吉田氏:PS4をスリープというか、省電力モード状態で動かしておけば大丈夫です。SCEさんの考え的にはPS4の電源は落とさないで常に立ち上げておいてもらって、アクセスがあったら本格起動してという感じで。

――遊んでみて感じたんですが、これ現状だと文字の大小、一部のキー割り当てしか保存しておけないということなのですが、HUDレイアウトも含めてPS Vitaモードみたいなレイアウトが保存できて、リモートプレイ時に同時かつ自動で切り替わってくれると、本格的に遊べますよね。

吉田氏:その方向へ行くつもりではあります。

――おー。それはいつくらいに導入されるのですか?

吉田氏:いまローンチに向けてやっているところです。今回触られた時に、クロスホットバーを操作されたと思いますが、ここの操作は通常は「L2」、「R2」で、PS Vitaだと本来は背面操作になるのですが、「L1」、「R1」キーで操作できるように既に入れ替えてあって、別コンフィグになっています。

 しかもPS4でプレイしてる時にはゲームパッドのUIが優先されて、リモートにした瞬間自動的にPS Vita専用のUIに切り替わるので、そこのカスタムをプレーヤーのみなさんにも許すという対応をします。

――念のため確認しますが、正式サービスの時には、リモートプレイを起動すると、自動的にテキストが140%表示になり、それからHUDのいくつかのバーやメニューをオフにして表示をスッキリさせて、キー配置も自分好みに変更した状態になるみたいな、あらかじめ保存したカスタマイズ設定を自動で切り替えられるようになる、という理解でいいですか?

吉田氏:フォントサイズの保存は今でも可能です。他はどこまで行けるかというところに挑戦してしますし、βテストでのフィードバックを見て、優先順位を付けて対応していきます。

――しかし、実際、こうやって遊んでいたらPS Vita版を出してもいいのではないかという気がしたのですが、それは無理ですか?

吉田氏:かなりのクオリティで動いている錯覚をするのですが、これを動かしているのはあくまでPS4です。PS Vitaのスペックでは、このクオリティで「新生FFXIV」は動かないですよ(苦笑)。

――そういう意味では、PS4のリモートプレイは現実的なソリューションなのですね。

吉田氏:そうですね。皆さんPS Vita上で「新生FFXIV」が動いちゃっているので、「PS Vitaスゲー!」となってますけど、スゲーのはPS4なので(笑)。あとは「FFXIV」のプログラムチームが頑張っているということなのです。他はもうクラウドサービスみたいな考え方でデバイスを増やすしかないですね。こちらのサーバーで計算していて、映像だけ皆さんに配信するクラウドゲーミング。

――あとはPS4版のウリとしてはシェアボタンがあります。これでストリーミングを公開したり、動画をアップロートできたりしますが、アップロード先はどこになるのでしょうか?

吉田氏:まずSCEさんがサポートしているのはストリーミングです。生放送をシェアする形です。ゲーム側でレンダリングしているのとは別のバッファで、同じようにダブルバッファで書き込みをしたやつを生で放送する。こちらは保存データではないので、リアルタイムに流しているだけです。動画や静止画を保存されたい場合にはアップロード先はご自身でどうぞと言うことだと思います。

――Lodestoneにアップしたりできますか?

吉田氏:僕らそんなに巨大なバックエンドサーバーを持っているわけではないので、Lodestoneは動画の許可をしていません。ただ、コンテストをやろうと決めたらたぶん、一時的に1人何MBまでと決めて動画を投稿してもらう可能性はあります。

――このシェアボタンに関して、吉田さんとしてはユーザーさんにどういう使い方をして欲しいと考えていますか?

吉田氏:ニコニコ動画の投稿とかUstreamもそうですし、Twitchもそうですが、自ら動くものを発信する時代になりましたよね。昔はまずワールドワイドウェブで日記。静的なものをアップすることから始まって、ハイパーリンクやCSSが発達して、アニメーションしたり音が流れたりというところに来て、そのままライブストリームという時代。

 僕もいくつものMMOをプレイしている時に自分でPvPの動画を作ってアップしていました。最高品質で描画した上に、裏でそれをキャプチャーして、映像を編集してサーバーを借りてアップして……。当時も大変でしたが、今もニコニコ動画でストリーミングしようとする人って、結構お金をかけているはずです。わざわざグラフィックスボードのほかにキャプチャー用のボードを買ってきて、キャプチャー用のボードでキャプチャーしたやつをそのままストリームにかける。だから趣味に対してかなりお金をかけてやっている。

 だけど、PS4の場合だとそもそもその機能が本体に入っているので、ボタンを1つ押して放送とやるだけで流れる。だから例えばユーザーコミュニティの、よくインゲームの中でチョコボレースをやりますとか、プレーヤーのみなさん同士でやっているじゃないですか。あれをニコニコ生放送で流そうと思ったら結構大変です。でもPS4ならサクッと番組ができちゃうと思います。例えば今週末チョコボレースやります。さらにPS4の場合、その模様をこのチャンネルで実況中継していますのでよろしく、みたいなものだったらPS4コミュニティはみんな見られるわけですから、そういった使い方になってくるのではないでしょうか。

 あとは、例えば僕らの接触の仕方も、PS4に限ってしまえばですが、開発がプレイしているやつをこれから生放送しますとか、お手軽にできると思いますし、それこそゲームメディアさんが今までだとちょっとニコニコと組んでやろうかだったのが、好き放題やれるわけですから。そういった、たぶん誰もができるところが大きいんだと思います。今はまだどちらかというと受動的。見る人のほうが圧倒的に多い。でも今、欧米ではすでにPS4が発売されていて、本当にストリームされまくりですから(笑)。

――そういう意味では、日本だとニコ生やYouTubeに対応したいですよね。それはSCEさんが決める話ですか?

吉田氏:SCEさんですね。コメントの制御とか、どうするのかなと、いろいろ考えがあるんじゃないかと思いますね。

――意外と難しいのかもしれないですね。でも対応したらすごい盛り上がりますよね。

吉田氏:盛り上がるとは思います。ある意味ニコニコ動画は、あのくらいの若干アングラな部分があったり、ややグレーゾーンな部分があったりするから盛り上がるんだと僕は思っていて。そこに規制でがんじがらめのコンテンツを入れても、あまり盛り上がらないだろうなと思ったりするので、そこはハードメーカーさんがどう考えるかだと思うのです。

(編注:2月14日SCEJAがPS4のニコニコ生放送への対応を表明

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(中村聖司)