インタビュー
「Dishonored 2」クリエイティブディレクターHarvey Smith氏インタビュー
コルヴォとエミリー、2人の主人公が織りなす新ストーリーに注目
2016年6月18日 07:57
その独創的な世界観とユニークなパワーを駆使したバトルで、2012年に新規IPとして世界中で高い評価を集めた「Dishonored」。今年、ついに待望の続編がリリースされる。開発は前作同様、フランスのArkane Studiosで、Harvey Smith氏が引き続きクリエイティブディレクターを務めている。Smith氏に4年振りに単独インタビューを行なうことができたので、本作の魅力をたっぷり伺ってきた。
「Dishonored 2」は、前作「Dishonored」から15年後という設定で、舞台はダウンウォールからカルナカに移る。今回の主人公は、前作で主人公務めたコルヴォと、前作で助けた王女エミリーの2人。いずれか1人をプレーヤーキャラクターとして選択することで残り1人がバディになる。プロローグシーンでは、女王となり国を率いるはずのエミリーと、その護衛役を務めるコルヴォが何者かに襲われ、ふたたび追われる身となる。
コルヴォとエミリー、どちらを選ぶかでゲーム性が大きく変化
――「Dishonored 2」のメインテーマを教えてほしい。
Harvey Smith氏:ご存じのように「Dishonored」は、様々な力を描くことにこだわっている。ゲームのクリアの仕方には様々な方法を用意しており、誰も殺さずにクリアすることもできるし、様々な力を駆使しながらクリアすることもできる。すべてはプレーヤーのお望みのままだ。
ただ、主人公エミリーの行動には責任を持つ必要がある。良い行動をすれば市民は評価してくれるし、悪い行動をすれば苦しむことになる。若い女帝としてそれを学ぶ必要がある。前作の主人公だったコルヴォは年老い、彼は故郷であるカルナカに帰り、いつまでエミリーを守れるのかと考えている。
――「Dishonored 2」の最大の魅力は何だと考えているか?
Smith氏:3つある。1つはプレイキャラクターをコルヴォもしくはエミリーから選べること。コルヴォを選べば、前作「Dishonored」に似たゲームプレイが楽しめる。彼の力はさらに強化されている。そしてエミリーは、ドミノやシャドウウォーク、メズモライズ、ファーリーチなどまったく新しい力を駆使する。それは公開したトレーラーを見て貰えればいくつか確認できるはずだ。
もうひとつのポイントは、ゲームの舞台が前作のダウンウォールからカルナカへ移ることだ。この2つの街は文化がまったく違っている。
3つ目は、ゲームエンジンが新しくなったこと。前作は「Unreal Engine」を採用していたが、今回はid Softwareの「id Tech」をカスタマイズした「The Void Engine」を採用している。これにより、未だかつてないほど美しいグラフィックスを実現できたし、アートやレンダリングテクノロジーはまさにアメージングだ。
それ以外にもすべての部分が前作よりパワーアップしている。コンバットシステム、ステルスシステム、クラフティング、そして暗殺の表現なども、多彩になっている。
――多くの進化点があるなかで、「Dishonored」と比較してもっとも大きく変わった部分はどこか?
Smith氏:それはたぶんエミリーの存在だろう。彼女は主人公なのによく喋る。「Dishonored」のコルヴォは一切喋らなかったのとは大きな違いだ。今回はエミリーとコルヴォが様々なシーンで会話を行なう。2人以外のキャラクターのよく喋る。
また、エミリーでプレイすると、ゲームプレイが大きく変わる。たとえば、彼女はラットスワームやブリンクといったパワーを使えないかわりに、ポゼッションなどの新たなパワーを持っている。エミリーでプレイすると、まったく新しい感覚で「Dishonored」を楽しめると思う。
そしてもう1つ、新しいモードとして我々もとても気に入っているものだが、スーパーナチュラルパワー(超常能力)を一切使わずにプレイするモードを追加している。これは最初から最後まで登場能力を使わず、物理的な戦闘とステルスだけでクリアを目指すというものだ。当然ながらゲームの難易度は非常に高い。
――なぜパワーが特徴のゲームなのに、パワーを一切使わない高難易度モードを搭載しようと考えたのか?
Smith氏:楽しいからだ(笑)。それからユーザーからのフィードバックもあったんだ。「Dishonored」をプレイしたユーザーから、超常能力をとても気に入ったという声が多かった一方で、超常能力があるとゲームが簡単すぎるという意見もあった。もっとステルスを楽しみたいし、力に頼らずにクリアしたいと。よしわかった、じゃあパワー無しのモードを入れようと。
もちろん、多くの人がパワーを使ってプレイしたいと考えていることはわかっている。でも、少数の人、もしくは2週目はパワーなしでプレイしたいと考える人もいるので、このモードではスニークアクションを極限まで求められる。ステルスを駆使してクリアするのはとてもクールだ。ハードコアゲーマーは気に入ってくれると思う。
――ブリンク(近距離テレポート)も使えないとなると、どうやって向こうの屋上に渡るのか?
Smith氏:「Dishonored 2」では、見える場所にはすべて力を使わずに行けるようにパスを用意している。それは隠されたパスであることもあるが、それを見つけることもゲームの楽しみのひとつだ。
――私は普通に超常能力を使って遊びたいと考えているが(笑)、今回超常現象はいくつぐらい用意しているのか?
