「Dishonored 2」ステルス連載 ダンウォールに忍ぶ影
「Dishonored 2」連載第1回:女王エミリーは、いかにして暗殺者の道を辿ったか
2016年12月8日 00:00
ベセスダ・ソフトワークスのアクションアドベンチャー「Dishonored(ディスオナード)2」が、本日12月8日に発売となった。その発売を記念する連載の2本目第1回となる本稿では、いよいよ「Dishonored 2」本編へと突入していく。
弊誌では本作の総合的なレビュー記事も後日掲載予定だが、そちらとは少し切り口を変え、本稿では本作の主人公となるエミリー・カルドウィンのバックストーリーや能力などにフォーカスし、連載第0回で扱った前作「Dishonored」とのつながりや違いなどを中心に触れていきたい。また製品版を実際にプレイしての執筆となるので、ファーストインプレッションとしても参考にしていただければと思う。
コルヴォに暗殺者としての技術を叩き込まれた主人公エミリー
この「Dishonored 2」で主人公となるのは、前作で主人公だったコルヴォに救出された若き王女「エミリー・カルドウィン」である。2015年のE3にて本作の発表と同時に公開されたトレーラーを見て驚かされたファンも多いのではないか。「Dishonored」からわずか15年後の物語ということで、ある意味続編として“直球過ぎて”逆に意外に感じる設定だった。
さらに驚くのは、「コルヴォ」の存在である。暗殺者の仮面を脱ぎ、女王となったエミリーに仕える王室護衛官の職に戻るとともに、劇中で彼女から「お父様」と呼ばれているのである。その顛末は少なくとも物語の序盤では語られていないのだが、ともかく親子関係となった2人は、ゲームのチュートリアルでは暗殺術の師弟関係のような様子も見せている。
ちなみに、コルヴォも本作の主人公の1人であり、エミリーとともにプレーヤーキャラクターとなるのだが、彼の活躍については連載の別の機会にてお届けする予定だ。
まずは本作のストーリーに触れていこう。女王暗殺事件、そして王政支持者の陰謀がコルヴォによって解決されてから15年が経過したグリストル島の王都ダンウォール。疫病による危機は去り、王女エミリーは成長して女王の座に就いていたが、彼女と敵対する人物が「クラウンキラー」と呼ばれる殺人鬼に次々と殺されていき、その疑いが彼女とコルヴォに向けられるという不測の事態に憂いていた。
そんな折、女王の命日を追悼する記念日に、彼女の前に母親ジェサミン・カルドウィンの姉を名乗る人物が現われる。彼女の名はデリラ・カルドウィン。デリラは自身が正統な王位継承者だとエミリーに告げ、隣島サーコノスの公爵アベールとともにクーデターを実行。エミリーとコルヴォにクラウンキラーの罪を着せることで、2人を失脚させてしまうのである。
その際コルヴォはデリラの魔術によって石にされ、エミリーもタワーに監禁されてしまうが、辛くも脱出。マスクで顔と身分を隠して、コルヴォと王座を再び取り戻すために暗躍するのである。
本作を熱心に遊び込んでいる人は、「デリラ」という名前にピンと来たのではないだろうか。前作のDLC第3弾として配信された「ブリグモア・ウィッチズ」に、同じデリラという名の魔女が登場しているのだ。
このときの彼女は「デリラ・カッパースプーン」という名の画家であり、魔術でエミリーを操って女王の座を奪おうと画策するが、ダウド(前作で女王を殺した暗殺者で、DLCの主人公)によってそれを阻まれている。本作のデリラと彼女が同一人物なのかは今のところ不明だが、そのルックスは極めて似ているように思える。物語が進めば、彼女の正体も明らかになるだろう。
前作のシステムを継承しつつ、新たな超常能力が新鮮な手触りを生む
暗殺者となったエミリーは、コルヴォ直伝の暗殺術とともに、アウトサイダー(「虚無」の住人で、コルヴォやダウドにも力を与えた謎の存在)から得た「超常能力」を使って、事件の真相に迫っていく。ゲームシステムは前作をほぼそのまま踏襲していて、1人称視点によるステルスアクションや、剣による戦いを主体とした戦闘は、前作をプレイ済みの人ならほぼ同じ感覚で挑める。
筆者も前回の連載記事執筆にあたり、直前に「Dishonored HD」をプレイしているが、そのときの感覚をそのまま活かしてゲームを進めることができた。その一方で、初めて本作をプレイするという人にも、前述のストーリー仕立てのチュートリアルがかなり充実した内容であり、基本となるアクションはそこで身に付けられる。
