インタビュー
「SCALEBOUND」ディレクター神谷英樹氏インタビュー
神谷氏「異種族間の絆を描きたい」 CO-OPプレイには実は大きな謎が!?
2016年6月16日 14:57
ついに2017年に発売日が決定したXbox One/Windows 10向けアクションアドベンチャー「スケイルバウンド(SCALEBOUND)」。Xbox E3 Briefingでは、画面に収まり切らないほど巨大なモンスターとのバトルシーンを披露し、ディレクター神谷英樹氏のビジョンがついに現実のものとなった。
本稿では、「スケイルバウンド」の開発総指揮を執るプラチナゲームズ ゲームデザイナーの神谷英樹氏、クリエイティブプロデューサーのケラムス ジョーン ピェール氏とのインタビューの模様をお届けしたい。
4人CO-OPによる対巨獣戦。しかし、CO-OPには大きな謎が?
――今回Xbox Media Briefingで「SCALEBOUND」実機デモを実施するのはサプライズでしたが、デモを終えられてどのような手応え、感想を持ちましたか。
神谷氏:むしろメディアの皆さんがどのような感想を持ったのか聞いてみたいですね。
――ここ数年は、海外のデベロッパーの作品がE3を牽引するような状況が続いていた中で、「SCALEBOUND」は日本産のアクションゲームとしてしっかり存在感を示したタイトルだったと思いますね。
神谷氏:そう言っていただけると嬉しいですね。ああいうフォトリアルな表現を使ったタイトルはワールドワイドでは主流ですが、日本ではまだまだ開発のハードルが高くて、プラチナとしても初体験というところがあるので、大きな挑戦だなと思いながらやっているんですけど、なんとか踏ん張って頑張っているところを見せられたかなというところですね。
――今回のデモでは、何と形容するのが正しいのか、クモのような超巨大モンスターとバトルを繰り広げましたが、あれは一体ナニモノなんですか?
神谷氏:クモとかカニとか色々言われてますが(笑)、社内ではコードネームで「スコーピオン」と言ってますが、あれはボス戦の部分だけ切り取ったもので、基本的には広いフィールドがあって、フィールドを冒険しながらクエストをクリアし、そうするとダンジョンがあって、ダンジョンに入っていくと、より強力な敵がいて、よりチャレンジングなステージになっていて、できればそこで他のユーザーとマッチングして協力しながら進めると、戦いを有利に進めることができて、最後にああいった巨大なボスが登場するという流れになります。
――今回のデモでは複数人で協力プレイを行なっていましたが、あのバトルは1人でAI操作の仲間と共に戦うということもできるのですか?
神谷氏:おっ……、それはまた……、新しい質問ですね(笑)。まず、色んなプレイ環境のユーザーがいると思うので、1人プレイでもエンディングまで遊べるように調整したいと考えていますし、マルチでパーティを組んだほうがより楽しめるという調整にしたいなとは思っています。どっちのスタイルも許容しようかなと思っています。
ただ、1人で遊ぶと、スケールダウンしてつまらないとなってはいけないので、マルチで遊んでいるときのような体験を擬似的に味わえるようなゲームデザインを試行錯誤しているところです。
――それでは、共に戦うAIを頑張って開発しているところですか?
神谷氏:ドラゴンのAIは1番手間がかかるところですね。
ケラムス ジョーン ピェール氏:今回の物語はドルーという名の青年と、トゥバンという名のドラゴンをメインにしていて、いわゆるスクワッドの4人による協力プレイは、それぞれが別のキャラクターなので、そのキャラクターをAIで動かすということはやっていません。ただ、1人で遊んでいるのにどのようにマルチプレイの感覚を味わえるようにするかという仕組みについてはまだお話しできませんが、それはあります。
――それはAI処理ではなく、別の方法で実現するということですか?
