【連載第28回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!


佐藤カフジの「PCゲーミング道場」


最強の3D立体視ソリューションNVIDIA「3D Vision Surround」体験レポート!
“3画面+立体視”という究極の臨場感体験。最も効果のあるゲームはどれだ!?


色々な意味で業界の「最先端」を走る、PCゲーミングの世界。当連載では、「PCゲームをもっと楽しく!」をコンセプ トに、古今東西のPCゲームシーンを盛り上げてくれるデバイスや各種ソフトウェアに注目。単なる製品の紹介にとどまらず、競合製品との比較や、新たな活用法、果ては改造まで、 様々なアプローチでゲーマーの皆さんに有益な情報をご提供していきたい。



■ ついに3画面+立体視のソリューションがご家庭に!

NVIDIAのハイエンド3D立体視ソリューションとなる「3D Vision Surround」。ついに家庭で3画面立体視が可能になる!

 NVIDIAは6月29日、3D立体視ソリューション「NVIDIA 3D Vision」向けの新機能として、3画面のマルチモニタ環境で3D立体視を可能にするディスプレイドライバのβ版をリリースした。このドライバはNVIDIAのビデオチップGeforce GTX 200シリーズ、GTX 400シリーズに対応し、ビデオカードを2枚同時に実装するSLI環境で3画面による3D立体視「3D Vision Surround」を実現するもの。ドライバはNVIDIAのサイト上でダウンロードすることができる。

 「NVIDIA 3D Vision」を用いたPC向けの立体視環境は、ネイティブ120Hzのモニターが必要とあって敷居が高いと考えられてきたものの、昨年末から今年にかけてDELL、ACER、Samsung、LGエレクトロニクスなど各社から対応モニターが安価に供給されるようになったことで普及の兆しが見えてきている。NVIDIAが今回リリースしたドライバは、その中にあって最上級の環境を構築するためのソリューションに位置づけられるものだ。

 プレーヤーの視野を覆い尽くす3面のモニターを並べたマルチモニタ環境。そこに3D立体視を持ち込むと一体どうなるのか? 現在のPCゲームシーンで得られる中で最強の仮想体験ソリューションといえるが、弊誌ではNVIDIAの協力により一足早くこの環境を確かめることができた。ある意味究極のゲーミング環境を前にして、本連載としても黙って見過ごすわけにはいかないと、早速徹底検証。そのインプレッションをお届けしよう。



■ FaithのモンスターPC「INSPIRE Ex 3D Vision Surround」がやってきた

「INSPIRE Ex 3D Vision Surround」
Faithの製品紹介ページ(http://www.faith-go.co.jp/pc/bto/?id=138733)

 今回NVIDIAの最新ドライバでサポートすることになった3画面の立体視「3D Vision Surround」。これを家庭で実現できるPCを、PCショップのFaithが早速実現した。その名も「INSPIRE Ex 3D Vision Surround」だ。

 このPC、価格は標準構成で499,800円とのけぞるほど高いが、その中身はまさにモンスター級だ。CPUにはハイエンドのIntel Core i7 Extreme 980Xを搭載し、ビデオカードはGeForce GTX 480を2枚搭載してSLI駆動がデフォルトとなっている。さらにはシステムドライブ用にインテルの高速SSD「Intel X25-M」(80GB)を搭載。メインメモリ(6GB)、HDD(2TB)も必要充分で、まさにこれ以上ない構成のゲーミングPCだ。

 この高性能なパーツ類を収めるのがCOOLER MASTER製のゲーミングPCケース「HAF 932」。560mm、243mm、564mm(高さ×幅×奥行き)というフルタワーケースで、前面、背面のケースファンのほか、側面、上面に大口径ファンを1基ずつ装備。2枚のGeForce GTX 480が生み出す凄まじい熱をしっかり放熱してくれるだけでなく、拡張性にも優れたタワーケースだ。

 さらにこの「INSPIRE Ex 3D Vision Surround」には、3D対応モニターとしてLGエレクトロニクスの「LG W2363D」が3台付属する。本モニターについては弊誌でも何度かお伝えしているが、フルHD、輝度400cd/m、ネイティブ120Hz対応の23インチワイドモニターだ。最大の特徴は内部エンジンの高速駆動によりフレーム間の残像が非常に少ないことで、これにより3Dグラスを通した際にクリアな映像を見ることができる。


