インタビュー

「The Good Life」クリエイターSWERY氏特別インタビュー

目指しているのは永久に遊べる“1人MMO”

人間のみならず猫のカスタマイズも可能

――すでにスクリプトは完成しているのですか?

SWERY氏:ストーリー自体はまだシノプシス段階です。書き始めてしまうと、全体的なものがどんどん固まってきてしまって、物量とかいろんなものが、今はクラウドファンディングの最中ですから、キャラクター数が変わったりとか、もしくは「住人になれる」というオプションもあって350万円くらいするんですが、1人だけそれを買った方がいらっしゃるんですよ。そういう方が今後現われた時に、その人との打ち合わせも発生しますから、色々揺らぎを持たせておかないといけないので。

――メインストーリーには、主人公以外に何人くらいがメインキャラクターとして登場するんですか?

SWERY氏:住人はいまクラウドファンディング上に乗っているので言うと19人かな。Figのページにいるキャラクターの人数分というのは、ストーリー上使おうかなと思って書いているキャラですね。

――20人前後ですべてのストーリーが紡がれるわけですか?

SWERY氏:はい。「レッドシーズプロファイル」の時にも講演で話したんですが、ストーリーがあってそこにキャラクターを当てはめてというやり方ではないんですよ。僕の場合。まずは舞台を作って、そのステージに住んでいる人とか世界観を作って、その中に事件を落とすという感じですかね。例えば「ダウントンアビー」もそうですけど、ああいうドラマの作り方に似ているというか、「ダウントンアビー」の世界の中に戦争が入ったらどうなるのとか。殺人事件が起こったらどうなるというところで動くじゃないですか。そういう造りにしたいんです。

――「THE GOOD LIFE」では、イギリスの農村に、ちょっと性格の悪いニューヨーカーの女の子を落としたらどうなるのか、そこで殺人が起こったらどうなるのかというそういうイメージなんですね。

SWERY氏:その作り方で全部作ってます。

――ジャンルとしてはアクションアドベンチャーであり、RPGでもあるということですが、RPG要素についてもう少し詳しく教えていただけますか。

SWERY氏:経験値の要素はないんですが、お金を稼ぐことによって、そのお金を借金返済以外にも使えます。彼女はカメラマンですから、カメラの性能を向上させることができます。最初はしょぼいカメラを使っているので、写真を撮っても手ぶれしたり、ピンボケしたりします。それで報酬金額が下がっちゃうんですよ。でも例えば性能が良くなって、オートフォーカスが付くとか、スピードシャッターがつくとかでどんどん良くしていくことで成長要素があるし、プレーヤーの服装で特殊機能が付くもの。良い靴を穿けば、走ってもスタミナが減りにくいとか。そういうものがあって、いわゆるお金で装備を買うような成長RPG。プレーヤーのボディは成長しないですが、装備品で成長するRPGになります。

――主人公が所持できるアイテムには、武器もあるんですか?

SWERY氏:武器はないですね。カメラマンなので、カメラとメモ帳だけです。そのメモで話をメモします。

――では、戦うことはないんですね。

SWERY氏:ないです。まあミニゲームの中で、羊に襲われて、羊を蹴り倒すとかはあるかもしれないですが、そういう発散ですね。

――羊と言えば、トレーラーで乗ってましたね。

SWERY氏:羊ライダーね。あれはやっぱりオープンワールドでは乗り物が必要でしょうということで用意したものです。このゲームに一番ふさわしい乗り物は何でしょうか、車か、自転車、色々出た中でそれは羊でしょうと。

――実際に羊に乗って移動手段として使えるわけですか?

SWERY氏:そうです。移動手段です。だからどこかで羊をがっと捕まえて乗ることもできるでしょうし、自宅に羊を飼えるので、飼っている羊は結構なついてくるので自由に乗れます。

――いまオープンワールドという言葉が出ましたけど、それなりに世界は広い?

SWERY氏:まあイギリスの田舎町、プラス周辺施設くらいで考えていますので、オープンワールドというと語弊があるのかな。箱庭というのが正しいと思います。

――エリア切替とかではなく、すべて1枚のフィールドで?

SWERY氏:それが理想です。今後中身の拡充次第では、もしかしたら鉱山はロードしますとかあるかもしれないですが、でもそのレベルですね。

――そういった施設は鉱山以外に何があるんですか?

SWERY氏:現状発表できるものは、牧場と鉱山、茶畑。この3つは発表されています。それぞれ借地で借りることもできますし、お金がいっぱい入ったら購入することもできます。

――家は持てるんですか?

SWERY氏:はい。ナオミを町に送り込んだクライアントに言われた家に住む感じですね。

――屋根裏のようなちょっと貧相なところから徐々にステップアップしていくイメージですか?

SWERY氏:ぼろ家ですが、一軒家で、その中身をちょっと着飾れるくらいの拡充要素は考えています。絵を飾ったりとか。自由にレイアウト変更というのはちょっとしんどいかもしれないですが、飾ってあったボロイ絵がだんだん綺麗な絵に変わるとか、ボロいソファーがきれいなソファーに変わるくらいのことはやりたいですね。

――お金が貯まったら豪邸を買えたりとか?

SWERY氏:そこはまだ言及できないですね。やりたいなとは思っていますが、それもクラウドファンディングのスケーラブルな部分で。

――稼いだお金で使えるものは、食べ物と飲み物以外に何があるんですか?

