インタビュー
PS3/Xbox 360「カプコン アーケード キャビネット」
配信開始! ~開発者スペシャルインタビュー~
(2013/2/20 00:00)
- 配信日:2月19日(PS3版)
- 2月20日(Xbox 360版)
- 価格: 無料[本体](PS3版)
- 500円[1987パック](PS3版)
- 無料[体験版](Xbox 360版)
- 400MSP[完全版](Xbox 360版)
- CEROレーティング:B(12才以上対象)
カプコンは、2013年6月11日で創業30周年を迎えることを記念し、8bit時代のアーケードタイトルを「カプコン アーケード キャビネット -レトロゲームコレクション-(以下:CACC)」としてオンライン配信する。今回は2月19日の配信開始にあわせて、プロデューサーの片岡謙治氏とプランナー石澤英敏氏のインタビュー記事をお届けする。
「CACC」は、8bit時代のアーケード用ゲームが合計15作品配信される。15作品をすべて購入すると、ボーナスとしてさらに2つのゲームがもらえる。
配信日には、PS3用「カプコン アーケード キャビネット本体」(本体)と、Xbox 360用「カプコン アーケード キャビネット体験版」(体験版)がそれぞれ無料配信される。これは、同時配信を含め、今後配信される各作品をプレイするために必要な、いわば筐体(あるいはランチャー)のようなもの。それぞれ、PS3用「本体」には「ブラックドラゴン」の完全版と、「1943」、「必殺無頼拳」を1ステージだけ遊べる体験版が、Xbox 360用「体験版」には「ブラックドラゴン」の1クレジットバージョンと、「1943」、「必殺無頼拳」を1ステージだけ遊べる体験版が収録されている。
配信日にはさらに、PS3版では「1987パック」が、Xbox 360版では「カプコン アーケード キャビネット完全版」がそれぞれ配信される。いずれも「1943」と「必殺無頼拳」が収録されているほか、次回配信予定の「1985-Iパック」に収録される「魔界村」、「ガンスモーク」、「セクションZ」の体験版がプレイできる。価格は、PS3版が500円、Xbox 360版が400MSP。
なお、Xbox 360用「カプコン アーケード キャビネット体験版」(2月20日配信)に収録されている「ブラックドラゴン」(1クレジットバージョン)を、全ステージ、全機能で遊べるようにするには 「カプコン アーケード キャビネット完全版」を購入する必要がある。
アーケード黎明期を肌で知る人たちがカプコン往年の名作を“徹底再現!”
――まず、片岡さん、石澤さんのプロフィールをそれぞれ教えていただけますか?
片岡氏:「CACC」のプロデューサーを担当させていただきました。最近のタイトルではXbox 360「重鉄騎」。アーケードタイトルは、ちょっと時間をさかのぼりますが「マーヴル VS.」シリーズ、「ダンジョン&ドラゴンズ」を担当してきました。
石澤氏:「CACC」はプランナー、企画として入らせていただきまし た。これまで携わったタイトルは対戦格闘ゲームが主で、「ストリートファイターZERO2」が最初期作品。そのまま「ストリートファイターIII 3rd」ではディレクター、「カプコン VS. SNK2」ではメイン企画……カプコンの2D対戦格闘には、なにかしら関わってきました。それ以外では「デビル メイ クライ4」といったアクションゲームも。最新では「アルティメット マーヴル VS. カプコン 3」ですね。 ちなみに、あだ名は「Neo_G」で通してます(笑)。
――「CACC」の企画の発端を教えていただけますか? これまでにも「カプコンジェネレーション」や「カプコン クラシックス コレクション」などをリリースされてきましたが、今改めてダウンロード配信タイトルとして15+ボーナス2タイトルをリリースすることになった理由を教えてください。
片岡氏:まず、今年がカプコン創業30周年を迎えるにあたり、もう1度カプコン初期タイトルを見直してみようということもありました。ユーザーさんからも「昔のゲームって、もう出さないんですか?」という声も多くいただいてましたが、その当時はなかなか実現できずじまいで……。「30周年だからこういった企画もできるよ」というタイミングの良さもありまして、では「ユーザーさんの声を実現するためにゲームを作ってみましょうか」というのが経緯としてあります。
もうひとつは現行ハードのスペックを使い、最大限……語弊はあるかもしれませんが“徹底再現”、限りなくオリジナルに近いものをご提供できないか、と。そういった意味でリリースさせていただくことになりました。
――パーフェクトというと“100パーセント”そのものですが、移植なので、限りなく100パーセントに近いというニュアンスでよろしいでしょうか?