前面パネルには各種端子が充実。側面、上面には大口径ファンを装備して高い吸排気性能を確保している


■ 3画面環境のセットアップ。ベゼルコレクションを忘れずに

早速3画面環境を自室に構築してみた
モニターとは3本のデュアルリンクDVIで接続する

 いわば現状で得られる最高の3Dソリューションを詰め込んだPCといえる「INSPIRE Ex 3D Vision Surround」。これが早速筆者の自宅にまとめて送られてきたので、取り急ぎ3Dゲーミング環境を構築してみた。

 環境の構築時に気をつけなければならない点は、PCから各モニターへの接続を付属のデュアルリンクDVIケーブルで行なわなければならないことだ。「LG W2363D」にはHDMIケーブルも付属するが、フルHDの3DのためにはHDMIの帯域では足りないため、デュアルリンクDVIでの接続が必要になるわけだ。

 モニターを接続し、PCを起動して3画面とも認識されたら、次はマルチモニタの設定とベゼルコレクションの設定。ベゼルコレクションとは、複数のモニタの表示面の間を分断するベゼルの占有する幅を考慮し、さも「その空間にも画面領域があるかのように」表示解像度を調整する仕組みだ。これを適用するとベゼルによる表示面のズレが最小化され、3Dゲームの表示がより自然な感じになる。

 筆者は3台の「W2363D」のベゼルを多少重なりあうように配置し、ベゼルコレクションはそれぞれ70ピクセル程度に設定した。これはフルHD解像度のときの数値だが、ゲームでより低い解像度を使う際もこれを元に適切なベゼルコレクションが自動的に設定されるようなので、ユーザーとしては一度だけ設定すれば問題ない。


ベゼルコレクションを適切に設定すると、ベゼル由来の画面のズレが解消される。ゲーム画面でベゼルを跨いだ空間がきっちりとつながって見えるようにするのがポイントだ


■ 3画面+3Dで動作するゲームソフトをチョイス

 さて、それでは実際にゲームでの様子をお伝えしていこう。まず前提として「NVIDIA 3D Surround」は全てのゲームで動作するわけではない、という点をお伝えしておきたい。これには2つの要因があって、まず「NVIDIA 3D Vision」テクノロジーに対応しているかどうかという点がひとつ。もうひとつは3画面のスーパーワイドスクリーン環境に対応しているかどうかだ。

 「3D Vision」については、NVIDIAでは「Direct3Dベースで造られているゲームならほぼ動く」という言い方をしているものの、ゲームの実装により得られる効果や動作の可否そのものが変わってくるのが実情だ。筆者の印象では、3Dゲームとして奇をてらわない丁寧な作り方をしているゲームなら問題がないことが多い。逆に、パフォーマンス向上のためや技術的な問題で裏技的なレンダリングを多用しているゲームでは、3Dにならなかったり、見え方がおかしくなりやすいという印象がある。

 3画面サポートについても同様だ。解像度の選択項目をDirectXにきちんとクエリーして提示するような、PCゲームとして丁寧な作り方をしているゲームではほとんど問題なく動く。しかし、韓国や日本のゲームにありがちなのだが、「解像度の選択肢が固定」になっているゲームは基本的にダメだと考えて良い。

NVIDIAでは、「NVIDIA 3D Surround」で遊べるゲームの60本以上のリストを準備している。今回の検証ではその中から、FPS、TPS、レース、フライトシムなどをピックアップ。さらに筆者の好みでプラス1本をチョイスして実際に確かめてみた。そのリストはこちら。

・「Battlefield: Bad Company 2」(エレクトロニック・アーツ)
・「Just Cause 2」(スクウェア・エニックス)
・「Left 4 Dead 2」(Valve Software)
・「Need for Speed: SHIFT」(エレクトロニック・アーツ)
・「Microsoft Flight Simulator X」(マイクロソフト)
・「Mount & Blade: Warband」(Tale Worlds Entertainment)



■ レースゲームとの相性は圧倒的! ぜひ入力デバイスも本格的なものを

レースゲーム用のデバイスも接続して、準備万端!
「SHIFT」をプレイするNVIDIAのスティーブン・ザン氏

 リストに上げたゲームを順番に行儀よく紹介していくことも考えたが、ここは1番良かったものからお伝えしよう。筆者自宅に構築した「NVIDIA 3D Surround」環境で最高の感動を与えてくれたのは、レースゲームである「Need for Speed: SHIFT」だ。

 本作はPCだけでなくコンシューマーゲーム機向けにも発売されているレースゲームだが、PC版はスーパーワイドスクリーン対応から3D対応まで、今日のPCゲームに必要な最先端機能をしっかりと実装していることも特徴だ。今回の環境でも全く問題なくプレイできた。

