「Dishonored 2」ステルス連載 ダンウォールに忍ぶ影

「Dishonored 2」連載第0回:前作「Dishonored」の魅力! トゥルーエンドを目指すことで得られる最高の達成感

 2012年10月に発売されたアクションアドベンチャー「Dishonored(ディスオナード)」の続編である、「Dishonored 2」が、ベセスダ・ソフトワークスより12月8日に発売となる。

 弊誌ではこの「Dishonored 2」の発売にあたり、“「Dishonored 2」ステルス連載 ダンウォールに忍ぶ影”として、5回に渡って掲載予定で、本稿はその1本目、“第0回”として前作の「Dishonored」のゲームシステムとその魅力について改めて述べてみたいと思う。

 「Dishonored 2」は、前作の直接の続編となっている。前作では15年前の物語が描かれており、舞台となる世界や登場人物はもちろん、一人称視点のステルスアクションという、基本となるゲームシステムも引き継がれている。前作は現在では、PS4とXbox Oneで全てのDLCを含んだ“HD版”もリリースされプレイしやすい環境下にもある。

 筆者は「Dishonored」を気に入っている。本作のオリジナルが発売される2012年、取材で発売前の本作に出会った筆者は、これまで味わったことのない緊張感と、産業革命時代のヨーロッパを新たな解釈で構築したダークな世界観に魅せられ、仕事で評価版をプレイしただけでは飽き足らず、製品版を購入し、本作に没入した。

 複数のエンディングや非致死プレイ、敵に1度も発見されずにクリアする完全ステルスプレイなども経験するぐらいまで遊び込み、最新作への個人的な期待度も大いに高めていたところに、今回の連載執筆の声をいただいた次第である。

 今回はそんな筆者が、最新作発売前の予習的な意味を含めて、発売中のHD版を改めてプレイし、その見どころやゲームの面白さなどについて綴っていきたい。

【Dishonored HD ゲームプレイ トレーラー】

【Dishonored HD】
HD版として2015年にリリースされた本作。今回の記事ではPS4版を使用している

主観視点で展開する、緊張感バツグンのステルスアクション

 前作では、主人公のコルヴォ・アッターノは、女王暗殺の濡れ衣を着せられ、投獄されてしまうが、処刑寸前に脱走。彼の協力者となる王政支持派の一団とともに、この陰謀を企てた摂政伯爵に対し復讐を誓うという物語が描かれる。

 プレーヤーキャラクターとなるコルヴォは、機械仕掛けの仮面を着けた暗殺者となり、摂政伯爵のもとへと迫るために、様々なミッションをこなしていくこととなる。ゲームは一人称視点のFPSスタイルながら、銃撃戦が主体ではなく、暗殺者としてできるだけ敵に見つからないための行動が基本となっている。自身の視界が限られた中で行なう緊張感の高いステルスアクションが本作の最大の魅力であり、筆者が特に惹かれた点でもある。

 それまで筆者が遊んできたステルスアクションは、三人称視点のTPSスタイルが基本で、プレーヤーキャラクター自身とその周囲が見えることで、敵の存在などを確認しながら攻略していく内容だった。ところが本作で画面に見えているのは、コルヴォの視界のみ。後述する世界観設定などから、レーダーなどの近代的な装備はなく、視界に映らないものは音などに頼るしかないのである。

戦うときももちろん視点はFPSスタイル。銃などの飛び道具もあるが、基本は剣による戦いが主体となる

 もちろんゲームバランスは三人称視点の方向性に最適化されていて、例えば遮蔽物に体が隠れていれば、体を傾けて頭を出しても発見されなかったり、敵がこちらに気づいても初期段階なら積極的に探しに来なかったりするなど、そのあたりはちゃんと考えられて作られている。さらにステルスはあくまでプレイスタイルの1つであり、腕によっては正面から切り込んでいくような選択肢も存在するので、誰にも見つからずにミッションをクリアする「完全ステルス」のような縛りプレイにこだわらない限りは、臨機応変に楽しめる作品でもある。

 ゲームの感触も、正面から戦うかステルスプレイをするか、さらには敵をなるべく殺さない非致死プレイを目指すか否かで大きく変わってくる。何も考えずに正面から敵とやり合うとなると、ほとんどの場合、声や戦闘音などで他の敵が集まってくるため、1対複数になることが多く、それに対処するための腕が必要となる。一方、ステルスによる戦いは暗殺者コルヴォの十八番であり、他の敵に気づかれないように1人ずつ倒していくことで、時間はかかるものの、総合的な難易度は下がることになる。