ケラムス氏:そうですね。今回の映像の最後の場面にヒントが隠されています。
神谷氏:簡単に説明すると、ドルーという青年とトゥバンというドラゴン、それぞれ個性の強いキャラクターふたりが出会って、とある目的のために共に行動しなければならなくなって、いがみ合いながらも異種間での絆を繋がりを描いていきたいと思っているのです。
だからキャラクターメイキングで作るようなキャラクターではなく、ドルーというキャラクターを作ったのですが、そうすると4人でマッチングしたときに、ドルーが4人画面に出てくることになるわけです。それを「ビデオゲームなんだから同じ画面に同じキャラクター4人が出ますってことでヨロシク」という風に投げっぱなしにはしたくなかったので、なぜあの世界に、ドルーという似通ったキャラクターがいて、似通ったドラゴンを従えて共に戦っているかということも、世界観として説明できるようにしたいと思っています。
今回のデモで、最後に4人のドルーが一体となって敵にトドメを刺しに行きますが、あれが世界観のヒントで、あとは色々妄想しながら準備しておいて欲しいなと思っています。今後ストーリーについても順次出していきたいなと考えています。
――映像の最後に発売時期が明らかになりました。発売は2017年ということですが、現在の開発の進捗状況はいかがですか?
ケラムス氏:とんでもなくデカいゲームなんですが、パーセンテージでスパッと出せるような作り方をしていないんですよ。大きすぎて進捗が感じにくいというところはありますよね。色んな部分で少しずつ完成度が上がってきていますけど、E3のようなショウはチームが盛り上がるんですよ。必ずイベントまでに完成させなければいけないからです。
開発のフェイズも色々ありますが、まず、今までのアクションゲームのように、人間サイズの主人公が敵と戦う部分、これはかなり早い段階から完成しています。次にドラゴンが戦う場合のものは去年のgamescomでお見せしました。
gamescomはシングルプレイとして見せていましたが、実はマルチプレイで動いていました。マルチプレイを導入するということは最初の企画から決まっていました。今回gamescomが終わって次のフェイズは何かというとドラゴン以上のものが出てきたらどうやって戦って、みんなで協力して敵を倒すかです。その結果が今回お見せした映像です。現在は最後のフェイズとして、人間サイズの戦闘、ドラゴンサイズの戦闘、ドラゴン以上のサイズの戦闘も可能になったし、完成させようぜというターンに入っています。
人型サイズから、ドラゴン、超巨大ボスまでスケーラビリティの高いバトルについて
――「スケイルバウンド」のバトルは自身が竜化したり、ドラゴンに乗ったり、ドラゴンに関わる要素が多いですが、その一方で今回のデモでは、弓矢を撃って地味に攻撃していましたよね。あれは何を意味しているんでしょうか?
神谷氏:あの映像の中で弓は有効に効いていないんですけど、ドルーは、これまで僕が作ってきたアクションゲームの主人公、僕のこれまでのキャリアで言ったらダンテ、ベヨネッタ、ジョー、101のヒーローキャラクターみたいに人知を超えた力を持ったキャラクターではなくて、人間くさい身近にいそうな青年という風に描いています。それは肉体的にも精神的にも弱くて、だから彼はヒーローではなくて、目の前に敵がいたら逃げたければ逃げろというキャラクターです。
彼の能力には限界があって、弓矢は自分と同じような敵の兵士とか、前回お見せしたオオカマキリ程度の敵だったら十分に渡り合えるんですけど、彼の能力や弓矢程度ではとうてい太刀打ちできないというところを表現することで、「じゃあドラゴンと協力して戦おう」というゲーム性が生まれてくるんじゃないかなと思っています。
ドルー1人で戦えるとじゃあドラゴンいらないよねということになるので、基本的にそういう戦い方はしないようになっています。ただ、細かい話をすると、今回使った弓は1番弱い弓なので、お金を貯めて良い弓を買えば、飛距離が伸びたり、威力の高い矢を使えばそれなりにダメージを与えることができるんですけど、それはそういうものを手に入れるために時間とお金を掛けた結果なので、テクニックでカバーできない部分は、時間を掛けてお金を貯めて自身をパワーアップさせて、言わば金にものを言わせる形でテクニックが伴わないユーザーでもクリアできるようなそういう懐の深さは備えています。
――確かにバトルは非常にスケーラビリティが高くて、色々な戦い方ができるようになっていますね。極めれば弓矢だけ、ドルーの力だけでゲームをクリアすることも可能なんですか?