 動作速度も良好で、3画面フルHDの5,760×1,080ドットという化け物級の解像度でも3D表示で30fps以上をキープできる。ただしアンチエイリアスはOFF設定だ。というのも、3画面で3D表示ということは、通常のフルHD表示に比べて表示面積で3倍、3D表示のために1フレームあたり2枚表示する必要性からさらにその倍、すなわち通常の6倍のシェーダーパワーを必要とする。極めてシェーダーヘビーであるため、さらにシェーダーパワーを食ってしまうアンチエイリアスは相性が悪いのだ。

 とはいえフルHD×3という高詳細の解像度では、ピクセルのエイリアスはほとんど気にならない。最高の画質で3Dを楽しめる。その上で本作をドライバー視点でプレイすれば、その迫力は圧倒的だ。まず、プレーヤーを囲むサラウンドモニターと3D効果により「本当に車内にいる感」がものすごい。ハンドル、ダッシュボード、そして車外の風景が作る立体感が、本当にリアルな視覚体験を与えてくれる。

 そして視点はコースの先に集中しているのだが、高速に流れていく風景がサラウンドモニターを通して視覚に伝わってくるため、スピード感も向上する。また、真横にいるライバルカーを実際に視認しながらコース取りをできるという実益もあり、より正確でワンランク上の走りまでできそうな感触が得られるのだ。

 臨場感と迫力、そして走りを向上させるために得られる視覚情報。サラウンドモニターと3D立体視が与えてくれる価値をこれほど強烈に伝えてくれるのは、やはりレースゲームならではのものだろう。ちなみに車外視点でのプレイも少し試してみたのだが、臨場感が大幅に減ってしまう。「NVIDIA 3D Vision Surround」を楽しむならドライバー視点が最高だ。

 この迫力をさらに楽しむためには、やはり入力デバイスも本格的なものを使いたい。筆者は今回の試用にあたり、ロジクールのドライビングコントローラー「G25」を使用した。画面の3D効果も相まって、手元のハンドルが画面の中の空間とダイレクトにつながっている感触があり、さらにゲームの喜びが増す。この環境はレースゲームファンなら間違いなく垂涎モノだ。


【Need for Speed: SHIFT】

【実際にプレイしているデモ】

「Need for Speed: SHIFT」での3画面体験。とにかくすごい迫力だ。2DのUI要素が中央画面にレイアウトされている点もポイントが高い。これは本作がきちんとマルチモニター環境に最適化されていることを示すものだ


■ 襲い来る耐え難い疲労感。FPSやTPSは鬼門?

 次にFPS系の代表として「Battlefield: Bad Company 2(BFBC2)」と「Left 4 Dead 2(L4D2)」のインプレッションを。この両作品とも3Dの見え方は全く問題なく、適切な奥行きや飛び出し感のある画面でゲームを楽しむことができた。

 特に「BFBC2」は3画面対応もバッチリだ。2Dのユーザーインターフェイス(UI)要素が中央画面にきちんとレイアウトされることもあり、3画面でも全く違和感なくプレイできる。視野角が広がることにより、これまでは発見できなかったような敵に対していちはやく反応できるというメリットも感じられた。

 マルチプレイモードで画面から得られる情報量が増えるというのもありがたいが、シングルプレイモードでもサラウンドモニターのありがたみがある。キャンペーンモードでは沢山のカットシーンのみならず、各ロケーションで大規模感のある戦いが演出されるが、爆発や飛び散る破片など、サラウンドモニター一杯に視覚効果が広がっていくのは見ていて本当に気持ちがよく、臨場感たっぷりだ。本作が今最も「3D Vision Surround」環境のメリットを得られるFPSの1本と言えるだろう。

「Battlefield: Bad Company 2」。元々の視野角が若干狭めに設定されているため、サラウンドモニターにより得られる情報量の増加が大きい。近くの仲間や敵の動きを広い範囲で把握することができる


 一方「L4D2」では3画面環境でのプレイで発生しうる問題点をいくつか認識することになってしまった。

 まず問題のひとつは、2DのUI要素の配置。「L4D2」では仲間のヘルスバーが画面左下に、自分のヘルスバーが画面右下に表示されるという基本レイアウトになっているが、3画面でプレイするとこれがそのままサラウンドモニターの端に配置されてしまい、プレイ中にヘルスや武器の残弾数を確認するのが非常に難しいのだ。少なくとも眼球運動だけでは足りず、首を左右にしっかり振る必要がある。これは結構大きいペナルティだ。