Smith氏:コルヴォが6、エミリーが6つ、2人共通のものが6つの計18だったと思う。コルヴォとエミリーが持っているのが固有のアクティブパワーで、共通のものがパッシブパワーだ。
――今回初めて登場する新しい超常能力の中で、Smithさんが特にお気に入りものはどれですか?
Smith氏:ショウケースを見てくれたかい? あそこで紹介したドミノは好きなパワーのひとつだ。複数のターゲットを繋げてまとめて倒すパワーでとてもクールだ。
――イメージイラストの中に船を見つけたが、今回は船上のミッションもあるのか?
Smith氏:今回もミッションからミッションへの繋ぎ、ベースからミッションへの移動は船を使うので、そのイラストだと思う。
――新しい武器や装備可能なアイテムにはどのようなものがあるか?
Smith氏:「Dishonored」シリーズは、パワーにフォーカスしたゲームなので、武器はそれほど多くない。新しい武器でいうとクロスボウの新しいボルトがある。ハウリングボルトは、打ち上げ花火のように周囲にノイズを発生させるボルトで、周囲の敵をスタンさせる効果がある。
そして新しいフィーチャーとしてすべての武器はアップグレードが可能で、最後までアップグレードすることでユニークなアビリティを獲得することができる。たとえばクロスボウなら、敵をロックすることができる。3人をロックした状態でクロスボウを撃つことで3人を同時に倒すことができる。中にはアップグレードすることで大きく効果が変わる武器もある。
――「Dishonored 2」はだいたいいくつぐらいのステージで構成されているのか?
Smith氏:8から9ぐらいを想定して開発をはじめたが、現在は10ある。しかも、1つ1つのステージは前作より広くなっている。
――コレクタブルアイテムにはどのようなものがあるか?
Smith氏:ステージ上の特定のアイテムを船に持ち帰ることができるようになっている。それは敵の武装や、武器、ギター、いやギターはプリオーダー特典だったかな(笑)。いずれにしてもコレクタブルアイテムを獲得することで自分の部屋に飾ってコレクションすることができる。
――マルチプレイモードはあるか?
Smith氏:ない。「Dishonored」はシングルプレイに特化したゲームデザインになっている。
――私は「Dishonored」のマルチプレイを期待していますが、なぜ入れないのでしょう?
Smith氏:なぜなら我々はスローペースでじっくり探索しながらミッションを踏破するのが好きだからだ。シングルプレイなら、競争要素もなく、どのプレーヤーも殺さなくていいし、誰にも遠慮せずにずっとステルスしていられる。
それからストーリーテリングにはシングルプレイが最適だと思う。もちろん、マルチプレイでもストーリーテリングが可能なことはわかっている。でも、確実にゲームのルールが変わるし、慌ただしくなる。人によってテンポが違うのが当たり前だし、判断が違うこともあると思う。そういった遠慮無しにじっくり楽しめるのはシングルプレイのメリットだと思う。
――今回「DOOM」や「Fallout 4」はVR対応を表明したが、「Dishonored 2」はVRに対応しないのか?
Smith氏:現時点では何もアナウンスできない、ただ、我々もVRを愛しているし、VRが実現する世界に興奮している。今言えるのはこれだけだ(笑)。
――Smithさんはやってみたいと考えているのか?
Smith氏:実は「Dishonored」をOculusに対応させて遊んでみたことがある。屋根から屋根をブリンクで移動するだけで最高の体験が味わえた。屋根から真下を除くと恐いんだ(笑)。将来的には対応したいね。PSVRもOculusもViveもクールだと思う。
――最後に日本の「Dishonored」ファンにメッセージを
Smith氏:その前に1つ聞きたいんだが、「Dishonored」は日本でもポピュラーなゲームだろうか?
――私は好きなフランチャイズだし、評価する人間も多い。ただ、スニークアクションというゲーム性は日本では比較的マニアックなので、プロモーションが難しいタイトルだと思う。
Smith氏:なるほど。日本の一般的なゲームと、「Dishonored」はかなり違いがあると思う。スタイルもビジュアルも違う。我々が作っているゲームはウェスタンスタイルなので、欧米のユーザーのマッチするように作っている。ただ、世界観やSF設定が日本のゲームファンに評価されていることは知っている。だからもっと日本のカルチャーにマッチするようなシステムを取り入れていきたいと考えている。
――たとえば「アンチャーテッド」は、まさにウェスタンスタイルのゲームだが、日本でも受け入れられているので、日本でも大きな可能性のあるタイトルだと思う。
Smith氏:日本のプレーヤーはエミリーを気に入ってくれるだろうか?
――私もまだ彼女がどのようなキャラクターなのかよく把握していないが、男性が主人公より、女性が主人公のほうが手に取りやすいという側面はあると思う。
Smith氏:良かった。自分のゲームが日本に届けられることをとても光栄に思っている。願わくば1人でも多くのゲームファンに手にとってもらえればと思う。新しい舞台のカルナカは、スペインやイタリアをモチーフにした世界観で、この新しい街を探索してくれることを望んでいる。