敵を倒した後をどう処理するかも重要な要素となる。巡回中の敵に死体を発見されれば、当然騒ぎになる

敵を殺すか生かすかによって「カオス度」が変化し、その後の展開が変わる

 そんな前作には、敵を殺した数によって、その後のゲーム内容やストーリーが変化していく「カオス度」なる隠しパラメータが存在している、これは「街に死体が増えるほど、疫病を媒介するネズミが増える」という設定のもと、ゲームプレイを通して敵を殺害した数に比例して上がっていく数値で、カオス度が高いほどゲーム後半で「ウィーパー」と呼ばれるゾンビのような疫病感染者が増え、コルヴォが不利になるというものだ。

 さらにこのカオス度はストーリー展開にも影響していて、ゲーム中で安易に敵を殺しまくっていると、コルヴォに対するNPCの態度が大きく変わり、トゥルーエンドを迎えることができなくなってしまう。コルヴォには「背後から敵の首を絞めて気絶させる」、「クロスボウで麻酔ボルトを使う」といった非致死の選択肢があり、これを積極的に行なっていくことで、カオス度を抑えることができるというわけである。

首締めは敵の背後からしか通用しない。締めて落とすまでに若干時間がかかるのも難点だ
麻酔ボルトは遠距離の敵を気絶させる最高の武器だが、入手できる機会が少ないので使うタイミングが限られる

 このカオス度に関して1つ面白いのが、各ミッションの暗殺対象にも、必ず非致死の選択肢が用意されているということ。通常は対象となる人物を殺害することでミッション達成となるが、そこまでに特定の手順を踏むことで、その人物を殺さずに社会的に葬り去ることができるのだ。例えば序盤ミッションで暗殺対象となる、大修道院の「キャンベル上級監督官」は、彼が行なっていた刑罰である「異端者の証」という焼き印を本人に押すことで、大修道院から失脚させることができる。

 摂政伯爵に資金を援助する「ボイル夫人」ならば、彼女に恋い焦がれる男に身柄を渡すことで、その存在を亡き者にできる、といった具合だ。こうした非致死への手順はゲーム的にかなり遠回りの展開となるが、成功したときの達成感も大きく、何よりトゥルーエンドへの一歩という手応えを感じられるはずだ。

暗殺対象の非致死の結末はどれも面白いので、ぜひ1度は体験してみてもらいたい

ステルスアクションを昇華させる、コルヴォの「超常能力」

 近代的な装備には頼れないコルヴォだが、その世界観にファンタジー的な要素が含まれる本作で彼を助けるのが「超常能力」である。劇中で授けられるこの力は、RPGの魔法のような存在でもあるが、その効果や手触りはかなり独創的だ。

 一定距離を瞬間移動する「ブリンク」を筆頭に、敵の位置や視界を透視する「ダークビジョン」や時間の流れを遅くする(あるいは時間を止める)「ベンドタイム」など、自身に効果があるもののほか、生物に取り憑いて移動する「ポゼッション」や、ネズミを大量に発生させて敵を襲わせて死体まで食い尽くす「ラットスワーム」などの変わり種もある。

 本作のゲームの性質上、攻撃的なものは少なく、どちらかというとステルスプレイを助けてくれるものがほとんどだ。これらを上手く使いこなすことで、前述の完全ステルスや非致死のゲームプレイも不可能ではなくなるはずだ。

 なおこれらの超常能力は、ゲーム中に手に入る「ルーン」というアイテムを消費して習得・強化していくことになるが、ゲーム中で入手できるルーンの数は限られていて、どの能力を優先して習得するかはプレーヤーにゆだねられている。筆者は本作においてステルス+非致死プレイを至上としているので、本稿執筆のためのプレイでも「ブリンク」と「ダークビジョン」は真っ先に取得し、強化もしたわけだが、もちろんどれを選んでもかまわない。

指定した場所に瞬間的に移動するブリンク。強化すると距離が伸びる
壁の向こうにいる敵や視界も視認できるダークビジョン。アイテムやギミックも見える
ルーンはマップ内に隠されている他、イベントなどで入手することもある。これを使って超常能力を得るのだ

「鯨油」による文明とオカルトが浸透する、ダークな世界に引き込まれる

 この「Dishonored」では、捕鯨によって採取できる「鯨油」が文明を形作る、産業革命頃のヨーロッパをイメージした独自の世界観が構築されている。その舞台となる「ダンウォール」の街には、ネズミによる疫病が蔓延しているという設定に加えて、コントラストを抑えた油絵のようなグラフィックが、ダークな世界を演出している。