 そしてもうひとつの問題は、広すぎる視野角だ。「L4D2」ではデフォルトの視野角が90度に設定されている。このため3画面に拡張すると、およそ120度ほどの範囲が画面内に描画されることになる。そうすると画面の端のほうが異様に「引き伸ばされた」状態で描画されることになり、ひどい違和感があるのだ。

 これらの問題のため、「L4D2」の3画面×3D立体視でのプレイはひどく疲れる。小1時間もプレイしていると目も頭も疲れ果てて、いますぐベッドで横になりたいという衝動にかられるほど。基本的に画面内の沢山のものを見なければならないFPSでは3D利用時に目筋への負担が大きいのだが、それがさらにひどくなってしまった印象だ。

「Left 4 Dead 2」。UI要素がサラウンドモニターの端に配置されてしまう上、ゲームの視野角が広すぎて大きな歪みが生ずる。その上大量のゾンビを見なければならないと言うゲーム性のため、少しのプレイで疲れ果ててしまった


 次に試したのはTPS代表として「Just Cause 2」。フックを使って縦横無尽に飛び回ることのできる動きの激しいTPSだ。3D効果はばっちりで、特に広大な風景の中というロケーションが多いゲームであるため、画面の奥に広がるゲーム空間を臨場感たっぷりに楽しむことができる。

 ただし3画面対応については「L4D2」と同じ問題があり、レーダーや各種情報を示すUI要素がサラウンドモニターの端に配置されてしまう点がいただけないところだった。基本的にプレイ中は中央の画面だけを見て、サラウンドモニターは目の端で「感じながら」プレイするくらいが疲れにくいのだが、UI要素がサラウンドモニターに配置されてしまうとどうしても目を激しく動かす必要が出てくる。

 また本作はフックでの高速移動がプレイの中心であることもあって、ゲーム中の遠近感の変動が非常に激しい。このため3D利用時は「遠くを見る」、「近くを見る」という眼球の動きが激しく要求されることとなり、短時間のプレイでもかなりの疲労感がある。確かにゲーム画面から伝わってくる迫力や臨場感は素晴らしいのだが、この疲労ばかりはいかんともしがたい。ユーザーの皆さんには、「3D Vision」側の調整で視差をかなり控えめにしてプレイすることをオススメしておきたい。


「Just Cause 2」。広大な風景が作り出す3Dの立体感は見事。ただし、フックを使って飛び回ると言うゲーム性からか、眼球への負担がかなり高く、短時間のプレイでもヘトヘトになってしまう。カメラの動きが激しいTPSでは共通する問題点となるだろう


■ 広がる視野角、眼前を覆い尽くす風景

 つぎにNVIDIAの「3D Vision」対応度レーティングで「Excellent」(最良)と評されているフライトシミュレーター、「Microsoft Flight Simulator X(MSFSX)」を試した。本作はもともとマルチスクリーン環境にも最適化されているため、「3D Vision Surround」環境にも問題なく適応できる。

 「3D Vision」を使ったモニター1台でのプレイは既に体験済みだったが、サラウンドモニターにより視界が横に広がることで、コックピットビューの臨場感は上述の「Need for Speed: SHIFT」に近く、良い感触だ。また本作は視野角をユーザーの手で自由に調整できるため、モニターとの距離や角度に応じて最適な見え方をすぐに見つけ出すことができるのもいい。

 ただひとつ、フライトシミュレーター系に共通しそうな問題点に気がついた。基本的に横方向にしか運動しないクルマとは違って、飛行機の運動は基本的に縦方向だ。このためプレーヤーの意識は画面の上下に集中することが多い。しかし、3画面によるスーパーワイドスクリーン環境では、縦方向の視野角が却って狭くなってしまい、とても窮屈な印象を受けてしまうのだ。このため30、40インチ以上の非常に大きなモニター1台でプレイしたほうが、フライトシマー的には良いかもしれない。サラウンドモニターは計器やマップの表示に当てるのがベストソリューションになるだろう。

「Microsoft Flight Simulator X」。今回使用したモンスタースペックのPCでは3D表示でも常時60fpsを維持できるほど高速に動作する。3画面の効果に関して言うと、飛行機では縦方向の運動が主となるため、却って狭さを感じる結果となった


 最後に試したのが、今回個人的な好みでチョイスしたゲーム「Mount & Blade: Warband」。最大数百の騎兵や歩兵が戦場を駆け巡る合戦アクション+中世騎士RPGだ。NVIDIAからはレーティングさえ受けていない非常にマイナーなゲームだが、「3D Vision Surround」による視野角の向上、画面から得られる情報量の増加というメリットを享受するには最適の1本と考えられた。

