インタビュー

PS3/Xbox 360「カプコン アーケード キャビネット」

常に先鋭的だったカプコンACタイトル ~往年のゲーマーも新規層もぜひ!~

常に先鋭的だったカプコンACタイトル ~往年のゲーマーも新規層もぜひ!~

「ブラックドラゴン」

――ふと思ったんですけど、「ブラックドラゴン」って当時“ファンタジー”世界観のゲームってほとんどなかったんですよね。「1942」は、ミリタリー系のシューティングやりたいけどないよね、っていうときにポーン! と出た。「サイドアーム」は、まさに“こういうロボットものが欲しい”ときっていう、その時々でちゃんと欲しいものを出してくれていた、という気がします。

片岡氏:そう考えると本当に、この15タイトルって上位にチョイスされる特別なものなんだと思います。

――「ブラックドラゴン」は、日本でもハイファンタジーの関連書籍が増えてきた時代でしたから、とてもインパクトがありました。

片岡氏:(ゲーム内でアイテムを売り買いする)ショップという概念が出たのも「ブラックドラゴン」が最初ではないでしょうか。「1943」のバイタリティ制もそう。やはりチャレンジしていたんだなぁと思います。

――「CACC」がセンサーにひっかかるユーザーさんは「カプコンジェネレーション」など温故知新アイテムを大切に所有されている方々が少なくないような気がします。そうした方々に対して「CACC」のアピールポイントはどのあたりになるんでしょうか?

片岡氏:先 ほど申し上げましたとおり、1番良いものが出ます! というところ。基板というオリジナルには勝てませんが、基板を持っていてもインストなどがない、とかありますよね。「CACC」はそういうものがすべて揃っている“夢の箱”なので、ぜひ集めていただけると良いんじゃないかと思います。海外版も入っています。

 もうひとつの売りが、今までは小さい画面、グラフィックスのクオリティの部分。解像度がHD化されているわけではありませんが、巨大モニターでプレイしても綺麗なんですよ。開発室では70インチでプレイしていますが、本当に綺麗です。

――あの時代の夢、昔できなかったことがやれるという。

片岡氏:大画面でひたってやれるというのは(当時)なかったと思うので、ひとつ売りとしてユーザーさんにお伝えしたいなと! 大きいモニターだと少し引いてプレイするので、ドットが綺麗に見えるんですよ。もちろん今時のものとは違いますが、昔、手作業で導き出したグラフィックスの美しさに感動できると思います。

――「ブラックドラゴン」などは、今見ても素直に綺麗って思えますよね。

片岡氏:大きなモニターでプレイすると、シューティングの敵弾が早く感じられてビビるときもありますけどね(笑)。あと、音も本当によくなっていますので、セッティングしていただければいいかなと思います。

――ネットワークプレイに関してはいかがでしょうか?

片岡氏:旧作のクラシックゲームなどのアドホックなどを除けば、今回のプラットフォームでは初だと思います。ちょっと友達が遠くに行っちゃった、という人でも楽しんでいただけますし。

――40代だと、当時の友人知人はあちこちに散らばっていますからね。

片岡氏:YoutubeやFacebookにも対応していますので、ネットワーク上でやりとりしていただければと思います。あとはランキングですよね。こっちはガチユーザー向けですけど、今回は累計ひとつ、海外、国内、難易度別で6部門。各タイトルごとに競い合えますので、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

石澤氏:登録は1万人まで対応していて、ベスト10まではリプレイが閲覧できます。

――おお、スパれる!(上手なプレイをスパイする、の意。最近はあまり使われない)。

石澤氏:公然スパられ行為(笑)。逆にいえば、ハイスコアラーにとって名誉な行為だと思いますし。なにより嘘をつけない。こういうことをやって、こういう点を取ったんだっていう。

――今でもオールドゲームのスコアをコツコツ伸ばしているスコアラーさんたちはいますからね。

片岡氏:聞きますねぇ。いろいろゲームセンターを回ったんですけど「今盛り上がってるゲームはこれですよ」とか教えてもらいました。本格的な人は、自分のプレイを盗まれないよう見せないとかもあるんですけど。ぜひチャレンジして欲しいなと思います。

――当時も心を折られたのに、今またこの時代に折られるのか……なんて気持ちもちょっとあります。

片岡氏:僕も同じですよ! それが悔しくて……アーケードスティックでやってもらったほうがいい。

――それは絶対に思います! スティックがないと絶対に嫌! 「ガンスモーク」はパッド上で指3本並べて押すんですけど、あれがやりづらい。連射もついてますけど、判定が出る瞬間にあわせて射撃するから連射には頼りませんし。あっ……それでいま思い出したんですけど「サイドアーム」の2人同時プレイって合体後は片方ヒマになりませんか?

石澤氏:それは……そういう仕様です(一同笑)。

――ギャラリーデータはマニア垂涎のデータが多数含まれていますが「カプコン アーケード キャビネット」で新規収録されたものはありますか?