片岡氏:「100 パーセントのものが欲しい」というのがコアユーザーさんだと思っておりますので、そこは絶対変えずに……諸事情で変えるべきところは変えなければいけないんですけど、それ以外は極力変えていません。あと、昔のタイトルはレベルデザインがもうひとつこなれていないというか、悪い言葉になると“インカムを稼ぐ”ために作ってあるとか、今風に解釈すると超絶難しくなっている。そこで「今風に考えたら」と付け足したのが「カジュアルモード」。本当にお手軽に遊べるよう、ゲームの本質部分をユーザーさんに提供したいと付け加えさせていただきました。
コアユーザーさん向けにはオリジナルに限りなく近いもの、でもそれでは遊べないというユーザーさんにカジュアルモード、ふたつの美味しさがある。自分のレベルにあわせて、それぞれ楽しんでいただけるのではないかな? と思っています。
――収録タイトルのセレクトに関してお伺いします。まず総数ですが、今回の15+ボーナス2タイトルに決めた理由はなんでしょうか? また、ラインナップの選定に関して、何か意図や基準のようなものがあるのでしたら、教えてください。
片岡氏:だいたいのタイトルは決めていたんですが、大人の事情で出せないものもありまして……15+ボーナス2タイトルとなりました。国内だけでなく海外の人気もふまえて選出しました。
――「CACC」の15+ボーナス2タイトルは、これまでリリースされたアーケード復刻版とラインナップがかぶっていますが、過去に移植されたことがない新規タイトルがないのは、大人の事情ってことですか?
片岡氏:そういったタイトルもありますが、やはりユーザーさんの声が高かったものが大半を占めている、という感じです。海外では移植されているけど、国内ではまだというものもあります。
――ギリギリまで「これを入れたい」と詰めたタイトルはありますか?
片岡氏:僕個人でいうと8bitゲームでは「ストリートファイター」とか「虎への道」とか。まだまだカプコンとしての名作があるんですよ。版権モノもいくつか。ただ今回、目標の中で“ユーザーさんが思い入れのあるゲームを選びたかった”というのがあります。あの当時、現役の方は40代中旬から後半、僕もその時代です。そうなると、当時携わった人が大勢いるゲームとなると、この15+ボーナス2タイトルが有力かな。僕の好きなゲームは、泣く泣く削られていったというか……大人の事情もありますね。
――そこはプロデューサー権限を振りかざすことなく、ぐっとこらえて?
片岡氏:こらえましたねぇ! 自分のなかでは「虎への道」はぜひ入れたかったですよね! ただ、ちょっと名前を聞いてもみんなが「それ知ってる!」があったほうがいいと思いましたので、なるべく知名度の高いものが最優先としてあげられています。
――年代ごとに2週間のインターバルをおいて各パックが配信されますが、1987から降順でもなく、最初期から昇順というわけでもなく……配信ラインナップのセレクション、タイミングにはどういった意図があるのでしょうか?