 マップはオープンワールドではないが、プレイスタイルと同様に、各ミッションでいくつかの攻略ルートが存在していて、プレイのたびに意識して違うルートを選んで進むことで、毎回違った景色を楽しむことができるのも魅力の1つだ。

 コルヴォが暗躍するダンウォールの施設も、その世界設定をもとにデザインされた刑務所、大修道院、高級浴場、巨大な橋、仮面舞踏会が開かれる貴族の館など、興味をそそられる場所ばかりだ。ゲーム後半で潜入する「ダンウォールタワー」は、オープニングでコルヴォが女王暗殺の濡れ衣を着せられた舞台であり、摂政伯爵によって要塞へと改修された異様な姿を、ゲームプレイによって体感することができるだろう。

各ミッションでいくつかの攻略ルートが存在している
後半で再び訪れることになるダンウォールタワー。その変貌ぶりに驚かされるはず

 そんなダンウォールに生きる個性的なキャラクターたちによって、本作の複雑怪奇なストーリーは構築されている。例えばコルヴォと協力関係になる王政支持者の多くは腹に一物を抱えた人物で、立ち聞きしたときの会話や、「オーディオグラフ」に録音された音声などから、普段は表に出さない一面を知ることができる。

 また敵側の人物も、典型的な悪役の上級監督官や摂政伯爵に対して、女王を暗殺したダウドなどは、彼を主人公にしたDLCでは、その後悔の念などが綴られていて、それが前述の非致死プレイへのモチベーションアップにもつながっている。

 そしてやはり注目すべきは、最新作「Dishonored 2」の主人公に抜擢された「エミリー・カルドウィン」の存在だろう。前作での彼女は、齢10歳の幼い王女で、母親の死を目の当たりにし、誘拐されてしまうが、コルヴォによって救い出され、王政支持者のもと、女王としての教育を施されるという、激動の運命をたどっている。

 ストーリーの序盤からコルヴォには懐いている様子を見せ、実はコルヴォと女王の娘ではないかという予想できるような談話も劇中で聞くことができる。気丈で健気な彼女が、「Dishonored 2」で、コルヴォと同様の暗殺者になる顛末や、その活躍など、どうなるのかとても楽しみだ。

ダンウォールに生きる個性的なキャラクターたち
コルヴォを肉親のように慕うエミリー。救出後の会話などにも、好奇心旺盛な性格が表れている

ストーリーはパラレルな形で「Dishonored 2」へと続いていく

 前作のストーリーは、プレーヤーがゲームでどんな行ないをしたとしても、最終的には何かしらの結末を迎える。筆者としては以前のプレイも含めて、既に何度か迎えた結末ながら、今回のHD版プレイでも、各ミッションの攻略ルートを変えることで、そこに至るまでの展開を十分に楽しむことができた。実際に、以前プレイしたときには気づかなかったNPCに出会ったりもしていて、まだまだ発見できるところがあった。

 カオス度を抑えて“トゥルーエンド”を迎えるためには、かなりのトライ&エラーを重ねることになるが、結末にたどり着いたときの達成感はきっと大きなものとなる。単純にステージクリアタイプのアクションゲームとしてもやり応えがあるので、腕に覚えのある人はチャレンジしてみてほしい。

 そして最新作の「Dishonored 2」は、本作から15年後を描いた内容で、そのいくつかの結末とは若干異なるパラレルな展開となっているが、ダンウォールを初めとする世界観は継承され、エミリーやコルヴォなどの主要人物が引き続き登場していて、ゲームをプレイするモチベーションがグッと高まるので、まだ「Dishonored」をプレイしていないという人は、ぜひこの機会にHD版を事前にプレイしておくことをお勧めしたい。

 特にHD版に同梱された、暗殺者ダウドが主人公となるDLC「The Knife of Dunwall 」、「The Brigmore Witches」には、この「Dishonored 2」に登場する重要人物も強く関わっているので、そちらも併せて楽しんでいただければと思う。

 次回の“連載第1回”では、「Dishonored 2」のインプレッションを、この「Dishonored」のプレイを踏まえてお届けする予定なので、そちらもお楽しみに!

HD版同梱のDLCは3作品。なお「DUNWALL CITY TRIALS」は、ストーリーには関わらないチャレンジゲームだ

【Dishonored 2 - E3ゲームプレイ トレーラー】

【reating Karnaca/Dishonored2 - クリエイターインタビュー「カルナカを創造する」】

【Inside the Epic, Themed Missions/Dishonored2 - クリエイターインタビュー「壮大なミッションの裏側」】