基本操作は踏襲しているものの、個々のアクションはより洗練されている。特に大きかったのは、敵を気絶させる手段が増えたことだ。背後からの首締めや装備を使う以外に、戦闘中に剣のパリーで体勢を崩したときや、高所からの降下テイクダウン、スライディングなどからも敵を気絶させられるようになった。
本作でも敵を殺すと上昇し、物語の結末が変化していく「カオス」の値は存在していて、筆者も含めできるだけ殺生をせずに進める「低カオス」のプレイにこだわりたいプレーヤーの選択肢が増えたのはありがたいところだった。
またエミリーが使えるようになる超常能力は、前作のコルヴォのものとはかなり毛色が異なっている。最初に身に付ける「ファーリーチ」は、コルヴォの「ブリンク」同様、一定距離を瞬間的に移動する超常能力だが、こちらは黒い手を移動先へと伸ばして、自分を物理的に引っぱるようにして移動するというもので、ブリンクのような瞬間移動とは性質が異なっている。この性質から、アップグレードをすることで物体を引き寄せる力を付加することもできる。
その他にも、虚無の存在を召喚して敵の心を奪い無防備にする「メズマライズ」や、自身が影となって這うように移動する「シャドウウォーク」、分身を作り出して敵の注意を引く「ドッペルゲンガー」など、かなり個性的な力を発揮できるようになる。
個人的に気に入っているのは「ドミノ」で、これは近くにいる複数の標的をリンクすることで、そのうち1人にに影響を与えると、リンクしたもう1人に対して同じ作用を与えるというもの。一度に対処するのが難しい向かい合った敵をまとめて倒せたり、敵を倒すためのアイテムを節約できたりと、使い勝手のいい力で、前述のドッペルゲンガーを出現させて、それを敵をリンクして倒すなど、面白い戦術も成立する。こうした超常能力の組み合わせによる戦術を考えるのも楽しくなりそうだ。
ゲームシステムを継承したことによる操作感はそのままに、コルヴォとは異なる超常能力を用意したことで、新鮮な味わいを持たせているのも好感触だった。
舞台はサーコノス島の港町カルナカへ。日差しの影に身を潜め
反逆者としてダンウォールを追われたエミリーは、彼女の協力者となるミーガン・フォスターとともに船でコルヴォの故郷でもあるサーコノス島のカルナカという街を訪れることになる。
このカルナカは、疫病が蔓延し衛兵やギャング達が闊歩していた15年前のダンウォールとは雰囲気が異なり、明るい日差しが注ぐ海沿いの港町として描かれている。顔を隠しているエミリーの正体には気づかない民間人も多く、中立地帯では不穏な動きを見せない限りは無害な存在で、一部は会話も成立する。
各ミッションはオープンワールドではないが、序盤からかなり広いマップが用意されていて、目的地までのルートも無数に存在している。行きと帰りや、リプレイ時などには、きっと新たなルートが見つかるはず。前作と比較してアウトドアなマップが多いのも印象的で、探索も楽しいが、衛兵達や大修道院の監督官、ハウラーギャングなど、敵も多いので注意は必要だ。
そんなミッションのうち、ここで1つだけ紹介しておきたいところがある。4つ目のミッションで挑むことになるその場所は、E3トレーラーの一部にも映っている、ある人物が作り出した「クロックワーク・マンション」だ。独自の機械技術が発展したこの世界における、ある意味究極の技術が施された建造物なのだが、ここに足を踏み入れたとき、そのぶっ飛んだセンスには必ず驚かされるだろう。中にはカラクリで動く「機鋼兵」まで登場し、ゲームのステージとしてかなり面白く、そして難しいので、楽しみにしていてほしい。
前作を知っておくことで、知識やスキルが生きる正統続編
前作からの正統続編として、エミリーを主人公に据えた「Dishonored 2」。ファーストインプレッションとしての連載第1回としては、やや濃いめの内容となってしまったかもしれない。直前に前作を一通りプレイし直した筆者にとっては、この記事でいろいろ述べたくなるぐらい、前作とリンクされた設定が多いということがおわかりいただけたかと思う。
ステルスアクションとしても非常に高い完成度でまとまっていてるので、単純にその部分を楽しむのもいいが、ゲーム中のテキストなども含めて、シリーズを含めたストーリーにまつわる情報はかなり多いので、できれば両作品を一緒に楽しむことをオススメしたい。ゲームシステムは前作で既に完成しているので、どちらかを通してプレイすることで、そのスキルをもう一方に活かすこともできるだろう。
次回の連載では、ゲームを通してプレイしてみて、より突っ込んだところの見どころやゲームシステムに触れる予定だ。
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