片岡氏:その並べ方というか、タイトルセレクト、配信期間は凄く悩みましたよ。当初はもうドン! とまとめて出しちゃったほうがいいのかな? と思った時期もありましたが、“キャビネット”という大枠で考えると、こちらの伝えたいことが維持しやすいかなと思いました。あとは価格ですよね。全部まとめると4,000円程の世界になってしまう。トータル的にはちょっと高い額でも、ユーザーさんに手軽に買っていただける価格にしたいな、と思っていましたので、小分けにして出したほうがいいのかなと。いろいろな意味を考えたうえ、このような形になりました。
期間は当初の考えは“毎月”だったんですけど、それだと「次が欲しい」となったとき1カ月ある。それに耐えられるのか? というと言葉が大げさですけど。やっぱりすぐ欲しいゲームって、あるじゃないですか。コンプリートも、短期で集められることでユーザーの方々に満足していただけるのかな? といろいろなことを考えると「じゃぁ、隔週にしましょうか!」と。1週間だと早すぎるかな? というのがあったので、隔週に落ち着きました。
――最初に15タイトルすべてわかっているので、順番に1カ月後だとだいぶ先という印象になってしまいそうです。
片岡氏:今回、ゲームを購入していただくと「次回配信の体験版」がついてきます。1ステージもしくは一定時間だけ遊べるようにしたのですが、それが「えっ、次は1カ月後!?」となると、ちょっと長いかなと思いました。
――体験版の施策には独特なものを感じます。通常は体験版そのものを別途配信しますが、「CACC」は購入特典として次回配信の体験版が付属する。こうした仕様は当初から予定されていたのでしょうか?
片岡氏:最初は購入時にすべての体験版をつけようかな、と太っ腹な事を思っていたのですが、さすがに反対されました(笑)。購入された方に完全版を遊んでいただいて終わるのではなく、翌々週配信されるタイトルの体験版を遊んでいただく“予告編”みたいな感じでいけたらなぁ、と考えました。
――今回のタイトル群を「キャビネット」というくくりにした理由を教えていただけますか?
片岡氏:当社や他 メーカーさんでいう“レトロゲーム”はよく耳にしますが、それと同じにしても面白くないな、というのがまずひとつ。あとは、古いゲームだけど今の時代に合っているものをどうしても入れたかった。事実古いゲームなんですけど、今だからできる! っていう意味をなにかしら込めたくて探っていきました。
でもいいネーミングが浮かばず、海外販社にもいろいろ聞いて考えた末、いくつかあった候補の中から「キャビネット」が出てきた。ただ、イントネーション、言葉のキレはいいんですけど、日本人にはキャビネットがピンとこない。「棚」みたいな感じでイメージするじゃないですか? そう返したとき「向こう(海外)ではアップライト筐体のことを指しているんだよ」と。それなら意味が通じるな、と自分のなかで決定したんですけど、営業サイドからは「もう1つピンとこないし(日本人的に)イメージが違う」と言われた。
「スッキリ感と、今までにないネーミングを考えるとコレがいいんです!」と押し切りましたが、「よくわからない!」と言われた点に配慮して、日本だけ“レトロゲームコレクション”というサブタイトルがついています。今回はアーケードキャビネットというガワの部分を無償提供するんですが、これだけでほとんどの機能が使えるようになっています。ただ、それだけだと何も遊べないので、今回「ブラックドラゴン」をフルゲームとしてつけています。一部機能を使用するには購入する必要がありますが、ほとんど遊べます。
――キャビネット同梱タイトルに「ブラックドラゴン」を選ばれた理由はなんでしょうか? 他のタイトルが良かったなどというお話はありませんでしたか?
片岡氏:候補には「魔界村」が挙がっていました。ただ「魔界村」は知名度がありすぎるので、それに近いタイトルはないかな? というのがあったので。結びつけていいのかどうかわかりませんが、弊社に「モンスターハンター」シリーズがあります。ドラゴンが出てくるゲームの原点になるんじゃないのかな? ということで「ブラックドラゴン」は候補として挙がっていました。「カプコンが出したゲームでドラゴンが出演するのってなんだろう? これじゃないの!?」っていう。あと「ブラックドラゴン」は「魔界村」に影響されている部分もあり、そういった意味でも遊びやすいゲームですし。あとは日本人も好きな中世ファンタジーの世界観。さまざまな意見がぴったり合ったので、「じゃぁ『ブラックドラゴン』でいってみよう!」となったわけです。
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