インタビュー
「ドラグーン エンパイア」開発者インタビュー
シナリオはプロデューサー入院から生まれた? 男のロマンも込めたカードバトルRPG
(2013/10/4 00:00)
9月26日に、リイカが放つiPhone/iPod touch/Android用本格カードバトルRPG「ドラグーン エンパイア」がグランドオープンした。リイカといえば「おやじ観察キット」や「毎日の耳かき」などのヒット作で知られる、いわゆる“ゆるゲー”でおなじみのメーカーだ。そんな同社が、満を持して正統派のファンタジーRPGを開発した。
本作は、お転婆な「セリン姫」やドMメイド「イソ」らとともに、プレーヤーの顔ともなる「飛空艇」に乗り込んで旅をするカードバトルRPG。シナリオのほか、竜と騎士を組み合わせて戦うユニット構成にも特徴がある。
本作はこちらのページで詳しく紹介しているが、では一体どんなきっかけで「ドラグーン エンパイア」が生まれたのか、iOS版を経てパワーアップしたグランドオープン版とは、どんな内容になっているのか。本作に対する思いや開発経緯を、「ドラグーン エンパイア」ゼネラルプロデューサーの長木一記氏、開発を手掛けた未来少年・プランナーの立川遼氏にうかがった。
「機動戦士ガンダム」にインスパイアされ、ワールドワイドで戦えるカードゲームを
――まずは、企画のきっかけについて教えていただけますか?
長木氏: 2012年の春頃から新しいカードゲームを作ろうと企画を考え始めました。いまからカードゲームを作るなら、ワールドワイドで戦えるものじゃないと意味がない。それなら、クール・ジャパンと世界で評価されるような、アニメやゲームで慣れ親しんだものを、もっと世界でも受け入れやすい形にして送り出す、という方法を取ってみてはどうだろうかと考えました。そこで考えたのがが「ファンタジー世界」で「機動戦士ガンダム」をやることだったんです。
ガンダムを、海外でも受け入れられるようなファンタジックな世界観に落とし込んで、パイロットを「騎士」、モビルスーツを「竜」に置き換えて考えました。その時点で、「おっ、これは新しいアプローチのゲームになりそうだぞ」とピンときたんです。特に意識していたわけではないのですが、あとあとになって考えてみると、ホワイトベースは「飛空艇」だな、と(笑)。
立川氏: 僕自身がガンダム好きということもあって、企画を聞いた瞬間、すぐ「面白そう!」、「やりたい!」と思いました。
長木氏: 実は、未来少年さん以外の開発会社さんにも声をおかけしていたんですが、未来少年さんがぶっちぎりで早くお返事をくださったんです。しかも「こんなアイデアはどうでしょう?」、「こんな解釈でいいですか?」と積極的に提案をしてくださった。その情熱に圧倒されて、今回は未来少年さんと組もうと決意しました。
立川氏: ありがとうございます。ご期待に応えるべく、実は開発の初期段階から、コアなユーザーにも楽しんでいただけるよう、かなり細かく仕様を作りこんで制作に臨みました。お転婆なセリン姫やドMキャラのメイド・イソの設定も、大枠だけ指示していただいて、あとはこちらでどんどん肉付けしていって……。そんなこんなで、開発初期は5名だったスタッフが、いつの間にか10人に膨れ上がりました。いや、大変でしたね(笑)。
「騎士」×「竜」、2枚のカードで作るユニットが、熱いドラマを感じさせる!
――「騎士」×「竜」、ふたつのカードでひとつのユニットを作るという辺りは、他のカードバトルRPGには、あまり見られない特徴ですよね。
長木氏: そうですね。何度もガンダムを引き合いに出してしまって恐縮ですが、例えば初代ガンダムとアムロのようなわかりやすい関係性も、カードゲームには欠かせないと思いました。カードゲームって、あまりダラダラとテキストを読ませるようなものではありませんよね。アムロがガンダムに乗ることと葛藤し、ガンダムに乗ることで「我あり!」というところを見せつけたように、多くを語らずとも「騎士」と「竜」とのユニットだけで物語を感じさせる、そういうゲームにしたいと思っていました。
立川氏: それから、「騎士」と「竜」に相性があるところもポイントですね。2枚のカードを組み合わせて1つのユニットにするカードゲームは他にもあると思いますが、組み合せによって相性、つまりシンクロ率の最大値が変わるカードゲームというのは珍しいと思います。
長木氏: カードの相性がいいとシンクロ率100%まで育てることができるんですが、イマイチだと、90%や80%にとどまってしまうんです。同レアリティ・同属性のカードは相性がいいので、まずはその辺りから攻略していただければと。あとは、同じイベントで得られる限定カードを組み合わせると補正がかかる……かもしれません(笑)。その他にも、細かい裏設定がいろいろとあるんですが、それはぜひ、プレイして探してみてくださいね。
――組み合わせた時点では相性がいいのか悪いのかがわからないので、ややハードな印象を受けました。
立川氏: 実は開発チーム内でも、相性のわかりにくさが課題のひとつとして挙がっているんです。組み合わせた時点で、ある程度相性がわかるよう改善していくつもりですので、もう少しだけお待ちください!
30分の集中勝負! 仲間と共闘するリニューアル版「天空戦線」
――7月31日に先行リリースされたiOS版と、今回のグランドリリース版、どのような点が異なるのでしょうか?
長木氏: 大きく変わったのは「天空戦線」(リアルタイムバトル)ですね。先行版では、ギルドvsギルドの戦いだったんですが、グランドリリース版では、ギルドで共闘し巨大な空中要塞を倒すような内容に変更しました。人vs人で戦うのも悪くないと思うのですが、ギルドの仲間たちで協力して巨大な敵を打ち倒すほうが、最近の傾向としてもより達成感が感じられるかなと。ギルドの絆も強まりますし、その中で「今回はオレたちのギルドのほうがいい戦いをしたよね」とか「あっちのギルドもなかなかやるな」みたいな感想が出てきたほうが、前向きで楽しいと思ったんです。
――確かに、ギルドvsギルドのときよりも、強大な敵に立ち向かう高揚感のようなものが感じられました。バトルの時間が30分に設定されているところも魅力ですよね。
長木氏: バトルの時間が1時間や2時間に設定されているゲームも多いと思いますが、僕たちは「短く、濃く遊んでもらう」ことを意識して30分に設定しました。あまり時間が長いと、ラスト10分でダーッと攻撃しまくることで勝負が決してしまって、結局、間延びするのではと思って。
それなら30分、集中して遊んだほうが、きちんとゲームを楽しめる。中には「時間が短すぎて参加できない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、それはそれで仕方ない。「来られる奴だけで思いっきり戦おうぜ!」という感覚です。
立川氏: 実は、従来版、グランドリリース版ともに、もっとも開発に苦労したのが、この「天空戦線」でした。従来版のときは、開発の途中で急遽リアルタイムバトルを組み込むことになったんです。いまでこそ当たり前になりましたが、開発していた当時は、まだそれほどリアルタイムバトルを組み込んだゲームは多くありませんでした。
当然「組み込まない」という選択肢もあったのですが、制作チームで議論を重ね、最終的に「ちょっと新しすぎるぐらいの要素を組み込んでちょうどいい、むしろリリースされたときには古くなっているぐらいだ」という結論に達しました。新しいゲームが1本作れてしまうぐらいの仕様変更だったので、大変といえば大変でしたが、結果、よりユーザーに楽しんでいただけるゲームに仕上がり、「がんばって良かった」と実感しています。
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