インタビュー

「FFXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(前編)

トレハンに蛮族クエスト。F.A.T.E.は適正化。よりマイペースで楽しめるMMOに

トレハンに、蛮神クエスト。「2.1」からはよりマイペースで楽しめるMMOに

UOにEQと、MMOの元祖的存在を引き合いに出しながら「パッチ2.1」を語る吉田氏
パーティー募集システム

――そう。「付いていかなくていい」ってのは大事ですよね。ライターにも「新生FFXIV」をやっている人がいますが、日頃MMOを仕事としてやっているような人間でも、この先鋭化ぶりに「もう中村さんムリかも」って言うわけですよ。だから、「今はゲームの設計がそういう作りだし、そこに無理して参加して挫折してること自体に無理があるんだから、まったりギャザクラやったら?」って言わなきゃいけないくらい(笑)。でも、冷静に考えると、彼らの悩みって、一般的なプレーヤーの等身大の悩みなんですよね。話を聞いていると、蜘蛛の糸にすがる亡者の1人みたいになって、勝ち目は薄いのに必死にすがろうとしている。「いや、無理にすがらなくていいんじゃないの」って。

吉田氏:僕の友達は両極で、もともとのMMO仲間は普通にバハムート5層に通っています。逆にいままでさんざんMMO勧めたのに断られつづけてきた友達は、みんなもう4ジョブカンスト、ギャザラークラフター2職カンスト、くらいやっていて。

――両極ってどっちもゴリゴリに遊んでるじゃないですか(笑)。

吉田氏:でも後者の友達は、真イフリートで止まってるんです(笑)。それ以上はやってないのです。「レリック? なに? ギャザクラのレベル上げてるから、いつでもいいんだわ」って。そういう友達は、次のパッチの情報にもあまりガツガツしていなくて、ほわーんとプレイしてくれています。バハムート5層の友達は「早く次のエンドよこせ!」って凄く言いますし、もう語気が荒くて(苦笑)。

 「パッチ2.1」ではパーティー募集システムが入ります。それこそ「レリックが光ってる人のみ募集!」といった条件でパーティー募集が可能になります。参加したいと思った方は、応募した瞬間にパーティーが組まれます。クラフターやりながら、なんか良さそうなものがあれば参加するし、めんどくさい俺はファインダーでいいもんという人はファインダーで回しちゃえばいい、などのように、募集にも選択肢が増えるので、色々活動が目についてほしいと思っています。そのあたりが「2.1」で感じていただけたらなと思います。

――それは楽しみですね。

トレジャーハント。専用アクションを使用すると当たりを見回すモーションを行ない、当たりであれば宝箱が出現する。宝のグレードによっては敵も出てくるようだ

吉田氏:他にもトレジャーハントはレベル30からプレイできるものですし、色々なコンテンツの片手間にどうぞ、とも思います。ギャザラーが地図を発見できるようになり、グレード1からグレード5までの宝の地図があるので、日によって旅のお供にどうぞ、と。

――それは3種のギャザラーのどれでも発見できますか?

吉田氏:はい。普通にギャザリングしていると出てきます。それを鑑定すると小さい地図が見えて。グレード1からグレード3まではソロで簡単です。グレード4も基本はソロでプレイできますが、レベル50でちょっと頑張ってクリア!くらいの難易度です。トレジャーハントは、ひとりでコツコツ楽しめると思いますが、グレード5だけは、4人から6人くらいは必要にしてあります。

――普通の一般フィールドで、レベル50パーティーが必須のボスクラスモンスターがポップするわけですか?

吉田氏:強い1体の時もあれば、複数ドバッと出ることもありますね。

――へー。「ウルティマオンライン」を思い出しますね。

吉田氏:「UO」ではデーモンが出て大パニックでしたね(笑)。グレード5はオマケみたいなもので、グレード4までがメインです。グレード5は、週末にパーティー募集機能やフリーカンパニーのメンバーと「まとめてグレード5の地図回りませんか?」という感じで遊んでいただけたら嬉しいです。もちろん、未鑑定状態の地図をマーケットに売っちゃってもいいです。ただし、解読してしまうとトレードできなくなります。解読済みの状態で持てるのは、同グレード1枚のみです。

――1日に1回しか開けられない?

