「電遊道」~Way of the Gamer~ ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ
ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第34幕】
BORN TO BE GAMER~日本のゲームをこよなく愛するイタリア人ゲーマーを紹介!~
日本から10,000キロ離れたイタリアには、思ってもみなかった和ゲー好きなイタリア人が存在していた!毎回、彼らの自宅に訪問し、宝物を見せてもらいます!そして、インタビューでゲーマーとしての人物像を掘り下げます。ゲームの持つ本来の魅力を再発見しましょう!
このコーナーではこれまで、日本のゲームを愛する様々なイタリア人ゲーマーを紹介してきた。1つのシリーズにこだわるゲーマーがいれば、豪華な限定版を収集するのが好きなコレクターにも会ってきた。そしてもっと素朴に、ゲームというエンターテイメントをじっくり楽しんでいる人物もいる。
今回のゲーマー、ヴィンチェンツォさんは、ゲームコレクターではない。思い出の作品だけを棚に残していく、ある意味ゲームという体験を最も大切にしているゲーマーだと言える。
彼のパッションは任天堂のゲームだ。ユニークなキャラクターとゲーム性を確立してきた任天堂こそが、彼の人物像を描くためのキーワードになっている。早速、彼の家に訪問し、思い出の作品を見せてもらった。そして、任天堂への愛情に満ちたインタビューをお届けしたい。
ゲーム愛を計るためのインタビュー開始!
テレビゲームとのファーストコンタクトはいつでしたか?
テレビゲームとのファーストコンタクトは子供の頃でした。ちょうどその頃テレビゲームは、「パックマン」のように1つの固定ステージの中で展開していたメイズゲームから、複数ステージという構成へと進化しようとしていました。
5歳だった頃、任天堂の「Game & Watch」を持っていました。イタリアではそのような携帯ゲームのことを、「スカッチャ・ペンシエーリ」という言葉で呼んでいました(イタリア語で「嫌なことを忘れさせる物」という意味)。
子供だった僕は1つの小さな画面の中で展開していた映像と干渉できるということにとても魅力を感じていました。その中で特に好きだったのは任天堂の「Parachute」、「Snoopy Tennis」、「Donkey Kong」でした。2つの画面を実現させた任天堂は他のメーカーよりも、ずっと革新的でした。
あなたのゲーマー人生の中で最も独特なエピソードを語ってくれますか?
何年か前に、バカンスで友達とアムステルダムに向かおうとしていました。外国でも友達と対戦できるように、Wiiと「マリオカートWii」を荷物に入れて持って行こうと思いました。それで、空港の荷物をチェックするところで僕のスーツケースをスキャンした警備員が僕に近づいて、こう尋ねました。
「あなたは何故、荷物の中に車のハンドルを入れたんですか? 何に使うつもりですか?」。その瞬間、僕は顔を真っ赤にしながら警備員に事情を説明しました。「僕の友達が、ハンドルなしでは『マリオカード Wii』で遊べないので入れました」とね(笑)。
あなたにとって最も大切なゲームはどれですか?
もちろん、「マリオカートWii」です。1つの画面で4人のプレーヤーが同時に対戦できますし、友達と一緒に楽しい時間が過ごせると思います。さらに、その直感的な操作システムが、レーシングゲームに不慣れなユーザーにもとても向いていると思いますよ。
日本のゲームは欧米のゲームに対して、どういう付加価値を持っていると思いますか?
日本人は誰よりも早く、ゲームという媒体のポテンシャルを把握することができたと思います。年々、まるで赤ん坊であるかのようにその媒体に優しく寄り添いつつ、子供向けだけでなく、あらゆるユーザーに合うように成長させていきました。
僕は欧米のゲームとの主な違いは、ゲーム作りに注がれる愛情にあると信じています。欧米のゲームはお金を稼ぐためだけに制作されているかのように感じています。それと違って日本の商品は、情熱に満ち溢れていると思っています。
現在のゲームは過去のゲームに比べて何を失ったと思いますか?
過去のゲームは高いクオリティを持っていたし、独特なイメージを喚起させていました。少数のドットと2つのボタンで遥か彼方の宇宙へと投げ出される時もあれば、地球の中心に近い洞窟へと導かれる時もありました。現在のゲームはゲーマーの想像にスペースなんて与えていないと思いますね。すべては高解像度の大きな画面の中で緻密に再現されていて、想像力はあまり刺激されていないですね。
任天堂のゲームに触れたきっかけは?
子供の頃は「Game & Watch」で遊んでいたけど、それが任天堂の商品だったとは思っていませんでした。初めて任天堂のゲーム機に触れたのは、高校の頃、僕の席の隣に座っていたクラスメイトが、ゲームボーイと「スーパーマリオランド」を持ってきたのがきっかけでした。
ベッドに横たわったまま、こんなにバラエティに富んだゲームで遊べるなんて、信じられませんでした。そのクラスメイトにはまだ十分感謝の気持ちを伝えていないと思います。ねえ、カミちゃん?(実はクラスメイトはジョン・カミナリでした)
任天堂のゲームが好きな理由は?