 そして実際試して見たところ、「3D Vision」への対応も、3画面への対応も本作は完璧。適切な立体感でゲーム画面が描画される。また、2DのUI要素(体力バーくらいしかないが)も中央画面にきちんとレイアウトされ、マルチモニタに対応する実装がきちんと行なわれていることがわかる。視野角の広さによる歪みは多少気になるが、「L4D2」ほどではない。

 その上で得られた「戦場の臨場感」は圧巻だ。広がった視野角により、プレーヤーの周りで展開するゴチャゴチャとしした兵士たちの動きが視覚情報として飛び込んでくる。一方で馬上で展開するプレーヤーの動きはレースゲームのコックピット視点に近く、違和感なく大迫力の戦場に没入できるのだ。大量の兵士に囲まれた戦場環境で、敵騎兵に高速ランスチャージを命中させる爽快感は至高である。

 本作は「3D Vision Surround」に対応するゲームとして完全にダークホースだが、「Need for Speed: SHIFT」に並んで、今回の試用で最高の効果を得られたゲームとなった。もともと動作が軽いゲームなのでフレームレートもバッチリだ。このゲームにはコアファンが多いので、本作のためだけに3画面+立体視環境を構築してしまう猛者が現われてもおかしくない。


【Mount & Blade: Warband】

「Mount & Blade: Warband」。プレーヤーの周りで大量の兵による戦闘が展開するゲームであるため、視野角向上による情報量の増加が著しい。画面から伝わってくる雰囲気はまさに「動く戦場絵巻」。期待以上の効果を得られた1本だった


■ 「3D Vision Surround」はハイエンドゲーミング環境の新たな到達点

 PCゲームの世界というのは本当に奥が深いもので、かつてからフライトシムファンやドライブシムファンの間では、マルチモニター環境というのは決して珍しいものではなかった。そのために複数台のPCを連携させたり、モンスター級PCを用立てることもコアゲーマーの中ではよく行なわれていたことだ。

 そしてここにきてNVIDIAの「3D Vision Surround」である。3画面、しかも立体視という漫画のようなソリューションだ。その効果はゲームタイトルによってまちまちだが、最適なゲームでは驚くほどの臨場感をプレーヤーに与えてくれる。最高のゲーム環境を追い求めるコアゲーマーにとって、目指すべき到達点が新たに現れたことは間違いのないことだ。

 この実現のためには、本稿で述べたとおり、NVIDIAの強力なビデオカードを2枚差ししたPCと3台のネイティブ120Hz対応モニタが必要となる。冒頭でご紹介したFaithのPC「INSPIRE Ex 3D Vision Surround」の価格を再度上げるまでもなく、一般のゲーマーにとってほいほい手が出せるものではない。それでもごく一部のコアゲーマーがよだれを垂らすようなソリューションが登場してくるあたり、やはりPCゲームの世界は面白い。

 最後にひとつだけ気になったところを指摘しておこう。3台のモニターで環境を構築すると、ゲームの視野角がそれに応じて広がってくるわけだが、現在のゲームは「画面は平面である」ということを前提に3D空間を描画しているため、どうしてもサラウンドモニターに表示される部分の映像が歪んで見えてしまう。「L4D2」は特にそれがひどかった。非常に広い視野角を平面に投影しているためだ。いわば地図のメルカトル図法で北極南極近くが歪んでしまうのと同じ問題である。

 一方、液晶モニターは視野角によって違った画質に見えてしまうという問題があるので、3台のモニターはユーザーを取り囲むように角度をつけて配置したいのが人情。マルチモニターに対応するゲームは、この状態にマッチする方法で3D空間を画面に投影するようにして欲しいと思うのだ。

 ひとつの方法は、3つの画面で構成する単一の平面にそのままゲームの3D空間を投影するのではなく、中央画面、右画面、左画面と、別々に平面投影して映像を作り出す。複数回の撮影で作成したパノラマ写真と同じ事をゲーム上で行なう感じだ。あるいは、ユーザーを取り囲むように配置されたモニター全体を局面として近似的に扱い、局面投影する方法。こちらは高画角パノラマカメラで撮影した写真のような描像になるだろう。いずれにしても現在のゲームで感じられる、画面端のひどいゆがみは改善されるはず。

 以上、「3D Vision Surround」を体験した1ユーザーとしてPCゲーム業界にリクエストを出しつつ、コアゲーマーの皆さんにはこの選択を迫って見たい。3画面でしかも3D立体視、ぜひご家庭に1セットいかがですか?



(2010年 6月 29日)

[Reported by 佐藤カフジ ]