吉田氏:いいえ、解読できるのが1回に1枚。それを捨てるか、宝を取ってしまえば次の解読が可能です。解読済みの地図だらけにしておいて、どんどん開けていくということができないだけです。1枚宝くじを開いたら、場所が指定されているので、その場所を探して宝箱を見つける。あとはファイターかソーサラーにジョブチェンジして箱を開け、トラップモンスターを倒して中身をゲット、ということです。貰えるアイテムは、当たりもあれば、ハズレもある、という感じですね。

――お宝はどういったものが用意されているのですか?

吉田氏:エーテリアル装備が出たりもしますし、ギルと経験値稼ぎにも使えます。経験値も産出されるし、カンストしているクラスやジョブであれば、アラガントームストーン神話と哲学も出ます。あとは「哲学」で交換する素材もそうだし、あと結構レアなクラフト素材のHQが出たりとか、ハウジングパーツの素材が出たり、結構色んな物が出ますね。

――レアドロップもありますか?

吉田氏:はい。それも1個じゃなくて、5~6個まとめてドバッと手に入ることもあります。

――地図を持った状態でそこにいけば、ミッションバトル用のサークルみたいものが表示されているようなイメージですか?

吉田氏:いえ。「探す」というアクションを実行すれば、それが地図の示す場所だった場合、宝箱が発見できます。とてもシンプルにしてあります。宝箱を無理矢理開けたらモンスターが出たので、そのモンスターを倒せば中身が入手できます、というシンプルさ。たまたまギャザラーやっていたら地図が貯まった。明日は久々にバトルクラスで1枚ずつ開けていこうかなとか、それぞれのプレイスタイルの狭間に、選択できるものという位置づけです。

――レベル50の人がやれば、ランクにかかわらずトークンがもらえる?

吉田氏:地図のグレードが一定以上じゃないと出ないです。あとはもう確率ですので、ぼろっと出たって時もあれば、全然出ないという時もあります。効率よく稼ぎたい人が、毎回のリワードを計算してプレイするような遊びではないです。効率よくいくなら、ハイレベルダンジョンや、シリウス大灯台に行った方が確実に計算が成り立ちます。

――ソロ系のコンテンツということですね。

吉田氏:ソロ向けでもありますし、プレイサイクルの中で、何をチョイスするかの一手段ですね。

蛮族クエスト。毎日6つのクエストが受けられるようだ

――蛮族デイリークエストも似たようなものになるのですか?

吉田氏:どちらかというと、今は蛮族というのは単純に蛮神を呼び下ろす、エオルゼアの世界で人間から嫌われていて、迫害されている人たちみたいな。三都市側から見ると手を焼いている存在。たとえばシルフは、けっこう心優しい子たちなんだけれど、なんとなくグリダニアの人たちの対応が、手を焼いている感がある。「いやいや、我々もできれば共存したいんだよ」といいながら、面倒なことは「暁の血盟」に依頼する……。あれが蛮族との関係をよく表しているとおもうんですが、まだやっぱり表面上は「悪者の雑魚、テンパードみたいに、おかしくなっちゃったやつらが蛮神を呼んでいる」だけだと思うんです。

 「蛮族デイリークエスト」を通じて、彼らにも生活もあれば、主義主張もある。宗教もあるし、彼らの中でも人間よりな人たちも、エオルゼアの人たちと共存したいという人もあれば、テンパードみたいに自分たちの種族以外はみんな滅びてしまえみたいな人たちもいる。そんな中で、蛮族の一部のキャラクターと、冒険者がコミュニケーションを取っていくことで、彼らの生活様式を知ることができたり、彼らが抱ている問題を解決することで、その蛮族との友好度を上げていくことができる。それで、彼らの生活圏でしか売っていないものが買えたり、貰えたりするというコンテンツです。

――システムとしてはグランドカンパニー関連のコンテンツみたいな、複数の蛮族がいて、いずれかに所属して、彼らに力を貸していくことでポイントが得られ、それで様々な特典が得られるようなイメージですか?

吉田氏:毎日掲示されるクエストの中から、好きな物を毎日最大で6つ選んで、それをクリアしていくと友好度が高くなります。

――いま蛮族の本拠地に行くと、当然蛮族に攻撃されますけど、「エバークエスト」では友好度を高めると攻撃されなくなりましたが、ああいうシステムはありますか?