神谷氏:ドルーが使える武器は弓矢だけじゃなくて、まだお見せしていませんが、近接打撃用の武器もありますし、メインの武器に加えてサブの武器もあります。ちなみに弓矢はサブの武器です。矢を消費する武器なので宝箱から拾うなり、お金を貯めて買う必要があります。サブにはほかに地雷などもあります。地面に置いたり、敵に設置してダメージを与えるというもので、威力に応じたコストが掛かります。
ケラムス氏:「スケイルバウンド」が開発初期から重視していることは、これは矛盾しているかもしれませんが、ひとりでプレイできるゲームですけど、ひとりでプレイできないゲームなんです。どういう意味かというと、少なくとも1人でプレイする場合は、ドラゴンと協力しなければいけない。敵兵士と1on1なら1人でも勝てる可能性がありますが、集団でこられたら勝つことはまず無理です。カマキリとか神獣が出てきてドルーが勝つわけがないんですよ。映像を見ればわかると思いますが、ドルーが1人でやっていることはだいたいうまくいっていません。でも、ドラゴンと協力することで倒すことが可能になるんですね。
ドラゴンと協力していない場合は、必ず他のプレーヤーと協力しています。今回の映像は2つのパートに分けているんですけど、1つ目のパートは、ドルーがドラゴンの背中に乗って弱点を攻撃するんですが、この間、別のプレーヤーが別の弱点の所に行っているわけです。そしてお互いに協力しないと倒せないよということは大事にしています。
――神谷さんのゲームはアクション性の高さがポイントですが、「スケイルバウンド」のアクション要素というのは、今回のデモで一通り揃ったという感じなのでしょうか?
神谷氏:やっぱりアピールしやすいので、戦闘の部分にフォーカスしてお伝えしているんですけど、アクションゲームではないので戦闘だけがすべてではないんですよね。たとえば、湯水のように矢を撃つし、そこに持っていくまでには様々な下積みがあって、よく見るとわかるんですが、それぞれのドルーが装備している盾も違うんですよね。より防御力の高い盾を装備したり、ドラゴンもよく見ていただくとわかりますが、鎧を装備しているんですね。そこにも当然コストを使っていて、それらを蓄積するスパン全部がゲームプレイなのですが、そこの部分を1時間映像作ったので見て下さい、というわけにもいかないので(笑)、アピールしやすい場面に絞ってお見せする形になるんですけど、本当は長いスパンでの結果が、あのバトルに集約されているんですね。その準備も含めた全体をゲームとして見て貰いたいなと思いますね。もちろん、今後、フィールドでのバトルなどもお見せする機会があると思います。
――「スケイルバウンド」は発表からかなり長い時間が経って神谷さんとの付き合いも長くなっていますが、神谷さんがこの作品を通じて表現したいこととは何ですか?
神谷氏:これは立ち上げた当初から考えていたことで、巨獣同士のバトルということに尽きます。どんどんスケールアップしていきます。前回がドラゴンで、今回がボスバトルで、巨大なドラゴンですら小さく見える。だからこそ協力プレイで立ち向かって下さいという、人間サイズのバトルでは出ない迫力、そこを1番大事にしていますね。
――ちなみにその手に持っているものはなんですか?
神谷氏:これはドルーが付けているヘッドフォンです。
――ゲームの中だけでなく、実在するものなんですね。
ケラムス氏:はい、いま発売に向けて検討しているところです。これは実はPDPさんがプロトタイプとして作ってくれたもので展示もしています。製品化もしたいと考えていますが、どういう形になるのかはまだわかりません。
――あれはなんだろうとは思いましたが、まさかファンタジー世界に現代のヘッドフォンを付けているとは思いませんでした。
神谷氏:そこが今回狙っているアクセントのひとつですね。純粋なファンタジーゲームにはしたくなかったので、ドルーは現代の世界から、ドラゴンの世界に迷い込んでしまったということで、こういったアイテムを身につけることで、ユーザーに感情移入しやすいようにしています。ドルーは現代人なんです。
――なるほど、ありがとうございました。