SWERY氏:プレーヤーの衣装、それからカメラのカスタマイズ、それから先ほど言った施設を借りたりすること、家の中を着飾るもの、あとは羊を飼うというのもありますね。

――それは乗り物として?

SWERY氏:乗り物と、後は定期的な収入ですね。羊毛とお乳が定期的に手に入ります。

――なんだかイギリス農園MMOみたいな感じですね。

SWERY氏:そうですね。1人MMO。結構大変なゲームだと思うんですよ。それをあの開発予算だったら、本当に格安だと思うのですが、今インタビューで1時間お話しして、やっとなんとなく内容を伝えられるかというところじゃないですか。まだ、ゲームファンに伝えきれてないと思うんですよ。

――そうですね。今もこう、理解するのに必死ですもの。

SWERY氏:構想が長すぎたんですよね。2007年くらいのプロデューサーが田舎町に飛んで行って帰ってこれなくなった頃からの10年くらいかけての構想ですから。

――2007年からイギリスを舞台にしたミステリのRPGを作りたいと。

SWERY氏:そうです。間に「D4」が挟まってますからね。僕の中ではいろいろな足場が固まっているけれど、それって一緒に入れて成り立つのという質問がいろんな方からくるんですよ。で、それを1つ1つ説明しなければあかんと。でも全員に会うわけにはいかないので、今日みたいな機会を頂いて、ちょっとでも理解していただきたいというのが本当のところです。

――このゲームには借金だったり、猫だったり、羊だったり、殺人事件だったり、実に様々な要素がありますが、実際にゲームをクリアしてみると、それが1つにつながってくるんですか?

SWERY氏:もちろんそのつもりです。そういう意味では。まあ羊というのは、キャッチーだとは思いますが、どこまで重い意味を持つかわからないです。でも猫、犬、殺人事件、借金、それから主人公の性格は絶対に全部つながってくると思います。

――ゲームファンの1人としては、まだ開発が確定したわけではないというところが心配ですね。SWERYさんの中で勝算はどのくらいあるんですか?

SWERY氏:今はもう、ネバーギブアップと考えています。

――では今回のクラウドファンディングが上手くいかなくても絶対にあきらめないよと。

SWERY氏:ここまでしゃべっておいて、中村さんから反応を頂いて、「あれどうなったんですか?」と聞かれて、「辞めちゃいました」では。

――とてもがっかりしますね(笑)。

SWERY氏:そうですよね。ですので頑張ります。

――でもグランディングさんはじめ、多くのクリエイターが関わっているんだったら、是が非でもというところはありますね。

SWERY氏:グランディングさんも今までちょっと半分遠慮もあって、パブとかも遠慮していたところがあると思うんですが、いやもうそんなの気にしなくてもいいですよという話をしたので、これからはどんどん出ていって、一緒にやって行けたらと思っています。

――二木さんも、色んな代表作をお持ちの、日本を代表するクリエイターですから、ある意味そのコラボって面白いですよね。

SWERY氏:そうなんですよ。海外で「パンツァードラグーン」×「レッドシーズプロファイル」とか書かれてますけど、そういう風に思っていただければ、僕と二木さんも一緒にやろうと決めた甲斐があります。

――今回SWERYさんへのインタビューですが、二木さんの味ってどのあたりに出ていますか?

SWERY氏:今回ものを決めるときに、僕がこうしたいと言っても、やっぱり二木さんなりの論法があって、1回では絶対にうんと言ってくれないですよ。咀嚼して、今みたいに質問攻めにして、僕が答えられなかったら「考えましょか」という感じで、かなり打ち合わせがディープになるというか、なので今答えられているのもそのおかげもあって、二木さんってここまで考えてゲーム作ってるんや、すごいなというのを感じますね。

――こうだよ、わかるだろみたいなそういうアバウトな発注の仕方を許さない?

SWERY氏:そうですね。で、自分自身が納得されないと、「SWERYさんと一緒に作る意味がないじゃないといっていただけるので、すごい気持ちいいですよね。後はやっぱり今もグランディングさんって10年でいろんなタイトルをやられてて、その中で今回のゲーム性に見合ったもの。スマホもやっているし、「街コロ」っていうボードゲームもやっているし、ボードゲームなんて一生遊べるじゃないですか。そういうロジカルな思考部分がすごく得意なチームがいらっしゃるんですよ。そこをハンドリングしていただいていて、そこからアイデアが上がってきてという、本当に今はいい関係なんです。

――最後になりますが、日本のゲームファンに向けて、SWERYさんがまたゲームを作り始めたということでメッセージをお願いします。

SWERY氏:今回、「THE GOOD LIFE」プロジェクトを、Figというクラウドファンディングで始めました。どうなってるのかわからないという人も沢山いらっしゃると思いますが、僕もわからないなりに一生懸命模索しながら進めていっていますので、必ず皆さんの手に面白いものを届けようという結果、そのプロセスとしてこういうことをやっているのでぜひ応援してください。White Owlsはこれだけじゃなくて、これからもまた変なゲームが出てくるかもしれないので、そういうゲーム会社が日本で生き残っていけるように、そのためには皆さんの応援が必ず必要ですので、よろしくお願いします。

――頑張って下さい。ありがとうございました。