吉田氏:基本的にはないです。「EQ」をやっていたのであればわかると思いますが、それをやっちゃうと今度は友好度のシーソーが必要になります。片方を上げると片方を下がる。しかし、エオルゼアの世界で人と対立する役は「テンパード」という存在が明確にあるので、今回は八方美人ができるようにしました。その分テンパードになってしまっている蛮族からは、その蛮族との友好度に関わらず、問答無用で普通に襲われます。

――そうか、本拠地にいるのは全員テンパードなんですね。

吉田氏:そうなのです。そこはうまく棲み分けていますね。

F.A.T.E.によるゆるいレベリングは今後どうなる?

手軽に集団戦に参加できて、経験値も美味しいF.A.T.E.

――既存コンテンツの今後の行方についてもいくつかお伺いしたいのですが、まずF.A.T.E.です。私が見る限り、ジョブやレベルに関わらず、クラスに戻してフラッシュを付けて、フラッシュを連打しているゲームになっている部分ってあると思うのですね。私は真面目というか普通に参加したいから、そのジョブの戦い方で普通にやろうとするのですが、「なにやってるんだよおまえは」と言うところがある(笑)。

吉田氏:ああ、なんでフラッシュ焚かないの? と?

――そう。F.A.T.E.に白魔道士で参加して普通にケアルしたり、ストーン撃ちたいのに、「なんでクラスに戻してフラッシュつけてないの?」みたいな雰囲気がある。で、これは開発側から見て正常なのかどうかというところを聞きたかったんですよね。

吉田氏:僕はF.A.T.E.パーティーに何度も入ってますけど、そんなこと言われたことないですよ(苦笑)。

――私もF.A.T.E.パーティーでは言われたことありませんが、LSメンバーみたいな比較的近しい間柄だと、何度か言われましたね。これって実は私の周囲だけのレアな話なのかもしれませんし、ありふれたものではないかもしれませんが、少なくとも私が1人で参加している時も、絶えずパンパン、フラッシュが焚かれてるわけですよね。実際はちゃんと攻撃して敵を倒している人がいるからF.A.T.E.が終わるわけで、だから全員がそうだとは言いませんが、これってどの程度想定内で、どの程度「ん?」って思っているのかその当たりが聞きたいですね。

吉田氏:まず「ん?」とは思ってないです。そういう意味だと今は「F.A.T.E.と並んで簡単に経験値が得られるコンテンツ」が少ないのは事実ですし、効率よくF.A.T.E.をクリアしてレベルを上げよう、という流れは必然かなと。

――それはつまり、F.A.T.E.による“ゆるいレベリング”は想定内?

吉田氏:そうですね。レベルがぜんぜん上がらないよりは良いです。F.A.T.E.は気楽に参加できて、気楽に終わって、気楽に散開するというのが元々のコンセプトです。ゲームは苦しいことをするためのものじゃなく、楽しむものです。「新生FFXIV」はアーマリーシステムですし、育てるものはたくさんあるので、別に「開発の意図通りに遊んでくれていない!修正する!」というのはあまりないです。

 むしろ、日頃のプレイがなんかキツくてキツくて、「もうダメだ、こんなのやってられないよ」って。同じモンスターを毎日倒して、「とにかくきつい、何やってるんだ俺」って……。ようやくコンテンツにたどり着いたら、「いやこっちのもあげてこないとだめなんで」って言われて。今の僕だと挫折してしまいます(笑)。「新生FFXIV」にもアディショナルはありますが、おおむねそこまでの苦労はしないでください、というアクションのレベル設定にしてあります。

――やっぱり吉田さんはおもしろい、想定とまったく違う答えが返ってきた(笑)。私はてっきり現状は、開発の想定とは全く違う遊ばれ方をしているんじゃないかと思っていたんです。なぜなら、依頼をしてくる人々は、冒険者がフラッシュをたき続けることを望んでいるとは思えない。それで報酬がしっかりもらえるというのはゲームとしてどうなんだと(笑)。

吉田氏:うーん、でも仕様を良く研究してくださっていると、感心してしまう方です。貢献度は敵視の量で見ているからですよね。ただ、パーティーの場合には、パーティーで貢献度を計算するので、フラッシュは最低ライン確保のために1回で良くて、あとはクリア時間を短くして、早く次のF.A.T.E.に向かうために、ダメージ出しまくった方が、効率が良いとは思います。