片岡氏:新規作成はありません。新しく作ったら嘘になっちゃいますから(笑)。「これを出したかったけど出なかった」など当時の没ネタもあったので、そんなところも入れたりとか。あとはゲームに何か反映するものでフォローしたりとか。タイトルごとに数量が違っちゃうんですけど、その当時の本物のネタを入れてあります。これはバラしていいのかな? 漫画も入ってるよね?

石澤氏:本当はアーケード限定だけど、コンシューマ発売時についていたオマケの漫画が面白かったので入れてあります。

片岡氏:設定資料に落書きまで入ってる。あれ(本来は)いらないんですけど、「こっちのほうが本物っぽいぞ?」ってくだらない落書きまで入れてあります(笑)。今まで出したものもありますが、拡大もできるので、フルでガッツリ見ていただければうれしいですね。

――資料が見られるギャラリーはアンロックしていくんですよね?

片岡氏:がんばったら見られます! という作りですけど、クリアのほかにもプレイ時間でアンロックされるなど条件によって異なります。

――こうした温故知新、復刻タイトルはリリースする側の“意志”や“情熱”が大切だと思います。受け止める側はさまざまでしょうが、送り手側としては本作のどこにそれを込めておられますか? 先ほどからのお話で、すでに半分以上お答えが出ている気もしますが……。

片岡氏:同じ答えになってしまうかもしれませんが、“徹底再現”をコンセプトにしていますので、ガチユーザーさんにはガチでぶちあたってもらいたいですね。ライトユーザーさんには、先ほど申し上げた「カジュアルモード」で「昔のゲームでも、こんなに楽しいんだよ!」と伝えたいので、是非遊んでいただければ……。また、アーケードゲームは短い時間でも楽しめるので、好きな時にプレイしていただければと思います。

 「昔ゲーマーだったんだよ」という人にも戻ってきていただきたいですね。まずは「カジュアルモード」や「トレーニングモード」も入っていますのでウォーミングアップに。「トレーニングモード」は、特定のステージを何度でもプレイできます。1度クリアしたステージはセーブされるので、最後のボスで行き詰っていたら最後のボスをずっとプレイできますので、とことんやっていただければと思います。

 まずは“カプコンの原点”である面白さ、ここまで追求していたんだ、というのを感じ取ってもらいたく……今のファンの方々も楽しみが増えるのではないかなと思います。

石澤氏:僕 は先ほども申し上げた通り、プロジェクトの途中から入ったので、ある程度のまとめから見させていただきましたが、「カジュアルモード」を見て「これは凄いな!」と食いつきました。“徹底再現”って、今の時代だと当たり前って言われちゃうから、プラスアルファは何か=カジュアルモードという発想は企画マンとして燃えるものがありました。

 「カジュアルモード」のことばかり言ってますけど、他にもリプレイ機能などいろいろと充実していますし、「ここまでやらなきゃいけないんじゃないの」という事柄をすべて詰め込めたと思います。細かいところにも手が届いていると思いますので、自分の好きなように遊んでいただければと思います。

片岡氏:モニターも、縦横どちらにしても遊んでいただけますし、昔風にもできるし、拡大から何でもできます。

石澤氏:「トレーニングモード」を補足すると、これは“俺はいつもここで死んでいた”を克服するためのもの。こういうこだわりが一杯あります。移植したら終わりではなく「俺だったらこういうふうに作る」というのをマジメにやって僕らは苦労した、という(笑)。そういう情念の部分も見てもらえるとうれしいな、と思います。

――プレイして消化できる、っていうのは凄く大きいと思います。昔、アーケードゲームの記事を作成していたときを考えると、トレーニングモードって“夢みたいなモード”なんですよ。ステージセレクトみたいな機能って、頼んで頼み込んでありえるのかどうかってくらい。それがここにある。

片岡氏:今は情報交換も早いですし、ぜひぜひやってもらえたら嬉しいなと思います。あとは別企画で、もっと面白いことを考えています。「CACC」がどうのこうのって話ではないんですけど……アーケードゲームの魅力のひとつに「自分がゲームの天才だって思える瞬間がある」ことじゃないですか。いつの間にかギャラリーが増えていて「あれ、俺ゲーム上手いんじゃない?」という錯覚をおこすというか、神の領域に近づいたというか。

 コンシューマとかネットゲームではありえないですよね。見知らぬ人とは遊べるけど、それ以上の何かがない。アーケードゲームは、そんな寂しいものではない……それを具現化できないか考えています。なにかのイベントでしたいなぁ、と思っています。

――今回の企画がシリーズとして継続していく可能性はありますか?

片岡氏:これは今は言葉にできないんですけど……ユーザーさんの期待値が高かったら「また考えてみよう」という感じです。

――本日はお忙しいところを、本当にありがとうございました。

(豊臣和孝)