任天堂のゲームが好きなのは、入念に作られているからです。ランダム要素なんて一切ありません。レベルデザインから音楽に至るまで、すべての要素に細心の注意が注がれています。些細なことかもしれませんが、任天堂ゲームのカラフルさも大好きです。その特徴はすぐ任天堂ゲームであることを認識させますね。
最後にこれもとても大切ですが、任天堂は普遍的な言語を話すカギを見つけたようです。言語という壁を超えて世界中の子供やユーザーと、ゲームを通じて完璧にコミュニケーションができると確信しています。
特に好きなゲームシリーズがありますか?
「マリオカート」のほかに、「マリオ&ルイージRPG」シリーズも大好きです。これまでいろんなゲーム機で展開してきたシリーズですが、いつも各ゲーム機のポテンシャルをフル活用してきたし、ゲーム機の性能や機能を生かしたことで、いつも刺激的なゲーム性や新しいアイデアを導入していったと思いますね。これからWii U GamePadで、どんなことが実現できるのかとても楽しみです。
「マリオカート」シリーズはレーシングゲームというジャンルに何をもたらしたと思いますか? 他のレーシングゲームとの違いは?
イタリアの有名な車と比較すると、「マリオカート」はノンシミュレーション、つまりアーケードレーシングゲームのフェラーリだと思います。疾走感は格別ですし、独特の爽快感もあります。そして、友達との対戦は世界一楽しいです。任天堂の名キャラクターをパイロットとして選べる点もユニークでしょう!
「マリオカート」シリーズは現在に至るまで変わってきました。最新作品の好きなところを教えてください。
最新作品の気に入った追加要素はオートバイの使用、水中でも走り続けること、そして、ハンググライダー形態で空中を飛べることですね。また、あらゆる場所でミニターボを使える「スネーキング」が、「マリオカート8」で廃止されると聞いて嬉しかったです。それは、オンラインプレイの感覚を完全にずらしていたと思います。
ほかに、Wii U用の「マリオカート8」に望むことはありますか?
サーキットエディターを実現させて欲しかったけど、たぶんそれは不可能でしょう。それがなくても、外観だけでなく、車の性能をカスタマイズできる自由さを増やして欲しいですね。
ほかにもWii U GamePadに、クラクションやサーキットマップ表示機能を追加して欲しいです。フレームレート数が60に上がったことも大歓迎ですし、オンラインで最大12人のユーザーが対戦できる要素も素晴らしいと思います。
PS4とXbox Oneが発売される時期には、Wii Uが困難な状況に置かれると思いますか?
残念ですが、そう思います。任天堂はライバルより有利な状況だったこの1年のアドバンテージをうまく活用することができなかったと思います。ライバルメーカーの次世代機が発売される頃には、Wii Uは時代遅れだと感じるのではないでしょうか。
多くのゲームメーカーが、ヒットシリーズのWii Uバージョンを予定していないところも問題ですね。Xbox OneよりもPS4が、特に欧州市場ではWii Uに苦戦を強いるだろうと予測しています。
宮本茂氏が新IPを開発しているという情報が明らかにされました。今の任天堂には新しいゲームヒーローやゲームシリーズが必要だと思いますか? どんな新IPで遊びたいと思いますか?
宮本茂氏をとても尊敬していますし、彼は自分のやり遂げようとしていることをよくわかっていると思いますね。だから、今回も的を射た傑作を生み出すと信じています。
僕は新しいIPの制作に賛成ですが、任天堂が昔からのキャラクター・サブキャラクターを際立たせるようなスピンオフ作品を制作していくという、古くから続く方針もよくわかります。個人的には大人向けの新キャラクターが誕生することを願っています。
大人向けというのは、必ずしも暴力的という意味ではありませんよ。任天堂ゲームのユニークなフィーリングを裏切ることなく、大人なゲームの開発ができると思いますよ。
任天堂にどんなゲームの続編・リメイクを作って欲しいですか?
スーパーファミコンの頃、グラフィックスの滑らかさで世界中のみんなを驚かせた「F-Zero」のリメイクを作って欲しいですね。また、リズムゲームとアクションゲームを見事に融合させた「ドンキーコング ジャングルビート」の続編でも遊んでみたいなと願っています。あのゲームのオリジナリティは世界一です!
あなたの大学の論文はテレビゲームやマーケティングの役割についてでした。任天堂はマーケティングにおいて、欧州で何にもっと注力すればいいと思っていますか?
イタリアの任天堂は、マーケティングにおいて素晴らしい活動を見せていると思います。特に、専門用語で言われている「Below the line」マーケティング、つまりゲームショップなどのイベントやプロモーションのことです。
ちょうど昨日、ショッピングモールに行ったら、マリオの衣装を着た3人が僕に近づいてきて、「『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』を試して下さい! ご褒美として素敵なグッズを差し上げますよ!」と声を掛けてきました。これこそが、“Nintendo Difference”ですね!
最後に、あなたの最もリスペクトする日本のメーカー、任天堂にメッセージをお願いします!
任天堂さん、スマートフォンの世界へ活動の範囲を広げることを考えていませんか? 任天堂特有の独創力を生かせば、スマートフォンのゲーミングをより楽しいものにすると確信しています!
あとゲームではありませんが、リアルなアミューズメントパークをオープンしたらいかがでしょうか? マリオやゼルダの世界を再現するアトラクションを楽しむことが、世界中の任天堂ファンの夢だと思います!
ヴィンチェンツォさん今日は本当にありがとうございました! これからも日本の大好きな任天堂ゲームで遊び続けてね!!