――でも、そういう細かい仕様をわかってなくても、現状ではパンパン焚けばとりあえず経験値がもらえますからね。

吉田氏:仕様上は、フラッシュの使用はとりあえず正解なんです。僕は、少なくとも、ダンジョンや8人の上位コンテンツに通って、生きるか死ぬかばかり毎日繰り返すよりは、たまにはあの、ワーワー移動する感じのバトルはMMOっぽくていいと思っています。参加してて、チャットも気楽ですし、僕はあの雰囲気が好きですね。

クルザス中央高地の「スヴァラ迎撃作戦」。最後にボスが出てくる連続F.A.T.E.は、獲得できる経験値も高いため常に人気だ

――その通りだと思います。だから私は、レベル45前後のF.A.T.E.では、普通に戦わないとしんどくなってきますが、あのあたりが好きですね。クルザス中央高地の「スヴァラ迎撃作戦」みたいな連続F.A.T.E.は、最後にボスが出て、ちゃんと戦わないとヤバイし、殺されるし、緊張感もあって、ちゃんと撃破すれば経験値がたっぷり貰える。あのあたりのF.A.T.E.は常に人が多すぎるぐらいですが、ゲーム的にもバランス的にも正常かなと思うのですよね。だから今日は、「せっかくなら全F.A.T.E.があれぐらいの緊張感で戦えるといいんですが」と言いに来たんです。でも吉田さん「いいじゃん」っていうから、若干腰砕けになりました(笑)。

吉田氏:「いいじゃん」って言えてしまうのは、僕は「2.1」を知ってるからでもあります。「2.1」リリース前の今、楽に経験値が稼げて、レベルが上げやすくて、自分に責任があまり極端に発生しない気楽なコンテンツがF.A.T.E.しかないんです。ただ、まったく他人と介在しなくても宝の地図を探し、モンスター2、3匹倒すだけで、どばっと宝物を貰えるチャンスがある。うまくいけば中間素材も出てきて、マーケットに流せるかもしれないとなれば、トレジャーハントをプレイする人も出てくると思います。クリスタルタワーは、24人コンテンツなので、「俺がちょっとミスしても大丈夫かな?」みたいな感じで、クリスタルタワーに行く人もいるでしょう。

 トップ層は、一旦バハムート5層は置いておき、極蛮神戦に行くのも選択肢と思います。難易度的には大迷宮バハムート4層と5層の中間くらいにしたつもりです。蛮族デイリークエストで、蛮族にしか売ってないものがある。蛮族マウントもあるくらいなので、俺はとりあえずそっちを毎日やる。というのもありです。

 何が言いたいかというと、こうした「2.1」コンテンツが実装されることによって、「2.1」以降は今ほどF.A.T.E.に人が集まらなくなるのかなと。その結果、本来の1F.A.T.E.あたりの想定適正プレーヤー数に落ち着いていくはずです。そうなると今度は、フラッシュだけ焚いていたら全滅することになります。中村さんのいう「適度な緊張感」になると思うのです。

 僕はF.A.T.E.は今後「軍票を稼ぎたい時」とか、「もう今週はダンジョンに行きたくないから、F.A.T.E.回そう」と考えたときに、パーティー募集掲示板を使って「8人で3時間F.A.T.E.やりませんか?」とか、「世界中F.A.T.E.回りませんか」という募集に繋がってくれたらいいなと思っています。それが可能なように、F.A.T.E.は一部の大型のものを除けば、基本4人でクリアできるものに作っているのです。過疎っても、失敗しても、経験値は貰えるコンテンツになるように。

 さすがに「スヴァラ」レベルは4人では無理ですが、でもアイテムレベルの高いプレーヤーだったら、時間はかかりますし、その時間と報酬が見合うかといったら、また別問題ですが、あのスヴァラでもがんばれば何とかなると思います。だから、適正人数に落ち着くと、今度はみんなきっちりがんばって、勝ってきっちり報酬をもらうってところに戻ると思っています。

――なるほど。「2.1」で相対的にバランスがとれるのではないかと?

吉田氏:それくらい、プレイのモチベーションが、ばらけるだろうと思っています。

――オーディンとかベヒーモスには凄い人数が集まりますが、あのあたりはどうなりますか?

吉田氏:うーん、人が集まるのは、変わらないと思います。あの2つは経験値目的では無く、報酬アイテムが目的ですし、お祭り騒ぎでもあるからです。人が多すぎて、オーディンやベヒーモスが消えてしまい、倒しにくい状態にも対応が入りますので、お待たせしましたが、キチンと戦術を立てて戦えるようになります。

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(中村聖司)